やるからには徹底的にやりました研究所の外部評価

−ありがとうございます、そしておつかれさまでした−


企画部総括主任研究官 外部評価事務局
富田 二三彦



外部評価委員会より


 通信総合研究所(CRL)は、理化学研究所の有馬朗人理事長を委員長とする総勢51名(延べ60名)の外部評価委員により、平成8年度に外部評価を受けました。CRLの外部評価は7つの研究部門に対する研究評価と、それを受けた後の研究所全体に対する運営評価の2つにわけて行われ、かつそれぞれの評価とも書面審査と委員会審査の2段階で評価が行われたところに特色があります。また、外部評価を受けた国立試験研究機関としてもトップ集団の中にあります。


1. はじめに

 まずはじめに「評価(Evaluation)」という言葉は、ある目的があってそれに値するか否かを評する場合に使用するものであり、例えばあるグループがある研究を推進するに値するか否かを判断するのは「評価」です。しかしながら、あるグループの状況を審査して、おまけにその進むべき道を助言したりすること(例えば小・中学校の通信表)は「審査(Review)」であって「評価」ではありません。今回当所が行った外部評価の場合、研究部門によりEvaluationとなったところも、Reviewが主となったところもあり、それを受けて行った所全体の運営評価はどちらかというとReviewが主体でした。このようにEvaluationとReviewが混在していることを承知の上で、日本語で「外部評価」、英語では主に「Review」を使用していることをお断りします。


2. なぜ外部評価を受けるか

 国立試験研究機関(国研)は、国全体で必要であるが、民間ではやらないかやれない研究を行う場所です。CRLの場合、郵政省に設置された研究所で、主に郵政省を通じて国の予算を使用する必要性と目的を持った組織ですから、CRLで行われる研究活動がある方向性を持ち、それを保つために研究の「管理」があるのは当然です。一方、自由な発想から新しい物や技術や知識を生み出すために研究者は多くの場合「自由」を希求し、そもそも何が出るかわからない研究を「管理」することはできないと考えています。また、研究にはさまざまな面で「フレキシビリティ」が必要であるのに対し、行政機関としての国研には、国の予算が正当に使用されていることを常に明らかにしなければならない「制約」もまた課せられています。

 つまり国研は、「管理と自由」、「フレキシビリティと制約」という研究に関する矛盾を生まれながらに持っているので、もともと運営が難しく、かつその運営は、経済・社会や科学技術の動向等により常に見直していかなければなりません。このようなチェックや見直しは当然所内のしかるべき方針決定組織で行われてきたものですが、今後新たな研究分野を開拓し先端研究をめざす国研としては、従来の自己点検だけでは不十分で、定期的な外部からの評価とその公開が特に必要になってきました。


3. 外部評価の背景

 郵政省 電気通信技術審議会の第85号答申「技術創造立国に向けた情報通信技術に関する研究開発基本計画について」においては、我が国の科学技術に関して、これまでのキャッチアップの時代は終焉を迎え、今後は、未来を切り拓いていかなければならない時機を迎えていると認識されています。つまり、これまでは、先行している諸外国の研究状況をサーベイしてノウハウを取り込み、更に改良して世界一をとるというような研究サイクルであったものを、世界に先駆けて研究領域を開拓していく、無から有を生み出せるように研究のスタイルを変革していかなければならないということです。

 また、先の科学技術基本法に基づく科学技術基本計画においては、新しい時代に向けて、新たな研究開発システムを構築するとともに、大学・研究所等、官・民等、国内・外等の連携・交流の拡充、強化を図り、また研究開発に関し厳正な評価を実施することによって、我が国全体の研究開発の抜本的な活性化を図るとされています。つまり、科学技術創造立国をめざして政府の研究開発投資額を大幅に増やすが、そのカウンターパートとして厳正な評価が必要であるということです。


4. CRLにおける外部評価の目的

 かつて、電電公社の民営化に伴ってCRL(当時は電波研究所、RRL)が有線分野の研究も担当することになり、研究分野は飛躍的に増大しました。また、予算も1978年頃から1991年頃までの冬の時代の後、科学技術基本計画等による追い風を受けて近年急速に改善されつつあります。ところが研究者数はここ20年間横ばい状態にあり、近年の情報通信基盤研究へのさらなる研究分野の拡大にもかかわらず改善の見通しはありません。CRLにとってこのような深刻な構造的問題「要員不足の中での研究分野の拡大」に、今後どのように対処していくべきかが課題となっています。

