年頭の挨拶


通信総合研究所長
古濱 洋治



 明けましておめでとうございます。本年も皆様にとって、よい年であることを祈念致します。

 当所にとって昨年は、大変多忙な変化に富んだ年でした。
史上最高の補正予算を含む平成7年度予算の執行及びこれも史上最高の平成8年度通常予算の執行に、職員の皆様の多大な努力を頂きました。また通常の行事に加えて昨年は、無線通信研究100年記念の式典・講演会の開催、COE化を目指す光技術部門を含む全研究部門にわたる外部評価の実施、国立研究機関長協議会(国研協)の代表幹事としての諸活動等が新たに加わりました。各研究部門、総務部、企画部の職員の皆様の、これらを含む諸課題の実施に対する、ご協力・ご尽力に心から敬意を表する次第です。それでは年頭に当たり所信の一端を述べて挨拶と致します。

 21世紀を目前に控えて、時代は将に変わりつつあります。世界的に見ると政治、経済、文化など広い分野にわたって、大競争(メガ・コンペティション)の時代になろうとしています。即ち我が国と先進諸国のみならず、韓国、台湾、シンガポール等の新興工業経済地域、あるいはインド、中国等の途上国との三つ巴の総力戦の時代です。我が国がこれに生き残るには科学技術創造立国以外に選択肢がないとして、一昨年11月「科学技術基本法」が衆参両院において全会一致の成立を見たことは記憶に新しいところです。このような時代に国研が生き残るには、創造的な研究開発を通して研究費を支弁する国民から必要な組織としてサポートされるような実績を積むことが大変重要であります。

 平成3年度までの 過去約15年間、当所は誠に惨めな予算状況でした。それ以後の5年間予算額は次第に改善され、平成7年度から予算総額が100億円を越え、研究員者一人当たりの予算額も国内外の主要な研究所のそれと比較して遜色のない規模となりました。しかしながら研究費の急速な伸びに対して、研究に携わる要員の獲得あるいは研究推進体制の整備が後手に回っていることは否定できません。このため大学や産業界の力を活用して等価的な研究遂行能力を拡大する必要があり、このためには有能なリーダーの育成・確保が、大変重要です。

 ともあれ研究費を含む研究環境の整備に理解が得られつつあることは喜ばしいことです。しかし基礎研究の振興が経済的な閉塞状況を打開する「打ち出の小槌」と考えられているのではないかと危惧しています。基礎研究の推進において成果を出すには誠に長い時間がかかり、また成功する確率も高いものではありません。基礎研究の推進が時間のかかる遅効性のものであることについて、広く関係者の理解を求める必要あります。これには研究活動の広報が誠に大切であり、研究所の幹部は関係者の理解を得るよう大いに努力する必要があります。


 科学技術基本計画では2000年までの5年間に総額17兆円の科学技術経費を支弁するとしています。しかし政府は240兆円の債務を負い、また地方自治体と合わせると総額450兆円にのぼる借金を抱えての科学技術の振興であります。所期の成果を収めなければ、必ず逆風が吹き冬の時代が来る事を認識して研究開発を行う必要があります。このためには研究戦略に基づいた長中期研究計画の策定と逐次これらの見直しと共に、バランスのとれた研究活動を推進し研究成果を広く知ってもらうことが必要です。また無駄を省き、省エネ型、省資源型の研究推進体制を作ると共に、庶務会計部門を中心とした業務改善計画の策定・実施、あるいは将来を見越した総合的な研究・実験棟整備計画、緑化計画の策定等、系統的なインフラの整備計画を持っておく必要があります。

 平成9年度予算案は昨年12月25日に閣議決定されました。当所の平成9年度予算案は総額199億9千万円で、前年度比42%増です。予算額、伸び率とも史上最高です。
(ア)全体予算の内32%が情報通信基盤技術関係であり、(イ)また周波数資源の開発・電波利用料関係が人件費を一部含めて20%です。(ウ)宇宙関係は、第三番目で、全体の約10%に留まっています。新規項目の主なものは、マルチメディア・バーチャルラボ技術開発、電磁環境の相互影響に関する研究、長波標準電波施設の整備、亜熱帯地球環境計測技術の研究開発、横須賀無線通信研究センターの整備等です。

