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▲図1
ジョセフソン素子の電流ー電圧特性
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超伝導体を使ったデバイスでは、電子の波動的な振る舞いを制御する必要があります。そこで重要な役割を果
たすのがジョセフソン素子で、超伝導体を100万分の1ミリ程度の極薄い絶縁体で隔てた構造をしています。このような構造を作るにはとてつもなく困難な微細加工が必要と思われるかもしれませんが、実際には薄膜作製技術により実現できます。ジョセフソン素子のスイッチングに要する時間は約1兆分の1秒で、このような高速性を生かしたディジタル集積回路の研究が行われています。
超伝導集積回路の研究の歴史は意外に長く、1970年代にまで遡ることができます。当時IBMのスーパーコン
ピュータプロジェクトで採用された回路は、ジョセフソン素子のゼロ電圧状態と電圧状態を情報の0と1に対応させたものでした。ここで、ゼロ電圧状態とは図1に示したようにジョセフソン素子に電圧が発生していない状態、電圧状態とはジョセフソン素子にある臨界値を超える電流が流れて電圧が発生している状態を意味します。このタイプの回路は1状態を0状態に戻すために交流の電流を流す必要があるなど幾つかの欠点がありましたが、アメリカと日本を中心に10年以上にわたって研究が続けられ、この間回路作製技術は大きく進歩しました。しかし、それ以上に急速な進歩を遂げたCMOS論理回路に対して徐々に優位
性を失い、1990年代に入って研究は急速に別のタイプの回路に移行しました。それが単一磁束量
子(SFQ)論理回路です。