 また、近年の予算拡大は主に情報通信基盤研究に関するユーザー・オリエンテッドな研究開発への要請に基づくものです。CRLが国立研究所としてこのような要請にいかに応えていくべきか、つまり「ユーザー・オリエンテッドな研究の立ち上げを国研でいかに行っていくべきか」はCRLのもうひとつの課題となっています。

 すでに述べたような社会的な背景と、CRLのこのような状況を踏まえ、これまでの研究活動とその成果並びに今後の計画について、外部専門家及び有識者により外部評価を行う必要があると考えられます。更に、その結果を一般に開示することは、国研としてのCRLの存在意義と社会的役割について国民の理解と信頼を得、研究活動をさらに活性化して優れた成果をあげていくことにつながると考えられます。

 いずれにせよCRLは国立の研究機関ということで、それなりの額の公的資金により研究の継続性が一応保証されています。よってそこで行う研究には責任が伴い、自らの研究状況及び第三者による研究の評価結果を一般に開示するのは当然の義務と考えられるのです。


5. 外部評価委員会の構成と審議事項

評価は、外部評価委員会において、研究評価委員会と運営評価委員会に分かれて実施されました。

図1 外部評価委員会全体の構成


5.1 研究評価委員会について

研究評価委員会では、7つの専門分野に分かれて主に研究計画や研究成果等について各部門毎に研究実績の評価が行われました。7部門は光部門、基礎部門、マルチメディア・ネットワーク部門、無線通信部門、宇宙科学部門、地球環境計測部門、時空計測部門です。CRLにおける研究分 野が拡大しているため、このようにいくつかの部門に分けて研究評価を行うことは必然ですが、部門に分けたことによりいくつかの困難が待ち受けていました。

 第一の難関は委員の選出です。研究評価委員の人選については、外国からの委員を含める、部門により民間の研究者を含める、またできるだけ第三者からの評価を受けるため、委員長にはCRLの客員研究官を指名しないという方針により、各研究分野の専門家を各々4〜10名選出して委員への就任を依頼しました。ところがこの研究評価は、主に各研究部門の成果等を中心に評価していただくものなので、それぞれの分野の国際レベルの専門家ということも考えなければなりません。その結果、これまでCRLとつながりのあった先生も含まれたり、部門間で先生の取り合いになったりすることもありました。この点については、分野による研究者の層の厚さの違い等もあり、致し方なかった考えます。

 第二の難関は、どの研究グループがどの分野で評価を受けるかという判断です。これについては評価委員の案を呈示しながら個々の研究グループとも相談して決定しました。その結果、学際的な研究を行っているグループでは、ひとつの研究室のスタッフがそれぞれ別の部門で評価を受けるというような事態も発生しました。

 最後の難関は統計データを作成する際に発生しました。後で述べる運営評価では各研究部門の性格や研究状況の違いも審査の対象となります。各部門の研究者数や予算額や成果の量を算出するため、ある程度大雑把な分類をせざるを得なかったことをここでお断りしておきます。つまり、運営評価委員会のための資料においては、部門間での論文数等の成果のダブルカウントを避けていますが、運営評価資料における各部門毎の数値は、各研究部門毎に作成した個別資料の数値とは必ずしも一致していません。

5.2 運営評価委員会について

 運営評価委員会では、研究評価委員会の評価結果を踏まえつつ、主に研究の支援・促進、研究の管理等研究活動全般について評価が行われました。委員については、先ず委員長を理化学研究所の有馬理事長にお願いし、産・学・官の有識者に人文系の有識者を含める、外国でCRLに近い研究分野の研究所長を含める、研究評価と同じくCRLの客員研究官は指名しないという方針で、委員長と相談の上各委員を選出し、委員への就任を依頼しました。

 実際、外国人以外に、官の代表としては、科学技術庁の科学審議官にお入りいただき、民間からも経団連の産業技術懇談会の主査やNTTの研究開発本部長にも、大変お忙しいなかご参加いただきました。また、経済学の先生やマスコミの記者の方にもご参加頂き、広い分野の皆様から貴重なご意見を頂くことができました。