 組織関係の内、部レベルでは、総合通信部、通信科学部、電磁波技術部の振り替えによる、通信システム部、情報通信部、光技術部の設置、及び第三特別研究室(実質的には第一特別研究室)の振り替えによる、横須賀無線通信研究センターの設置です。
室レベルでは、光技術部に光通信技術研究室と光情報処理研究室の新設及び振り替えによる情報通信部人間情報研究室、光技術部光エレクトロニクス研究室、横須賀無線通信研究センター無線伝送研究室、宇宙通信部超高速衛星通信研究室の設置と、六つの研究チームの設置です。研究チームは、今回始めて導入したもので、所長直属の期限が定められた課題別の研究組織であり、所長裁量により内容、要員規模を機動的に定められる組織です。これにより新しい課題への取り組みが、一層容易になると共に、所期の成果のでた研究課題の終結も容易になると考えています。要員関係では、5名 要求して4名の増員が認められました。定員削減が3名ですから、実質1名の増員です。

 また平成8年度補正予算案では、広域多地点映像中継分配試験標準化システムの整備、情報通信基盤に関する基礎的・汎用的技術の研究開発、周波数逼迫対策のための技術試験事務にたいして、総額18億5千万円が予定されています。


 次に「科学技術基本法」に基づいて、昨年7月2日「科学技術基本計画」が閣議決定されました。これを受けて昨年8月1日、研究活動の活性化を狙った意欲的な人事院勧告、即ち任期付任用制の導入、兼業義務の一部緩和、研究員調整手当の新設などを含む勧告が行われました。現在人事院は次の通常国会への上提を目指して、勧告実施のための関係法規の整備を進めています。

 また科学技術庁は、昨年12月26日、特許権等の研究者個人への帰属等について、従来の規制を緩和する方向を打ち出しました。即ち、(ア)特許については、職務発明を行った研究者への優先実施権の付与、共同研究による発明の特許権についての研究者個人への帰属、共同研究者・委託研究相手先機関に対する、優先実施権の設定期間の延長を骨子としています。(イ)研究公務員の兼業については、兼業の原則許可を旨として許可基準を明確化し、研究所に設置する兼業審査会において可否を判断するとしています。(ウ)また委託研究については、インセンティブを高めるため受託相手機関に対する優先的な実施権を付与すると共に、優先的な実施の期間(委託研究終了後7年)の延長を可能としています。

 これらを受けて当所においても、対応する規程の改正、兼業に係る運用基準等の準備を進めています。研究活動の推進や外部機関との研究交流において、大きな壁の一つである制度上・運用上の諸問題について、部分的ではあるが改善が図られることは、誠に画期的なことです。これらの新しいシステム・規制緩和策の運用を通じて、研究活動の一層のオープン化・活性化を図る所存ですので、ご協力の程宜しくお願い致します。


 次に研究活動の外部評価の実施状況について述べます。昨年の年頭の挨拶において、外部評価の必要性について言及しました。その後所内及び研究評価委員会の皆様の多大のご協力を得てほぼ順調に進んでいます。COE化を目指す光技術部門を皮切りに、部門別研究評価委員会は昨年中に全部終わりました。次のステップは、今年2月6、7日の運営評価委員会を成功させることです。今年度末には外部評価結果の大勢が判明し、来年度始めには評価結果と共に、これらに対する対処方針の大枠を公表できると考えています。

 外部評価実施の次のステップは評価結果の運用です。対外的には外部評価の実施事実と対処方針の広報が大切です。郵政本省のみならず科学技術庁、人事院、大蔵省、総務庁を始めマスコミを通じて広く科学技術関係者に周知する必要があります。対内的には外部評価結果を今後の研究所の運営に積極的に生かし、研究活動の改善に役立てることです。即ち外部評価結果を考慮して長期戦略を立て、研究部門毎の長期・中期研究計画の作成ないし見直しを行うと共に、研究プロジェクトの見直しを図る必要があります。部門別研究評価委員会の委員と当所幹部との懇談において頂いた共通的な意見の一つは、「研究目的に対する問いかけと、国研に相応しい研究を実施して欲しい」と言うものでした。この点について言えば、学術的色彩の強い研究であれ、行政的色彩の強い研究であれ、国研で実施する研究の目的・意義・重要性あるいは研究が成就した時のインパ クトの大きさについて、「自分の言葉」で話せなくてはなりません。また必要なら何時でも原点に立ち返って研究計画の内容を見直すことの大切さを意味しています。

 このような研究評価に基づく改善には系統的な努力が必要ですから、外部評価を一回実施すれば成果が挙がると言うものでもありません。従って今回のような大規模の外部評価は数年毎に実施するとしても、研究計画・内容についての簡単な外部評価は何らかの形で毎年実施することが望ましいと考えます。これについては外部評価結果に照らして改めて検討する予定です。


