CRLニュース   1996.6 No.244


バイオからディープスペースまで

− 通信総合研究所の平成8年度研究計画 −


企画部 企画課長
福地 一



<重点研究分野>

 通信総合研究所は、電波及び情報通信に関する唯一の国立研究所として、情報、通信、電波にわたり図に示す3つの研究系、7つの重点研究分野を設定して研究開発を積極的に推進します。

3つの研究系と7つの分野


<平成8年度の特徴>

(1)研究開発課題
研究開発課題での大きな特徴は以下の2点です。

(1) 平成7年度から開始している情報通信基盤技術の研究開発の予算が大幅に増加しました。このことをマルチメディアに代表される高度情報社会の実現に向けた基盤技術の研究開発に関する期待の高まりととらえ、産学官の連携をいっそう推進するなど研究開発の加速を図ります。

(2) 電波法改正により、電波の能率的な利用に資する技術に関連する試験・分析にも電波利用料を使用することができるようになりました。この業務は従来から当所が進めている周波数資源の研究開発と密接に関連することから、平成8年度より当所において電波利用料による業務を開始しました。国際的にも周波数資源の逼迫が重要問題となっている現在、当所の研究開発成果に大きな期待が寄せられています。そこで早急に無線設備の技術基準の策定等に役立つ成果を挙げるべく産学官のいっそうの連携など推進体制の整備も含めて積極的に取り組みます。

(2)組織の新設
 阪神・淡路震災を教訓として、大規模災害時におけるライフラインとしての情報通信手段の確保の重要性が広く認識されました。そこで、大規模災害に対する電気通信システムの脆弱性を克服し、信頼性・安全性を確保しながらマルチメディア時代の高度で多様なサービスを可能とする基盤技術の研究開発を行うために、総合通信部に非常時通信研究室を新設します。ただし、この研究は緊急性を要するため、すでに平成7年度の補正予算を活用して先行的に開始されています。

(3)日本での無線通信研究100周年
 通信総合研究所のルーツは、マルコーニの無線通信の成功のわずか1年後、1896年に逓信省電気試験所において電波による無線電信の研究を開始したことに始まるといわれています。そこで、日本での無線通信研究開始100年を記念して講演会、研究発表会、式典等の各種行事を関係機関と協力して行い、今後の無線通信技術の一層の発展の契機にしたいと思います。


<研究者の交流とCOE化への取り組み>

(1)研究者の交流
 研究開発でのブレークスルーの実現には多様な研究者との交流が重要と言われています。また、当所の情報通信系の研究開発では成果の社会への円滑な還元のために産学官のいっそうの連携が求められています。そこで、国内外の関係機関との人材交流を積極的に推進するとともに、科学技術庁フェローシップ、科学技術特別研究員制度、民間との共同研究等を通じて研究交流及び優秀な研究者の確保につとめます。また、電気通信大学、大阪大学との連携大学院制度の活用等により、研修生の受け入れを積極的に推進します。さらに、研究指導力の強化を目指して引き続き客員研究官・顧問を充実します。このような研究環境を基に、各研究分野において中核的研究拠点(COE:Center Of Excellence)化を目指して努力します。

(2)COE育成制度のプロジェクト
 平成6年度に科学技術振興調整費によるCOE化設定領域に選定された「先端的光通信・計測に関する研究」は3年目を迎え、外部中間評価の年度となっています。育成制度の活用により研究スタッフの充実も図られており、研究成果の発信のステージに入ってきています。引き続き光通信・計測分野でのCOEをめざして、研究開発を強力に推進します。

(3)外部評価の実施
  研究所の活性化及び研究成果の社会への適切な還元をいっそう図るため、研究所の運営及び研究プロジェクトに関し、当所の各研究分野の特性を考慮した外部評価を実施します。

今後の研究分野のイメージ図


<中長期計画>

 21世紀を目前に控え、電波、情報通信分野での研究開発は、ますます重要になってきています。電気通信技術審議会諮問第85号「技術創造立国に向けた情報通信技術に関する研究開発基本計画について」答申(平成8年5月) も踏まえ、国の研究機関としての当所のあり方、対象研究分野についての検討を深めます。さらに、主要研究分野毎の中長期の研究計画を引き続き検討します。検討の1例として、今後の当所の研究分野を表すイメージ図を示します。この図は、研究対象分野を「情報・通信系」と「環境・計測系」に大別し、それらを支える研究開発として「基礎・基盤系」を位置づけています。


<重点研究分野の主要課題>

 前述の当所の3研究系毎の主要課題を以下に示します。なお、当所の平成8年度の全プロジェクトと担当組織を表で示します。

(1)情報通信系
 情報通信分野の基礎的研究として電気通信フロンティア研究開発を産官学の連携のもとに引き続き推進します。周波数資源の研究開発に関連して、移動通信、ミリ波LAN、ディジタル放送などの研究開発、試験・分析を実施します。情報通信基盤に関する基礎的・汎用的技術の研究開発として引き続き、超高速ネットワーク、汎用情報端末、映像データベースの各技術の研究開発を実施します。ネットワーク技術の一環として、非常時通信技術の研究開発を実施する他、欧米及びアジア太平洋地域の各国と協力してグローバルネットワークの基盤技術検証実験及びアプリケーション実証実験を実施します。宇宙通信分野では、高度通信放送衛星(COMETS)や次世代通信・放送技術開発衛星(ETS−VIII)による研究開発の推進を引き続き行う他、静止軌道上遠隔検査技術、ギガビット衛星通信システムの研究開発などを推進します。

(2)環境科学系
 21世紀の宇宙基盤技術として不可欠な宇宙天気予報システムの研究開発を推進する他、宇宙・地球環境研究の一環として、南極やアラスカの極域における研究観測を引き続き実施します。太陽擾乱の観測を通じて宇宙天気予報の研究開発に役立てるため、ACE衛星(NASA衛星)の受信・解析システムを整備します。地球環境計測技術に関し、宇宙からの降雨観測のための二周波ドップラレーダ、短波長ミリ波帯電磁波による地球環境計測技術、光領域アクティブセンサーによる地球環境計測技術等の研究開発を継続します。時空系科学分野では電波星からの電波の受信によるVLBI(Very Long Baseline Interferometer)技術及び衛星レーザ測距(SLR:Satellite Laser Ranging)技術を総合した首都圏広域地殻変動の観測実験を推進します。この一環として複数の観測局のデータを超高速ネットワークで結ぶリアルタイムVLBIの先導的実験をNTTと協力し世界に先駆けて行います。周波数の一次標準に関しては、光励起型及び原子泉型セシウム標準器の研究開発を引き続き進めます。

(3)材料物性系
 電気通信フロンティア研究開発や周波数資源の研究開発の一環として、超電導体による高速・高性能通信技術、未開拓電磁波技術、ミリ波・サブミリ波帯デバイスの研究開発を引き続き推進します。


<展 望>

 当所の平成8年度の活動計画を概説しました。ごらんのように、当所の研究対象は、バイオからディープスペースまで、そして、その研究開発の性格はそれぞれ基礎から応用までと2次元的に拡大しています。このような拡大につれ、ますます当所にとって国内外の産学官各セクターとの連携・交流が重要となってきています。


表 平成8年度 研究開発プロジェクト一覧



企画部
企画課 研究調査の推進及び総合調整
研究成果の発表
広報及び研修
技術管理課 計算機の運用
図書・資料の収集・利用・管理
研究資料の出版
無線局の管理及び研究支援用通信設備の維持・管理
機械器具の試作及び開発 
国際研究交流室 電波・電気通信技術の国際協力に関する調査研究
総合通信部
統合通信網研究室 通信網の統合化に関する研究
通信系研究室 陸上移動通信の周波数有効利用技術に関する研究
高速移動通信研究室 マイクロ波帯における高速移動通信技術の研究
放送技術研究室 高度放送システムの研究開発
超高速ネットワーク研究室 マルチテラビット光ネットワークに関する研究
ユニバーサル端末研究室 汎用・福祉型情報端末技術に関する研究開発
高度映像情報研究室 高度情報資源電送蓄積技術に関する研究
通信科学部
信号処理研究室 高次脳機能と神経計算論の研究
情報処理研究室 地球環境計測・情報ネットワークに関する研究開発
通信方式研究室 ディジタル通信方式に関する研究
宇宙通信部 超高速衛星通信システムの研究開発
衛星通信研究室 高度衛星通信システムの研究開発
移動体通信研究室 移動体衛星通信技術の研究開発
宇宙技術研究室 宇宙通信の要素技術に関する研究
衛星間通信研究室 宇宙通信システムに関する研究
電磁波技術部
通信デバイス研究室 通信用アンテナに関する研究
ミリ波・サブミリ波帯デバイス技術に関する研究
ミリ波技術研究室 ミリ波構内通信技術の研究開発
光技術研究室 新光技術の開発に関する研究
光領域周波数帯の研究開発
電磁環境研究室 電磁環境に関する研究
宇宙科学部
電磁圏研究室 電離圏情報の収集と提供
電磁圏に関する研究と観測
宇宙空間研究室 極域における電波観測
STEP計画参加課題の研究推進
宇宙空間物理の研究
宇宙計測研究室 宇宙計測に関する研究
地球環境計測部
電波計測研究室 電波計測技術に関する研究
光計測研究室 地球環境の光学計測に関する研究
環境計測技術研究室 地球環境の新しい計測技術に関する研究
環境システム研究室 地球環境計測技術に関する国際共同研究
標準計測部
原子標準研究室 原子標準の高精度化と応用に関する研究
時空計測研究室 高精度時空計測の研究
時空技術研究室 宇宙測地技術の応用に関する研究
周波数標準課 標準周波数・標準時の設定、比較と供給業務
標準周波数・標準時に関する調査研究
測定技術課 測定器の較正
型式検定
型式検定標準試験法の研究
第一特別研究室 先端的光通信・計測に関する研究
第二特別研究室 太陽地球系の基礎研究
第三特別研究室 超高速光エレクトロニクスの研究
関東支所
鹿島宇宙通信センター
ETS-VISバンド/ミリ波通信研究開発センター
地球観測技術研究室 リモートセンシング及び衛星電波伝搬に関する実験研究
宇宙通信技術研究室 衛星通信の実験研究
宇宙電波応用研究室 宇宙電波・VLBIに関する研究
宇宙制御技術研究室 宇宙システムの制御技術の研究
関東支所 平磯宇宙環境センター
太陽研究室 太陽擾乱余地に関する研究
宇宙環境研究室 太陽惑星間環境に関する研究
宇宙天気予報課 宇宙天気予報システムの開発
関西支所
知覚機構研究室 知覚機構モデルによる知的情報処理の研究開発
知識処理研究室 通信網の高機能化に関する研究
知的機能研究室 高次知的機能の工学的実現に関する研究
超電導研究室 赤外・ミリ波技術の研究
コヒーレンス技術研究室 量子光技術の基礎と応用に関する研究
電磁波分光研究室 レーザの新技術と分光・計測への応用に関する研究
生体物性研究室 生体物性の計測及び解明に関する研究
生物情報研究室 生物情報の計測技術及び解明に関する研究
ナノ機構研究室 高度情報通信のための分子素子技術の研究開発
稚内電波観測所 稚内における電離層定常観測
稚内における研究観測
犬吠電波観測所 犬吠における研究観測
山川電波観測所 山川における研究観測
沖縄電波観測所 沖縄における電離層定常観測
沖縄における研究観測
ジョイントプロジェクト 南極観測本部
宇宙開発計画検討委員会
電子計算機運用委員会
時空計測研究推進委員会
ETS-VI実験実施本部
通信放送技術衛星計画推進本部
地球観測衛星実験グループ
宇宙天気予報研究計画推進本部
首都圏広域地殻変動観測施設整備推進本部
周波数資源研究開発推進本部
中核研究拠点 (COE) 化推進会議
情報通信基盤研究開発本部
国際ネットワーク実験推進連絡会



平成8年度通信総合研究所予算の概要


総務部 会計課



 平成8年度予算案は、平成7年12月20日大蔵原案内示、その後復活折衝を経て同月25日の概算閣議において決定。第136回国会(常会)に1月22日に提出されたが住専処理問題で審議が進まず、50日間の暫定予算を組んだ後、110日間と戦後第2位の審議期間を経て、5月10日に参院本会議で成立した。


平成8年度予算の内容は、

総額140億6,882万円
7年度当初予算比39.3%(39億6,948万円)の増。


内訳を見ると、

人件費は、31億291万円(7年度比2.7%、8,052万円の増)
物件費は109億948万円(7年度比55.3%、38億8,359万円の増)
旅費は、5,643万円(7年度比10.5%、538万円の増)
となっている。

事項別内訳を別表に示すがその概要は次のとおり。


1 公共投資重点化枠

 情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発
 平成7年度に新規事項として発足して2年目のプロジェクトである。超高速ネットワーク、ユニバーサル端末、高度情報資源電送蓄積の3分野の研究開発の研究項目の拡大等の施設整備が認められた。

 研究開発・実験等の拠点となる「マルチメディア研究センター(仮称)」の建設が進行しており、平成8年度中に完成する予定である。(平成8年度経費 31億6,200万円)


2 電波利用料への振替えと新規事項

 無線局の急増による周波数の逼迫状況に対処するために、電波利用料の使途を拡大し、電波のより能率的な利用に資する技術に係る試験・分析事務を行うことになった。

 従来の周波数資源の研究開発から、5つの事項(別表二2.3.4.6.7.)を電波利用料事項へ振替えた。

 新規事項が3件(二1.5.8)認められた。(平成8年度経費 20億316万円)