 外部評価委員会全体の構成を図1に委員名簿を表 1に示します。


表1 外部評価委員会名簿(敬称略)

[総勢51名(延べ60名)、内国外委員14名(外国人10名)]

外部評価委員長:有馬朗人/理化学研究所理事長
1. 運営評価委員会委員長:有馬朗人/理化学研究所理事長 
 委員:Steven F. Clifford/Director, Environmental Technology Lab. / National Oceanic and Atmospheric Administration, USA
 委員:Gerry Turcotte/President, Communications Res. Centre, Canada 
 委員:青木利晴/NTT常務取締役、研究開発本部長
 委員:青野由利/毎日新聞社東京本社科学環境部サイエンスライター
 委員:市川照久/経団連産業技術懇談会主査
 委員:岡崎俊雄/科学技術庁科学審議官
 委員:竹内 啓/明治学院大学国際学部教授
 委 員:稲場文男/東北工業大学工学部教授
 委員:難波 進/長崎総合科学大学教授
 委員:野口正一/(財)仙台応用情報学研究振興財団理事長
 委員:安田靖彦/早稲田大学理工学部教授
 委員:赤祖父俊一/Prof., Geophys. Institute, Univ. Alaska Fairbanks, USA
 委員:坂田俊文/東海大学情報技術センター所長、教授
 委員:村田一郎/東京大学地震研究所教授
2. 研究評価委員会
(1)光部門委員長:稲場文男/東北工業大学工学部教授
 委員:飯塚啓吾/Prof., Univ. of Toronto, Canada
 委員:Wolfgang Renger/Director, Institute of Atmospheric Physics, Germany
 委員:Paul L. Richards/Prof., Univ. of California at Berkeley, USA
 委員:Francois Roddier/Prof., Univ. of Hawaii. USA
 委員:大津元一/東京工業大学教授
 委員:奥田治之/宇宙科学研究所教授
 委員:神谷武志/東京大学教授
 委員:田幸敏治/東京理科大学教授
 委員:難波 進/長崎総合科学大学教授
(2)基礎部門委員長:難波 進/長崎総合科学大学教授
 委員:伊藤龍男/Prof., Univ. of California, Los Angeles, USA
 委員:Alexander Waibel/Prof., Carnegie Mellon Univ., USA
 委員:岩本光正/東京工業大学工学部教授
 委員:大沢文夫/愛知工業大学客員教授
 委員:東倉洋一/ATR人間情報通信研究所代表取締役社長
 委員:長尾 眞/京都大学大学院工学系研究科教授
 委員:早川尚夫/名古屋大学工学部教授
 委員:三井洋司/生命工学工業技術研究所首席研究官
 委員:宮下保司/東京大学医学部教授
(3)マルチメディア・ネットワーク部門委員長:野口正一/(財)仙台応用情報学研究振興財団理事長
 委員:小林久志/Prof., Princeton Univ., USA
 委員:井出英人/青山学院大学理工学部長、教授
 委員:岩野和生/日本IBM東京基礎研究所所長
 委員:坂内正夫/東京大学生産技術研究所教授
 委員:吉田慎一郎/NTTマルチメディアネットワーク研究所長
(4)無線通信部門委員長:安田靖彦/早稲田大学理工学部教授
 委員:Alfred U. MacRae/Consultant, Former General Manager, Bell Res. Lab., AT&T, USA
 委員:倉本實/NTT移動通信網常務取締役、研究開発部長
 委員:羽鳥光俊/東京大学工学部教授
 委員:平田康夫/KDD取締役、事業開発本部副本部長
 委員:森永規彦/大阪大学工学部教授
(5)宇宙科学部門委員長:赤祖父俊一/Prof., Geophysical Institute, Univ. Alaska Fairbanks, USA
 委員:Kristian Schlegel/Prof., Max-Planck Institute for Aeronomy, Germany
 委員:日江井栄二郎/明星大学理工学部教授
 委員:深尾昌一郎/京都大学超高層電波研究センター教授
(6)地球環境計測部門委員長:坂田俊文/東海大学情報技術センター所長、教授
 委員:Thomas T. Wilheit/Prof., Texas A&M Univ., USA
 委員:岩坂泰信/名古屋大学太陽地球環境研究所教授
 委員:津田敏隆/京都大学超高層電波研究センター教授
(7)時空計測部門委員長:村田一郎/東京大学地震研究所教授
 委員:Claudine Thomas/Head, Time Section, Bureau International des Poids et Mesures, France
 委員:田幸敏治/東京理科大学教授
 委員:大師堂経明/早稲田大学教育学部教授
 委員:真鍋盛二/国立天文台水沢観測センター長