 次に組織改正の特徴について述べます。最初にご紹介したように、情報通信基盤技術関係の通信システム部と情報通信部、光技術COE化関係の光技術部及び電波利用料関係の横須賀無線通信研究センターが、本年7月から設置される予定です。この改正により、情報通信基盤技術及び光技術COE化関係の研究が、一層効率的に進められるものと期待しています。
横須賀無線通信研究センターは予算項目にも整備計画が挙がっているように、横須賀リサーチパーク(以下YRPと略称)に研究室を構えて、 YRPに進出する産学官の研究機関との間で無線通信・周波数資源関係の研究を鋭意進めるためのものです。当面3ないし4の研究室またはチームがYRPにて研究を進める予定です。 YRPに参加する地方自治体・企業から国研である当所のYRP進出に寄せられた期待には大なるものがあります。爛熟期を迎えた無線通信技術の開発・運用のメッカを目指すYRPへの進出は当所にとっても大変大きなインパクトがあり、当所の研究スタイルに一大変革をもたらす可能性をもっています。 YRPにおける当所の役割のキー・ワードは、ユーザー・オリエンテッド、標準化・規格化、国際化であると考えています。電波利用料を主な財源として進める無線通信・周波数資源関係の研究は、ユーザー・オリエンテッドであることに特に留意する必要があります。ユーザー・オリエンテッドな研究開発の推進に関する当所の経験は浅く、将に歩きながらこれに適合した研究スタイルを身につけることが必要です。研究スタイルの脱皮を図るには、本所を離れてユーザーと近いところで共に研究開発を進めることが効果的であると考えます。即ち、「新しい酒(ユーザー・オリエンテッドな研究開発への研究スタイルの脱皮)は、新しい革袋(YRP)に盛れ」と言うことです。

 凡そ10年前当所は関西への進出を開始し、新しい研究開発拠点の建設を通じて数々の新しい経験を積み、また新しい要員を迎えて研究開発の新しい流れを作りました。そして関西支所における研究活動の発展は、当所全体の活性化に大きく寄与しました。この経験にならって横須賀無線通信研究センターにおける研究開発を通じて、当所全体の体質の改善と活性化を図りたいと考えます。立ち上がるまで人・物・金を含む物心両面にわたる支援が欠かせないため、所員の皆様のご協力をお願いする次第です。当分の間YRPにおいて当所の研究室は借家住まいですが、土地を購入し研究棟を建設するか否かについては YRPの発展方向を見て近い将来決定したいと考えています。


以上今年は、外部評価に基づく当所の研究開発の体質改善とYRP進出を中心とした組織改正を、2つの大きな課題とした年であると考えています。また今年は昭和27年8月1日に郵政省電波研究所が発足して丁度45年目を迎えます。45周年は一つの節目でありますから、何らかの記念となる行事を実施したいと考えています。しかし5年後に50周年行事を控えているため、特に 大々的な記念行事はその時に行いたいと考えます。その代わり50周年を目指して過去の資料の散逸を少しでも防ぐため、50年史の資料整備のため準備委員会をOB諸先輩の力も借りながら今年中に発足させる所存です。最後になりましたが、皆様のご健康とご発展を祈念致しまして年頭の挨拶と致します。




ポストパートナーズ計画とオープニングセレモニー


通信科学部 総括主任研究官
尾嶋 武之



地球局端局を前に行われたテープカット



タイ大学省大臣と会話を交される
野田政務次官



タイ国KMITLにおける実験の様子



タイ国第三国研修生に対する
遠隔研修風景



 通信総合研究所(CRL)では、1992年の国際宇宙年から4年間にわたりETS−X衛星を利用した国際共同実験のパートナーズ計画が実施されてきました。これは1996年3月に終了しましたが、この計画の必要性が理解され、継続を望む要望に応えて、1996年度からポストパートナーズ(POST-PARTNERS)計画が3年計画として始まりました。

