本文へ
文字サイズ:小文字サイズ:標準文字サイズ:大
  • English Top

対災害SNS情報分析システム「DISAANA」(ディサーナ)をWeb上に試験公開

  • 印刷
2014年11月5日

独立行政法人 情報通信研究機構

ポイント

    • Twitterに投稿された災害関連情報を自動分析し、平易な質問に回答するシステムを試験公開
    • 東日本大震災直後1ヶ月間に投稿された日本語全ツイート約6.5億件への質問が可能

NICTは、耐災害ICT研究センター及びユニバーサルコミュニケーション研究所において開発を行っている対災害SNS情報分析システム「DISAANA(ディサーナ)」(DISAster-information ANAlyzer)を11月5日からWeb上に試験公開します。DISAANAは、一般の方々から、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)Twitterに日本語のテキストとして投稿された災害関連情報を自動的に分析し、「宮城県で孤立しているのはどこ?」といった質問に対する回答の候補を与えるシステムです。今回公開するシステムは、Twitter社の研究公募プログラムであるTwitter Data Grantsの採択を受けて、Twitter社から提供された東日本大震災直後の1ヶ月間(2011年3月11日~4月11日)の投稿(ツイート)のうち、日本語の全ツイート約6.5億件を対象としたものです。DISAANAのURLは以下のとおり
http://disaana.jp(このURLはどなたでも無料でお使いいただけます。)

背景

東日本大震災では、Twitter等のSNS上に有用な情報が投稿される一方で、それらの情報を利活用できる分析・検索手段が充分ではなく、また、デマなどによる混乱もあり、一般には検索するのが容易ではありませんでした。従来のキーワード等による検索では、検索した結果から膨大な量のツイートを読んで内容を確認しなければ、必要な情報を得られませんでした。そこで、NICTは、これらのSNS上に存在する有用な災害情報を迅速に分析し、被災者はもとより、復旧、救援活動等に対しても有用な情報を提供できるシステムを研究開発してきました。

今回の成果
今回試験公開するDISAANAの表示例
今回試験公開するDISAANAの表示例
[画像クリックで拡大表示]

このたび、NICTは、災害時にSNS上にあふれる膨大な災害関連情報に対して、平易な質問を入力するだけで有用な情報を容易に取得できるシステムを開発し、Web上に公開します(http://disaana.jp)。
このシステムでは、東日本大震災直後1ヶ月間に投稿されたすべての日本語ツイートに対して、自由に質問をし、回答候補を取得することができます。例えば、「宮城県で何が不足していますか」という質問を入力すると、様々な表現の違いを考慮してあらゆる回答候補を抽出し、それらをカテゴリー別にわかりやすく表示します。
さらに、回答候補の抽出元ツイートと矛盾する内容のツイートを自動的に特定する機能があります。例えば、「~が不足している」⇔「~はある」、「昆布が放射能に効く」⇔「昆布が放射能に効くのはデマ」などの相反するツイートを概観できます。これにより、救援活動において、問題が既に解決されているかどうかの判定や、デマなどの情報の信ぴょう性の判断の材料とすることができます。また、エリアを指定するだけで、そのエリアの問題や要望を列挙し、それらのツイートとその対応策と思われるツイートを概観できるため、特定エリアの被災状況を概観しやすくなります。

今後の展望

今後は、ツイートをリアルタイムで分析し、将来の可能性として、大規模災害の被災状況の即時確認や救援活動で実際に活用できる、更にバージョンアップしたDISAANAのリアルタイム分析システムを平成26年度中に公開すべく開発を進めていきます。



補足資料

今回試験公開するDISAANAの概要
図1:DISAANAの表示画面イメージ
図1:DISAANAの表示画面イメージ
[画像クリックで拡大表示]

今回開発されたDISAANAは、キーワードによる検索エンジンとは異なり、例えば、図1のように、「宮城県で何が不足していますか」という質問を入力すると、様々な表現の違いを考慮して、意外なもの、あるいは想定外なものまで含む回答候補を抽出し、わかりやすく表示します。「宮城県で何が不足していますか」という質問に対しては、「~が不足している」という表現だけでなく、「~が枯渇している」「~がない」のように表記上は異なるものの、意味がほぼ同一の表現も手がかりとすることで、回答候補を幅広く抽出します。これによって、被災地で必要な救援物資を容易に特定できます。また、回答候補を含むツイートで地名が言及されている場合には、その地点を地図上に表示することもでき、これによって、救援物資を送るべき場所の特定も容易になります(図2参照)。

図2:「宮城県のどこで炊き出しをしていますか」という質問に対する地図表示出力の例
図2:「宮城県のどこで炊き出しをしていますか」という質問に対する地図表示出力の例
[画像クリックで拡大表示]


図3に示すように、例えば、「仙台市で何が不足しているか」の回答候補として「ミルク」が注意を促すマークとともに出力されるとき、回答候補の抽出元ツイートとそれに矛盾するツイートを確認できます。ミルクが不足している問題のツイート(「仙台市で…ミルクがとにかく不足している…」)と、その問題が解決されたと考えられるツイート(「仙台市…ミルクは物資あるみたいで良かった…」)の両方を確認できるので、既に解決された問題の判定に役立てるなど、救援活動を効率化することが期待できます。
また、「放射能に効くのは何ですか」といった質問に対しては、デマに基づいた回答候補が多く出力されますが、「昆布」という回答候補の抽出元ツイート(「昆布が放射能に効く」)とそれに矛盾するツイート(「昆布が放射能に効くというデマがある」)を確認することで、デマによる回答候補の信ぴょう性を判断する材料とすることもできます。

図3:矛盾ツイートの表示例
図3:矛盾ツイートの表示例
[画像クリックで拡大表示]

さらに、特定のエリアを指定するだけで、そこで挙がっている災害関連の問題を自動的に抽出し、出力することも可能で、特定エリアの状況を速やかに把握できます(図4参照)。また、それらの問題に対して何らかの対策が取られたという報告やそもそも問題が解決されたという報告がツイートにある場合には、注意を促すマークを表示した上でそうした情報も同時に表示でき、何ら対策が取られていない未解決の問題を探し出す手がかりとすることもできます。

図4:「宮城県」を指定エリアとして災害関連の問題を検索した結果の例
図4:「宮城県」を指定エリアとして災害関連の問題を検索した結果の例
[画像クリックで拡大表示]



用語解説

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)

インターネット上の交流を通して社会的ネットワークを構築するサービス全般を指す。代表的なSNSとして、Twitter、mixi、GREE、Mobage、Ameba、Facebook、Google+、Myspace、LinkedIn、LINEがある。

Twitter

140文字以内の「ツイート」と称する短文を投稿できる情報サービスで、Twitter社によって提供されている。

Twitter Data Grants

2014年2月5日に告知され同年3月15日を締切りとしてTwitterを用いる研究提案を公募し、優れた研究提案に対してTwitterのツイートデータを無償で利用可能にするプログラム。2014年4月17日に採択結果が公表され、1,300件を越える応募の中から6件が選択された。日本からはNICTの提案のみが採択された。


* Twitterは、Twitter, Inc.の商標又は登録商標です。



本件に関する 問い合わせ先

耐災害ICT研究センター
情報配信基盤研究室

大竹 清敬
Tel: 0774-98-6329
E-mail:

広報

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
E-mail: