では、VAメールシステムではどうでしょうか?
VAメールシステムではこれまでの電子メールに加えて、ビデオオンデマンド(Video on Demand: 以下VoD)システムを利用しています。VoDでは、蓄積装置に蓄積された画像情報を利用者の要望に応じて再生します。テキストは通常のメールシステムを利用し、動画像情報はVoDへ蓄積し、受信者がそれを再生することにより、利用者レベルでの蓄積装置は不要となります。また、電子メールとは別に通常のVoDの通信路を映像の配信路として利用するため、大きな負荷を持つ動画像も楽に受 信者の元へ届けることができます。また、動画像のブラウザとしてもVoDのものを流用できるので、受信側端末ではVoDの蓄積装置から再生順序に従って送られてきた動画像を順次再生して行くことができます。このように、VAメールではメールの配信に2つの経路を使うことによってきれいな動画像のやり取りが可能となりました。
また、動画像が一旦VoD蓄積装置に蓄積されることを利用して、同じ画像を複数の相手へ送付することもできます。この機能を利用して、動画像版の電子掲示板サービスを行うことができるようになっています。逆に、受信者が必ずしも動画像を見たいと思わない場合もあると思います。VAメールでは、通常の電子メールシステムでテキスト情報を送る際に、動画像情報のシーンいくつかを取り出し静止画ダイジェストとして添付することができます。受信者は、それを見て動画像を見るかどうかをきめることができます。見ない場合は、蓄積装置から受信者への配信が不要となるため、ネットワークからみても負荷を軽減でき有効な手段であると言えます。
上に述べたようにVAメールシステムは動画像を含めたマルチメディア通信には有効な手段と言えますが、いくつか問題点もあります。
その1つにネットワークとの関係があります。VAメールの構成の半分をなすVoDシステムはこれまで1つのネットワーク内で運用されてきました。それに対して、電子メールはいくつかのネットワークを跨いで通信を行うことができます。 VAメールでも同様にサイト間の通信のできることが期待されます。今回の開発で、特に重要としているのがこの事項です。
それぞれのVoDシステムは自分が持っているコンテンツについて、格納場所や中身の情報をユニークに管理するための情報を持っています。しかし、複数のVoDシステムが相互に接続される環境では、個々のシステム内の管理だけではなく、システム相互のコンテンツ管理が必要となってきます。例えば、全く同じ内容のコンテンツがいくつかのサイトにある場合に、どこにあるのが元の情報であるかとか、どこにコピーがあるのかといった情報を持っていないと、元の情報が変更された場合に、情報の整合性が問題になります。また、勝手にコピーが作られていて元の情報を作った人の意図に反して情報が悪用されるということも考えられます。このようにコンテンツの管理という面では、利用できる人の限定といった開示許可の情報と複製されたコンテンツの配置が重要です。VAメールでは動画像のオリジナルの情報の位置、コピーの情報の位置、サイトごとの開示許可などを管理情報に盛り込んで、オリジナルを持つサイト、コピーサイト両方で情報共有することにより、上に挙げたような問題を解決しようとしています。
更に、VoDシステムの相互接続はコンテンツ管理のほかに、相互にコンテンツを利用する方法についても検討が必要です。例えば、VAメールがあるサイトから別なサイトへ送られた場合には、動画像情報を別サイトの受信者も見ることができなければなりません。VAメールでは、受信者がオリジナルの情報を直接再生して見る方法の他に、複製が許可されているサイトへはコピーを作って、コピーの再生を行う方法もサポートしています。
VAメールでは以上により、複数のネットワークにおける動画像の送受が可能となっています。
これまでのVAメールでは以上のような検討を元に試作品を作ってきました。しかし、これらには、つぎのような課題が残っています。
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異種VoDシステム間での接続
これまでのシステムは同種のVoDシステム間を結んだシステムでした。異種のシステムでは、コンテンツの管理方法や格納方法がそれぞれ違うためそれを吸収あるいは共通化する手段を検討する必要があります。
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ユーザに利用しやすいインタフェースの開発
個人のユーザがシステムを利用する上で、いかに操作を簡単かつ解りやすいものにするかはどのシステムにおいても永遠の課題といえます。特にVAメールシステムでは、動画像の投入やメールの作成など、既存のシステムにない機能が追加されているため、インタフェースの充実は重要です。
今後は、これまでにつくって来たVAメールシステムの評価を行いながら、上記のような課題に取り組んで行く予定です。