 ポストパートナーズ計画は、商用衛星で広く利用されているKuバンドの通信周波数帯を用いて、1.8m程度のアンテナとコンパクトな地球局をアジア・太平洋諸国に配置し、最大2Mbpsの伝送レートによる各種衛星通信アプリケーションの国際共同実験を重ねることにより、広い分野における情報交換等を通じ、これら諸国における技術移転と人材育成を図るものであります。 この計画の開始を記念して、去る1月30日にオープニングセレモニーが開催されました。オープニングセレモニーは、最初の実験の相手局であるタイ国モンクット王工科大学(KMITL)にタイ国モントリ大学省大臣を、日本側ではCRLに野田聖子郵政政務次官をそれぞれお迎えし、JCSAT経由の1.5 Mbpsで高画質なTV会議装置を用いた音声と動画像の双方向通信をする形で、1時間にわたって執り行われました。

 先ず、主催者であるPOST-PARTNERS計画推進協議会の加藤秀俊会長とパイラートKMITL学長の開会挨拶で始まり、来賓によるテープカットの後、野田政務次官とモントリ大学省大臣が挨拶と意見交換を行いました。更に協議会会員を代表して、(株)日本サテライトシステムズと三洋電機(株)の取り組み挨拶の後、協議会代表幹事による実験計画の紹介で締め括りました。いずれもポストパートナーズ計画に大きな期待を寄せる内容のものでした。

 尚、このオープニングセレモニーに先立つ3日間では、KMITLとの間で衛星経由でのTV動画像の評価実験、マルチメディア・ネットワーク接続実験、TV会議や電波伝搬データ高速伝送実験等が行われ、一定の成果をあげました。また、このセレモニーの後には、タイにおける国際協力事業団(JICA)の第三国集団研修とタイアップして、その研修受講者に対して日本側からポストパートナーズ・プロジェクトに関する概要説明が、引き続き、電気通信大学の小菅教授、放送教育開発セン ターの近藤教授と仁科助教授及び東北大学の加藤助教授による「遠隔教育と人材開発」をテーマとしたパネル討論会形式での遠隔研修実験が行われました。
このようにこの計画は、特に島しょ部やルーラル地域では衛星通信が極めて有効な通信手段であることを実証すると共に、地域の人材開発を促し、将来のAII(アジア情報通信基盤)における重要なネットワークの構成要素として寄与するものと期待されています。



これまでこうであったこと


総務部長
原口 亮介



 「仕事の帰りにちょっと一杯。隣のテーブルでは大学生のグループだろうか、男の子も女の子も皆、笑顔で楽しそうだ。最後の腹ごしらえはいつものラーメン屋にしよう。あそこのチャーシューはうまいんだ。」

 こんな光景はどこにでもありそうなごく当たり前の光景である。しかし、私が1988年から3年間滞在したパキスタンではありえない光景だ。パキスタンはイスラム教の国である。国民の大多数は1日5回のメッカに向かっての礼拝を欠かさず、街中にコーランが響き渡る。法律も通常の憲法や刑法等のほかにイスラム法が適用される。このようなイスラム教の国パキスタンでは酒は厳禁、街に飲み屋はもちろん酒屋の一軒も無い。(私のような大使館員はヨーロッパにある外交官専用の輸入商社から免税で輸入できるので、自宅では十分に飲んでいました。)女性は配偶者以外の男性に顔を見せてはいけない。(子供は別です。ただ、このような国で再三にわたり女性が首相になるのですから不思議なものです。もちろんベナジールブット前首相は顔など隠していません。)豚肉を食べることも禁止。だいたい売ってもいない。(ある日本人が山でイノシシを撃ってきて、コックにさばかせようとしたら、触れることも嫌がってさばきませんでした。)すなわち、私が冒頭に書いた光景は絶対に有り得ない。

パキスタンの名所 モヘンジョダロ


 私はこれまで郵政省以外に、外務省、経済企画庁、勤務地では東京以外にパキスタンの首都イスラマバード、札幌市(郵政局)、福岡県筑後市(郵便局)とさまざまな土地、職場を経験してきた。冒頭のパキスタンの例は特別としても、それぞれの土地、職場でいろいろな特色がある。それは良いと思われる面、そうでないと思われる面の両面であるが、間違い無く言えることは、ある土地、ある職場で「これは当たり前のこと、これは普遍的なこと」と思われていることが必ずしもそうでないということである。

 我々は仕事をする上で、ついつい、「これまでこうであったからこうするのが当たり前。」とか「これはこういうことになっているから仕方が無い。」という発想になりがちである。しかし、「何故、これまでこうしていたか。」をたどってみると、案外、たいした理由も無いことが多い。まして、現在は、戦後の経済成長を支えてきた「右肩上がり曲線」の神話が崩壊した、社会・経済の大変革期にある。「これまでこうであった」ものが今後とも永久に「こうである」はずが無い。