6. 評価のスケジュール

図2 外部評価全体のスケジュール

 運営評価委員会、研究評価委員会ともに、評価は文書による審査、及び委員会開催時の討論や面接による審査の両者により行いました。ま ず、CRLより評価用資料が各委員宛て送付され、事前に評価票に評価結果を記入して回収しました。

6.1 研究評価委員会について

 研究施設の見学や研究職員と直接対話するために、委員会を各部門ごとに1回開催しました。1996年12月の1〜2日間、通信総合研究所(東京都小金井市)及び鹿島/平磯センター及び基礎部門のみ関西支所(兵庫県神戸市)において開催しました。

6.2 運営評価委員会について

 CRLの見学や職員との討論を行うために、委員会は、1997年2月6日、7日に通信総合研究所において開催されました。委員会席上、各研究評価委員会委員長からは各部門での評価報告の概要が紹介されました。所の状況や運営は幹部より説明があり運営に関する諸問題並びに将来の展望も含めた所の方針につき討議が行われました。さらにより一層CRLの実状を調査したいという有馬委員長のご希望により、6名のポストドクトラルフェロー、定常業務に従事している5名の所員、更に2日目には、6名の研究リーダーより、それぞれの研究や業務に関する問題点や要望事項について報告を受け、議論が行われました。このような現場の研究者と評価委員との直接対話は各研究部門でも行われましたが、今回のCRLの外部評価の特色のひとつです。スケジュールの全体像を図2に、評価委員会の模様を写真1、写真2に示します。

写真1 運営評価委員会

写真2 評価委員 所内視察


7. 評価委員会を終えて

 全体として評価された点と同時に厳しい意見や有益な助言が評価委員より与えられました。特に、研究部門により、基礎を標榜するならば論文数が多くないこと、一方、国立研究所の役割である、行政から見て国民に役立つことを行う部門に対しては、論文だけではない評価基準が必要であるという意見がありました。主に評価された点及び主な助言を、外部評価委員会報告書より抜粋します。

7.1 主に評価された点

  1. 社会への貢献について
    行政施策上の要求によく応えている面は評価する。

  2. 人材確保について
    研究職定数を増加させる努力を続け、また各種制度を積極的に活用し、国内・外からの若手の人材の確保と育成に努めている点は評価できる。

  3. 予算の執行について
    現実の予算の執行にあたって様々な制約が課せられていることを考慮すれば、予算が適正に執行され、また問題点の指摘及び改善の努力もみられており評価できる。

  4. 研究へのインセンティブについて
    共同研究の件数が多く、外部、特に大学等の研究機関との研究交流に関しては評価でき、また国内外との研究交流、海外出張、表彰、奨励研究制度等により、意欲増進によく努めている。

7.2 主な助言

  1. 通信総合研究所の将来展望について
    社会、経済、技術の状況を踏まえ、国立研究所の使命を明確にした長期ビジョンを考えるべきである。このための、少数の所内外委員よりなる将来計画検討委員会を設置すべきである。

  2. 研究テーマについて
    研究テーマが多岐にわたるため、各テーマ毎の研究者数が不足する傾向にある。今後ミッションを明確にしぼり、研究者を効率的に配置していかなければならない。

  3. 研究環境の活性化について
    研究の進展に合った柔軟な組織体制を心がけ、また外部との研究交流、特に民間との研究交流を更に増進すべきである。

  4. よりよい成果を出すことについて
    論文数及び論文の質を高め、学術への貢献をより増進するべきである。また、論文だけでなく、質・量ともに特許取得に対する意欲を高め、一般社会への貢献も増進すべきである。

  5. 研究支援について
    事務の効率化を図り、外部委託等による研究支援を強化すべきである。

  6. 予算の効率的な運用について
    研究の進展に併せて柔軟に予算が使用できるように制度の改善を図るべきである。例えば、二年間にわたる予算の運用、費目間での予算の流用等。

