CRL NEWS
新年の挨拶
 明けましておめでとうございます。2001年、21世紀という新しい世紀となり、皆様には良いお正月をお迎えのことと思います。
 昨年、当所では、けいはんな情報通信融合研究セン ターの開所をはじめ、沖縄電波観測所の新庁舎の準備など大きな飛躍がありました。さらに、独立行政法人化への準備作業を精力的に進めてまいりました。また、昨年は不幸なことですが、災害が相次ぎ、有珠山、三宅島の雄山の爆発と地震等への対応、さらにセキュリティに対する対応など多くの突発的な事象への対応も行ってまいりました。
 郵政省通信総合研究所は、1月6日から約3か月間、総務省通信総合研究所となり、4月1日からはいよいよ独立行政法人通 信総合研究所に移行しますので、締めくくりの作業と新しい組織のスタートを切る準備で、今までにも増して多忙になっていくと予想されるわけですが、頑張っていかねばと思います。
 以下では、来年度予算の状況をご紹介した後、独立行政法人化への動きについて申し上げたいと思います。


 平成13年度予算 

 昨年末、平成13年度予算政府原案が閣議決定されました。当所の予算内示額は、総額約260.9億円で、単純計算では、今年度比約11%増でした。言うまでもなく、情報通 信の研究の大切さが認められたことを意味しています。我々は、これに応えて研究成果 を挙げていかなければならないと考えます。
 平成13年度の予算は独立行政法人に移行することもあり例年とは随分違ったものとなっています。その構造を見ますと、運営費交付金が約185.7億円、施設費が約2.3億円となっています。また、独立行政法人化後に本省から当所への委託経費となる電波利用料については約73.0億円となっています。
 運営費交付金をどう使うかは独立行政法人自身で決めて行かねばならないわけですが、その中で新しいプロジェクトとして考えられているものは以下の7項目:

情報通信危機管理基盤技術の研究:平成12年度公共事業予備費財源とも合わせて、ネットワークの危機管理や非常時通 信機構のモデルの総合的研究及びデモンストレーション実験。
マルチメディア無線通信ネットワークの研究開発: ミリ波帯による複数の無線通信サービス一括伝送技術、異なる無線通 信システム間切替技術、成層圏プラットフォーム間の超高速光無線通 信技術及びそのネットワーク制御技術の研究。
宇宙からの地球環境変動計測技術の研究:革新的衛星搭載センサの開発によるグローバル計測技術の 研究。
電子時刻認証システムに関する研究開発:インターネット上の電子取引や電子政府等の情報流通 の安全性・信頼性の確保に必要な日本標準時を基準とした時刻認証に関する技術の研究。
量子情報通信技術の研究:単一光子及び相関光子対を用いる量 子信号伝送基礎技術の研究。
スペース・インターネット衛星の研究開発:ここ4年くらい実行してきたギガビット衛星ミッション機器の開発研究を基に衛星の開発へのフェーズアップ。
ナノテクノロジーによる新機能材料の創製技術:平成12年度補正予算で整備する研究施設を活用して情報通 信ナノテクノロジー研究の加速。

が挙げられると思います。また、電波利用料では「高仰角無線アクセスシステムによる業務と既存業務との周波数共存技術」はじめ6項目が新規事項です。
 要員については、独立行政法人化後は現在の要員数で推移していくことが求められており基本的には変わりませんが、今後、業務が円滑にいくよう注意していく必要があると思います。また、来年度から新規採用は原則として任期付きとするようにし、また、定員外の職員数については柔軟にできるのが独立行政法人の特徴だと考えられますので、来年度は定員外の研究者数を本年度の2倍に増やすことを目指しています。また、組織について、例年だと内示があるのですが、独立行政法人ではこれがないことが特徴です。今後研究が促進されるように組織を確定していくこととなります。
 このように来年度にも、当所は引き続き大きく発展する基礎が与えられましたが、独立行政法人としての責務が大きくなったことは事実です。



