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スマートメーター用通信標準規格「ECHONET Lite」及び「Wi-SUN」を搭載した小型・省電力“無線機”の開発に成功

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2013年5月23日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)は、スマートハウスにおいて設置されるスマートメーターや各種家電機器と宅内エネルギー管理システム(HEMS)を接続するための通信規格である、HEMSアプリケーション用国際標準通信規格「ECHONET Lite」 及び 国際無線標準通信規格「Wi-SUN」の両規格を搭載した“無線機”の開発に世界で初めて成功しました。この無線機は、ECHONET Lite 規格を制定するエコーネットコンソーシアムが規定した規格適合性認証審査に合格し、Wi-SUNに対応したECHONET Lite機器として初めて認証登録されました。

今回の開発の成功により、NICTが主導的に規格化を行ってきたWi-SUN 規格が、ECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェースとして商用に十分耐えうることが証明されたとともに、両規格を基にしたスマートメーターの開発がますます加速していくものと期待されます。

なお、この無線機は、「ワイヤレス・テクノロジー・パーク2013」(5月29日(水)~31日(金)東京ビッグサイトにて開催)で展示する予定です。

背景

昨今、宅内やビル内の機器の運用状態や消費電力等を管理・制御し、人にも自然にも優しい環境作りを実現する「スマートハウス」、「スマートビル」に関する研究開発、実用化が進められています。スマートハウスやスマートビルにおいては、電気事業者やガス事業者が提供するスマートメーターや各種家電機器がHEMS(家庭用エネルギー管理システム)、BEMS(ビル用エネルギー管理システム)に無線等により接続され、検針やエネルギーの管理・制御が行われることが想定されています。

このHEMS/BEMSアプリケーション用国際標準通信規格として、エコーネットコンソーシアムが策定したECHONET Lite規格があります。この規格は、電気事業者が次世代スマートメーター用アプリケーション通信標準規格として採用していますが、主にアプリケーション層に関する通信規格であり、トランスポート層ネットワーク層データリンク層物理層といった、いわゆる下位層と呼ばれる部分の規定がされていなかったので、NICTでは、この下位層の規格を米国電気電子学会IEEE802.15.4g/4eをベースに国内外30社と共にWi-SUNアライアンスを通じて策定してきました。このWi-SUN規格は、一般社団法人 情報通信技術委員会(TTC)で制定したECHONET Lite向けホームネットワーク通信インタフェース規格である標準規格JJ-300.10に標準方式として採択され、電気事業者が公開したスマートメーター用推奨通信仕様としても採用されています。しかし、この標準規格に準拠し、かつ エコーネットコンソーシアムが規定した規格適合性認証審査に合格した無線機の開発例は、これまでありませんでした。

今回の成果

今回NICTは、Wi-SUNアライアンスから提案され国内標準として制定されたTTC JJ-300.10規格(方式A及び方式C)に準拠し、かつECHONET Lite規格を搭載した“無線機”を開発しました。この無線機をスマートメーターや家電機器、HEMS、BEMSに組み込むことにより、家電機器の制御等を行うことができるだけでなく、エネルギー管理を無線で容易に行うことができます。また、IP(IPv6、6LoWPAN)及びnon-IPにも対応した機能が搭載されるため、利用者の想定する各種ネットワークに柔軟に対応することが可能です。さらに、この無線モジュールは、エコーネットコンソーシアムが規定した規格適合性認証審査に合格しています。

今後の展望

今回開発した無線機は、ECHONET Lite規格(アプリケーション層)にWi-SUN規格(ネットワーク層など)の機能を初めて実装し、かつエコーネットコンソーシアムの審査に合格していることから、近い将来、商用につながると期待されます。NICTは、今後も、規格認証団体「Wi-SUN」仕様に準拠し、電気事業者・ガス事業者の仕様に対応したスマートメーター/HEMS /BEMS向けの無線機の研究開発を行うとともに、開発品(ハード・ソフト)の技術移転を推進していきます。

補足資料

無線機の利用イメージ 及び 開発した無線機の概要
<図1: 今回開発した無線機の利用イメージ>
<図1: 今回開発した無線機の利用イメージ>



開発した無線機は、家庭内に設置される次世代スマートメーター、宅内エネルギー管理システム(HEMS)、各種家電機器に取り付けられます。そして、各種家電、HEMS、スマートメーターの間で通信することにより、家庭内のエネルギー消費の管理・制御を行います。


<図2: 今回開発した無線機>左:無線機の外観、右:無線機内部の無線モジュール)
<図2: 今回開発した無線機> (左:無線機の外観、右:無線機内部の無線モジュール)