3 新規事項が7件認められた。

1. 電気通信フロンティア技術の研究開発
★自律的知的ソフトウェアエージェントの設計原理の研究開発

 予測できない状況で適切な対処を取ることのできない機械システムやソフトウェアの脆さを克服するために、自主的に学習・判断し、自らを進化させていく能力を備えた自律型知的ソフトウェアエージェントの設計原理を解明するための研究開発が認められた。 (平成8年度経費 1,449万円)

2. 地球環境計測技術の研究開発
★海底電磁界観測システムの研究開発

人工雑音・自然雑音の少ない深海底において、地震前兆の超長波を観測し、発生源の場所、強度等を算出して、地震の場所、規模等を定量的に予知するためのシステムの整備が認められた。 (平成8年度経費 4,530万円)

3. 宇宙通信技術の研究開発
★静止軌道上遠隔検査技術の研究開発

 遠隔操作型多関節マニピュレータ、高精細カメラ及び大容量画像通信技術を組み合わせ、視点を自由に変えて画像情報を取得するための遠隔検査技術の研究開発が認められた。 (平成8年度経費 4,360万円)

★ギガビット光衛星通信システムの研究開発

 地上の光ファイバ通信システムにおいて開発が進められている数十Gbpsの電送速度を持った高速ネットワークを宇宙に広げ、レーザ光を用いた静止衛星と地上局との通信リンクの研究開発が認められた。 (平成8年度経費 4,754万円)

4. グローバル広帯域ネットワークの実用実験
 グローバル広帯域ネットワークの構築にあたり、国内外の広帯域ネットワークの構築にあたり、国内外の広帯域ネットワーク及びそのアプリケーションや端末間の相互接続・運用性の確保のために必要な検証実験とソフトウェアの開発が認められた。 (平成8年度経費 1億8,857万円)

5. アジア・太平洋地域における情報通信基盤技術の開発
 アジア・太平洋地域における情報通信基盤の整備、高度化に資するため当該地域における情報通信基盤の構築及び接続を促進するテクノロジーセンター・テストベットセンターの整備が認められた。 ( 平成8年度経費 1億4,214万円)

6. 非常時通信技術の研究開発
 大規模災害時等の通信網の脆弱性を克服するために、耐災害性電気通信システム及びマルチメディア通信に対応した蓄積系技術による、非常時通信交換方式の研究開発が認められた。 (平成8年度経費 4,750万円)


4 組織・要員

1. 総合通信部に非常時通信研究室の新設が認められた。
2. 研究員4名の増員が認められた。


5 継続プロジェクト

1. 次世代通信・放送分野の研究開発衛星の研究開発
平成13年度頃に打上げを予定している、ETS-VIII搭載用機器の開発が認められた。 (平成7年度比 69.3% 8,578万円の増)

2. 首都圏広域地殻変動観測施設の整備
 平成7年度補正予算により整備を完了した、VLBI局、SLR局の運用経費と保守費が認められた。 (平成8年度経費 5,416万円)


6 その他

・CATVを利用したPHSシステム標準化試験施設の整備
上記事項は、平成7年度単年度プロジェクトにより、終了した。



平成8年度予算額総括表

(単位:千円)

区  分

:新規事項
平成8年度
予算額
A
平成7年度
予算額
対前年度
増減▲額
A - B
対前年度
比(%)
A/B

(組織)通信総合研究所

14,068,817 10,099,337 3,969,480 139.30%
人件費 3,102,911 3,022,402 80,509 102.66%
旅 費 56,431 51,050 5,381 110.54%
物件費 10,909,475 7,025,885 3,883,590 155.28%

ー 重要事項

4,443,042 4,543,768 -100,726 97.78%

1電気通信フロンティア技術の研究開発

565,256 521,899 43,357 108.31%
1.共通経費
2.超伝導体による高速・高性能通信技術の研究開発
3.知覚機構モデルによる超高能率符号化技術の研究開発
4.超多忙・可逆的ネットワーク基礎技術の研究開発
5.次世代通信のための高次知的機能の研究開発
6.インテリジェントヒューマンインターフェースの研究開発
7.未開拓電磁波技術の研究開発
8.生体機能に関する研究開発
9.高度情報通信のための分子素子技術の研究開発
10.自律的知的ソフトウェアエージェントの設計原理の研究開発
35,741
80,298
35,521
45,386
35,680
34,831
121,778
85,721
75,810
14,490
37,205
73,041
33,856
44,408
33,757
33,675
116,474
80,151
69,332
0
-1,464
7,257
1,665
978
1,923
1,156
5,304
5,570
6,478
14,490
96.07%
109.94%
104.92%
102.20%
105.70%
103.43%
104.55%
106.95%
109.34%

2 地球環境計測技術の研究開発

477,031 395,129 81,902 120.73%
1.短波長ミリ波帯電磁波による地球環境計測技術の研究
2.光領域アクティブセンサーによる地球環境計測技術の研究開発
3.地球環境計測・情報ネットワークに関する研究開発
4.高分解能三次元マイクロ波映像レーダによる地球環境計測・予測技術の研究
5.地球環境のための高度電磁波利用技術に関する国際共同研究
6.海底電磁界観測システムの研究開発
56,364
29,800
17,398
120,754
207.415
45,300
56,349
23,580
17,463
121,684
176,053
0
15
6,220
-65
-930
31,362
45,300
100.03%
126.38%
99.63%
99.24%
117.81%

3 周波数資源の研究開発

70,760 30,108 40,652 235.02%
1.光領域周波数帯の研究開発 70,760 30,108 40,652 235.023%

4 宇宙通信技術の研究開発

1,799,850 1,590,188 2,089,662 113.18%
1.宇宙電波による高精度時空計測技術の研究開発
2.衛星間通信技術の研究開発
3.宇宙天気予報システムの研究開発
4.宇宙からの降雨観測のための二周波ドップラレーダの研究
5.高度衛星通信放送技術の研究開発
6.小型衛星通信技術の研究
7.分散衛星システムによる宇宙通信の研究
8.次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究開発
9.首都圏広域地殻変動観測施設の保守整備
10.静止軌道上遠隔検査技術の研究開発
11.ギガビット光衛星通信システムの研究開発
104,650
131,001
74,564
130,010
904,181
52,562
48,000
209,578
54,164
43,600
47,540
73,877
212,704
78,578
133,853
822,173
29,991
54,197
123,795
1,020
0
0
30,773
-81,703
-4,014
-3,843
22,008
22,571
-6,197
85,783
53,144
43,600
47,540
141.65%
61.59%
94.89%
97.13%
102.49%
175.26%
88.57%
169.29%
5310.20%