日本国内だけではなく、世界各地でウォーキング大会が実施されている。特にヨーロッパには歴史の古い大会が多い。私は平成8年7月に、オランダのナイメーヘンで開催されている国際フォーデーマーチに参加した。(写真) 私が初めて海外で参加した大会である。この大会には88年の歴史があり、世界最大の大会で4万人弱が参加している。大会中は地域全体がお祭りのような状態になる。朝早くから近所の人たちが道端に椅子を出して、家族総出で声援してくれる。街に入るとブラスバンドで歓迎される。自動車が締め出された片側2車線の道路を、世界数十カ国の参加者が道幅いっぱいに歩く。最終日のゴール前数kmの沿道には約10万人の観衆が集まり、参加者全員がパレードをすることになる。道の両側いっぱいに並んだ3重4重の人垣の間を声援を受けながら歩いていると、マラソンの選手にでもなったような気分であり、4日間で200km歩いた疲れも足の痛さも吹っ飛んでしまった。あらためてオランダの人たちの歩け歩け運動に対する理解の深さを認識し、日本との歴史、文化の違いを痛感させられた。今後も機会があるごとに海外の大会に参加したいと考えている。世界の主要大会を全て完歩し、「国際マスターウォーカー」になることが今後の目標である。
ウォーキングの行事は、小規模な大会や地域の団体の月例会まで含めると毎週どこかで行われている。知り得る範囲の大会の情報について、近日中にWWW(http://ceres.crl.go.jp/~kimura/walk.html)で提供する予定である。興味をもたれた方、休日暇を持て余している方、運動不足や体型が気になる方は一度参加されてみてはいかが?
宇宙科学部 宇宙空間研究室
一之瀬 優
南極観測が始められて以来、毎年欠かさず行われてきた出港セレモニーが今年も11月14日東京港の晴海埠頭で行われ観測隊員を激励しました。そして、隊員を乗せた観測船「しらせ」は家族や関係者に見送られて一路南極に向けて無事出港しました。
船は2週間でオーストラリアのフリーマントル港に入港し、生鮮食料品と燃料を積み込むために約1週間停泊した後、再び南極昭和基地に向けて出港し、途中種々の観測を行いながら12月30日に昭和基地に接岸することになっています。基地の近くに接岸できれば雪上車により、できない場合でもヘリコプターによって越冬に必要な物資と観測資材の輸送を行い、基地の建設作業や夏季観測等を2月中旬まで行った後、越冬隊員を交代して帰国する予定となっています。
南極観測は毎年回を重ね、途中2年間の中断があるものの今年で38回目となりました。この間、通信総合研究所は電波研究所の時代から毎年観測隊員を送り出してきました。今年は、小関 淳さんが電離層定常観測担当、また、瀬戸口 正さんが宙空系観測の担当隊員として選任され、それぞれ1年間の越冬観測の任に就かれます。小関さんは北海道電気通信監理局の出身、趣味は冒険とのことで、ヒマラヤやゴビ砂漠、シベリア等へ行った経験の持ち主ですから、寒さにも強く南極観測隊員としては打って付けの人物といえます。彼はまだ独身ですが、フィアンセを残しての出港との事。一方、瀬戸口さんは九州電気通信監理局出身の二児の父で、1級無線通信士と2級無線技術士の免許を持つ優秀な隊員です。彼は南極の氷の上で始めてラジコンヘリコプターを飛ばすことが夢だそうです。
出港当日は前日の強風とは打って変わった穏やかな日和となり、朝早くから見送りに来た人達や報道陣が、この日だけ一般に公開されている「しらせ」の船内をあちこち見て回っていました。普段はめったに入ることができない操舵室内では「この船は観測船、砕氷艦、軍艦の三つの機能を併せ持った特殊な構造をしていて、南極の氷海に入ると何百回も前進後退を繰り返して氷を割りながら進むことができる能力を持っている」等との説明を興味深そうに聞いている人もいました。また、隊員の家族や知人は、隊員二人が共同で使う二段ベットの付いた小さな船室内などを隊員の説明を聞きながらめずらしそうに見ていました。
出港に先立って、当研究所独自の簡単な歓送式が行われ、丸橋南極本部長からの挨拶があり花束の贈呈、両隊員の「元気で行ってきます」の挨拶、記念写真の撮影の後、恒例となっている胴上げが南極越冬経験者等によって行われました。そして、二人の隊員は、見送りに来てくれた関係者全員が花道を作る中を一人一人と握手をしながら乗船して行きました。
船は正午丁度に、七色のテープが切れるのを惜しむかのようにゆっくりと、「いってらっしゃーい」の声に送られて岸壁を離れて行きました。船の甲板では隊員達が、だんだんと小さくなって姿が見えなくなるまでいつまでも手を振って別れを惜しんでいました。
また、記念講演会では、西澤潤一東北大学総長より「日本における通信事始」、竹内啓明治学院大学国際学部教授より「通信の社会的パワー」を講演をいただき、400席の式典会場はほぼ満席となる盛況でした。
同時に行われた展示会・デモンストレーションには、情報通信への期待を裏付けるかのように開場前から多くの参加者が詰めかけ、研究開発中の通信機器や最新鋭のマルチメディア機器の説明に熱心に聞き入っていました。
21世紀の情報通信社会の発展を考えるうえで非常に意義深い式典となりました。