<表1: 無線機諸元>
無線モジュールサイズ 84mm×70mm×20mm (アンテナ部を除く)
周波数帯 926.2 ~ 928.0 MHz
変調方式 Filtered-2FSK( TTC JJ-300.10 (方式A,方式C) 準拠)
伝送速度 50, 100, 200kbps
物理層ペイロード長 0~2047オクテット (1オクテット=8ビット)
MAC層方式 TTC JJ-300.10 (方式A,方式C) 準拠
上位層方式 IPv6/6LowPAN/UDP ( TTC JJ-300.10 (方式A,方式C) 準拠)



<図2><表1>に、開発した無線機の概要を示します。
無線機自身は、ネットワーク側がIPv6対応であっても、IPに対応していない場合でも利用でき、通信を行うことができる小型無線機です。無線機はWi-SUN Profile for ECHONET Lite (version 1)と呼ばれる相互接続可能な無線通信仕様を書いたドキュメントの内容に準拠しています。このドキュメントは、日本ではTTCにおいてJJ-300.10(方式A、方式C)の形で標準化がされています。

用語 解説

HEMSアプリケーション用国際標準通信規格 「ECHONET Lite」

ECHONET Lite(エコーネットライト)は、エコーネットコンソーシアムが策定したHEMS(宅内エネルギー管理システム)アプリケーション用標準通信プロトコルである。ISO規格及びIEC規格として国際標準化されており、2012年2月24日、経済産業省により、スマートメーターや家庭内機器と HEMSをつなぐ日本国内での標準プロトコルとして推奨された。

国際無線標準通信規格「Wi-SUN」

Wi-SUNアライアンス(2012年1月24日設立)がIEEE802.15.4g規格をベースに利用モデルに応じて策定している規格。日本の920MHz帯無線を対象とした規格が策定されている。Wi-SUNアライアンスでは、Wi-SUNを利用する無線機等の製品に対し、メーカー間の相互接続性について認証している。NICTはWi-SUNアライアンスのプロモータ(理事会)及び創設メンバーであり、現在、Wi-SUNアライアンスでは、ECHONET Lite用無線通信仕様を記載したWi-SUN Profile for ECHONET Liteを供給している。

トランスポート層

アプリケーションからの要求に合わせ、データ転送のための信頼性を確保するための方式を規定する。主な方式としては、TCP・UDP等がある。

ネットワーク層

トランスポート層が決めた信頼性を確保するための方式を用い、ネットワーク間の通信を行うための方式を規定する。主な方式としてはIP(インターネット・プロトコル)がある。

データリンク層

ネットワーク層が決めた方式に基づき、直接ネットワークで接続されている機器間の通信方式を規定したもの。

物理層

ネットワークの物理的な伝送、接続方式を規定したもの。例として、ケーブルのコネクタ形状や、無線信号の変調方式を規定する機能がある。

IEEE802委員会

米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronic Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っている委員会。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks; WPAN)の標準化は、IEEE 802.15というワーキンググループ(WG)によって推進されている。本WGには、標準化対象に応じて、以下のとおり複数のタスクグループ(TG)が組織されている。

▶ IEEE 802.15.4:低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するための物理層及びMAC層の標準化を行ったTG。策定されたIEEE 802.15.4標準規格は、868MHz、902MHz、及び2.4GHz帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps、及び250kbpsまでの伝送速度を実現する物理層仕様と、PANと呼ばれる無線機群を形成し、TDMAあるいはCSMAによるアクセス制御を行うMAC層仕様を規定している。
▶ IEEE 802.15.4g:SUN(Smart Utility Networks)実現のために、既存のIEEE 802.15.4の物理層仕様の変更を策定しているTG。 IEEE 802.15.4gドラフト最終版では、このような変更点として、国内スマートメーター用割当ての追加のほか、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が収録されている。
▶ IEEE 802.15.4e:上記IEEE 802.15.4g標準規格のような、IEEE 802.15.4の物理層仕様の変更に伴い、必要となるMAC層仕様の変更を策定しているTG。 IEEE 802.15.4eドラフト最終版では、IEEE 802.15.4gに関連するMAC層変更点として、間欠型省電力通信動作の詳細規定等が収録されている。

IEEE 802委員会ホームページ
IEEE 802.15WGホームページ(関連TGへのリンクあり)
NICTは、IEEE802.15.4gにおいて副議長及びテクニカルサブエディタとして貢献するとともに、主要コントリビュータとして当該標準化策定に寄与してきた。



本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所 
スマートワイヤレス研究室

原田 博司、児島 史秀
Tel: 046-847-5074、 046-847-5084
E-mail:
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取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel:042-327-6923
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