タイトル サイエンスキャンプ2000
 体験学習を通じて高校生に科学技術に親しんでもらおうという目的で、毎年夏休みにサイエンスキャンプ(主催:科学技術庁、科学技術振興事業団、(財)日本科学技術振興財団)が開催され、CRLの参加は今年で4度目です。今回は小金井にある本所と関西先端研究センターの2ケ所で開催され、合わせて男女計21名の高校生が参加しました。
〈本所〉
写真01
 8月8〜10日の3日間、12名の高校生が集まりました。鈴木宇宙通信部長より「先端技術の一端を実際にさわってみてください。夏休みに学ぼうとする皆さんの積極性に敬意を表し、その意欲に応えたいと思います。」という挨拶があり、所内の主な研究装置等を見学しました。見学終了後、各グループに分れ、実習に入りました。

Aコース 「GPS衛星による位置測定や
電波の伝わり方の観測実験」
(担当:皆越尚紀/
山崎亮三)

 Aコースでは初めにGPS衛星による位置測定についてのレクチャーが行われました。2日目からはGPS班と電波観測班に分かれて実験を行い、GPS班は、ポータブルGPS受信機を持ちながら歩き、実際に位置測定に挑戦しました。電波観測班は電離層の観測装置を見学した後、ロシアからの電波を受信して、夏期にテレビや無線通信に混信をきたす電離層じょう乱の観測を行いました。
B-1コース 「アンテナから電波がどのように
放射されるかを調べてみよう」
(担当:増沢博司/
石上忍)

 Bコースはテーマをふたつに分け、別の測定を体験してもらいました。B-1コースはアンテナがテーマです。初めに所内のアンテナを見学し、その後、アンテナの測定法について学びました。2日目にはパソコンを使って、アンテナから放射される電波を解析する電磁界解析ソフトを体験しました。最終日には大型電波暗室での電波受信実験も行いました。
B-2コース 「携帯電話を使っているときの
電波吸収量を測ってみよう」
(担当:渡辺聡一/
和氣加奈子)

 B-2コースでは、携帯電話の安全性を確かめるために、携帯電話使用中に人体に吸収される電波の量を調べる実験を行いました。最初に人体と同じ電気的特性の材料を使って、自分の頭のモデル(ファントム)を作りました。それに強い電波を照射すると電波の吸収量に応じて温度が上昇します。この温度の上昇を赤外線カメラで撮影し、電波の吸収量の分布を求めました。
Cコース 「宇宙ロボットの遠隔操作体験」 (担当:木村真一)

 今年のキャンプで最も人気の高かったCコースでは、宇宙空間で活躍するロボットの遠隔操作の研究を行いました。実験はコンピュータシミュレーションを用い、操作する人がどこを見ているか調べるアイマークレコーダという装置も使いました。被験者はこの装置を装着し、ジョイスティックを操作しますが、実際には4秒の時間差が生じるため、なかなかむずかしいようでした。
〈参加者の声〉
  • 期待していた以上の内容だった。
  • 研究員の人が個人(ひとりひとり)をきちんと見てくれていて、大事にしてくれるのが嬉しかった。
  • レベルが高くて驚いた。知らないことがいっぱいあったし、研究員の人たちは専門外のこともよく知っていてすごいと思った。
  • 研究員の人に大学の相談ができた。
  • 理科も団体行動も苦手で不安だったが、友人もできたし理科にも興味がもてるようになった。
  • いろいろ勉強できたのはよかったが、とにかく疲れた。
  • 外出時間がほしい。

〈関西先端研究センター〉
 8月2〜4日の3日間、9名の高校生が集まりました。福地センター長の「短い時間ですが、人と人との出逢いと交流を大切にし、郵政省がなぜ、こういった研究を行っているのか考えてほしいと思います。」という挨拶のあと、早速各グループに別れて、実習に入りました。

Aコース 「有機化合物で光を操る」 (担当:久保田徹/
山田俊樹/
大友園子)

 今、最も注目されている光通信。非常に高速な光変換素子や、小型・軽量・超薄型の表示素子などが作製できる可能性があるということで、研究が進められいます。そこで、Aコースは、光を発生するEL(エレクトロルミネッセンス)素子の作製班と、光波長変換実験の2班に分かれ、実習を行いました。
作製班はクリンルーム内で透明電極基盤に各々がデザインした絵柄を加工し、できあがった素子を暗室で発光させたときは、思わず歓声があがりました。
一方の光波長変換班は、太陽光や白熱灯、蛍光灯など身近な光のスペクトラムを測定後、砂糖、塩を使った波長変換用のサンプルを作製し、これらを光顕微鏡で観察しました。
Bコース 「ヒトの脳活動計測の実験」 (担当:藤巻則夫/
早川友恵/
林茂)

 ヒトのさまざまな行動を制御している脳。CRLでは脳磁界計測装置(MEG)や機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って、頭の外から脳の働きを観測しています。今回はMEGを使って、参加者に脳活動計測を体験してもらいました。
 1日目はヒトの脳に似せて作ったファントムを使って、人工的に磁場を発生させてこれをMEGで計測し、装置の使い方とその精度を調べました。
 2日目は参加者の山田玲子さんが被験者になって、視覚と、指に刺激を与える体性感覚に対する脳活動の計測を行いました。
〈参加者の声〉
  • もっと実験したかった。時間が足りない。
  • 国の研究所という所に初めて入った。研究者の人たちとふれあう機会があってよかった。
  • レベルが高くて驚いた。知らないことがいっぱいあったし、研究員の人たちは専門外のこともよく知っていてすごいと思った。
  • 研究所という所はもっと汚くて暗いと思っていた。きれいで驚いた。
  • 最新の機器にさわれて満足。一生に何度もできない貴重な体験だった。
  • 研究者になりたくなった。
  • パソコンの勉強が必要だと思った。
  • 事前に、研究の内容を詳しく知らせてほしかった。
  • 宿舎に不満。

〈懇親会〉

本所

関西先端研究センター
 初日に、本所、関西先端研究センター両会場とも、懇親会としてバーベキュー大会が開かれました。肉や野菜がおいしそうな匂いとともに焼けていきます。焼きたてを頬ばりながらリラックスする参加者たち。風が強かった関西、蚊に悩まされた本所と、アクシデントも少々ありましたが、時間がたつにつれ、参加者どうしや研究員の方たちとの話が弾み、予定の時間を過ぎて懇親会は終わりました。
〈実験結果の討論会〉
 3日目の午後は参加者が行った実験の結果をコースごとに発表する検討会が行われました。大勢の関係者の前で発表するのは大変なようでしたが、コースの担当者の助けを借りながら、OHPや大きな紙を使って発表を行い、なかには、アニメーションを使って発表するグループもあり、高校生のプレゼンテーションとは思えないような発表も飛び出しました。
〈終りに〉
 本所と関西先端研究センターでは実験の種類も雰囲気も違い、それだけに参加者の感想もまちまちでしたが、実験を通して科学にふれる楽しさを、参加者は充分実感していたようでした。実験の内容や装置が高度になればなるほど、パソコンの能力と英語力が必要になるようで、そういったスキルのばらつきが、参加者の苦労の度合いを左右していたようにも感じます。
(取材・文/中川和子)


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