5 特別研究

7,933 6,444 1,489 123.11%
1.STEP計画期間における関連観測の強化 7,933 6,444 1,489 123.11%

6 情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発

1,132,963 2,000,000 -867,037 56.65%

7  グローバル広帯域ネットワークの実用実験

188,568 0 188,568

8  アジア・太平洋地域における情報通信基盤技術の開発

142.144 0 142.144

9  非常時通信技術の研究開発

47,500 0 47,500

10  組織・要員

11,037 0 11,037

二 電波利用料

2,003,157 1,102,293 900,864 181.73%
1.移動体通信用無線局のデジタル化及びナロー化技術
2.放送用周波数有効利用技術
3.インテリジェント電波有効利用技術
4.マイクロ波帯における移動通信技術
5.同一チャンネル干渉軽減技術
6.ミリ波・サブミリ波帯デバイス技術
7.ミリ波構内通信技術
8.電波監視機器等の整備・維持運用
307,000
202,388
310,220
175,131
186,715
369,300
378,000
74,403
0
160,329
279,153
134,604
0
237,950
290,257
0
307,000
42,059
31,067
40,527
186,715
131,350
87,743
74,403

126.23%
111.13%
130.11%

155.20%
130.23%

三 公共投資重点化枠

3,162,000 0 3,162,000
1.情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発 3,162,000 0 3,162,000

四 その他の経費

4,460,618 4,453,276 7,342 100.16%
1 皆減皆増の経費*
2 標準予算系統*
169,830
4,290,788
250,458
4,202,818
-80,628
87,970
67.81%
102.09%

*皆減皆増の経費:
電磁環境測定装置及び測定法の研究開発、電離層観測緒施設整備、無線機器の型式検定等施設整備、標準電波施設整備

*標準予算系統の経費:
一般行政、人当経費、一般管理経費、経常研究、電離層諸現象の国際観測等、宇宙空間の実験研究、標準電波施設の維持運用、無線機器の型式検定等、電子計算機システムの維持運用、実験研究用共通施設の維持運用、特別経費



「快適な越冬生活」36次越冬報告


企画部技術管理課 稲森 康治
宇宙科学部宇宙空間研究室 大高 一弘


昭和基地に来たアデリーペンギン


 第36次南極地域観測隊は平成6年11月14日に紙テープに隠れる家族の顔と大段幕を見ながら、ゆっくりと晴海埠頭を後にした。

 今回の2名は、共に2度目の越冬で、稲森28次隊、大高31次隊と数年ぶりの南極へのスタートとなった。南極観測船「しらせ」の出航セレモニーも懐かしく、本当にまた行くんだなぁと感じずにはいられなかった。「しらせ」は、晴海出航後、一路オーストラリアのフリーマントル港を目指した。航海中、恒例のレイテ沖の洋上慰霊祭や赤道祭等が行われ、船内生活に退屈することなくフリーマントル港に2週間後に到着した。フリーマントルでは、生鮮食料や燃料搭載が6日間かけ行われ、その間、荷役作業以外の空いた時間には、周辺を観光し1年4ヶ月間の文明社会との別れを惜しんだ。物資搭載も終了し12月3日にいよいよ南極昭和基地へとフリーマントル港を出発した。南極への関門、暴風圏も大きな動揺も無く無事通過。間も無く流氷、氷山が私たちを出迎えてくれた。南極の大自然に小さなオレンジ色の「しらせ」が仲間に入るかのようにとけ込んで一路昭和基地に向け進んでいった。基地が近づくにつれ各種夏オペレーションの打ち合わせが盛んに行われ、否が応でも、船の揺れでボーっとしていた頭も引き締まってきた。

 晴海出航からおよそ1ヶ月後の12月18日に35次隊宛の家族からの手紙を乗せた第1便ヘリが昭和基地に飛び、我々も12月20日にはヘリにより昭和基地入りした。数年ぶりの昭和基地を懐かしむ間もなく、夏の建設作業がスタート。着いたその日からいきなり夜12時までの残業には、2月1日越冬交代後迄続く夏作業に気が遠くなった。

 我々の作業は、宙空系の夏オペレーションのメインである、HFレーダ建設で始まった。このレーダは、極域上空の電離圏プラズマドリフト速度を広範囲に観測するためのもので、南極及び北極域の他の短波レーダと共同観測することにより磁気圏全体のプラズマ対流の変化を観測するものです。

 アンテナにはHF帯ログペリアンテナを20基、横幅で220mにも及ぶ大きなシステムで、この建設には宙空系隊員を中心に延べ作業人数370人日と最も人員を要し、36次夏期間のオペレーション中でも、最大の作業となった。

HFレーダアンテナの基地

 アンテナ建設作業は1月下旬には終了しこの作業から解放されても、まだまだ、他の仕事が待ちかまえており休む間もなく2月1日の越冬交代を迎えた。

越冬に入り、いよいよ自分たちの観測が始まる。

 稲森は、電離層定常観測部門として、電離層垂直観測、オーロラレーダ観測、リオメータによる電離層吸収観測、短波電界強度観測、オメガ電波受信観測、衛星受信観測等の定常観測を行った。これらの観測は、越冬中は特に大きなトラブルは無かったが、新規に持ち込んだ50MHzオーロラレーダの送受信系のアンテナには、手を焼いた。送信アンテナ5本、受信アンテナ32本もあり、ブリザードの度に何らかの破損が生じ、7月8月の−20〜−30度の外作業は大変辛い思いがした。37次越冬交代時に補強したので、当分は、大丈夫と思われる。

 大高は、宙空観測部門としてオーロラ光学観測、HFレーダ、データ伝送実験を担当した。オーロラ光学観測は3月より10月迄の間、天気がよければ毎晩観測で、太陽を毎日見ない生活であった。HFレーダは国内ではヒートランができなかったため、ハード・ソフト共に安定運用にはいるまで多くの時間を費やし、他の基地との共同観測は、8月からのスタートとなった。アンテナは他の観測点で実績のある製品を使用していたが、ブリザードの度に、ボルトがゆるむというトラブルが発生し、冬タワーに登っての点検整備作業はとても大変であった。また10月には1基のアンテナが最大級のブリザードにより、倒れるという事故もあり、オーロラレーダ同様アンテナには手をやいた。観測データ伝送実験では、38次隊での昭和基地内ネットワーク構築の準備として、基地内LANの一部敷設と、インマルサット衛星を利用した日本との接続を行った。1日1回の接続で、日本国内同様とは行かないまでも、e-mail等も使用可能となった。

