新年の挨拶
郵政省通信総合研究所
所長 飯田 尚志

郵政省通信総合研究所 所長 飯田 尚志  明けましておめでとうございます。  2000年ということで、Y2K問題で泊まり込みをされた方も多かったのですが、幸い、特に大きな問題となることは起こらず、皆様には良いお正月をお迎えのことと思います。
 昨年は独立行政法人化への準備作業に加えて3年ぶりに実施した外部評価の作業に多忙な1年でした。職員一丸となり何とか乗り切ってきました。外部評価については、昨年暮れに終了し、外部評価委員長をお引き受け頂いた江崎玲於奈先生をはじめ分野別の評価委員の先生も含めて70名にも上る先生方の評価を頂き、多くのご指摘やご助言も頂きました。結果は現在取りまとめ中ですが、まとまりしだい公表する予定です。
 今年は郵政省通信総合研究所としての最後の年度が始まることになりますので、締めくくりとしての作業を進行させる必要があります。それと同時に、21世紀の通信総合研究所として新しいスタートを切るための準備もしなければなりません。したがって、今までにも増して多忙な年になっていくことが予想されます。気を引き締めて頑張っていく所存です。
 以下では、来年度予算などの状況を簡単にご報告した後、独立行政法人化への動きと必要な作業に関わる事項について申し上げたいと思います。

平成12年度予算と組織

 昨年末、平成12年度予算政府原案が閣議決定されました。当所の予算内示額は、総額240.9億円で今年度比約4.5%増でした。言うまでもなく、情報通信の研究の大切さが認められたことを意味すると思います。我々は、これに応えて研究成果をあげていかなければならないと考えます。
 来年度予算・組織での大きな展開は、京都府精華町に「けいはんな情報通信融合研究センター」を情報通信部と振り替え新設することです。これにより、(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と通信総合研究所(CRL)の連携の下に研究を進める新しい研究形態を構築することができる見通しです。
 一般予算の特徴をみると、まず新規事項として、「宇宙における時空標準基盤技術の研究」、「光情報通信基準周波数帯の研究開発」、「ワイヤレスネットワーク融合技術の研究」が入っています。また、従来の情報通信基盤関係の研究は組み替えを行い、情報通信のヒューマニゼーション技術、次世代マルチギガビット通信プラットフォーム技術、ペタビット級ネットワーク技術の研究開発を進めることになります。
 情報通信・科学技術・環境等経済新生特別枠の中のミレニアムプロジェクトとしては、「次世代インターネット通信方式高度化の研究開発」と「高齢者・障害者のためのコミュニケーションケア技術の研究開発」となっています。
 このように来年度にも、当所は引き続き大きく発展する基礎が与えられることになりましたが、その中にあって、2001年4月からの独立行政法人化の準備を進めることになります。予算においても、当所の独立行政法人化に向けた諸準備の推進ができる見通しです。

独立行政法人化への準備状況と今後の作業

 当所の独立行政法人化への準備は本省及び当所の関係者の努力を中心として鋭意進められているわけですが、昨年12月には通信総合研究所の個別法である、独立行政法人通信総合研究所法が成立しました。この法律によれば、当所は、主務大臣を総務大臣、主務省を総務省とする独立行政法人で、名称は独立行政法人通信総合研究所となります。
 この法律の内容及び特徴については、本CRL NEWSの先月号に掲載されていますので、詳細は省略しますが、独立行政法人通信総合研究所の目的は、「情報の電磁的流通及び電波の利用に関する技術の研究及び開発等を総合的に行うことにより、情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通の確保及び増進並びに電波の公平かつ能率的な利用の確保及び増進に資すること」です。また、独立行政法人は中期目標が与えられ、中期計画を作成して業務運営を実施していくこと、任免権・内部組織の改廃権が法人の長に付与されますので、研究からみると組織の変更が容易になると期待できること、また、法人・職員の業績を給与に反映させることが可能になること、企業会計原則が適用され、予算は運営費交付金と施設費になることが大きな特徴です。
 さらに、独立行政法人では、3つの大きな変化、すなわち、非常勤の雇用がプロジェクト経費で可能になるのではないかということ、国の機関ばかりでなく、民間からも研究の受託が可能になること、外部機関への研究委託が可能になること、が期待できます。これらの3つを組み合わせることにより、研究所の新しい形態として、外部研究機関との融合的研究体が構築できる可能性があります。共同研究における研究費の扱いも柔軟にできるようになるはずですし、相手機関としては、私立大学や独立行政法人化が検討されている国立大学などばかりでなく、民間の研究所との間でも可能になると考えられます。このように考えると、当所は、新しい形態として、現在とは随分異なる研究所に変身する可能性があります。しかしこの際、共同研究と守秘義務、知的所有権の保護とその活用等については十分検討する必要があることはいうまでもありません。
 独立行政法人化への今後の作業としては、まだまだ非常に多いというのが現実です。実際に独立行政法人通信総合研究所が動き出すためには、各種の政令、省令が必要なことはもちろんですが、研究については、中期計画をどのように作成するかが最大の課題ですし、当所が策定する必要のある規程を考えても、組織規程、就業規程、給与規程、職員採用規程、受託・委託契約規程、資産管理規程、など非常に多くのものがあります。
 また、独立行政法人となったときに当所から出向中の職員に対して不都合なことが起こらないように十分注意しなければならないと思いますし、私が申し上げています「ベンチャー起業の推進」と「海外研究拠点の創設」についても、独立行政法人化後の共同研究の活発化に合わせ、どうしたらよいのか引き続き検討したいと思います。
 以上のように、独立行政法人への道はまだ多くが残っていますが、研修プログラムなどの充実なども含め、職員すべてが何らかの独立行政法人化のメリットを受け、仕事のインセンティブが湧くよう積極的に対応していきたいと思います。

最近の成果発信・広報活動

新聞報道件数グラフ  報告すべき事項は多くあるのですが、紙面の制限もありますので、最後に成果発信と広報活動について述べさせて頂きたいと思います。最近、当所の成果の論文等による発表件数及び特許出願件数はかなり増加しています。また、新聞記事掲載件数も下図のように増加しています。さらに、各種展示や書籍出版も非常に活発になっています。出版については、「ウェーブサミット講座」(オーム社刊)は本年度中に7巻全部が発行済みとなります。また、昨年10月には「情報通信研究の最前線−郵政省通信総合研究所のすべて−」(電波新聞社刊)が発行されました。今後とも広報活動を強化していきたいと思いますが、更に効率を高めるために、どんな体制が良いか、どんな方法がよいか、外部の有識者のご意見を伺いながら検討していく必要があると思います。
 21世紀には、情報通信は社会・経済・文化などの発展に益々重大なものとなるととらえられています。我々は情報通信に関する我が国唯一の国立研究所に勤務する者としてこのことに誇りを持って仕事をすることができるとともに、外部からの期待が大きいことを十分自覚し、日々の研究業務に取り組んでいく責務があると考えます。通信総合研究所が、「新しい情報通信技術の発信源」となるように頑張っていきたいと思います。  最後に、皆様のご健康とご発展を祈念しまして、年頭の挨拶と致します。


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