外部誌上発表
外部誌上発表IEEE Trans on Neural Networks (1996年7月)
A Symmetric Linear Neural Network that Learns Principal Components and their Variances
F.Peper、野田 秀樹
Space Communications (1996年7月)
The Role of Satellite Communications in the GII: Japan's Approach
飯田 尚志、内田 国昭、山本 稔、松井 房樹
情報通信ジャーナル (1996年7月)
音が無い音を聞いている脳
宮内 哲
電子情報通信学会・論文誌 (1996年7月)
256ビームイメージングリオメータの開発
貝沼 昭司、村山 泰啓、森 弘隆、五十嵐喜良
言語処理学会誌 (1996年7月)
開発者の視点からの機械翻訳システムの技術的評価−テストセットを用いた品質評価法−
井佐原 均、内野 一、荻野 紫穂、奥西 稔幸、木下 聡、柴田 昇吾、杉尾 俊之、高山 泰博、土井 伸一、永野 正、成田 真澄、野村 浩郷
財団法人国際超電導産業技術研究センター・超電導基盤技術動向調査委員会報告 (1996年7月)
サブミリ波帯超伝導SISミキサー王
鎮電子情報通信学会 論文誌(欧文)(Transactions of the IEICE of Japan) (1996年7月)
A Study on Distributed Control Dynamic Channel Assignment Strategies in Sector Cell Layout systems
福元 暁、岡田 和則、朴 徳圭、吉本 繁壽、笹瀬 巌
電子情報通信学会論文誌 (1996年7月)
陸上移動通信用QAMの複数パイロットシンボルを用いた周波数オフセット補償方式
浜口 清
電子情報通信学会論文誌 B-II (1996年7月)
ETS-VI衛星のスピン状態を利用したSバンド衛星間通信用 フェーズドアレーのアンテナパターン測定
田中 正人、松本 泰、山本 伸一、鈴木 健治、有本 好徳
Applied Physics Letters (米国物理学会誌) (1996年7月)
Theory and properties of quasi-waveguide modes
王 慧田、有賀 規、叶 佩弦
日本視覚学会1996年夏期研究会 (1996年7月)
サッカード系における運動学習
藤田 昌彦
IEEE Electronics Letters (1996年8月)
Performance of multi-pilot symbol aided multipath fading Compensation
神尾 享秀、三瓶 政一、Kamilo Feher
IEEE Trans. Vehicular Technology (1996年8月)
Adaptive array sensor processing applications for mobile telephone communications
A.K.Djedid、藤田 正晴
IEEE Transactions on communications (1996年8月)
Differential Detection with IIR filter for improving DPSK detection performance
浜本 直和
IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology (1996年8月)
Improvement of Coupling Efficiency Between a 0.82μm Wavelength Laser Diode and a VAD Single-Mode Fibre by Conical Microlenses
H.Ghafouri-S、有賀 規
IEICE Transactions on Communications (電子情報通信学会英文論文誌) (1996年8月)
Detection Estimation in Sensor Arrays without Eigendecompositions
A. KLouche、三浦 龍
Indian Journal of Radio & Space Physics (1996年8月)
Solar Radio Burst on 30 September 1993
Hari Om Vats、M.R.Deshpand、K.N.Iyer、近藤 哲朗、磯辺 武
ISCS Bulletin (国際衛星通信協会) (1996年8月)
通信総合研究所、キーストーン計画を開始
濱 眞一
Journal of Geophysical Research(米国地球物理学会誌) (1996年8月)