 また観測データのサマリーファイルの伝送もスタートし、データが1年待たずに国内で見られるようになった。日本の越冬隊員も我々隊で延べ1,000人目を数えた。この40年間に築いた多くの建築物が、基地内所狭しと立ちならんでいる。近年では、南極各基地の中でも最大の11m大型パラボラアンテナ、3階建てで食堂、医務室、バー、通信室、倉庫等ある立派な“管理棟”、屋台・餅つきの出来る広い各居住棟間を結ぶ“通路棟”等々大型且つ近代的な建築物が増え、昭和基地内生活環境の進歩が目覚ましい。電話はインマルサットを使用するため使用料が高いが、デジタル回線を新たに設置したため、750円/分から440円/分と安くなり特に割引時間帯(4:00〜14:30JST)には250円/分になり家族との連絡に非常に助かった。今まで主流の通信手段であった短波回線を使った電報が、銚子無線局の電報業務廃止等により36次隊で終了し、電報は衛星回線FAXを使う方式となり、通信隊員の業務の負担が軽減された。

昭和基地の電離棟とアンテナ

 また、いままで施設では越冬中に基地建物内に虫が発見される事は考えられなかったが、管理棟、通路棟などにより生活環境が充実したおかげか、ついに、正体不明のアブのようなハエのような小さな虫や、手足の長い蚊のような虫が出現した。今後は、国内と同様にゴキブリ・ハエ・蚊等の駆除が必要になるのでは?と予想される。  棟内の生活環境は、大変良くなってきているが、一歩外へ出れば、やはり南極、ブリザードも年間で24回到来し、36次隊昭和基地でも瞬間最大風速49m/s、最低気温も−39.9度を記録し、大自然の厳しさは1次隊時代からまったく変わっていない。

 越冬中の生活はけっして、退屈することはなかった。各隊員が、新聞係・娯楽係・教養係・農協・漁協など20を越える生活諸業務を分担し、日刊紙の発行、誕生会、スポーツ大会、南極大学、野菜の栽培(胡瓜、もやし、かいわれ大根つまみ菜等)、釣り大会等々楽しみながら過ごすことが出来た。特に、6月の夏至(昭和基地では太陽が昇らない)に毎年行われる恒例のミッドウインター祭では、以前は30畳程の旧食堂棟の限られたスペースで各種行事をこなしたが、今回は、管理棟(ディナーパーティー・ゲーム大会etc.)、通路棟(屋台村)、HFアンテナ(巨大イルミネーション)、直径8mのアイスドーム(ディスコパーティー)、作業工作棟(バーベキュー)、海氷上(雪上車パレード)、建物のドリフトを利用した30名収容可能な大かまくら(居酒屋)等々大がかりに行い、準備・運営は大変ではあったが、楽しく大いに盛り上がった。

電波の日の電離棟 (左端:稲森隊員)

また、太陽の出ない暗い冬には、オーロラウォッチングが盛んになり、写真では表現できないほど大変幻想的な美しさに感動し、実際に見れる喜びを再び味わった。

 太陽が戻る春から夏の季節には調査・観測・遠足等の野外行動が盛んになる。海氷上には、10月頃からかわいいアデリーペンギン、ウエッデルンアザラシ達が姿を現しはじめる。また、基地周辺露岩地帯の山には純白のユキドリ達が飛び回り、私たちを飽きさせることなく楽しませてくれた。

 12月中旬には、37次隊が昭和基地入りし、我々の越冬も終了となるが、1年間の思い出にふける間もなく、連日連夜の帰国準備、観測引き継ぎ、夏作業の支援等であっという間に2月1日の越冬交代となった。この原稿を考えているとき、ようやく落ちついて振り返ることが出来た気がする。

 最後に、越冬生活を無事に終えられたことにたいして、関係各位並びに、留守を守ってくれた妻と子供達に感謝いたします。



第90回研究発表会を開催


企画部企画課 成果管理係
山田 慎太郎



 去る平成8年6月5日に第90回研究発表会を開催しました。発表題目は以下の通りです。


1. <無線通信研究100周年記念講演>

  無線通信の将来展望と課題

好評を博した森永教授の講演

=情報通信系=

2.技術試験衛星VI型(ETS-VI)による通信実験の成果
   (1)実験の概要
   (2) Sバンド及びミリ波通信実験
   (3)光通信実験

3.大電力マイクロ波送電のための高効率レクテナの開発
  −マイクロ波による飛行船駆動実験への応用−

=環境科学系=

4.短波海洋レーダを用いた波浪スペクトルの推定

=材料物性系=

5.ペニングトラップによるレーザー冷却と高分解能分光

=研究開発計画=

6.マルチメディアネットワーク実験計画

(1) 国際実験計画
  その1 G7パイロットプロジェクト:GIBN実験計画
  その2 アジア・太平洋情報通信基盤構築 (APII)のための国際共同研究・実験

(2)国内実験計画


 今回は無線通信研究100周年記念ということもあり、阪大・森永教授による記念講演を行いました。研究発表会でははじめての試みでしたが、より高度化の期待される無線通信技術について説明された講演は大変好評でした。

また、技術試験衛星VI型というのは「きく6号」と言われる人工衛星のことです。残念ながら静止軌道上に乗せられなかった例の衛星ですが、困難を乗り越えて行われている各通信実験の成果の発表を行いました。

 他の発表についても実験に使われた機材を展示したり、実験光景をビデオ上映したりと文字や図だけではない発表を行いました。特に6(2)のマルチメディアネットワーク実験計画の国内実験計画の発表では、実際に会場でハイビジョン映像を用いて当所関東支所鹿島宇宙通信センター及び幕張の放送教育開発センターとの中継実験を行い、臨場感のある発表となりました。

当日は、所外から188名の方が御来聴され、発表後には直に講演者と質疑応答をしていただき、活発に意見交換をしていただきました。休憩時間中には前述のHDTV会議実験システムなどの施設公開も行い、好評の内に幕を閉じました。

ハイビジョンでの会議実験



施設一般公開のお知らせ


企画部企画課 広報係
西山 巌



 じめじめした梅雨の季節を迎え、気分も少し憂鬱な感のするところですが、梅雨の向こうには暑い夏の日がすぐ控えています。夏の恒例行事といえば通信総合研究所施設一般公開。今年も、例年通りに、

8月1日(木)午前10時〜午後4時

 小金井本所、鹿島・関西の各センター、各観測所の一般公開を開催します。平磯宇宙環境センターについては、その地域性から、7月20日(土)海の日に市の催しに合わせて一般公開を行うこととなりました。

 暑い夏の一日、科学技術の最先端を直接肌で感じるいいチャンス、子供から大人まで楽しめる催しを用意していますので、皆様ご多忙とは存じますが、多数のご来場を心よりお待ちしております。

(問い合わせ先)

8月1日(木)開催
通信総合研究所小金井本所    電話 0423-27-7465
関東支所鹿島宇宙通信センター  電話 0299-82-1211
関西支所関西先端研究センター  電話 078-969-2100
稚内電波観測所         電話 0162-23-3386
犬吠電波観測所         電話 0479-22-0871
山川電波観測所         電話 0993-34-0077
沖縄電波観測所         電話 098-895-2045