 幸いなことに、通信総合研究所においては、諸先輩の努力により、時代の要請に応えて研究分野を拡充してきた。近年でも、関西先端研究センター(情報通信に係る情報系、物性系、バイオ系の基礎研究を実施)の設立、情報通信基盤、周波数資源にかかる研究の拡充等がなされてきている。一方、 今年度は研究所をあげての外部評価を実施した。複数の外国人を含む外部評価委員の先生方から厳しい御意見を頂き、「これまでこうであった」ことを問題意識を持って見詰め直し、それを踏まえた上で、今後の在り方を模索している。

 ただ、「これまでこうであったからこうする」という発想は、おうおうにして、研究所をあげての外部評価等の場ではなかなか話題になりにくい、一見、地味な分野で起こりがちだ。それは、業務に係る軽微な判断の場面であり、業務の遂行の場面であり、また、服務に関する場面であり、研究所の日常の幅広くにわたっている。しかし、研究所をよりすばらしい研究所にしていくためにはこれらも重要な分野である。

 21世紀の日本を引っ張っていくのは情報通信である。また、環境問題も一層重要になってくる。通信総合研究所はその両分野において大きな貢献を求められている。この大きな役割を果たしていくためにも、研究部門、支援部門が一体となり、常に、「これまでこうであったこと」に対する問題意識を失わずにいたい。

パキスタンの人々と(右から2番目が筆者)




堀之内郵政大臣ご視察


企画課 広報係





来所の記念に色紙を残される堀之内郵政大臣


 1月21日午後、堀之内久男郵政大臣がご視察に来所された。大臣は、当所幹部引見に引続き、概要説明をお受けになった後、リモートセンシング、宇宙通信、首都圏広域地殻変動観測、光センター、マルチメディア通信の各研究現場をご視察になられた。

各視察先の部署では、「お疲れにならないように」との配慮から椅子を用意していたが、大臣はほとんどお座りになることなく、所長の説明に熱心に耳を傾けられ、当所の研究業務に深い関心をお持ちいただいたようである。

古濱所長の説明をお聞きになる堀之内郵政大臣




関西支所の震災WWWページ高校教科書に掲載


関西支所 知的機能研究室
滝澤 修



 平成7年版通信白書のカラーグラビアページに、「WWWを通じて各種機関等のボランティアによって発信された被災情報」という見出しの写真が載っていたのをご存じでしょうか。これは、コンピュータディスプレーを接写した管面写真で、阪神淡路大震災関連情報のWWWページ(神戸市役所、奈良先端大、関西支所等)のMosaicウィンドゥを複数枚重ねたイメージ写真です。


その中にある関西支所のページは、震災直後に関西支所の有志が本所のWWW管理者のご協力を得て発信したもので、関西支所の計算機室の書棚が倒れている様子や、長田区救援物資配送基地での関西支所関係者のボランティア活動の様子などが入っています。この写真が、ある大手教科書出版会社の高等学校「新現代社会」の教科書(平成10年供給分)に掲載されることになりました。今後、教科書検定等の過程を経ることになりますが、今のところ、同書の第1編「現代社会に おける人間」の第1章「現代社会と青年」の第2節「情報化社会と管理社会」の冒頭に、「阪神・淡路大震災時に、コンピュータのネットワーク上に発信された情報」の見出しで掲げられる予定です。あの震災を忘れないためにも、また次代のネットワーカーを育てるためにも、我々の WWW ページが教科書を通じて全国の高校生の目に触れることは、意義のあることかと思います。

編集者註:以上は関西支所広報紙KARC Frontからの転載ですが、この記事の後、同写真の教科書掲載要望がもう一件あり、こちらは中学地理の教科書で、情報通信は地理的制約を緩和する、というイメージで取り上げられるようです。




科学技術講演会のお知らせ



 通信総合研究所では、毎年4月の科学技術週間に、科学技術分野の啓蒙を目的とした高宴会を開催しています。本年の開催は以下のとおりとなりましたので、ご案内申し上げます。多数の来場をお待ちしております。


講演会 「より自然でやさしい通信をめざして」
開催日時 平成9年4月17日(木)
14:00〜16:30
開催場所 小金井市公会堂
JR中央線武蔵小金井駅南口徒歩5分
講演1 心地よい音、映像
一より進んだ通信に役立つ脳科学一
講演者 大橋 力(おおはし つとむ)