Direct penetration of the polar electric field to the equator during a DP2 event as detected by the auroral and equatorial magnetometer chains and the EISCAT radar
菊池 崇、H.Luehr、北村 泰一、坂 翁介、K.Schlegel
Journal of the Meteorological Society of Japan (1996年8月)
Mesoscale and Convective Scale Features of Heavy Rainfall Events in Late Period of the Baiu Season in July 1988 Nagasaki Prefecture
高橋 暢宏、上田 博、菊地 勝弘、岩波 越
CRIPTA TECHNICAINC. AJohn Wiley & Sons. Inc. Company (1996年8月)
Space Charge Behavior in an Antistatic Polymer Including Polymer Solid Electrolyte
福永 香、前野 恭Solar Physics (1996年8月)
CORONAL CHANGE AT THE SOUTH-WEST LIMB OBSERVED BY YOHKOH ON 9 NOVEMBER 1991 AND THE SUBSEQUENT INTERPLANETARY SHOCK AT PIONEER-VENUS-ORBITER
亘 慎一、Z.Smith、H.A.Garcia、T.Detman 、M.Dryer
レーザー研究 (レーザー学会誌) (1996年8月)
Investigations on formation of mutually pumped phase conjugation with a new configuration using BaTiO3:Ce crystal
王 慧田、吉川 宣一、吉門 信、有賀 規
気象研究ノート(日本気象学会) (1996年8月)
「地球環境のマイクロ波放射計リモートセンシング」7 中層大気微量気体の観測
増子 治信、落合 啓、入交 芳久、稲谷 順司、小川 利紘
天文誌「スカイウォッチャー」8月号 (1996年8月)
地球近傍0.00303天文単位をかすめた小惑星1996JA1
吉川 真
電子情報通信学会・和文論文誌B-II (1996年8月)
DBFによる移動体衛星通信用セルフビームステアリングアレーアンテナの構成法
三浦 龍、千葉 勇、田中 豊久、唐沢 好男
電子情報通信学会誌 教養のページ (1996年8月)
OFDM 変復調方式
都竹愛一郎
Applied Optics : Lasers、Photonics、 and Environmental Optics (1996年8月)
Near Shot−noise−level relative frequency stabilization of LD−pumped Nd:YVO4 microchip laser
兵頭 政春、カーティ・ティモシー、阪井 清美
TELECOM FRONTIER (SCAT TECHNICAL JOURNAL) (1996年8月)
衛星搭載レーダーによる降雨リモートセンシング井口 俊夫
日本天文学会 (1996年8月)
「やさしいアンドロイドの作り方−SFはどこまで現実になるのか− 福江純著」
油井由香利
Review of Radio Science 1993-1996 URSI (1996年8月)
Remote Sensing of Precipitation and Clouds
岡本 謙一、古津 年章、熊谷 博、井口 俊夫
Electronics Letters (1996年8月)
Optical beat frequency generation up to 40.6 THz by mode-locked semiconductor lasers
小野寺紀明「無線百話」 (1996年8月)
3.3 太平洋を越えた放送波
佐川 永一
4.3 電離層の世界観測綱
五十嵐 喜良
4.7 太陽任せの短波通信
野崎 憲朗
5.2 八木・宇田アンテナの発明
藤田 正晴
5.4 レーダのいろいろ
宮澤 義幸
5.10 電磁波障害の原点
篠塚 隆
5.13 通信を邪魔する電波雑音
山中 幸雄
5.16 電波は台所まで
篠塚 隆
5.18 超短波用アンテナのいろいろ
田中 正人
6.3 周回衛星と静止衛星
川瀬 成一郎
6.7 人工衛星オンパレー
浦塚 清峰
6.8 星からの便り 6.9 電波星で地球を測る
高橋 幸雄
6.10 宇宙飛行士むけ天気予報
野崎 憲朗
6.11 電波は宇宙の果てまで
小山 泰弘
6.12 宇宙通信用アンテナのいろいろ
大森 慎吾
7.2 宇宙を回る電波灯台
今江 理人
7.9 世界を結ぶ携帯電
浜本 直和
8.1 ミリ波で防ぐ車の衝突
井原 俊夫
8.2 電波で一掃オフィスの配線
井原 俊夫付表(標準電波)
大塚 敦