一言で言えば、この会議は我々スタッフ全員による手作りの会議であった。今回の会議の基本は、一人でも多くの人を呼ぶということである。多くの日本人の中に少しの外国招待者という集会ではなく、世界各国の研究者が多く集い情報交換をすることが国際会議の重要な意義と考えたからである。人が人を呼び大きな輪となった。
今回アジア諸国から多くの研究者が来日し、そのVISA取得に苦労した。特に問題があるのがロシアである。部長クラス以上の人に対しても、詳細な履歴書や多くの書類を準備しなければならない。中には日本大使館に並んだものの、人数制限で受け付けられず、5日間も通ってようやくVISA取得した研究者もいた。国際化が叫ばれている一方で、アジア諸国からの研究者招聘に冷たい日本を痛感させられた。これらのVISA取得に関しては、国際研究交流室に大変お世話になった。
次の難問は宿泊である。ワールドカップ誘致で指摘されたように鹿嶋市一帯は宿泊施設が少ない。運悪く12月の忘年会シーズンやサッカー関連の集会が重なり、100名程度が宿泊できるホテルの確保に苦労した。すぐに交渉し、早急に決断しなければならない。ホテルの宿泊の手配から、ホテルの滞在調査等も自分たちで実施した。また、レストランが少ないため昼休みの短い時間でいかに食事をするか、また朝の食事の手配なども考慮もしな ければならなかった。
今回良かったことの一つにインターネットのホームページやメールを大いに活用したことである。世界の国際会議並みに、登録・情報連絡を効率的に行った。その有用性を改めて認識するとともに、今回は当研究室の小山主任研究官が対応したように、自由に使いこなせる人の必要性を強く感じた。また、企画運営委員会も、会議旅費の節約のため、全てメールで済ませることにした。
飛行場と会場との連絡は、地方都市での開催で大きな問題の一つである。交通の便のよい東京等の大都市では、容易にホテルに自力で行ける。しかし、成田空港・鹿島間は交通の便が複雑である。そのため送迎を我々の手で実施したのだが、時間やターミナルが異なるため、周到な送迎計画と人海戦術が必要であった。また官用車によるシャトルバス運用という良案で乗り切ることができた。
観光地の少ない鹿島で如何に会議以外の楽しみを設定するかも苦労の一つであった。茨城の英語の観光案内集めやホテル周辺の英語の地図作成等も、自分たちの手で実施した。また、測地と天文という分野が共存するため、国土地理院と天文台+CRLの2班での見学会を実施した。
一方ゲストハウスは大助かりであった。自費で訪問する人も多く、ロシアやインドの研究者に利用してもらった。多国籍会議ということで、インドの研究者の菜食主義も頭を悩ませたが、ゲストハウスで自炊ということで対処できた。
この他、細かなトラブルも多数あったが、誠意を持っての対応を心がけた。その甲斐があってか、参加者全員から親切なもてなしありがとうの言葉をいただき、手作りの会議の良さを感じた。また、多くの知り合いができたことは、我々の大きな財産となった。
最後に、参加者から、帰り便を各自の責任で遅くして欲しいという意見が多かった。他機関への訪問など、旅費の効率的な使用に繋がる。また、どうしてそんなに高い航空券を使用するのかという質問も多く、自分でもっと安い航空券を買ってもいいよという人もいた。航空券の現地購入も可能になるように、企画課から科学技術庁に掛け合ってもらったが、科学技術庁の事務処理問題を突破することができず、残念ながら今回は可能とならなかった。今後も引続き働きかけてもらいたい。それが、より人を集め国際化に繋がる事であろう。
この会議は、鹿島宇宙通信センターの宇宙電波応用研究室・管理課、標準計測部の時空技術研究室・時空計測研究室・周波数標準課のスタッフ全員が一丸となって協力したことで成功できたものである。
また、科学技術庁と社団法人科学技術国際交流センターの支援のもと行われたものであり、これらの方々及び機関に深く感謝する。
講演会は、古濱洋治所長の開会の挨拶、田中征治 郵政省電気通信局電波部長の来賓のご挨拶に引き続き、拓殖大学工学部長の池上文夫先生より「高度情報社会における電波周波数の有効利用 〜CRLへの期待と提言〜」の演題で基調講演を頂いた後、当所の周波数資源プロジェクト担当者より、周波数資源開発の取り組みの概要、放送用周波数有効利用技術、インテリジェント電波有効利用技術、マイクロ波帯移動通信技術、ミリ波構内通信技術、ミリ波帯通信用デバイス技術、光領域周波数帯の研究開発の計7件の報告を行い、最後に箱石千代彦次長の閉会の挨拶で幕を閉じるまでまる一日、満員の会場で盛況のうちに開催されました。また講演会と併せてプロジェクトの成果である最新の実験用機器の展示を行い、好評を博することができました。