ATR人間情報通信研究所感性脳機能特別研究室室長、
千葉工業大学情報工学科教授、
芸名「山城祥二」として芸能山城組の組頭も努める。


講演2 成長するサイバースペース内人工生命
一コンピュータグラヒックアートの可能性一
講演者 川口 洋一郎(かわぐち よういちろう)

筑波大学助教授、1975年よりCGに着手し、
現在も世界的CGアーティストとして活躍中。

主催:郵政省通信総合研究所、小金井市教育委員会
その他:入場無料、事前申込不要



特 許 登 録



発明の名称:移動体通信のチャネル割当方法
発 明 者 :岡田 和則 登録番号 :2005260 登 録 日 :平成8年1月11日

発明の名称:マグマの状態変化検出方法
発 明 者 :高橋 耕三、藤縄 幸雄 登録番号 :2034858 登 録 日 :平成8年3月28日 共同出願 :防災センター

発明の名称:周波数適応型トランスバーサルフィルタ
発 明 者 :浜本 直和 登録番号 :2034850 登 録 日 :平成8年3月28日

発明の名称:偏光面回転速度増倍装置 発 明 者 :豊田 雅宏 登録番号 :2500346 登 録 日 :平成8年3月13日
発明の名称:衛星搭載大型アンテナの鏡面歪み測定方法 発 明 者 :有賀 規、高橋 鉄雄 登録番号 :2500377 登 録 日 :平成8年3月13日

発明の名称:チャネル割当方式
発 明 者 :守山 栄松 登録番号 :2053830 登 録 日 :平成8年5月23日

発明の名称: 判定帰還形等化器
発 明 者 :神尾 亨秀 登録番号 :2053839 登 録 日 :平成8年5月23日

発明の名称:受信アンテナ装置
発 明 者 :守山 栄松 登録番号 :2062354 登 録 日 :平成8年6月24日

発明の名称:ニューラルネットワークとヴィタビ復号器を用いた適応等化器の構成法
発 明 者 :岩崎 憲 登録番号 :2526400 登 録 日 :平成8年6月14日

発明の名称:超伝導ジョセフソン素子の製造方法
発 明 者 :島影 尚、王 鎮、川上 彰、小宮山 兒、中條 渉 登録番号 :2526402 登 録 日 :平成8年6月14日

発明の名称:マニピュレーターの制御方法 発 明 者 :木村 真一 登録番号 :2535765 登 録 日 :平成8年7月8日

発明の名称:検波後合成型ダイバーシチ受信方式
発 明 者 :山崎 亮三 登録番号 :2071916 登 録 日 :平成8年7月25日

発明の名称:ガウシアンビーム型アンテナ装置
発 明 者 :松井 敏明、清川 雅博 登録番号 :2545737 登 録 日 :平成8年8月8日

発明の名称:移動地球局用アンテナ装置
発 明 者 :長谷 良裕、吉本 繁壽 登録番号 :2545742 登 録 日 :平成8年8月8日

発明の名称:レーダ断面積低減シート
発 明 者 :尾嶋 武之 登録番号 :2545721 登 録 日 :平成8年8月8日
発明の名称:太陽電池付マイクロストリップアンテナ
発 明 者 :田中 正人 登録番号 :2081673 登 録 日 :平成8年8月23日
発明の名称:ゴースト路同定方法
発 明 者 :小宮 紀旦 登録番号 :2081675 登 録 日 :平成8年8月23日

発明の名称:パルスドチャープレーダ送信変調信号の形成方法およびパルスドチャープレーダ装置
発 明 者 :野崎 憲朗 登録番号 :2560222 登 録 日 :平成8年9月19日

発明の名称:ポラリメトリックレーダ較正用標的
発 明 者 :真鍋 武嗣、井原 俊夫 登録番号 :2560227 登 録 日 :平成8年9月19日

発明の名称:簡略化ビタビ等化器
発 明 者 :神尾 亨秀 登録番号 :2099132 登 録 日 :平成8年10月22日

発明の名称:多数の微小弱結合からなるジョセフソン素子
発 明 者 :松井 敏明 登録番号 :2569408 登 録 日 :平成8年10月24日
発明の名称:静止衛星追尾用電波干渉計
発 明 者 :川瀬 成一郎 登録番号 :2569416 登 録 日 :平成8年10月24日
発明の名称:静止衛星の軌道決定方法
発 明 者 :川瀬 成一郎 登録番号 :2099166 登 録 日 :平成8年10月22日

