Ring Serverと

Ring Serverプロジェクトの紹介




川又 文男





1 はじめに

 通信総合研究所(CRL)にはRing Server(リングサーバ)があるのをご存知でしょうか? CRLのホームページ(http://www.crl.go.jp/)にRing Serverの文字があるのに気が付いていただけたでしょうか? 今日は、Ring Serverが何だかわからないから素通りしてしまっている方や、ホームページをご覧いただけない方のために、Ring Serverと、その推進母体であるRing Serverプロジェクトについて、簡単に紹介させていただきます。



2 Ring ServerとRing Serverプロジェクト

 Ring Serverプロジェクトは、インターネット上で大規模なソフトウェアライブラリの構築とソフトウェアの分散共同開発の支援を行う共通基盤技術を研究開発し、実際に運用することにより、ネットワーク社会に貢献することを目的としたプロジェクトです。そして、この共通基盤技術を実現・提供する、ネットワーク上の「場」こそがRing Serverなのです。ここで、ソフトウェアライブラリとは、たくさんのソフトウェアが分類されて保管されている、図書館のような場所と考えて下さい。また、ソフトウェアの分散共同開発とは、みんなで一つのソフトウェアを作りあげることです。ネットワークを利用することにより、直接会わずに、自分の都合に合わせて共同開発することができます。

 Ring Serverプロジェクトは、プロジェクトに興味を持つ団体(国立研究機関、大学、民間企業など)と個人の共同研究プロジェクトで、CRLはプロジェクトの主要メンバーとして活躍しています。1996年4月現在のプロジェクト参加メンバーの一覧を下記に示します。

・通商産業省工業技術院 電子技術総合研究所
・郵政省通信総合研究所
・株式会社アトソン
   パソコン通信やインターネットプロバイダ。
・有限会社ベクターデザイン
   フリーウェア・シェアウェアのCD-ROM集を制作・販売。
・株式会社ソフトヴィジョン
   Windows用データベース、SGMLソフトウェアを開発・販売。
・通商産業省工業技術院 RIPSセンター
・日本ディジタルイクイップメント株式会社
   ワークステーション、パーソナルコンピュータ、
   ネットワーク関連製品・サービスの開発・販売
・個人
   学生、会社員、公務員


 Ring Serverプロジェクトで開発したソフトウェアは広く一般に利用していただけるように、フリーソフトウェアとして公開する予定です。




 Ring Serverのホームページを左記図1に示します。鯉のぼりやアヤメなど、季節感あふれる絵は、絵心のあるメンバー(実はCRLの研修生だった雨海明博さん)が描いています。それでは、Ring Serverプロジェクトの具体的内容について説明しましょう。

   図1 Ring Serverのホームページ



3 ソフトウェアライブラリ

 現在、インターネットは急速に拡大し、多様なサービスが実現されつつあります。それに伴って、

・必要な情報を探し出すことが難しい
・よく整備されたサーバは混雑している
・無駄な通信によってネットワークが無駄遣いされている

といった問題が顕著になってきました。特に、ネットワーク上で流通するソフトウェアを入手する場合には深刻です。しかし、「Ring Serverのソフトウェアライブラリにアクセスすればいつも最新のソフトウェアが入手できる!」ようにすべく、プロジェクトでは日々頑張っています。

 Ring Serverは、同じファイル、同じサービスを提供する複数のサーバの集合体です。どのサーバに接続してもいつも最新のファイルを得ることができます。現在はインターネット幹線上に設けた数箇所のベースサーバとその複製サーバが同じサービスを提供しています。ユーザは、ネットワーク上で自分に近く、反応が速い、いずれかのサーバにアクセスすればよいのです。サーバ間で本当に必要なファイルだけをやりとりすることにより、貴重なネットワーク幹線の無駄遣いを押さえ、ユーザに快適なアクセスを提供します。

 Ring Serverはソフトウェア・ライブラリとして、世界中の著名ソフトウェアライブラリの複製と、ベクターデザイン社が運営するTHE COMMON(ザ・コモン。「共有地」という意味。)を提供しています。THE COMMONは皆さんからの、ソフトウェアの登録も受け付けています。この他に、Ring Serverパブリックライブラリの準備を進めています。

 Ring Serverパブリックライブラリは、みんなで力を合わせて、みんなで作るソフトウェアライブラリです。ソフトウェアをジャンル別に分担して管理することにより、整備された使いやすいソフトウェアライブラリが実現してゆくことでしょう。Ring Serverパブリックライブラリでは皆さんからのソフトウェアの登録を受け付ける予定です。登録用のベースサーバにファイルを登録すれば他のベースサーバにも自動的にコピーされます。これらのサーバはインターネットと多くのパソコン通信からアクセスできますので、ネットワークの垣根を越えてソフトウェアを公開・配布する手段として使っていただけます。

 ソフトウェアライブラリのページを図2に示します。


図2  ソフトウェアライブラリのページ



4 ソフトウェアの分散共同開発の支援

 フリーソフトウェアの開発者はRing Server内に、オープンラボ(OpenLab)と呼ばれる「開発プロジェクト室」が持てるようになる予定です。ネットワークを介して複数の人が力を合わせれば、より素晴らしいソフトウェアを作成することができます。みんなで力を合わせれば、一人ではできないような、大規模で高度なプログラミングができるようになります。ソースを公開し、様々な人達の意見や技術を取り入れ、