7月20日(土)開催
関東支所平磯宇宙環境センター  電話 0292-65-7212



職員等全員が顔写真付き名札を着用


総務部 庶務課
飯塚 幸義



 5月1日より名札の着用が始まりました。名札を着用するきっかけとなったのは部長会議の席上、本所の研究者数が約200名いるのに対し研修生や特別研究員が100名以上いることに加え請負等で常駐している職員も含めると当所職員との区別もつかない状況になっていること。更に外来者も多いことから、同じ職場で勤務しながらお互いの顔や名前も分からなければ外来者との区別もつかない状況にあり、セキュリティ上も問題があるので職員も含め名札を着用する方向で検討してみてはどうかとの意見が出された。その後まもなく当所の隣にショッピングセンター建設計画の話が持ち込まれ、これがオープンした場合には当所周辺道路及び構内への無断駐車や一般人の所内への立入りも憂慮されることから、一気に話が実施の方向に発展した。

 名札の検討は総務部と企画部が中心となり、どのようなものにするか、着用する範囲等について検討した結果、写真入りでIDカード兼用のものとし、職員を含め研究所に常駐する全員を対象とすることで決定した。名札の下の部分には職員によって5色に色分けをしてあり、IDカードとしての機能も職員用から単純名札としてのみ使用するものまで夫々に分けてある。

 名札は支所、センター、観測所分についても作成したが、着用については夫々の地域とか事情によって異なるため一任することとした。しかし、本所へ来る時は必ず持参し着用してもらうようお願いをしている。作成枚数は約650枚であり通信総合研究所職員に対するその他の職員の割合は約35%となっている。

 準備にあたり多少の反対意見もあるものと予想していたが、それが全くなく、むしろ全員が協力的であったことは画期的といえる。これは大部分の方が何らかの方法でお互いを知る必要性を感じており、今回の名札の着用に理解を得られた結果と考えられる。最初の作成は庶務課のOA推進室にお願いしたが、その後の追加及び修正にあたっては機械を扱ったことがない者が担当したために配布が遅れる等で一部の方にご迷惑をおかけすることとなった。名札としての使用は勿論だがIDカードを使用したいろいろなサービスを提供できるようにしたいという考えもあり、今後の展開に期待したい。

 最後に、名札作成にあたり庶務課OA推進室の森谷、企画課の石川両氏に多大の協力を頂いたことに感謝します。



学位取得


久木 幸治

平成8年3月6日
東北大学  博士(理学)

A Study on Surface Waves Using High-Frequency(HF) Ocean Radar
(短波海洋レーダーを用いた表面波に関する研究)



 気候変動などを含む広範な地球環境問題に対処していくためには、大気海洋相互作用の実態を解明する必要がある。その大気海洋相互作用は海面を通して行われる。海上に風が吹くと、運動量・熱エネルギーなどの交換が起こり、それと同時に海面に波浪が生じる。海洋表面波の発生と発達は、大気海洋相互作用の一側面である。従って、広域海面の海洋表面波を計測し、研究することは、大気海洋相互作用の物理機構の理解にとって重要である。

 広域の海面の波浪を計測する上で、リモートセンシング技術は極めて有効な手段である。その中でも、短波海洋レーダは継続的に海洋表面波の計測ができるといった点に特徴がある。短波海洋レーダは、短波帯の電波を海面に照射し、後方散乱を受信し、解析することによって、海流や波浪スペクトルなどを測定する装置である。本研究では、短波後方散乱と波浪の種々の物理パラメータとの関係を理論的考察と観測により明らかにし、短波海洋レーダを用いて海洋表面波に関するより高次の情報を推定する手法を開発した。

 主な結果は以下のようになる。まず短波の海面散乱のドップラスペクトルを利用することにより、従来困難であった束縛波の検出、及びその理論検証が可能であることを示した。そしてドップラスペクトル及び波浪スペクトルのデータを解析し、二次オーダまでの短波の海面散乱の摂動理論の上限を示した。次に線形化などの近似をせず、ドップラスペクトルから波浪スペクトルを求めるインバージョン手法を初めて開発した。さらにこの手法を実際のデータに適用し、波浪スペクトルを求め、ブイによる測定値と比較し、今回開発された手法が、 波浪スペクトル推定において、充分に機能することを確かめた。


杉浦 行

平成8年3月31日
東京工業大学 博士(工学)

Study of the Characteristics of Radiated EMI Measuring Facilities
(放射妨害波の測定装置の特性に関する研究)



 コンピュータなどの電気・電子機器から放射される電波雑音(放射妨害波)による無線障害を低減するために、 妨害波の許容値と測定法が国際的に取り決められており、我が国でも国際規格(CISPR規格)に準拠した国内法規に従ってメーカ等が測定を行っている。本論文は、この妨害波測定の誤差要因である各種測定装置の特性を総合的に研究したものである。

放射妨害波の測定は屋外の広い測定場で行われ、被測定機器から放射される妨害波をアンテナで受け、その受信電圧を妨害波測定器で測定する。従って、先ず妨害波測定器の応答を研究し、

(1) 市販されている妨害波測定可能スペクトラム・アナライザの問題点と対策を明らかにした。また、
(2) 平均値型測定器の繰り返しパルス応答を解析したが、その成果はCISPR規格に採用された。次に測定用アンテナに関して、
(3) 市販の各種ダイポール・アンテナの特性を解明し、アンテナの違いによって生じる測定誤差を検討した。さらに、
(4) 妨害波測定場の適性評価に用いるサイトアッテネーションの理論を確立し、CISPR規格やANSI規格の誤りを指摘した。また、
(5) 実測結果と良く一致するサイトアッテネーションの理論値や、
(6) 補正係数をモーメント法を用いて計算した。この補正係数は電気通信技術審議会の審議を経て、郵政省から告示され、我が国の妨害波測定場の適性評価に広く利用されている。さらに、
(7) 妨害波測定用アンテナの校正法についても検討し、現行ANSI規格の誤りを指摘し、改良法を提案した。この改良法は、当所のアンテナ校正業務等にも利用されている。

 以上、本研究の成果は国際規格や国内規格に既に採用されており、産業界や電波監理行政に広く利用されている。 



外部誌上発表


Applied Optics (1995年11月)

COMPARATIVE EFFECTS OF OPTICAL-CORRELATOR SIGNAL-DEPENDENT AND SIGNAL-INDEPENDENT NOISE ON PATTERN-RECOGNITION PERFORMANCE WITH THE PHASE-ONLY FILTER
JC. テリヨン

IEEE Trans. Geosci. Remote Sensing (1995年11月)

Development of an active radar calibrator for the TRMM Precipitation radar
熊谷 博、古津 年章、佐竹 誠、花土 弘、岡本 謙一

Journal of Geophysical Research (1995年11月)