  7. 一般国民との交流、情報の公開について
    一般社会との交流を更に強化すべきである。


8. おわりに

 外部評価の結果、国研としての役割や研究ベクトルの絞り込みなどに関して多くの助言が与えられました。これに応えて対応(アクションプログラム)を実施し、今後も引き続き国研としての役割を明確にしつつ、いくつかの課題に沿った研究を行っていくことになりますが、一方、職員ひとりひとりの頭の中の発想は自由です。「与えられた課題研究を遂行する途中の自由な発想から、往々にして優れた研究が生まれ出ること。また、課題研究を推進するためにはそれを支える優れた基礎研究が必要であることを考え、できる限り研究のしやすいフレキシブルな環境作りをめざしていくべきである。」これが今回の外部評価で得られた大きな教訓のひとつと思います。

 最後に、研究職職員が約300名の研究所に対して延べ60名もの外部評価委員にお集まりいただきました。時には文字にし難いような、歯に衣も何も着せないような貴重なご批判やご意見をいただきましたことを心より感謝いたします。職員の側も、外部評価に対応するため通常の研究や業務に追加して多くの仕事が課せられました。もちろん評価を受けたことによるプラスの面もあり、また外部から評価していただくことは国研の責務とはいえ、マイナス面とプラス面のバランスから考えると、多大の準備を必要とするような外部評価は少なくとも数年間隔にすべきであるという感想があります。



カタール訪問記


宇宙通信部 衛星間通信研究室長
有本 好徳



 平成9年3月28日から4月2日にかけてカタール大学で開催された光衛星間通信に関するワークショップに講演を依頼され、カタールの首都ドーハ市内に1週間滞在した。アラビア半島で光衛星通信のような先端技術のワークショップが開かれるのは大変稀で、CRLから学会参加の形でアラビア半島に出張したのは筆者が初めてではないかと思う。そこで、ワークショップの技術的な内容はひとまず措くとして、カタールでの一般的な印象をまとめてみた。


1. カタールについて

 カタールはアラビア半島の東岸からアラビア湾の中央部に突出している秋田県ほどの広さを持った半島の国であり、1993年のワールドカップ・サッカーのアジア地区予選が行われた場所として多くの人の記憶に残っている。

 カタールは、1971年にイギリスから独立した君主国で、豊富な石油及び天然ガス資源により急激な近代化を進めている。滞在中に出会った多くの人がページャ(ポケベル)と携帯電話を使っており、電話などの通信網は日本よりも発達しているようだ。日本との経済的なつながりも強く、実際に多くの日本製の自動車や電気製品を見かけた。ワークショップの主催者といっしょに日本のN TTにあたるQTELの電話局と衛星通信地上局を見学したが、衛星通信地上局ではほとんど日本製の装置が稼動していた。しかしながら、地上系はヨーロッパからの製品がほとんどで、携帯電話(GSM)の交換機はNOKIA製、一般の電話の交換機はEricsson製が、現在、導入中のSDH交換機にはMatra-Marconi製が用いられていた。

 経済的に裕福な国であるため、警官や軍人以外で実際に働いている人には外国からの出稼ぎが多い。また、厳格なイスラム教国であり、高級レストランを除けば普通の場所ではアルコールは一切飲めないし、豚肉を使った料理を見ることも無かった。カタール人の教官は、大学の中でも男性は白い民族衣装、女性は黒い長袖の民族衣装を着て、黒いベールで顔を隠している。

 ドーハは中心部の繁華街を除けば、市のあちこちでビルが建築中で、数km離れると広大な造成中の敷地が広がっている。滞在中は、大学が手配してくれたホテル(シェラトン・ドーハ・ホテル、写真1)とカタール大学との間を大学の車で往復しただけで、市内観光の機会は無かったが、カタールはアラブ諸国のうちでも、最も治安の良い国の一つとのことであった。


写真1 筆者が滞在したホテル (Doha Sheraton Hotel)


2. カタール大学について

 カタール大学(写真2)は人口の8割が住む首都ドーハの中心部から16kmほど離れた北の海岸よりの郊外にあり、カタールにおける高等教育の中心として1973年に教育学部が設立された。現在、教育学部、人文科学部、理学部、イスラム・法学部、工学部、経営・経済学部の6つの学部がある。学生数は、およそ8000名で、そのうち29%が男性、71%が女性である。カタールでは、男性の多くは大学に進学するよりも軍や警察に勤めることが良いとされており、大学では教官、学生共に女性の割合が多い。しかしながら、学内では男女は建物も別で、講義も独立して行われている。

