学 位 取 得




井家上 哲史

平成7年7月25日

明治大学 博士(工学)

スペクトル拡散方式による移動体衛星通信に関する研究

(A STUDY ON SPREAD SPECTRUM MOBILE SATELLITE COMMUNICATIONS)


 衛星中継器を用いた移動体衛星通信は、地上系の移動体通信と併用することにより、全世界、いつでもどこでも誰とでもの通信の究極の姿を実現できる可能性があり研究開発が進んでいる。本論文はこの移動体衛星通信にスペクトル拡散技術を応用する際に問題となる伝搬路の影響および通信装置の構成に関して主として取り扱った。

 はじめに移動通信特有のフェージング通信路における直接拡散方式の特性、特に受信信号の劣化を救済するパスダイバーシチ受信方式の効果を理論及び室内実験により明らかにした。次に無線通信に欠かせない送信帯域制限が、直接拡散方式による多元接続通信に与える影響について解析し、各種フィルタを用いた場合の性能比較を行った。また移動体衛星通信回線の広帯域伝搬特性を取得するためのマルチパス測定法を考察し、測定装置を開発した。さらに静止衛星ETS-Vを用い、開発した測定装置によるマルチパス測定を日本各地で行い、スペクトル拡散通信の評価のための陸上移動体衛星通信路の性質を明らかにした。これらの検討を基に移動体衛星通信回線に適した、基地局を必要としないランダムアクセス型のスペクトル拡散多元接続通信用の受信方式を検討し、通信装置を開発した。また静止衛星ETS-Vを用いたLバンド(1.5/1.6GHz)陸上移動走行試験により、直接スペクトル拡散多元接続方式の性能を実験的に明らかにした。




笹岡 秀一

平成8年1月23日

京都大学 博士(工学)

ディジタル陸上移動通信における誤り発生特性の評価と
高品質・高能率伝送技術に関する研究


 学位論文では、将来の陸上移動通信において重要となる無線伝送の高速・高品質・高能率化を研究対象とし、伝送効率をあまり損なわないで高品質化が可能な誤り制御技術及び高品質化と高能率化の両立が期待できる符号化変調方式に注目した。そして、誤り制御方式の検討に必要な誤り系列データの模擬発生方式の提案と誤り系列特性の解明、高品質化と高能率化が可能な多値直交振幅変調方式と高品質化技術との組み合わせ方式の検討を行った。

 本論文の主な研究成果を箇条書きにすると以下のようになる。

(1)誤り制御技術の評価に有効な新しい誤り系列模擬発生法を提案し、その有効性を確かめた。

(2)誤り系列特性の理論解析を実施し、誤り制御技術の検討に有効な特性を得た。

(3)陸上移動通信における誤り率特性の改善に時間ダイバーシチ効果の大きい符号化と最ゆう復号法が有効であることに基づいて、時間拡散符号化を提案し、その有効性を確かめた。

(4)陸上移動通信を対象に、マルチキャリヤ直交振幅変調方式、ブロック符号化と最ゆう復号法、最大比合成ダイバーシチ等を採用した方式を提案し、高速・高品質・高能率伝送が可能であることを確かめた。

 これらの研究成果は、周波数の逼迫している陸上移動通信において、周波数利用効率を損なうことなく高品質化が可能なことを示しており、将来の陸上移動通信サービスの高品質化の基礎となるものである。