よりすばらしいソフトウェアをつくりましょう!。

OpenLabは、

・様々な人たちの意見や技術を取り入れたい、あるいは仲間を募って共同開発をしたい
・非営利用途には無償で利用可能である
・ソースコードを公開している
・実名でソフトウェアを公開している
という方々が集まったオープン研究所です。上記の条件を満たすならば、誰でも OpenLabにホームページ(または既存のホームページへのリンク)を置くことができます。Ring Serverは非常に多くの人にアクセスされるので、OpenLabにソフトウェアのホームページを置くと、多くの人が訪れます。

 OpenLabでは、ソースコードの共有が可能な場を用意します。共同アカウントによりアクセス可能なディレクトリを用意します。まず、この場を利用してプログラミングを進めて頂きます。プログラミングを補助する環境として、開発者間のメーリングリストとニュースグループが用意されます。

 出来上がったソフトはRing Serverのソフトウェアライブラリに登録され、ユーザがダウンロードして使えるようになります。ユーザサポートはプロジェクト毎に作成されたホームページとニュースグループで行います。開発者からの情報をホームページに、ユーザからのフィードバックをニュースに反映するような形です。

 現状は、このような環境を提供するための準備を水面下で進めている段階であり、開発環境の提供はまだできていません。開発者の既存ホームページへのリンクが存在するだけです。

 OpenLabのページを図3に示します。


図3 OpenLab(オープンラボ)のページ




5 研究開発項目

 以上のサービスを実現するために、3つのグループに別れて研究開発を行っています。各グループ及び研究開発内容は次のようになっています。


(1)サーバ研究グループ

リングファイルシステム ( RingFS )
 ネットワーク上の多くのサーバ間でのファイル移動を組織化・最適化し、どのサーバにアクセスしても常に最新のソフトウェアにアクセスできるようにします。また、少ないディスク容量しか持っていないサーバでも、人気の高いソフトウェアを高速にサービスできます。RingFSは並列分散オブジェクト指向言語システムHORBを用いて記述します。

ホームページウィザード( Home Page Wizard)
ソフトウェアの分散共同開発のプロジェクト室に当たるホームページを自動的に生成します。分散共同開発に必要な、開発者間の会議、ユーザサポート、ダウンロードなどのページを自動的に生成します。


(2)コンテンツ管理研究グループ

コンテンツ管理ソフトウェア
 既存のソフトウェアあるいは新しく登録されたソフトウェアに、作成者名、連絡先などの属性を付けて、マルチメディアカタログとして検索できるようにします。

ユーザインターフェース
 Ring Serverにアクセスするための使いやすいマルチメディア・ユーザ・インターフェースを開発します。


(3)運用研究グループ

Ring Serverの運用技術
 超分散システムRing Serverを管理運営し、それに必要な技術を開発します。

Ring Serverパブリックライブラリ
 パブリックな(公共の)ソフトウェアライブラリを構築し、運用します。

Ring Server <->パソコン通信ゲートウェイ
 パソコン通信からRing Serverにアクセスするためのゲートウェイを開発します。

運用統計の公開
 Ring Serverのアクセス数、ソフトウェアのダウンロード数などの運用統計情報をまとめ、公開します。



6 参加者大募集!

 さて、Ring ServerとRing Serverプロジェクトについて紹介してきましたが、どこかに興味を持っていただけたでしょうか? もし興味のある点があったら、Ring Serverプロジェクトに参加してみませんか? Ring Serverプロジェクトでは次のような団体あるいは個人を募集しています。

研究開発や運用に参加して下さる方!

 プロジェクトに参加して、「世の中を変えてやろう!」

という方は、 ringServer-proj@etl.go.jpまでご連絡下さい。


OpenLabに参加して下さる方

 Ring Serverプロジェクトでは、フリーソフトウェアを開発する方々を応援します。自分の開発状況を公開したい、一緒に開発するメンバーを募集したいなど、Ring Serverのホームページ上にリンクを持ちませんか? 今のところはリンクだけですが、将来的にはRing Server内部に開発の場を提供できるようになる予定です。以下の条件を満たすプロジェクトを募集しています。

・非営利用途には無償で利用可能である
・ソースコードを公開している
・実名でソフトウェアを公開している

 もちろん掲載料等は一切ありません。無料です。ご希望の方は、以下の項目を ringServer@etl.go.jpまでお知らせ下さい。

・責任者の氏名(実名),連絡先(E-mail) ・プロジェクト名
・開発内容
・宣伝文句
・リンク先



7 おわりに

 今までRing Serverを見過ごされていた方は、次にCRLのホームページにいらしたときには、ぜひ、Ring Serverへのリンクをクリックして下さい。ここだけの話ですが、CRLのホームページを経由せずに、直接Ring Serverのホームページへジャンプする場合のアドレスは、http://ring.crl.go.jp/ring/ です。ここから他のサーバへのリンクがありますので、次回からは都合のよいサーバを利用して下さい。

 Ring Server全体に関するご意見、お問い合わせはringServer@etl.go.jpへ、Ring Serverプロジェクトに対するお問い合わせは ringServer-proj@etl.go.jpまでお願いします。

 皆さんからお寄せいただいたご意見、お問い合わせの内容は、ユーザーズボイス のページ(図4)にまとめて掲載しています。

なお、この記事に対するお問い合わせはkawamata@crl.go.jpまでお願いします。


図4 ユーザーズボイスのページ



最後になりましたが、皆さんからのアクセスを
メンバー一同心よりお待ちしています。(^_^)


企画部 情報化推進室