参加者からのアンケート回答結果では、当所の周波数資源プロジェクトを評価するとのご意見や、今後の一層の推進に期待するとの声や、定期的な発表会の開催(例えば毎年など)を希望するとの要望が寄せられています。一方、1件当たりの発表時間が短く概説的で駆け足的な傾向が感じられる、もっとじっくり聞きたいとの指摘や、会場定員の都合で希望者全員の参加を受け入れることができなかったことへの対処の要望など、次回への宿題とすべきご意見も頂いています。ともあれ、周波数資源開発に対する社会的関心の高まりを周波数資源プロジェクト関係者一同が強く実感した一日でした。
平成元年に始まり第8回目を迎える今回の国際フォーラムは「生命と情報」という大テーマのうち細胞の中の情報機構に焦点を当てて、海外からの招待講演を含めた熱気あふれる講演計11件が2日間にわたって行われた。これに先立ち関西支所からは管理課、生物系の職員、アルバイトを総動員して準備、運営の応援にあたり、気が抜けない各坦務をこなしていた。初日は、甕(もたい)技術総括審議官、熊谷科学技術会議議員によるオープニングセッションに引き続き3件の特別講演が行われた。ガンの一因ともいわれる染色体の不安 定性、細胞核における機能発現や細胞運動の形成過程など細胞内における種々の情報形態や情報処理に関する最先端の成果が次々と披露された。国際フォーラムのため英語によるプレゼンテーション(初日は同時通訳つき)である上にかなり基礎研究的、専門的な内容であったにも拘わらず200名ほどの来場者があり、そのほとんどが最後の講演まで聞き入り質疑も活発に行われていた。また、ポスターセッションも設けられて研究者同士のより立ち入った議論が行われていた。初日の特別講演終了後、古濱所長の英語による乾杯の音頭でレセプションが開始されたが、会場がポスターセッションの場を兼ねているためお腹が落ち着く頃にはビールの入ったコップを片手に持ったままポスターの前で議論が始まる熱心さで、食べ物がなくなり司会が終了を告げてもなおにぎやかな雰囲気がつづいているほどの盛況ぶりであった。
会場となった神戸国際会議場は昨年大地震で壊滅的な被害を受けた三ノ宮からポートライナーで10分程度のポートアイランドに位置している。神戸とその周辺の人々の復興にはまだまだ時間がかかりそうであるが、神戸の人々のこの程度ではへこたれないというたくましさを肌で感じてきた。復活しつつある街並みを眺めながらおみやげの神戸のケーキと須磨海苔を片手に帰路に向かったのだった。
−光導波路で干渉系を構成する−
電磁波技術部 総括主任研究官
図1は、MZ型光変調器の基本構成図である。駆動用の電気信号を伝えるための電気回路(変調用電極と、入出力接続部)と、光信号が通過する光回路(光導波路)が組み合わされている。電気回路の構成法にもいろいろな工夫が加えられているが、本文では、特に光回路に着目する。
図2は、MZ型光変調器の光回路構成(導波型MZ干渉系と呼ぶ)と、通常の反射鏡を組み合わせた(バルク型)MZ干渉系の比較である。導波型では、入力光は、まず入力側のYジャンクションで二つに分波され、二つの光路を通過した後、出力側のYジャンクションで合波干渉して、出力端に到達する。
この動作説明で疑問に思う点は、「出力側Yジャンクションで、本当に干渉作用が得られるか」、と云う点である。バルク型では、出力はちゃんと二つあって、両方を足し会わせれば1になり、互いに相補的(コンプリメンタリ)な関係を保っている。導波型には、出力が一つしかない。そもそも、3ポートのジャンクションで、整合が得られるのか。一見したところ、導波型MZ干渉系の動作には、不可解な点があるように感じられる。
この様な疑問は、今から20年近く前、導波型光変調器の研究があちこちで行われ始めた頃、研究会の会場などで、時に応じて、交わされていたが、筆者は、この疑問に、当時始 めて明快な説明を行った。図3に、ここで考える導波路Yジャンクションの構造を示す。光導波路は、屈折率の高い部分にそって光が導かれる原理を用いているので、マイクロ波における同軸や導波管のように、電磁波を導波路中に完全に閉じこめるのではなく、周りにもしみ出した状態で導波する。開放型の導波路である。屈折率の高い部分(コア)をある程度小さくすると、一つのモード(基本モード)だけが伝搬される、単一モード導波路となる。
Yジャンクションは、2本の単一モード導波路を小さな角度で交わらせて、1本の単一モード導波路にまとめるものである。詳細に見ると、Yジャンクションは、図示のように、ブランチ(分枝)導波路部、テーパ導波路部、ステム導波路部、の3つの部分に分けて考えることが出来る。
