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国際無線通信規格「Wi-SUN」が次世代電力量計「スマートメーター」に無線標準規格として採用

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2013年10月3日

独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長: 坂内 正夫)が現在まで主導的に研究開発・標準化推進を行ってきた国際無線通信規格「Wi-SUN」が、このほど東京電力株式会社が整備予定の次世代電力量計「スマートメーター」用無線通信方式として採用されました。今後、この「Wi-SUN」規格が、スマートメーターと宅内エネルギー管理システムとの間のエネルギー管理アプリケーション用国際標準通信規格「ECHONET Lite」に対応した通信方式として各種無線機器に組み込まれ、企業や家庭内の効率的なエネルギー管理に利用されることになります。

背景

スマートハウス/ビルにおいては、宅内エネルギー管理システムと次世代電力量計「スマートメーター」や電気機器が通信することにより、エネルギー管理・制御を行います。このエネルギー管理アプリケーション用国際標準通信規格として、エコーネットコンソーシアムが策定した「ECHONET Lite規格」があります。しかし、この規格は、セッション層・プレゼンテーション層・アプリケーション層に関する通信規格であり、トランスポート層ネットワーク層データリンク層物理層といったいわゆる下位層と呼ばれる実通信に係る方式は規定されていませんでした。
そこで、NICTは、この下位層に係る無線機の研究開発を行うとともに、その成果の国際規格化、普及を目指して、これまでに主に以下のような活動を行ってきました。

● 2012年1月:「Wi-SUNアライアンス」を設立(2013年9月現在、国内外35社加盟)
「ECHONET Lite規格」のアプリケーションに対応した国際無線標準通信規格「Wi-SUN」を策定
・「Wi-SUNアライアンス」は、IEEE802.15.4g規格をベースにした相互接続を有する無線通信規格の策定、普及を目的とした業界団体。NICTは、同アライアンスの設立メンバーであり、かつ、理事会共同議長に就任
・この「Wi-SUN」規格は、一般社団法人 情報通信技術委員会(TTC)においてECHONET Lite向け下位層通信インタフェース規格JJ-300.10としても採択されている。
● 2012年3月: 下位層に係る「無線機」の研究開発を実施、小型・省電力無線機の開発に成功  ※1過去の報道発表
● 2012年5月: 開発した無線機の通信仕様を、米国企業4社との連携により、スマートメーター用無線国際規格IEEE802.15.4gとして標準化 (NICTは副議長) ※2過去の報道発表
● 2013年5月: ECHONET Lite 及び Wi-SUN規格搭載の「無線機」の開発に成功 ※3過去の報道発表

今回の成果

このほど、「Wi-SUN」規格が、東京電力株式会社により整備予定のスマートメーターと企業や家庭内にある宅内エネルギー管理システムとの間(いわゆるBルート)の無線通信方式として採用されることが、9月30日(月)東京電力株式会社により明らかにされました。
本策定の重要な諮問機関であり、スマートコミュニティインフラの国内及び国際的な普及を進めているスマートコミュニティアライアンス(JSCA) スマートハウス・ビル標準・事業促進検討会HEMS-TFでの審議においては、
  (1) 設置するスマートメーターにあらかじめBルート対応を実現すること
  (2) 公知で標準的な通信方式を採用すること
  (3) 相互接続性を確保すること
などが挙げられていますが、「Wi-SUN」規格は、国際標準規格IEEE802.15.4g/4e 及び IPv6にも対応し、無線機器間の相互接続性が高く、暗号化、認証方式も十分検討されたものになっています。今後、この「Wi-SUN」規格の無線機が家庭内、企業内のスマートメーターに搭載されていくことになります。

今後の展望

今回の「Wi-SUN」規格の採用に合わせ、NICTでは、規格適合性及び相互接続性試験用測定器の開発を民間測定器ベンダと行います。さらに、相互接続性や互換性や検証を行う相互接続試験を積極的に主催、参加し、今後もこの「Wi-SUN」規格を安定して動作させるための活動を積極的に推進することで、企業や家庭内の効率的なエネルギー管理の実現に貢献していきます。



過去の報道発表

「スマートメーター用無線国際標準規格IEEE802.15.4g/4eに準拠!新たな周波数920MHz帯 小型・省電力「無線機」を開発」
「スマートメーター用無線国際標準規格IEEE 802.15.4g が正式発効 ~国際企業間連携により、スマートグリッド技術の相互運用推進と新機軸創出を図る~」
「スマートメーター用通信標準規格「ECHONET Lite」及び「Wi-SUN」を搭載した小型・省電力“無線機”の開発に成功」