 今回のワークショップを主催したのは理学部の物理学科であるが、理学部には他に植物学科、化学科、計算機学科、地質学科、海洋学科、数学科、動物学科がある。これらの構成を見ても分かるようにカタール大学の役割は、現在のカタールを担う人材を養成することであり、実用的な研究が重視され、社会に対する科学的なコンサルティングを行うことや、民間との共同プロジェクトを推進すること、ワークショップ等により科学技術の普及啓蒙活動を行うことが要請されている。大学ができてからまだ歴史が浅いため、教官の大半は外国人(エジプトからの出稼ぎが多数)であり、カタール人の教官は少数で若い人が多い。また、多くのカタール人教官が外国、例えばフランス、イギリス、日本等の有名大学で学位をとっており、一般的な教育水準は非常に高そうであった。ただ、カタール大学での研究は、多くを外国からの「導入」に頼っており、独自の成果を出していくのは難しそうであった。ワークショップの後半に行われたラウンドテーブル・ディスカッションでも、カタール人の教官から、外国製の実験装置を導入するだけではなく、如何に独自の研究成果をあげていくにはどうしたら良いかとの問題提起が行われたが、これに対して筆者からは、環境に対する理解を深めるための研究がカタールの特色を発揮する上で重要であり、例えば砂漠地帯におけるレーザの空間伝搬やライダーなどの分野が良いのではないかと答えた。

写真2 カタール大学の建物


3.  ワークショップの概要

 筆者がワークショップに招待されたのは、数年前にSPIEが毎年冬にアメリカ西海岸で開催しているPhotonics Westで、ETS-VIによる光衛星通信実験の成果を報告した際に、カタール大学のEl Nadi教授が同じセッションで発表しており、日本からの世界初の光衛星通信実験の報告を聞いて興味を持ったことがきっかけとなったとの事であった。カタール大学では、定期的に科学技術分野の特定のテーマでワークショップを主催しており、今回はこの3回目のワークショップにあたる。

 外国からの招待講演者はエジプトから2名、カナダから2名、フランス、イギリス、日本から1名の合計7名、カタール国内からはカタール大学及び電話会社(QTEL)から1名であった。今回のワークショップでは、土曜から水曜までの5日間に17件の講演が行われた。このうち筆者は3件の講演を行った。カタールでは、1週間の始まりは土曜からであり、金曜が休日にあたる。最初、このことに気づかず、筆者の講演が土曜と日曜に予定されていたのを奇異に感じていた。

 また、午前中と午後の早い時間は、多くの参加者(大学の教官)には講義の義務があり、ワークショップの講演は午後の遅い時間にプログラムされていた。このため、午前中(9:00頃から13:00頃まで)は関連施設、例えば大学内の研究施設、電話局の交換機、衛星通信地上局や博物館などを見学し、昼食後、16:00から20:00頃までが講演あるいは聴講という厳しいスケジュールが続いた。


写真3 カタール大学の実験室


4. カタールの気候

 ガイドブックによると、国土の大半が砂漠と岩の荒野で、雨は非常に少ないものの、三方が海に囲まれているため湿度が非常に高く、夏期には40℃以上の高温と100%以上の湿度という過酷な環境になるとの事であった。しかしながら、ドーハ空港に到着してすぐ、ゴロゴロという雷の音が聞こえていたと思ったら、その夜から明け方にかけて大雨が降り、明くる日にカタール大学に向かうときには、まるで日本で台風が通過した後のように、道路のあちこちにある水溜まりをよけつつ、それでも水しぶきを上げながら走る車を多く見かけることになった。結局、この時の水溜まりは1週間の滞在中は完全に消えることは無く、その後の6日間は日本の4月頃とほとんど変わらない快適な気候が続いた。ただ、車で少し郊外に行くと、干乾びたような低木が点在するだけの荒れ地が続き、散水車が通ることのできる道路と人家の周りとオアシス以外には緑は見られない。実際、昼間はほとんど雲一つ無い青空、夜は満天の星空(但し、ドーハ市内は道路の夜間照明のため空が明るいので実際には暗い星は見えない)で、晴天を待ちながら3日に1度のETS-VI衛星のパスに臨んだ東京あるいはテーブル・マウンテン(カリフォルニア)での光通信実験を思うと、比較にならないくらい(光通信実験には)良好な天候が続いた。今回の講演のタイトルの一つが、静止衛星と地上局との光通信(光フィーダリンク)であったため、筆者も砂漠地帯の気候が光通信に適しているかどうか大変興味を持っていたが、実際にカタールに行ってみて、澄んだ青空が印象に残った。但し、季節によっては砂嵐があり、Zeissの技術者から聞いた話によると、望遠鏡などの鏡面の耐用年数は短いという。