2本の単一モード光導波路が近くに並んでいる場合、導波光は互いに結合するので、新たに2種のモード、偶モードと奇モード、を考えると便利である。2本の導波路の間隔が近づき、ついには境界が接して、2倍幅の1本の導波路になるとすると、偶モードは次第に2倍幅導波路の基本モードに変化する。一方、奇モードは高次モード(この場合は1次モード)に変化する。
光波はさらにテーパ導波路部に進行するが、導波路幅は次第に狭くなり、ついには、ステム導波路につながって行く。ステム導波路は単一モード導波路なので、テーパの途中で、奇モードから変化した1次モードを導波できなくなる。テーパ導波路幅が一定の値以下になると、奇モードはカットオフとなって、放射モードに変化し、導波路外部に放射される。
この様に、Yジャンクションは3本の導波路から構成されているが、実際には出力専用の第4のポートが、放射モードとして隠れている。実は4ポートの素子であり、干渉用の合波器として立派に動作することが分かった。
実際に光導波路Yジャンクションを構成する上で重要な点は、分枝が互いに近づいて行く間に、偶モードと奇モードとの間でモード変換が起こらない様に、角度を十分小さく設定することである。モード変換が起こってしまうと、完全な干渉が期待できない。多くの場合、分岐角は1度とか0.5度とかの値が選ばれている。5μm幅の光導波路を0.5度の角度で2つに分け、2本の導波路の間隔が30μmになるまで広げるとすると、約3mmの長さが必要となる。光導波路は微細なので、それほど印象に残らないが、これを、幅1cmの導波管が、先と同じ割合で6cmの間隔になるまで、0.5度の角度で分岐したとすれば、6mもの長さが必要となる。
光集積回路では、この様に、緩やかな導波路の変形によって、導波光を変化させる手法が重要となるが、回路を実現する際にやたら長くなる点は、開放型の導波系を使用する宿命とも云える。
図3:(a) Yジャンクションの構造
図4:非対称Xジャンクションの構造(a)とその基本動作
Yジャンクションでは、4つめのポートが放射モードとして存在するが、入出力ポートとしては、実際上甚だ使用が難しい。筆者は、このポートを導波モードとして利用するための新しいコンポーネントも、Yジャンクションの動作説明と相前後して提案し、その後デバイスなどに活用している。図4は、非対称Xジャンクションである。左側(対称側)は、Yジャンクション同様、等しい2本の単一モード導波路からなるが、右側(非対称側)は幅の異なる2本の単一モード導波路から出来ている。動作原 理は省略するが、このようにすると、Yジャンクションにおける放射モードを、非対称側の、幅の狭い導波路を伝搬するモードとすることが出来る。
非対称Xジャンクションの導入によって、光集積回路においても、導波モードだけからなる、4ポートのハイブリッドが利用できることとなった。これを用いれば、図5のように、マイケルソン干渉系も、光集積構造で実現できる。
マイケルソン干渉型
光集積回路では、今一つハイブリッドの構成法がある。それは、方向性結合器(図6参照)の原理を利用するものである。2本の光導波路を平行に近接すると、先に述べたように、導波光の結合が生じる。導波路の間隔や、導波路間の屈折率によって結合の強さが決まり、さらに結合長を与えると、両導波路間でどの様な光電力のやり取りが生じるかが定まる。従って、平行光導波路の間隔や長さを適当な値に調整すると、一方からの入力光を等分したり、2入力の干渉光を出力するハイブリッドが得られる。
方向性結合器型ハイブリッドは、結合度と結合長をきっちりと決めなければならないので、光波の波長や偏波に敏感である。一方、Xジャンクション型ハイブリッドは、導波路の形状によって動作が定まっているので、偏波特性をなくすことが出来、波長帯域幅も広く取れる。
(a)および非対称xジャンクション型 (b)ハイブリッド1,2,3,4はポート番号
2つの形式のハイブリッドの、もっと基本的な違いは、Xジャンクション型は180度ハイブリッドに、方向性結合型は90度ハイブリッドに対応している点である。紙面の都合上、説明は宿題としますので、動作の違いを考えて見て頂きたい。
井筒 雅之
光導波路を用いた干渉系が、光変調デバイスを中心に広く用いられている。導波路型の、光の強度を変調する、云わゆるマッハツェンダ型(MZ型)の光強度変調器は、商品化されて既に10年以上になり、実用の光通信システムにも導入され始めている。
(b) (c)はその動作
同相入力の場合(b)、および逆相入力の場合(c)
(a)は90ハイブリッド、(b)は180ハイブリッドとして動作する。