発明の名称:小型マイクロストリップアンテナ
発 明 者 :中條 渉、伊藤 猛男 登録番号 :2580505 登 録 日 :平成8年11月21日

発明の名称:パルス圧縮法によるレーダを用いた測距方法
発 明 者 :鹿谷 元一 登録番号 :2113887 登 録 日 :平成8年12月6日



外 部 誌 上 発 表


Space Science Review (1996年10月)
3-D magnetic field and carrent system in the Heliosphere
鷲見 治一、田中 高史

情報通信ジャーナル (1996年10月)
ネットワークへの正確な時刻の提供
今江 理

人電子情報通信学会 (1996年10月)
自由空間アンテナ係数の一決定法
小池 国正、杉浦  行、増沢 博司、大谷  晃

電子情報通信学会 論文誌 (1996年10月)
FDTD法によるTEMセル内の電磁界解析張間 
勝茂、山下 

榮吉電子情報通信学会・論文誌 B-I (1996年10月)
ネットワーク管理におけるイベントコリレーションの高速化手法
横田 英俊、飯作 俊一、浅見  徹

電子情報通信学会英文論文誌分冊 C (1996年10月)
FDTD Analysis of Electromagnetic Interaction between Portable Telephone and Human Head
多氣 昌生、渡辺 聡一、野島 俊雄

電子情報通信学会論文誌D-II (1996年10月)
教育利用のための圧縮画像/広 帯域画像比較実験
近藤喜美夫、鈴木龍太郎、宇都由美子、井形 昭

弘電磁環境工学情報EMC、ミマツデータシステム発行 (1996年10月)
ミリ波衛星通信-技術試験衛星VI型(きく6号)によるミリ波通信実験
井家上哲史

日本航空宇宙学会誌 (1996年10月)
技術試験衛星VI型による通信実験
柏本 昌美、菅原 正行、井家上哲史、荒木 賢一、坂本  宏、上野 健治

APPLIED PHYSICS LETTERS(American Institute of Physics) (1996年10月)
Quasi-Optical Submillimeter-Wave Mixers with NbN/AIN/NbN Tunnel Junctions
鵜澤 佳徳、王   鎮、川上  彰

テレビジョン学会誌 (1996年10月)
チェーン符号化を用いた自動車用地図画像の可逆符号化方式・
宮本  剛、松田 一朗、伊東  晋

電気学会・論文誌・A分冊 (1996年10月)
エポキシ樹脂系接着剤の空間電荷分布の観測
福永  香、前野  恭
PASJ:Publications of the astronomical society of JAPAN (1996年10月)
Submillimeter Observation of the Galactic Plane by the IRTS
平尾 孝憲、松本 敏雄、佐藤 紳司、Ken Ganga、Andrew Lang、Beverly Smit、Minoru Freun

Publications of the Astronomical Society of Japan (1996年10月)
The IRTS (Infrared Telescope in Space) Mission
村上  浩、M.M.Freund、K.Ganga、H.Guo、平尾 孝憲、廣本 宣久、川田 光伸、A.E.Lange、巻内慎一郎、松原 英雄、松本 敏雄、松浦 周二、村上 正秀、中川 貴雄、成田 正直、野田  学、奥田 治之、奥村 健市、尾中  敬、T L.Roellig、佐藤、芝井  広

Publications of the Astronomical Society of Japan (1996年10月)
Far-Infrared[CII] Line Observation of the Galactic Plane by IRTS
巻内慎一郎、芝井  広、奥田 治之、中川 貴雄、松原 英雄、廣本 宣久、奥村 健市

画像電子学会誌 (1996年10月)
超高速光通信ネットワーク実験
鈴木龍太郎、久保田文人

電子情報学会論文誌 (1996年10月)
呼び出しエリア統計的選択方式における一時登録の効果
峯村 和孝、吉田  裕、久保田文人

Synthetic Metals (1996年10月)
Surface Observation of Langmuir-Blodgett Films of Polyamic Acid Alkylamine Salts and Polyimide by Atomic Force Microscopy and Friction Force Microscopy
横山 士吉、柿本 雅明、今井 淑夫