 アラビア半島には、東京からイギリスに向かう5Gbpsの光海底ケーブルの陸揚げ局があり、通信網も発達している。将来、光フィーダリンクが実用的に使われるようになれば、カタールのような砂漠地帯に ある産油国は、石油資源の代わりに宇宙通信ポートとして重要な役割を果しているのかも知れない。この訪問を機に、光通信の研究分野においてカタールとの間で研究協力が発展することを期待する。

 最後に、このような貴重な滞在の機会を与えてくれたカタール大学のDr. Lotfia El Nadi教授、及びCRLの関係各位に、また、滞在中に大変お世話になったユネスコ・ドーハ・オフィスのAmin Meshal博士に感謝して、カタール滞在記を終わる。



うるう秒の実施


標準計測部 周波数標準課



 通信総合研究所は、当所の維持決定している協定世界時(UTC(CRL))を9時間進めたものとして、日本の標準時を標準電波や電話回線を利用した報時サービス(テレホンJJY)などで全国にお知らせしています。

 このたび、国際地球回転観測事業(IERS)の通知に従い、日本時間で本年(平成9年)7月1日午前9時の直前に“うるう秒”調整(挿入)を実施いたします。

 これは、協定世界時(UTC)と地球の回転に伴う世界時(UT1)との差が0。9秒以内に保つため世界一斉に実施されるもので、このため、日本時間で、本年7月1日は、

  7月1日 8時59分59秒
       8時59分60秒
       9時00分00秒

となります。

 ちなみにうるう秒調整は新方式UTCの決定法採用後の1972年以来第21回目で、前回のうるう秒調整は昨年1月1日に実施されました。

 この結果、UTCと国際原子時(TAI)との差は31秒となります。



新人紹介



総合通信部 宮森 恒

 皆さん、初めまして。4月より高度映像情報研究室に配属となりました宮森 恒(みやもり ひさし)と申します。出身は早稲田大学で在学中は映像情報の構造化・符号化・編集加工方式を研究してきました。研究所でもこれまでの蓄積と経験を活かし、構造特徴を利用した映像処理技術とその基礎研究を行なっていきます。

 趣味はテニス・スキー・水泳・語学などをよくやります。また昔バンドをやっていたこともあり、音楽は聴くのも弾くのも歌うのも好きです。カラオケでは誰も聴いてくれなくても気持ちよく歌っていますし、下手な人が歌っていても飽きずに結構楽しんで聴いている方です。

 研究所では、仕事も仕事以外のことも「冒険心」を大切にして楽しんでいきたいと思っております。また、なるべく多くの方々と気軽なおつき合いができればと思っております。今後とも末永くどうぞよろしくお願い致します。

「人はみな泣きながら生まれてくる」
           ----- シェークスピア

総合通信部 井上 真杉

 総合通信部・高速移動通信研究室に配属されました井上真杉(いのうえますぎ)と申します。昭和45(1970)年大阪生まれ、郵便番号が10桁になる日が誕生日です。大阪で10年、千葉で1年程過ごした後、静岡県富士市で中・高校を終えました。京大での卒研テーマは2次元アレーアン テナによる複数波の到来方向推定。東大大学院ではマイクロセルラーのトラヒック特性解析、音声・映像・データ伝送のためのマルチメディア無線アクセスプロトコルなどの研究を行ないました。これを踏まえ、今後は無線ATMやモバイルコンピューティングを視野に入れた無線ネットワークのシステム開発に携わることができればと考えています。好きなものは、音楽(ジャズ/フュージョン)、酒、本(乱読および積ん読)、雑談など。そろそろ独身寮・研究所周辺をはじめとする小金井探索に乗り出そうかと思う今日この頃です。未熟者ゆえ、皆様からの御指導御鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。

