タイ国モンクット王工科大学で開催された電波と光による地球環境のリモートセンシングに関するセミナーについて



大崎 祐次


モンクット王工科大学に設置されたウィンドプロファイラとライダー




 1995年12月19-20日にタイのモンクット王工科大学において、電波と光による地球環境のリモートセンシングに関するセミナー(Seminar on Environmental Remote Sensing by Radiowave and Laser)が開催された。私は国際協力事業団(Japan International Cooperation Agency: JICA)のJICA短期専門家派遣により、講演者としてこのセミナーに参加した。他に日本から講演者として、名古屋大学大気水圏科学研究所の中村健治教授、当研究所地球環境計測部の板部敏和光計測研究室長が同派遣制度により参加した。通信総合研究所は約2年前から郵政本省との共同プロジェクトとして、タイの同大学に風向・風速高度分布を観測するレーダ(ウィンドプロファイラ)とライダーを提供し、技術指導を行ってきた。本セミナーはJICAが主催し、リモートセンシングの有用性を、ウィンドプロファイラとライダーの観測結果等を紹介しながら説明することにより、タイのリモートセンシング技術の向上に貢献することを目的とする。中村教授は大気のリモートセンシング全般について、板部室長はライダーによる大気のリモートセンシングについて講演を行った。私は自分の最近の研究成果を中心に、ウィンドプロファイラにより観測されたドップラスペクトラム中のクラッタ成分をソフトウェアにより除去する手法およびウィンドプロファイラとRASS(Radio Acoustic Sounding System)により観測された気温高度分布の誤差評価について講演を行った。

 セミナーは大学内外から約100名の参加者があり概ね盛況であった。学生が聴講にくることが予想されたので、私は講演に際して専門用語は出来る限り使わないように、使う場合ははじめに十分に説明することを心掛けた。しかし、予想に反して学生の聴講者が少なかったのが少し残念であった。私の講演に対しては、中国人の応用物理の先生とロシア人の数学の先生から2件の質問があった。質問は何れも基本的なことに関することであり、返答に困ることはなかった。ただ、タイにも外国の研究者たちが働きにきていることに興味を持った。

 セミナーの二日目はデモンストレーションが行われた。昨日レジストレーションを行った聴講者を3グループに分け、時間を指定してウィンドプロファイラとライダーの装置がある実験室に来てもらうように配慮された。説明の時間は、1グループに1時間30分が割り当てられた。しかし、残念なことにデモンストレーションに訪れた聴講者の人数は、100名よりかなり少なかったようである。ただその代わりに、興味を示す来訪者と余裕を持って話をすることができた。私はこのセミナーがタイの研究者たちにリモートセンシングに関心を持ってもらうのに十分役に立ったと思う。

 最後にセミナー以外のことで私が感じたことを書きたいと思う。バンコク市内の交通渋滞にはすさまじいものがある。以前から地下鉄等の公共交通手段の必要性を感じていたが、政府もやっとモノレールの整備を決定したようである。しかし、モノレール工事によるさらなる交通渋滞がしばらく続きそうである。

 JICA専門家派遣では、ビジネスクラスの飛行機の席が用意される。私はこの機会にはじめてビジネスクラスを利用すること ができ、非常に快適な空の旅を満喫した。皆さんもJICAから専門家派遣の依頼があったらぜひ承諾され、快適な旅をされることをお薦めします。

 セミナーのプロシーディングとして、非常に上質の紙を使用した立派なものを作っていただいた。本所と沖縄電波観測所の図書室に寄贈されているので、皆さんも一度触ってみてください。



(沖縄電波観測所)