「臨床染色体診断法」(金原出版・東京) (1996年10月)
染色体の生細胞蛍光観察・原口 徳子、平岡  泰

情報処理学会論文誌 (1996年10月)
Mathematical morphology 演算の高速化アルゴリズムの比較
仁保  勉、江   浩、山本 眞司

「情報通信ジャーナル」 (1996年11月)「誰も知らなかった周波数」-−カドミウムイオンのトラップによる精密測定−
田中 歌子

A supplement to the EEG Journal,"Visualization of Information Processing in the Human Brain: Recent advances in MEG and Functional MRI" (1996年11月)
Voluntary attention to the motion of visually percieved objects can specifically activate either V1 or MT宮内  哲、渡辺 武夫、佐々木由香、多喜乃亮介、Benno Puetz

IEEE Transactions on Consumer Electronics (1996年11月)
Ghost measurement by waveform synthesis
小宮 紀旦

IEEE Transactions on Neural Networks (1996年11月)
Adaptive associative memories capable of pattern segmentation
馬   青

ITUジャーナル (1996年11月)
情報通信基盤としての衛星通信システム・最近の動向
飯田 尚志、門脇 直人

Japenese J. Appl. Phys. Part 2 (1996年11月)
Accurate Pulse Shaping of Femtosecond Lasers Using Programmable Phase-Only Modulater
高砂 一弥、竹川 誠、神成 文彦、谷  正彦、阪井 清美

Journal of Optical Society of America B (1996年11月)
Velocity control of an Yb beam by a frequency-doubled mode-locked laser
渡邊 昌良、大向 隆三、田中 歌子、早坂 和弘、今城 秀司、占部 伸二

Magnetodynamic Phenomena in the Solar Atmosphere (Kluwer Academic Publishers) (1996年11月)
Simultaneous Observation of Solar Surges in Hα and X-ray
秋岡 眞樹、G.Cauzzi

Magnetodynamic Phenomena in the Solar Atmosphere (Kluwer Academic Publishers) (1996年11月)
X-ray and Magnetic Features of HαSurges
大久保あかね、松元 亮二、宮路 茂樹、秋岡 眞樹、H.Zhang、下条 圭美、西野 洋平、一本  潔、柴田 一成、桜井  隆

Solar Physics (1996年11月)
A LARGE ARCADE ALONG THE INVERSION LINE ON MAY 19,1992 BY YOHKOH,AND ENHANCEMENT OF INTERPLANETARY ENERGETIC PARTICLES
亘  慎一、T.Detman、J.A.Joselyn

Solar Wind 8 (1996年11月)
Corotating and transient structures of the interplanetary magnetic fields at Venus and Earth
丸橋 克英電波技術協会報 (1996年11月)
通信総合研究所一般公開
西山  巌

春秋会会報・春秋会は、郵政・NTT・KDDの電波関係者のOB会 (1996年11月)
最近の電磁環境問題について
杉浦  行

電子情報通信学会・和文論文誌 (1996年11月)
短縮ダイポールアンテナによるサイトアッテネーション測定
前田 篤哉、杉浦  行、桑原 伸夫、臼田 昭吾

電子情報通信学会論文誌 B-II (1996年11月)
電子レンジ妨害波によるPHSのBER劣化の測定と推定
山中 幸雄、篠塚  隆

電子情報通信学会論文誌・分冊DII (1996年11月)
サッカードの適応の文脈依存性
藤田 昌彦、雨海 明博、皆川 双葉電波技術協会報 (1996年11月)
電波で飛行船を飛ばす藤野 義之日本音響学会誌 (1996年11月)
若手研究者の抱負
白土  保

New Astronomy 誌 (1996年11月)
Yohkoh/SXT Observation of a coronal mass ejection near the solar surface
N.Gopalswamy、M.R.Kundu、花岡庸一郎、えの目信三、J.Lemen、秋岡 眞樹

共立出版社「蛋白質・核酸・酵素」 (1996年11月)
三次元蛍光顕微鏡システムによる染色体の核内構築とダイナミクスの解析
平岡  泰、原口 徳子

The Geophysical Research Letter (1996年11月)
Comparison of wind measurements between Yamagawa MF radar and the MU radar
五十嵐喜良、西牟田一三、村山 泰啓、津田 敏隆、中村 卓司、堤  雅基

Zeitschrift fur Physikalische Chemie Bd 196 S 43-54 (1996) (1996年11月)
STM Studies of Polyimide Monolayers on Gold(111) Surfaces
横山 士吉、M.Keil、H.Sotobayash、A.M.Bradshaw、柿本 雅明、今井 淑夫、C.L.A.Lamont

電子情報通信学会・論文誌 B-I (1996年11月)
ブロック符号のテーブル参照による軟判定復合法
南  英城、笹岡 秀一