タイトル アジア太平洋計量計画(APMP)総会出席報告 計量標準の国際的流れ
栗原 則幸

写真 APMP総会参加メンバ−(台湾 新竹市 SOLホテル)
 平成11年11月15日から20日までの6日間、第15回アジア太平洋計量計画(APMP: Asia Pacific Metrology Program)総会が台湾新竹市で開催されました。APMPは、1980年9月に発足した組織で、アジア太平洋地域内の国家計量標準機関が所有する知識、施設、そして経験等を共有することによって、国家計量標準や校正能力(トレ−サビリテイ)等の改善や国際貿易の促進を目的に活動しています。今度のAPMP総会には、加盟21経済圏のうち16経済圏から約60名(日本から9名)が参加しました。当所からは、今江時空計測研究室室長と筆者の2名が初めてAPMP総会に参加し、当所のAPMPへの加盟意思表示を行いました。当所がAPMP加盟に至った背景等について概略を述べます。

「計量標準」と「国際統一化」

 「計量標準」は、産業・貿易・通商等の社会基盤の支援や、科学技術分野に不可欠な基本要素として扱われてきました。そして今、国際商取引の急速な拡大自由化に伴い、「計量標準」の世界がめまぐるしく変化しています。特に最近では、各国が保有する「計量標準」を相互に承認する際の問題点や、各国が独自に設けている校正機関(試験認定機関)等の技術管理基準を国際的に統一することが国内外の産業界から切望されています。こうした変化は、計測機器分野においても同様で、我が国の「周波数国家標準」に責任を有する当所にとっても、このような国際的な流れに素早く対応することが重要であると認識していました。そこで、当所の周波数校正システムが国際的技術管理基準を満たしていることを証明するためのISO 17025認証取得に向けた取り組み等の準備も進めています。

標準機関としての国際認知

 平成11年10月中旬、パリで開催された国際度量衡総会(CGPM)の会期中に各国の計量標準機関長会議が開催され、「国際計量標準および国家計量標準機関で発行する校正証明書の相互承認(グロ−バルMRA:Mutual Recognition Arrangement)」に関する協定文書が署名締結されました。同協定において、当所は日本の標準機関の1つとして、通産省工業技術院の3研究所(計量研究所、電子技術総合研究所、物質工学工業技術研究所)と共に明記されました。この署名締結がなされたことにより、当所が「周波数標準」を保有する機関であることが国際的に改めて認知されましたが、国際的責務として、次に述べる2点を果たす必要があります。
  • 各国の国家計量標準(時間・周波数)の同等性を承認し合うこと。
  • 各国の国家計量標準機関が発行する校正(時間・周波数)証明書を相互に承認し合うこと。
 当所は、これらの責務を果たすため、各国の国家計量標準(時間・周波数)の同等性を承認するための国際的な基幹比較(Key Comparison)とアジア太平洋地域での基幹比較に取り組んでいます。特に、アジア太平洋地域での基幹比較では、時間・周波数分野の研究開発をリ−ドする中核機関としての役割も期待されています。今度のAPMP総会や、その直前に開催されたTCTF会合(時間・周波数技術委員会)時にも、多くの国々から研究支援や技術指導についての要請を受けました。当所は、これまで進めてきた周波数標準や原子時の高精度化・高確度化研究を基に、アジア太平洋地域の関係機関と連携を更に深めながら、衛星双方向時刻比較網の拡大や、時間・周波数研究分野の先端的技術開発研究を推進する当該地域の中核として活動を進めていく予定です。
(標準計測部周波数標準課長)


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