本文へ
文字サイズ:小文字サイズ:標準文字サイズ:大
  • English Top

欧州の木星圏探査機にNICTのテラヘルツ技術が採用

  • 印刷
2015年9月9日

国立研究開発法人 情報通信研究機構

NICT(理事長:坂内 正夫)は、ドイツをはじめとした欧州各国との国際協力のもと、欧州宇宙機構ESAが進める JUICEミッションで、世界で初めてテラヘルツ領域のリモートセンシング技術を用いた木星圏(木星とガニメデ、エウロパ、イオなどの周回氷衛星)における生命探査の実現に取り組むことになりました。木星圏という、地球から太陽までの距離の 5.2倍、月までの距離の2000倍程度も遠い深宇宙を探査するためには、分析に必要となる高い性能と、遠くまで運ぶための小型軽量性、そして木星圏に到達するまで性能を保持している耐久性を併せ持った観測機器が必要になります。
JUICEミッションにおいて、NICTは観測機器の中でも軽量化への要求が厳しい、深宇宙における過酷な環境(太陽からの強烈な放射線や、-180℃という極低温)に耐え得る超小型かつ軽量な高性能テラヘルツアンテナの開発を担当することとなりました。NICTの技術により、通常であれば数kg程度のアンテナが必要となる性能や強靭さを、わずか800g程度の小型軽量なテラヘルツアンテナで実現することで、木星圏にある衛星の大気の成分や、表面の氷の状態を調べ、木星圏における生命の存在の可能性を探査することが初めて可能になりました。
さらに、今回開発するテラヘルツリモートセンシングの小型軽量化技術を応用することにより、人工衛星による地球観測にかかる費用を大幅に削減可能となることが見込まれます。現在では1回の打上げに数百億円かかるような大型の人工衛星により地球観測がなされていますが、大型計算機からパーソナルコンピュータ、さらにスマートフォンに時代が移行したように、多数の小型軽量な衛星を組み合わせることで、宇宙からの多様な地球観測やテラヘルツ大容量衛星通信が実現することが見込まれるためです。これにより、地理情報や気象情報と車データや携帯データ等を組み合わせた利活用が、より低廉かつ手軽に実現することが可能となり、災害に強い社会やスマートシティなど、様々な新たな価値の創造に貢献するものと期待されています。

用語解説

テラヘルツ波

テラヘルツ波は、おおむね0.1~10THz(テラヘルツ)の周波数帯の電磁波を示す。その波長は3mm~30μmであり、電波と光の境界に位置する。テラヘルツは、1秒間に1兆回振動する波の周波数、10の12乗ヘルツ(1012Hz)で、THzと記述する。
テラヘルツ波領域には多くの分子や物質固有のスペクトルが存在し、同時に多数の物質の同定が可能になる次世代の分光分析技術として注目されている。さらに、携帯電話などで使われているUHF帯などと比較して極めて周波数が高い(波長が短い)ため信号送受信器の小型化が可能である。しかし、テラヘルツ波は、これまで未開拓周波数帯の電磁波と呼ばれ、光源やセンサといった要素技術の確立は、ほかの周波数帯の技術に比べて発展途上にあった。

テラヘルツ波

   

本件に関する問い合わせ先

テラヘルツ研究センター

笠井 康子
Tel:042-327-5562
E-mail: