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ギガビットクラスの超広帯域映像通信をオンデマンドに利用できる技術を開発、広域実験に成功

〜 映像通信アプリケーションと協調する光IPネットワーク制御・測定技術をSC09にて動態展示 〜

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2009年11月11日

日本電信電話株式会社(以下NTTという。代表取締役社長:三浦 惺)は、ギガビットクラスの超広帯域映像通信をオンデマンドに利用できる技術を世界に先駆けて研究開発しました。

また、NTTと独立行政法人情報通信研究機構(以下NICTという。理事長:宮原秀夫)は共同で、1.5Gbit/sの超広帯域映像通信を用いた本技術の広域実験に成功しました。本研究開発の成果により、利用者はHDTV品質の高精細映像の伝送などでネットワークを利用する際に、これまでのようにネットワーク資源の確保や経路の切り替えの事前調整を行うことなく、好きなときに自由に経路を確保し安定した通信を行うことが可能となります。

本実験は、NTTの研究開発用テストベッドネットワーク「GEMnet2」及びNICTの「JGN2plus 」を用いて広域実験網を構築して実施しました。さらに、2009年11月14日から米国ポートランドで開催されるSC09 では、展示会場と国際回線を用いて接続し、日米間で公開実験を実施する予定です。

なお、この成果の一部はNICTの委託研究「ダイナミックネットワーク技術の研究開発」によるものです。

背景

NTT研究所は、これまでに、映像ストリームをIPネットワーク上に伝送することができる非圧縮映像伝送技術i-Vistoを開発してきました。しかしながら、非圧縮映像はギガビットを超える帯域を必要とするため、事前に広帯域回線の経路やネットワーク資源の確保の調整が必要であり、即時利用は困難でした。(図1

また、超広帯域映像通信を安定的に行うには、映像パケットの伝送の振る舞いを多地点で高精度に観測し、品質劣化を防ぐ対策を施すことが必要です。しかしながら、従来は高価な専用機器が必要になるため、多地点に専用機器を配置して観測することが困難でした。

今回の成果

光ネットワーク技術を取り入れた高速IPネットワーク(光IPネットワーク)において、ギガビットを超える超広帯域映像通信の迅速かつ安定的な伝送を実現するための基盤技術を開発しました。これは、利用者の映像通信要求に応じて光IPネットワーク内の経路を自動的に確保し、オンデマンドに大容量回線を開設することを可能とする技術と、映像通信の安定的な制御を行うためにネットワーク内での映像劣化の原因となる映像パケットの振る舞いの微細な変化を観測する機器を低価格なPCで実現し、多地点で観測する技術で構成されます。(図2

さらに、本成果を実証するため、広域実験網を構築し、非圧縮HDTV映像の伝送実験に成功しました。今回の成功は、超広帯域映像通信の普及に向けた前進を示す成果といえます。

今後の展開

本成果の普及に向け、放送業界等のハイエンドユーザの利用を目指し、ネットワークとアプリケーションの更なる協調による適応制御などの機能拡充を図る予定です。将来的には遠隔医療・教育等、高精細映像の利用価値が高いシーンへの展開を目指します。

参考

図1:これまでのネットワーク資源確保の流れ
図1:これまでのネットワーク資源確保の流れ



図2:本技術において実現されるネットワーク資源確保の流れ
図2:本技術において実現されるネットワーク資源確保の流れ

用語解説

HDTV

高精細テレビジョン(High Definition TeleVision)の略。今回の実験で用いた映像は、1920x1080解像度、毎秒60フィールドのインターレース映像方式。放送業務用の非圧縮の映像インターフェース(HD-SDI)信号は約1.5Gbit/sの帯域を持つ。

GEMnet2

NTTの研究所が運用する研究用テストベッドネットワーク。

JGN2plus

NICTが運用する超高速・高機能研究開発テストベッドネットワーク。

SC09

高速コンピューティング及びネットワーキングに関する世界有数の国際会議。2009年11月14日から20日まで、米国オレゴン州ポートランドで開催予定。

i-Visto

IPネットワーク技術を用いて4KやHDTVの映像を非圧縮のままリアルタイム伝送可能な装置。映像素材を非圧縮のまま扱えるため、映像符号化による品質劣化や処理遅延がないのが特徴。

光IPネットワーク

光IPネットワークは、光レイヤとIPレイヤのネットワーク資源を一元的に管理する革新的なバックボーン網。光IPネットワークでは、IPネットワーク内のIPルータ同士を大容量の光回線で接続することで、大容量回線を開設することが可能。また、IPネットワーク内の輻輳や故障が発生した場合に、光回線をダイナミックに切り替えることで、IPネットワークトポロジをダイナミックに再構成し、ユーザの通信品質を飛躍的向上することが可能

基盤技術

(1) ストリーム指向のユーザ主導型ネットワーク制御技術(図2)
超広帯域映像通信経路をユーザ起動によりダイナミックに確立する技術。超広帯域映像通信を行うユーザアプリケーションが、光ネットワーク技術を取り入れた高速IPネットワークを制御する装置と協調動作することで、ギガビットクラスの通信経路をオンデマンドで確立する。ネットワークの混雑時には、光回線の切り替えによりIPネットワークトポロジをダイナミックに再構成し、超広帯域映像通信を効率的に収容できるように最適化する。
 
(2) 協調型高精度ストリーム品質測定技術(図2)
汎用PCベースのネットワーク品質測定装置(PRESTA 10G)を開発した。本装置は10Gbit/sネットワークを流れる映像ストリームの品質をマイクロ秒精度の解像度で測定するもので、光スプリッタを使用して本装置をネットワーク経路の途中に設置し、ネットワークを流れるパケットを観測することで、映像劣化の原因となる映像パケットのストリ-ム品質(遅延、ジッタ、等)の微細な変化を測定することが可能。

 

本件に関する 問い合わせ先

NTT情報流通基盤総合研究所企画部

広報担当 池田
Tel:0422-59-3663
E-mail:

取材依頼及び広報 問い合わせ先

独立行政法人 情報通信研究機構

総合企画部 広報室 報道担当 廣田
Tel:042-327-6923
Fax:042-327-7587
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