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山下 耕二(やましたこうじ)氏
情報通信部門
西田結集型特別グループ
大阪大学で学位取得後、神戸商船大学講師(研究機関研究員)を経て、2001年4月より西田結集型特別グループの特別研究員として、ネットワーク社会における人間行動の認知心理学的研究に従事。
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近年、情報通信ネットワークの発展に伴い、ネットワーク上で同じ興味を持つ人々の集まり(コミュニティ)が形成され、メーリングリストや電子掲示板を用いてさまざまな知識が交換、蓄積されつつあります。また、2001年3月には、e-Japan重点計画が発表され、2005年を目標に、超高速ネットワークインフラを整備し、世界最高水準の情報通信ネットワークを形成することが決定されました。ネットワーク・コミュニティの発展、情報インフラの整備と相まって、誰もが心地よく使えるネットワークとはどのようなものか、一体どのような情報をやりとりするか、といったことを考える必要があるのではないでしょうか。
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| ネットワーク社会では、コミュニティ−一定の指向性や共同性のもとで緩やかに結びついた人々の集団−が大きな役割を果たすと考えられます。新たな知識創造という観点から考えると、コミュニティは共有された文脈を背景に結びついた人々が新たな知識を創造するダイナミックな場として位置づけられます。我々、西田結集型特別グループ(Synsophyプロジェクト)は、情報通信ブレークスルー基礎研究21の結集型プロジェクトとして、1998年4月に発足以来、インターネット上のコミュニティをコミュニケーションという観点から理解し、コミュニティ内の情報共有や知識創造を支援する新しい情報通信テクノロジーの枠組みを創出することを目指しています。本プロジェクトでは、従来の技術主導型の研究と異なり、社会心理学、認知心理学、情報通信工学による緊密な学際的研究体制をとっています(図1)。 |
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| 図1 Synsophyプロジェクトにおける学際的アプローチ |
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| 私たちが提案・開発しているコミュニティ・コミュニケーション・ツールであるパブリック・オピニオン・チャンネル(Public
Opinion Channel; POC,図2)は、インターネット上のインタラクティブなコミュティ向け自動放送システムです。POCシステムはコミュニティ・メンバーが発信した意見を分類・要約し、メンバーの関心に基づく放送番組を作成し、放送します。放送を視聴したメンバーは、自分なりのコメントを加えたり、新たな情報を発信したりすることができます。POCがメンバーからの発信情報を取り込み、さらなる物語を生成してコミュニティに還元することで、コミュニティとPOCとの間の情報流通サイクルが活性化されます。このサイクルを繰り返すことで、コミュニティ内の各所に存在する情報がコミュニティ全体に行き渡り、その結果、コミュニティにおける知識利用の可能性が高まり、新たな知識創造を促進することが可能となります。また、既存の放送メディアと異なり、POCは視聴者の意見が放送に反映されやすく、インタラクティブ性が非常に高いシステムで、これまでは埋もれがちであった少数意見を取り上げ、コミュニティに紹介することができます。 |
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| 図2 パブリック・オピニオン・チャンネルの概要 |
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| 現在、開発中のPOCシステムはPOC Server、POC Communicator、POC Radio、POC
TVで構成されています(図3)。POC Serverはメッセージの収集、動的な番組ストリームの構成やダイジェストの生成を担います。POC Communicatorは意見閲覧・発信・検索ツールで、パソコンや携帯電話で使用することができ、「いつでも,どこでも」情報を閲覧、発信することができます。POC
Radioは音声放送システムで、エージェントキャスターがメッセージを編集し、配信するMP3形式の番組を視聴できます。POC TVは、会話型エージェントキャスターで、テレビを見るのと同じ感覚で番組を視聴できます。 |
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| 図3 現在開発中のPOCアーキテクチャー |
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| POCには、情報ネットワーク上の情報公開と公開討論を基礎とした民主的な意思決定(デジタルデモクラシー)、大量不均質な情報の収集と要約、エンターテインメント的要素を含む物語の生成など、複数の領域を横断的に捉えた研究課題が数多く含まれています(図4)。こうした多様な側面を持つ課題は従来の枠組みでは十分に捉えられず、Synsophyプロジェクトでは、POCを社会心理学、認知心理学、情報科学にまたがる学際的な研究領域として定式化し、ネットワーク上での人間行動の理解、システムへの実装、評価手法の確立を社会知のデザイン(Social
Intelligence Design)と捉え、コミュニティ情報学という枠組みを提唱しています。 |
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| 図4 コミュニティ情報学 |
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2002年4月から8月にかけて、KDDIによる東京都文京区、新宿区の300世帯、および愛知県豊田市の200世帯の合計500世帯を対象としたブロードバンドサービス実証実験に参加し、「コミュニティ知の創造」と題したPOC実証実験を予定しています。実証実験では、地域に張り巡らされたブロードバンド・ネットワークを利用して、コミュニティが知識を発見し、リアルな姿で共有し、発展させていくコミュニティ知の形成プロセスをPOCによって支援することを目的としています。この大規模な実証実験を通じて、POCシステムの安定した運用、視聴に耐えうる放送コンテンツ作りとその分析、流通する情報の社会科学的分析を行い、コミュニティにおける知の創造プロセスについて解明を進めてゆきたいと考えています。
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