参考:無線機の利用イメージ

Bルートで使用するWi-SUNプロトコルスタック
Bルートで使用するWi-SUNプロトコルスタック

無線機は、家庭内に設置される次世代スマートメーター、宅内エネルギー管理システム(HEMS)、各種家電機器に取り付けられます。そして、各種家電とHEMS、HEMSとスマートメーターとの間で通信することにより家庭内のエネルギー消費を監視し、制御を行います。



用語 解説

国際無線標準通信規格 「Wi-SUN」

Wi-SUNアライアンス(2012年1月24日設立)がIEEE802.15.4g規格をベースに利用モデルに応じて策定している規格。日本の920MHz帯無線を対象とした規格が策定されている。Wi-SUNアライアンスでは、Wi-SUNを利用する無線機等の製品に対し、メーカー間の相互接続性について認証している。NICTはWi-SUNアライアンスのプロモータ(理事会)及び創設メンバーであり、現在、Wi-SUNアライアンスでは、ECHONET Lite用無線通信仕様を記載したWi-SUN Profile for ECHONET Liteを供給している。

HEMSアプリケーション用国際標準通信規格 「ECHONET Lite」

ECHONET Lite(エコーネットライト)は、エコーネットコンソーシアムが策定したHEMS(宅内エネルギー管理システム)アプリケーション用標準通信プロトコルである。ISO規格及びIEC規格として国際標準化されており、2012年2月24日、経済産業省により、スマートメーターや家庭内機器とHEMSをつなぐ日本国内での標準プロトコルとして推奨された。

トランスポート層

アプリケーションからの要求に合わせ、データ転送のための信頼性を確保するための方式を規定する。主な方式としては、TCP・UDP等がある。

ネットワーク層

トランスポート層が決めた信頼性を確保するための方式を用い、ネットワーク間の通信を行うための方式を規定する。主な方式としてはIP(インターネット・プロトコル)がある。

データリンク層

ネットワーク層が決めた方式に基づき、直接ネットワークで接続されている機器間の通信方式を規定したもの。

物理層

ネットワークの物理的な伝送、接続方式を規定したもの。例として、ケーブルのコネクタ形状や、無線信号の変調方式を規定する機能がある。

IEEE802委員会

米国の電気・電子技術の学会であるIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)内で、LAN等の規格策定を行っている委員会。このうち、無線パーソナルエリアネットワーク(Wireless Personal Area Networks; WPAN)の標準化は、IEEE 802.15というワーキンググループ(WG)によって推進されている。本WGには、標準化対象に応じて、以下のとおり複数のタスクグループ(TG)が組織されている。

▶ IEEE 802.15.4:低消費電力・低伝送速度のサービスを提供するための物理層及びMAC層の標準化を行ったTG。策定されたIEEE 802.15.4標準規格は、868MHz、902MHz、及び2.4GHz帯を用いて、それぞれ20kbps、40kbps、及び250kbpsまでの伝送速度を実現する物理層仕様と、PANと呼ばれる無線機群を形成し、TDMAあるいはCSMAによるアクセス制御を行うMAC層仕様を規定している。
▶ IEEE 802.15.4g:SUN(Smart Utility Networks)実現のために、既存のIEEE 802.15.4の物理層仕様の変更を策定しているTG。 IEEE 802.15.4gドラフト最終版では、このような変更点として、国内スマートメーター用割当ての追加のほか、変調方式の追加、周波数帯の拡張、データサイズの拡張等が収録されている。
▶ IEEE 802.15.4e:上記IEEE 802.15.4g標準規格のような、IEEE 802.15.4の物理層仕様の変更に伴い、必要となるMAC層仕様の変更を策定しているTG。 IEEE 802.15.4eドラフト最終版では、IEEE 802.15.4gに関連するMAC層変更点として、間欠型省電力通信動作の詳細規定等が収録されている。

IEEE 802委員会ホームページ: http://www.ieee802.org/
IEEE 802.15WGホームページ(関連TGへのリンクあり): http://www.ieee802.org/15/
NICTは、IEEE802.15.4gにおいて副議長及びテクニカルサブエディタとして貢献するとともに、主要コントリビュータとして当該標準化策定に寄与してきた。

スマートコミュニティアライアンス(JSCA)

スマートメータシステム等の社会インフラを包含する「スマートコミュニティ」の国内及び国際的な普及推進を目的として設立された団体。業界の垣根を越えた官民一体型の活動を通じて、国際展開のための行政ニーズの集約、障害等の克服、公的資金の活用に関わる情報共有を行っている。



本件に関する 問い合わせ先

ワイヤレスネットワーク研究所
スマートワイヤレス研究室

原田 博司、児島 史秀
Tel: 046-847-5074、 046-847-5084
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広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel:042-327-6923
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