 独立行政法人化への動き 

 独立行政法人化への検討状況については、昨年秋の第99回通 信総合研究所研究発表会で「独立行政法人通信総合研究所の基本計画」と題して報告させて頂きました。簡単に振り返りますと、まず、CRLを取り巻く情勢がIT革命という当所の研究への追い風として展開している環境において独立行政法人化に向けた作業を行っていることを踏まえ、独立行政法人とは何かを簡単に述べた後、独立行政法人と主務省との関係について述べました。さらに、独立行政法人通 信総合研究所の業務の範囲として現在の所掌が引き継がれるものとなっていることを述べました。
 さらに、検討されている中期目標の概要として、期間が平成13年度からの5年間、重点研究分野は、次世代情報通 信基盤技術の研究開発、無線通信システム技術の研究開発、電磁波計測・応用技術の研究開発、情報通 信基礎技術の研究の4分野、その他、標準時通報等の定常業務を確実に実施、民間への技術移転等の強化があることを紹介致しました。次に、このような中期目標に対して、我々が中期計画を作成する際の視点として、CRLが有するコアコンピタンスを伸ばすこと、CRLのアイデンティティに合っていること、これらの観点から目標に合う研究計画(サービス業務を含む)を作成していく必要があること、その際、どのような研究環境を目指していくのか、特に独立行政法人の特徴に着目した新しい研究環境(ソリューション)について述べました。
  まず、CRLのコアコンピタンスは、唯一の情報通信に関する公共的な研究機関として時代の要請に応え、電波・光の総合的な研究開発を基盤として先導的な研究開発を推進していることであるわけです。CRLのアイデンティティですが、当所の役割として4つ、国民生活の安全の確保及び質の向上、経済社会の発展、アジア地域等国際社会への貢献、自然と調和した人類社会の持続的な発展です。これを基に、当所の使命として、安心して暮らしやすい国民生活のために(広い意味のNational SecurityとHuman Welfareのために)これまでの電波・光の研究の成果 を基盤として、情報通信に関する総合的な研究開発を中心に、先端的・先導的な研究開発を推進するとしています。
  独立行政法人化の変化のキーワードとして考えられることは、大きく6項目:研究組織の見直しの柔軟性、予算の費途の弾力性、定員外・外部研究者数の拡大、研究受託、研究委託、共同研究における研究費のやりとりが可能、を踏まえ、研究の環境(ソリューション)として、オープンプラットフォーム機能(産学官を結集した国家的研究開発推進機能(グレイターCRL))、研究スキームとして、継続性を重視する「中核的研究(ドメイン)プログラム」と時限的性格を有する「戦略的(ダイナミック)プロジェクト」を挙げました。
  組織体制としては、柔軟かつ自律的な運営が可能なできるだけフラットな組織を目指すことです。さらに、目標管理制度の導入、技術移転、特にベンチャー起業の支援、萌芽的研究の推進、グローバル展開について簡単に述べました。特に、グローバルな展開として国際的な共同研究、グローバルアライアンスの更なる推進、国際的な人材の確保といったところがキーワードだと思います。いずれにしても、これからの研究所としては、世界から研究者が集まる環境作りがポイントではないかと思います。
 独立行政法人化まではまだ多くやらなければならない作業がありますが、研修プログラムの充実も含め、職員すべてが何らかの独立行政法人化のメリットを受け、仕事に対するのインセンティブが湧くよう積極的に対応していきたいと思います。
独立行政法人CRLの役割と使命
▲独立行政法人CRLの役割と使命(アイデンティティ)


 最近の成果発信・広報活動 

 成果発信と広報の活動については、昨年も活発に行い、報道発表件数が倍増しています。当所の成果 の論文等による発表件数の増加は勿論なのですが、特に特許の出願件数が激増しています。また、展示については、「21世紀夢の技術展」のような大型の展示も行いました。出版については、昨年度「ウェーブサミット講座」(オーム社刊)の日本語版7巻が刊行されましたが、引き続き、英語版も4巻が刊行されました。残る3巻についても本年度末から来年度初めまでに刊行させたいと思います。

 21世紀は夢が実現する世紀なのか、混乱の世紀なのか予測がつきませんが、少なくとも最初の2、30年間は激動の時代であることは確かだと思います。このとき、情報通 信は社会・経済・文化などの面でその重要性が益々認識されるようになることは間違いないと思います。我々は情報通 信の研究に関する我が国唯一の国立研究所に勤務する者としてこのことを十分自覚し、日々の研究業務に取り組んでいく責務があると考えます。昨年も申し上げたのですが、通 信総合研究所が、「新しい情報通信技術の発信源」となるよう引き続き頑張っていきたいと思います。
 皆様のご健康とご発展を祈念しまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

報道発表件数
▲報道発表件数

特許出願件数
▲特許出願件数

グレイターCRLの概念
▲グレイターCRLの概念

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