Comparison of Thermospheric Meridional Winds Derived from F2 Region Peak Heights with the Winds Derived by the MU Radar 稲森 康治 猪木 誠二、W.L.Oliver、小川 忠彦、深尾 昌一郎

Molecular Biology of the cell (1995年11月)

Nucleolar Accumulation of Poly(A)+ RNA in Heat-Shocked Yeast Cells:Implication of Nucleolar Involvement in mRNA
Transport
谷 時男、Robert.Derby、平岡 泰、David.Specto

Molecular Electronics and Bioelectronics 応用物理学会・有機分子・バイオエレクトロニクス分科会会誌 (1995年11月)

モータータンパク質分子列による滑り運動方向の制御
鈴木 仁、大岩 和弘、山田 章、榊原 斉、中山 治人、益子 信郎

システム制御情報学会誌 (1995年11月)

MRF Model Based Restoration of Multiple Texture Images
M.N.SHIRAZI、野田 秀樹

南極資料 (1995年11月)

合成開口レーダ(SAR)画像を用いた南極域の雪氷の研究
高橋 晃、藤井 理行、長 幸平、西尾 文彦、古川 昌雄、渡邊 興亜

日経コミュニケーション (1995年11月)

情報通信早わかり講座 モバイル情報通信 15フェージングの対策技術
横山 光雄

日経コミュニケーション (1995年11月)

情報通信早わかり講座 モバイル情報通信 16携帯端末の構成技術
横山 光雄

機関誌「工業教育」(隔月号、全国工業高等学校長協会発行) (1995年11月)

宇宙測地技術を用いた地殻変動観測
野尻 英行

月刊 海洋 (1995年11月)

航空機レーダによる海洋の可視化
増子 治信、小林 達治、熊谷 博、堀江 宏昭、浦塚 清峰

TELECOM Frontier (1995年11月)

マルチメディア移動通信のための無線伝送技術の開発
守山 栄松

「脳から心へ −高次機能の解明に挑む− 」岩波書店 (1995年11月)

注意を見る
宮内 哲

Applied Physics(A), Solids and Surfaces (1995年12月)

Angle resolved ultraviolet photoelectron spectroscopy of epitaxial films of vanadyl-phthalocyanine grown on alkali halides
川口 隆文、多田 博一、小間 篤

Geophysical Research Letter (1995年12月)

Stratospheric Ozone Changes at 43N and 36N over Japan between 1991 and 1994
近藤 豊、Y.Zhao、内野 修、永井 智広、藤本 敏文、板部 敏和、水谷 耕平

IEICE Transactions on Communications (1995年12月)

Footprints of Storms on the Sea in the JERS-1 SAR Image
井口 俊夫、D. Atlas、岡本 謙一、住 明正

ITVジャーナル (1995年12月)

21GHz帯衛星放送システムの研究動向とCOMETS衛星放送実験計画の概要
福地 一、大嶋 猛司

J.Atmos. Terr. Phys. (1995年12月)

Perspectives of present and future space weather forecasts
丸橋 克英

Journal of Geomagnetism & Geoelectricity (1995年12月)

Evolution of the solar Wind Structure in the Acceleration Region during 1990-1993 (STEP Interval)
徳丸 宗利、森 弘隆、田中 高史、近藤 哲朗

Journal of Oceanography (1995年12月)

Observation of the Kyucho in the Bungo Channel by HF Radar
武岡 英隆、田中 良男、大野 裕一、久木 幸治、灘井 章嗣、黒岩 博司

Journal of Physics of Earth (1995年12月)

Application of Space Techniques to Geodesy and Geodynamics in Japan
加藤 照之、今江 理人、村田 正秋、佐々木 稔、国森 裕生

Space Communications (1995年12月)

Design Considerations of Gigabit Communications Satellites
飯田 尚志、門脇 直人、高野 英二、青山 順一

STEL Newsletter (名古屋大学太陽地球環境研究) (1995年12月)

宇宙天気予報シンポジウム
丸橋 克英

月刊 エレクトロニクス(オーム社) (1995年12月)

よみがえるミリ波、地球環境リモートセンシング(計測応用)への展開
増子 治信

語法研究と英語教育 (1995年12月)

乳児の音声知覚能力の発達的変化
佐々木 緑、対馬 輝昭、滝澤 修、河野 守夫

情報通信ジャーナル(テクノロジー最前線) (1995年12月)

雲をつかむミリ波雲レーダー地球温暖化の解明に眺む
熊谷 博

電気学会・論文誌A分冊・基礎・材料部門誌 (1995年12月)

ポリマー電解質型帯電防止樹脂中の空間電荷分布の観測
福永 香、前野 恭

電気学会・論文誌A分冊・基礎・材料部門誌 (1995年12月)

パルス静電応力法とレーザ誘起圧力パルス法の比較実験
前野 恭、福永 香

電磁環境工学情報 (1995年12月)

1GHz以上の周波数帯の妨害波とディジタル無線通信システムへの影響−電子レンジ妨害波の特性とPHSへの影響−
篠塚 隆、山中 幸雄、宮本 伸一、森永 規彦

電波受験界 (1995年12月)

新しい時刻標準の供給方法
今村 國康、大塚 敦、瀬端 好一

東京都立科学技術大学紀要 (1995年12月)

マイクロ波散乱計による散乱実験I −誘電体の誘電率の測定と散乱の時間応答の測定−
石井 聡、小口 知宏、真鍋 武嗣、佐藤 勝善、水津 武

日本赤外線学会誌 (1995年12月)

巻頭言 「続遠赤外雑感」
阪井 清美

日経コミュニケーション (1995年12月)

情報通信早わかり講座 モバイル情報通信 17 音声の符号化伝送モデム通信
横山 光雄

日経コミュニケーション (1995年12月)

情報通信早わかり講座 モバイル情報通信 18 携帯電話サービスのシステム仕様
横山 光雄

電気学会編「光波センシングとレーザ」 (1995年12月)

第2章2.3固体レーザ 第5章5.5.3距離測定
石津 美津雄

Publ. Astr. Soc. Japan (1995年12月)

Millimeter-Wave Spectra of Compact Steep-Spectrum Radio Sources
亀野 誠二、井上 充、松本 欣哉、宮地 竹史、御子紫 廣、高羽 浩、岩田 隆浩、高橋 幸雄、小山 泰弘、Nan Rendong、R.T.Schlizz

レーザ学会誌「レーザー研究」 (1995年12月)

新しいパルススクイーズ光の発生方法
周 駿

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1995年12月)

誤差検出による耐干渉復号を適用した16QAM 方式の検討
浜口 清、笹岡 秀一

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1995年12月)

陸上移動通信における16QAM用適応等化装置の室内実験結果
山崎 亮三、神尾 享秀

電子情報通信学会論文誌D−・(レター) (1995年12月)

流体数値シミュレーションによるVPP500の並列計算効率のテスト
斎藤 義信、田中 高史

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1995年12月)

