ポイント

  • ■ ネットワーク仮想化技術の一つであるSDN(Software Defined Networking)技術を応用したパケット中継装置を開発
  • ■ 実際のケーブルテレビ基盤も用いた技術実証環境を塩尻市内に構築し実証実験を実施
  • ■ 実証実験項目は、サービスの見える化、ネットワーク品質制御、地域情報サービスの提供の3つ

今回の取り組み

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)総合テストベッド研究開発推進センター、NECネッツエスアイ株式会社、株式会社テレビ松本ケーブルビジョン及び、塩尻市は、ネットワーク仮想化技術の応用によるケーブルテレビの高度化を目指し、ネットワーク仮想化技術の中核技術の一つであるSDN(Software Defined Networking)技術を応用したパケット中継装置を開発し、実際のケーブルテレビ基盤も用いる技術実証環境を塩尻市の協力を得て構築し、実証実験を開始します。
 実証実験では、サービスの見える化、ネットワーク品質制御、地域情報サービスの提供の3つの項目を定め、それぞれ仮想ネットワーク環境を構築し、統合的な制御により動作することを検証します。これらの日本初の試みとなる実証により、地域活性化のためのケーブルテレビ基盤の可能性を示すことを目指します。
  • ■ サービスの見える化:ユーザのサービス利用状況を把握し、より適切なコンテンツ提供、サービス品質管理を行います。
  • ■ ネットワーク品質制御:サービス内容や重要性を考慮した通信量の制御を行い、サービス品質の確保、向上を行います。
  • ■ 地域情報サービスの提供:ケーブルテレビ基盤を用いた自治体や地域住民によるコンテンツの提供、配信を行います。
 本年5月末まで、塩尻市内で仮想ネットワーク環境を構築し、実証実験を行い、データの収集、解析を行います。また、地域情報サービス創出に向けた発展的な取り組みとして、株式会社テレビ松本ケーブルビジョンおよび地域の企業や市民などが参加するアイデアソンの開催を検討しています。
 また、本取り組みで得られた成果と課題を元に、NECネッツエスアイ株式会社がサービスの見える化、及びサービス毎のネットワーク品質制御を可能とするネットワーク基盤の製品化に向けた検討と開発を進めていく予定です。

概要図

概要図
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各協力機関からのコメント

 NECネッツエスアイ株式会社は、本実証実験におけるプロジェクトマネジメント、実行を担います。2014年より開始した国立大学法人東京大学大学院情報学環中尾研究室との共同研究による最新の仮想化技術に基づくFLARE(ネットワーク通信におけるデータ部のプログラム化を可能とするネットワークアーキテクチャ)を活用し、サービスの見える化、及びサービス毎のネットワーク品質制御を可能とする技術を実証することで、将来のケーブルテレビ基盤の革新、ケーブルテレビ業界の発展に寄与してまいります。
 株式会社テレビ松本ケーブルビジョンは、2017年よりFTTH化事業を開始し、BS4K・8K対応をはじめ、IoT分野など先進的なサービスを提供できる情報通信基盤の整備を行っております。塩尻市のFTTH化事業の進捗につきましては、楢川地区を除くエリアが昨年12月に完成し、「ケーブルビジョン2020+」にある将来的なサービスに対応するための最先端の実証実験を行うことが可能となりました。ケーブルテレビが地域の皆様の生活をサポートし、新しいサービスの提供が出来るように本実証実験に取り組んでまいります。
 塩尻市は、2000年から自営の光ファイバー通信網を整備・運用しており、最先端技術の実証実験を行うことのできる環境を有しています。これまで塩尻市は、行政サービスにける情報化に力を入れ、様々な成果を育んできました。本実証実験においては、ケーブルテレビ基盤を用いた果樹農家向け霜注意報の提供、防災・観光用途の映像データの流通に取り組みます。本実証実験の成果を生かし、今後さらに高度な利便性を持った安心安全なスマートシティに進化を遂げるべく果敢に挑んでいきます。

ケーブルテレビについて

 総務省がケーブルテレビの将来について取りまとめた「ケーブルビジョン2020+」では、ケーブルテレビにより、災害情報・地域情報を充実させアクセスを確保することや、放送サービスにおけるレコメンド機能の提供、さらには地域の社会的課題の解決や高効率社会の実現に資するスマートシティ事業への参入など、多様なサービスの実現が期待されています。
 一方で、国内ケーブルテレビの事業者数は504(2018年3月末時点)、設備数は670(2018年3月末時点)※と数が多く、各地域において比較的小規模な事業者により運営されています。そのため、設備の大幅な増強や、サービス管理コストの上昇を抑えつつ高度化を実現することが求められています。
 そうした背景のもと、近年期待され、実際に導入が進みつつあるのがネットワーク仮想化技術です。従来、異なるサービスを複数提供するためには、個々に基盤を構築する必要があり、コストの増大が障壁となっていました。ネットワーク仮想化技術は、多様なサービスが個々に要求するリソースについて、共通のネットワーク基盤内で確保しつつ、それぞれのサービスに対して仮想的に独立して提供する技術です。そのため、基盤コストが軽減され、さらにはそれらのサービスの管理運用を統合するができ、サービスの多様化に柔軟に対応することができるようになります。NICTでは、このネットワーク仮想化技術の実用化に向け、テストベッドを構築するとともに、様々な実証を通じて検証を行っています。
総務省「ケーブルテレビの現状」2018年7月発行より

本件に関する問い合わせ先

NICT総合テストベッド研究開発推進センター
テストベッド研究開発運用室

河合 栄治

Tel : 042-327-6024

E-mail: catv-sdnアットマークml.nict.go.jp

NECネッツエスアイ株式会社
CSRコミュニケーション部 コーポレートコミュニケーショングループ

Tel : 03-6699-7007

E-mail: contactアットマークdm.nesic.com

テレビ松本ケーブルビジョン株式会社
技術部 光回線整備課

神戸 直樹

Tel: 0263-35-1008

E-mail: techアットマークtvm.co.jp

塩尻市役所
企画政策部 情報政策課

金子 春雄

Tel: 0263-52-0659

E-mail: johoアットマークcity.shiojiri.lg.jp