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スマートメータ用無線機の相互接続試験に成功

~IEEE 802国際標準規格をベースとする異なるメーカーの無線機同士の相互接続性を実証~

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2012年9月21日

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 宮原 秀夫)は、スマートメータ用無線標準規格(米国IEEE802委員会にて2012年3月に策定)に準拠した上で開発した小型・省電力「無線機」を用いて、同じ用途で異なる企業(アナログ・デバイセズ株式会社及び株式会社村田製作所)により開発された無線機との間で相互接続試験を実施した結果、想定通りのデータ中継・収集が行われること(相互接続性)を確認しました。異なるメーカーの無線機同士の相互接続性の確立・実証のためには、適切な試験項目が設定され、両無線機でこれらを満足することが前提とされますが、今回、NICTは、物理層MAC層に関してそれぞれ試験項目を提案し、本成果を上げました。本試験項目は、NICTがプロモータメンバとして寄与する規格認証団体Wi-SUNアライアンスでも議論されており、スマートメータ用無線の普及化を促進する重要な要素の一つとなっています。

背景
本実証に用いられたNICT無線機
本実証に用いられたNICT無線機
上部は電池搭載用のボックス。
手前は一般的なサイズのペン。

昨今、一般家庭やビルなど建物内の「電気・ガス・水道」のメータを制御することで、エネルギー使用量をできるだけ抑え、人にも自然にも優しい環境作りの動きが進んでいます。このように省エネへの関心が高まる中、各種メータの自動検針・状況監視・動作制御を、「無線技術」を用いて効果的に行える「スマートメータ」の研究開発が急務とされていました。スマートメータ用無線の物理層及びMAC層仕様は、それぞれIEEE 802.15.4g、IEEE 802.15.4e規格として、米国IEEE 802委員会にて2012年3月に策定されました。一方で、より効果的な無線機の普及のためには、標準化後、様々な企業により製造される無線機同士の相互接続性が不可欠と認識されながらも、実際に相互接続性を実証する試みは行われていませんでした。

今回の成果

今回、NICTは、IEEE 802国際標準規格に準拠し開発した「無線機」に対し、アナログ・デバイセズ株式会社及び株式会社村田製作所が開発した無線機を加えた上で、それぞれ物理層、MAC層に関して2段階の相互接続試験を行いました。本試験に際して、NICTは、相互接続性の指標となる試験項目を設定し、各無線機側で項目をすべて満足するよう調整を行いました。その結果、物理層に関する試験では、IEEE 802.15.4gをベースとする通信データ形式が正常に送受信されていることを確認できました。また、MAC層に関する試験では、各無線機が自律的にIEEE 802.15.4eに準拠する省電力通信網を形成する動作を確認できました。さらに、本実証では、スマートメータ用途を想定しながら、各無線機で生成したデータを、上記のデータ形式並びに通信網を利用しながら、無線機間のマルチホップ通信を介して中継し、収集する動作も行われました。

今後の展望

NICTは、今後、適切な相互接続性の認証に基づく、スマートメータ用無線の国内外での普及を促進し、ICTを利用した安全安心社会の実現を目指します。

補足資料

想定システムの概要
図1: スマートメータ用無線の利用イメージ
<図1: スマートメータ用無線の利用イメージ>

<図1>に、スマートメータ用無線の利用イメージを示します。 各家庭に設置されたガス・電気・水道メータとして、無線機能を有するスマートメータが適用され、集合住宅や、戸建の住宅区画に相当するサービスエリア内で検針データが自動的に収集制御局へと収集され、一方で、収集制御局から各メータへの制御も行う利用例を示しています。スマートメータの有するマルチホップ通信機能は、通信距離を確保し、遮蔽等による電波不感地帯を解消することに有効であり、さらに、スマートメータの省電力動作機能は、電池駆動で数年間の継続動作を実現できます。

相互接続実証について
図2: 異なるメーカーの無線機同士の相互接続実証
<図2: 異なるメーカーの無線機同士の相互接続実証>

<図2>に、異なるメーカーの無線機同士の相互接続実証の様子を示します。本実証では、収集局1台(図中での識別名:ID00(NICT開発))を含む無線機4台が適用されました。収集局は、無線網形状を把握し、さらに、ほかの3台の無線機(同:ID01(NICT開発)、ID21(アナログ・デバイセズ株式会社開発)、ID11(株式会社村田製作所開発))からのデータの収集・管理を行う機能を有します。無線網は、収集局を端点として、3台の無線機が直線的につながる形状を有しています。3台の無線機でそれぞれ定期的に生成されたデータは、本無線網形状に従うマルチホップ通信による中継を介し、収集局へと集められます。
 

図3: データ中継・収集動作画面
<図3: データ中継・収集動作画面>

<図3>に、収集局におけるデータ中継・収集動作の画面を示します。同画面では、4台の無線機による無線網形状と、収集局へと中継・収集されたデータを時系列で確認することができます。

用語 解説

IEEE802委員会

米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っている委員会です。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks: WPAN)の標準化は、IEEE 802.15というワーキンググループ(WG)によって推進されています。本WGには、標準化対象に応じて、以下のとおり複数のタスクグループ(TG)が組織されています。
 
● IEEE 802.15.4   : 低消費電力・低伝送速度のサービスを提供する物理層及びMAC層の標準化を行ったTGです。策定されたIEEE 802.15.4標準規格は、868MHz、902MHz、及び2.4GHz帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps及び250kbpsまでの伝送速度を実現する物理層仕様と、PANと呼ばれる無線網を形成しTDMA又はCSMAによるアクセス制御を行うMAC層仕様を規定しています。
 
●  IEEE 802.15.4g : SUN実現のために、既存のIEEE 802.15.4の物理層仕様の変更を策定しているTGです。IEEE 802.15.4g規格では、このような変更点として、国内スマートメータ用割当ての追加のほか、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が収録されています。
 
●  IEEE 802.15.4e : 上記IEEE 802.15.4g標準規格のような、IEEE 802.15.4の物理層仕様の変更に伴い、必要となるMAC層仕様の変更を策定しているTGです。IEEE 802.15.4e規格では、IEEE 802.15.4gに関連するMAC層変更点として、間欠型省電力通信動作の詳細規定等が収録されています。
 
IEEE 802委員会ホームページ: http://www.ieee802.org/
IEEE 802.15WGホームページ(関連TGへのリンクあり): http://www.ieee802.org/15/
 

NICT開発の小型・省電力無線機

NICTが開発した小型・省電力無線機については、以下のプレスリリースをご参照ください。
プレスリリース: https://www.nict.go.jp/press/2012/03/27-1.html
「スマートメーター用 無線国際標準規格IEEE802.15.4g/4eに準拠!新たな周波数920MHz帯 小型・省電力「無線機」を開発」 (2012年3月27日発表)

物理層

MAC層と同じく、通信機能を階層構造で細分化し表現する概念です。
 物理層とは、電波等の媒体上におけるビット信号転送のための機械的及び電気的な機能を指します。例として、ケーブルのコネクタ形状や、無線信号の変調方式を規定する機能です。

MAC層

物理層と同じく、通信機能を階層構造で細分化し表現する概念です。
 MAC(Medium Access Control)層: 物理層機能の存在を前提とした、通信主体間のアドレスの管理や、媒体の共用のための手法等を規定する機能を指します。例として、通信機器に付加する固有のMACアドレスや、時間差をつけて送信を行う時分割多元接続制御(TDMA: Time Division Multiple Access)等を規定する機能です。

規格認証団体

無線機等の製品が特定規格に適合することを認証し、証明となるシールやロゴ等の発行を認可する団体です。本証明により、ユーザが適合機器を正しく分別し使用することが可能となります。同時に、本証明は、異なるメーカーの無線機間の相互接続性を保証するものです。スマートメータ用無線の規格認証団体は、Wi-SUN(ワイサン: Wireless Smart Utility Network)の名称で、2012年1月24日に設立されました。
Wi-SUNホームページ: http://www.wi-sun.org/

マルチホップ通信

無線機間の一対一の直接通信に対して、第三の無線機によって通信が1回以上中継される通信形態を指します。中継数に応じて、通信の伝達距離は比例的に増大するほか、逆に直接通信の場合と同等の通信距離を、より低い送信電力で実現することも可能です。また、無線電波に対する障害物を回り込むような中継経路の設定によって、電波の不感地帯を解消することもできます。

本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所
スマートワイヤレス研究室

原田 博司、児島 史秀
Tel: 046-847-5074, 5084
E-mail:
E-mail:

取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923 
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