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超高速位相変調信号発生技術の開発に成功

〜 次世代超高速データ通信を支えるキーデバイス 〜

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2009年12月10日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)新世代ネットワーク研究センター・先端ICTデバイスグループと、住友大阪セメント株式会社(以下「SOC」という。社長:渡邊 穰)は共同で、100ギガビット毎秒(Gbps)を超える超高速光位相変調(PSK)信号を発生させる技術の開発に成功しました。単一の光チャンネル、単一偏波での位相変調の伝送速度としては世界最高レベルであり、開発や標準化が活発化している100Gbpsネットワークの次の世代を担う技術です。

なお、住友大阪セメント株式会社における今回の研究成果の一部は、NICTの委託研究「直交位相制御を用いた高効率光波信号発生技術の研究開発」によるものです。 

背景

インターネット動画配信やクラウドコンピューティングの普及によって通信量は急増しており、光の多値変調技術と光の偏波多重化技術を用いた次世代の100Gbps基幹光ネットワークシステムが開発され、実用化されようとしています。今後の高解像度映像配信などの新しいサービスの普及や、さらなる大容量通信へのニーズに対応するには、超高速のデータ伝送用デバイスや信号発生技術が必要不可欠であり、NICTとSOCは共同でその開発を進めてきました。

なかでも、光位相(光を波としてみたときの振動のタイミング)を変化させる光位相変調技術は注目を集めており、一部実用化も始まっています。変調器はファイバを伝わる光信号を発生させる役割を担っており、データ伝送能力を左右する重要なデバイスです。

今回の成果

これまでにNICTとSOCは共同で高速動作可能な位相変調器を開発し、世界最高速度の光周波数シフトキーイング(FSK)や世界最高速度DQPSK変調信号発生を実証してきました。従来は、50Gbps以上の信号での超高速駆動は、変調器の材料や部品に起因する問題などのため困難でした。今回、構造の工夫などにより、従来に比べ、大幅に広帯域かつ低電圧駆動が可能な位相変調器を開発しました。これを用いて、単一の光チャンネル、偏波において、データレート100Gbps(50Gbps電気信号での駆動)のDQPSK光信号の発生や、100Gbps(100Gbps電気信号での駆動)のBPSK光信号の発生などを実現しました。

これらの伝送速度は、世界最高レベルのものであるとともに、偏波多重化技術などと併用すれば、200Gbps以上の光信号発生が可能であることから、100Gbpsネットワークの次の世代を担う技術として期待されています。

なお、DQPSK光信号に関する成果は、2009年8月20日に開催された電子情報通信学会・光エレクトロニクス研究会で発表し、BPSK光信号発生に関する成果は2009年9月20日から24日までオーストリアのウィーンで開催された欧州光通信国際会議(ECOC 2009)において発表いたしました。

また、今秋から、SOCは100Gbps DQPSK変調器のサンプル出荷を開始しました。

今後の展開

今回開発した高速位相変調は、BPSK信号やDQPSK信号をはじめ、多様な光信号を低消費電力で高速化するための基本技術となるものです。社会に貢献することを目指し、今後のネットワークの大容量化、省電力化を支える技術として、実用化への開発と普及を進めます。

参考文献

[1]
菅野敦史、坂本高秀、千葉明人、川西哲也、日隈薫、須藤正明、市川潤一郎:"100Gb/s超伝送に向けた超高速LiNbO3光変調器の開発"、電子情報通信学会技術研究報告、Vol.109、No174、pp.13-16、OPE2009-76、仙台、2009年8月20日~21日


[2]
Atsushi Kanno, Takahide Sakamoto, Akito Chiba, Tetsuya Kawanishi, Kaoru Higuma, Masaaki Sudo, Junichiro Ichikawa, "High-speed DBPSK signal generation by low-Vπ modulator using thin LiNbO₃ substrate", European Conference on Optical Communication (ECOC 2009), P2.09, Vienna, Sep. 2009.

補足資料

信号発生試験の資料
高速位相変調器(100GbpsDQPSK変調器)の外観
高速位相変調器(100GbpsDQPSK変調器)の外観

2つの光干渉計が並列に集積されている。左のピンは各干渉計の動作状態を制御するための電圧を印加するためのもの。各干渉計は2つの光路を持ち、合計4つの光路が並列する。右の4つのコネクタにはそれぞれの光路の位相を高速で制御するための信号を印加する。

ご参考:住友大阪セメント(株)
WEB掲載カタログのURL
http://www.soc.co.jp/service/optical/ln/


100Gb/s BPSK信号の例
100Gb/s BPSK信号の例

光干渉を利用した復調器で得られた波形。横軸一目盛りが7ps、各ビット間は10psである。良好な波形が得られていることがわかる。


用語解説

ギガビット毎秒(Gbps)

データ伝送、処理の速度を表す指標。ビット(bit)は0/1でデジタル化された情報の最小単位。ギガビットは10億ビットに相当。現在、基幹光ネットワークで広く利用されている伝送速度10ギガビット毎秒(Gbps)は1秒に10ギガビット伝送もしくは処理する能力を意味する。本試験ではその10倍に相当する100ギガビット毎秒を達成。その1ビットの長さは10ギガビット毎秒時の1/10である10ピコ秒に相当する。

変調技術

光通信では、光の3つの要素:振幅(明るさ)、位相(タイミング)、周波数(色、波長とも同義)のいずれかを変化させることで信号を表現するが、その変化を行う方法のこと。

光周波数シフトキーイング(FSK)

周波数を切り替えることで情報を伝送する方式。光パケットシステムでのラベル信号発生に利用可能。高速大容量伝送にも適している。

DQPSK(差動4値位相シフトキーイング)

位相偏移変調(PSK)の一種で隣り合うタイミングの光信号間の位相を4通りに変化させることで一度に2ビットの信号を安定に伝送できる。伝送路通過する際の信号歪に対する耐力、帯域の効率性に優れている。

BPSK(二値位相変位変調)

位相を切り替えることで情報を伝送する方式。位相を二通りに変化させるものを二値位相変位変調(BPSK)という。超長距離伝送に適しているとされる。信号検出に光の波動性を利用した方法が必要で、レーザの安定性が要求される。



本件に関する 問い合わせ先

新世代ネットワーク研究センター
先端ICTデバイスグループ

菅野 敦史、川西 哲也
Tel:042-327-7490

住友大阪セメント株式会社
光電子事業部 営業グループ

織戸 敏弘
Tel:03-5211-4844

報道関係 問い合わせ先

独立行政法人情報通信研究機構
総合企画部 広報室

報道担当 廣田 幸子
Tel:042-327-6923
E-mail:

住友大阪セメント株式会社

総務部 IR広報グループ
木股 仁司
Tel:03-5211-4964