SS通信方式におけるシングルパス選択受信方式
守山 栄松

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1995年12月)

移動体衛星通信用車載アンテナ簡易追尾機構
長谷 良裕、鈴木龍太郎

電子情報通信学会論文誌D−・(レター) (1995年12月)

雑音状のイオノグラム2値画像に対する局所的点密度を用いた画像間距離
吉谷 清澄

「蛋白質・核酸・酵素」共立出版社 (1996年1月)

研究所紹介・郵政省通信総合研究所関西先端研究センターバイオ系 平岡 泰

IEEE Trans. on Antennas and Propagation(1996年1月)

Measurement of the Complex Refractive Index of Concrete at 57.5 GHz
佐藤 勝善、真鍋 武嗣、JiriPolivka、井原 俊夫、笠島 善憲、山木 克則

Journal of Geomagnetism and Geoelectricity (1996年1月)

H alpha Solar Telescope at Hiraiso and Its Initial Observations
秋岡 眞樹

Medical Imaging Technology (1996年1月)

細胞の三次元動画像
平岡 泰、原口 徳子

Physical Review A (1996年1月)

High-resolution ultraviolet spectra of sympathetically laser-cooled Cd+ ions
今城 秀司、早坂 和弘、大向 隆三、田中 歌子、渡邊 昌良、占部 伸二

SCAT LINE (1996年1月)

電波でとらえる南極氷床
前野 英生

テレビジョン学会誌 (1996年1月)

2-2章 ディジタル放送の変調技術
都竹 愛一郎

可視化情報学会誌 (1996年1月)

脳機能の可視化
宮内 哲、佐々木 由香、Benno Pufz、多喜乃 亮介

計測自動制御学会誌 (計測と制御) (1996年1月)

書評「適応信号処理」
辻 宏之

情報処理学会誌 (1996年1月)

情報ハイウェイ時代のテキスト情報への知的アクセス
野村 浩郷、井佐原 均、徳永 津伸、中村 貞吾

静電気学会誌 (1996年1月)

静電気研究の21世紀への助走 −境界領域の居心地−
福永 香

日経コミュニケーション (1996年1月)

情報通信早わかり講座 モバイル情報通信-19 双方向の移動データ通信サービス
横山 光雄

日本リモートセンシング学会誌 (1996年1月)

レーザー測距計を用いた火山地形変形検出手法の開発
青木 哲郎、高部 政雄、水谷 耕平、板部 敏和

日本音響学会・英文論文誌 (1996年1月)

Dependency of off-scale sensation on the complexity of melodies
白土 保、柳田 益造

Microwave and Optical Technology Letters (1996年1月)

Effect of Phase Noise on the Performance of 10-Gbits/s Coherent Optical Synchronous Receivers
H.G.Shiraz、Y.H.Heng、有賀 規

日経コミュニケーション (1996年1月)

情報通信早分かり講座 モバイル情報通信-20 片方向の移動データ通信サービス
横山 光雄

Applied Physics Letters (1996年1月)

Penetration depth measurements of single-crystal NbN films at millimeter-wave region
小宮山 牧兒、王 鎮、斗内 政吉

ブラズマ・核融合学会誌 (1996年1月)

電離圏トモグラフィー計測
國武 学

電子情報通信学会誌 (1996年1月)

ミリ波帯移動体衛星通信
大内 智晴

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1996年1月)

磁気嵐時の電離圏振動
貝沼 昭司、小川 忠彦

日本経済新聞社 (1996年1月)

衛星通信
下世古 幸雄、飯田 尚志

Graphical Models and Image Processing (1996年1月)

Blind Restoration of Degraded Binary Markov Random Field Images
張 兵、メテ゛イヌリ・シラシ゛、野田 秀樹

IEEE Trans. on Aerospace and Electronic Systems (1996年1月)

Communication and Radio Determination System Using Two Geostationary Satellite Part・ Analysis of Positioning Accuracy
木村 和宏、森川 栄久、小園 晋一、小原 徳昭、若菜 弘充

プラズマ・核融合学会誌 (1996年1月)

宇宙天気予報
佐川 永一、秋岡 眞樹

ATRジャーナル (1996年2月)

「ATR光電波通信研究所」の研究活動終了に当たって
古濱 洋治

Earth, Moon, and Planets (1996年2月)

Orbital evolution of asteroids with the effects of mutual gravitational attraction
吉川 真

Earth, Moon, and Planets (1996年2月)

Asteroids Approaching the Earth from Directions around the Sun
磯部 秀三、吉川 真

IEEE Trans. on Instrumentation and Measurement (1996年2月) 月)

A highly stable crystal oscillator applied to the VLBI reference clock
木内 等

ITUジャーナル (1996年2月)

技術試験衛星VI型「きく6号」通信実験運用成果について−Sバンド通信実験・ミリ波通信実験・光通信実験−
有本 好徳、岡沢 治夫

Radio Science (1996年2月)

Nonlinear inversion of the integral equation to estimate ocean wave spectra from HF radar
久木 幸治

Solar Physics (1996年2月)

FRACTAL DIMENSIONS OF THE TIME VARIATION OF SOLAR RADIO EMISSON
亘 慎一

Solar Physics (1996年2月)

CHAOTIC BEHAVIOR OF THE NORTH-SOUTH ASYMMETRY OF SUNSPOTS?
亘 慎一

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1996年2月)

電子レンジ妨害波存在下でのPHSの誤り率特性に関する一検討
宮本 伸一、山中 幸雄、篠塚 隆、森永 規彦

天文ガイド (1996年2月)

時刻情報・JJYの2.5MHzと15MHzがなくなります
今江 理人

日経コミュニケーション (1996年2月)

情報通信早分かり講座 モバイル情報通信-21 屋内用のコードレス電話
横山 光雄

日経コミュニケーション (1996年2月)

情報通信早分かり講座 モバイル情報通信-22 衛星を使う世界規模の携帯電話
横山 光雄

テレコム・フロンティア (1996年2月)

自律エージェントソフトウェアの設計原理
伊藤 昭

The Publications of the Astronomical Society of Japan (1996年2月)

The Wavefront Clock Technique Applied to the Current VLBI Systems
木内 等、近藤 哲朗

電子情報通信学会論文誌B−・(レター) (1996年2月)

ダイナミックチャネル割当法のチャネル選択時のセル検索範囲の検討
岡田 和則、向 俊明、篠田 庄司

電子情報通信学会論文誌B−・ (1996年2月)

呼び出し順序登録方式の性能評価
城田 雅一、峯村 和孝、吉田 裕、久保田 文人

Electronics Letters (1996年2月)

High Repetition Rate Optical Pulse Generation by Frequency Multiplication in Actively Mode-Locked Fiber Ring Lasers
Zaheer Ahmed、小野寺 紀明