総合通信部 外林 秀之

 このたび総合通信部・超高速ネットワーク研究室に配属になりました外林 秀之(そとばやし ひでゆき)と申します。私は大学在学中、修士課程では非線形光ファイバ方向性結合器を用いた光ソリトンスイッチングの研究を、博士課程では能動モード同期光ファイバレーザおよび半導体レーザの研究を行っていました。

 私は京都市出身で、まだ時々関西風のイントネーションが出てしまいます。趣味は、音楽を聴くこと、演奏会に行くこと、映画を見ること、食べ飲み歩きをすることです。最近は、体を動かす機会が少なくなってしまっているので、暇を見つけてはスポーツも楽しみたいと考えています。
まだまだ未熟者で分からないことが多く、不手際も多いと思いますが、皆さんどうぞよろしくお願いいたします。

総合通信部 藤井 哲也

 はじめまして、高度映像情報研究室に配属になりました藤井哲也と申します。大学では、バーチャルリアリティに関する研究と称して、仮想ケン玉シミュレーターを作ったこともありました。今後は、大学で学んできたコンピュータグラフィクスに関する知識を活かして、仮想現実感の医療応用を目指していきます。

 生まれは一応愛知県なのですが、小学校入学までは岐阜県の高山に住んでいました。そのため今ごろになって、スキーを覚える前に名古屋に引っ越してしまったことを後悔しています。この春初めて、寮での一人暮らしを始めることになり、新鮮な気分を味わっています。今後とも趣味のテニスを続けてゆこうと思っていますので、公私ともにご指導のほどよろしくお願い致します。

宇宙通信部 クラウス・ヴェルナー

 初めまして。この春、宇宙通信部宇宙技術研究室に配属となりましたクラウス・ヴェルナーと申します。CRLでは、すでに一年半前からSTAフェローとして補償光学や光技術の分野で研究をしていましたが、これから職員としてもっと頑張りたいと思います。

 出身は、オーストリアの首都ウィーンです。ウィーン工科大学の修士課程を卒業してから、国際交流プログラムに参加し、東大に入学しました。それで、一昨年の秋までは、東大の留学生でした。オーストリアは、音楽と自然とチョコレットケーキの有名な国です。確かに、チョコレットケーキは好きな食べ物の一つです。ところが、日本に来てから、好きな食べ物の数は急に増えて来ました。納豆、ネギトロ、南瓜クリームクロッケ、梅酒などは大好物になり、日本を2週間以上離れると困ります。皆様、今後ともどうぞよろしくお願い致します。

電磁波技術部 李 可人

 初めまして、李 可人 (Keren LI) と申します。4月1日から、電気通信大学から通信総合研究所に転職してきました。生まれは中国の江蘇省常熟市、風光明媚な古い町です。大学も中国の南京工業大学(現東南大学)。その後、国費留学生として、電気通信大学は修士課程、東京大学は博士課程を経て、電気通信大学で助手・講師・助教授を6年間勤めてきました。専門はマイクロ波工学、光エレクトロニクス。近年の主な研究テーマはマイクロ波集積回路を中心とする電磁界解析でした。

 性格は明朗、それなりの協調性があると思います。高校時代は数学コンテストに入賞したこともあって数学が好きでしたが、大学では、専ら哲学や方法論に興味を持ち、殆どの課外時間をそれらに費やしていました。理論を比較的に得意とし、物事を論理的にまとめる傾向があります。議論好き。常に新しいものに興味を持つが、一旦できてしまうと、急に興味がなくなり、研究結果を発表せずにそのまま放置したことがしばしばありました。最近の自慢は多層グリーン関数の一般解析解を発見したこと。夜型研究者で、早起きが多少苦手。難しい問題を時間をかけて考えるのが好き。尊敬する科学者は A. Einstein。好きな言葉は「道常不為、而無不為」(老子:「道徳経」より)。この緑多い通信総合研究所でマイクロ波から光波まで、波動を中心に、実り多い研究を進めていきたいので、ご指導の程よろしくお願いします。

電磁波技術部 安田 浩朗

 4月より電磁波技術部通信デバイス研究室に配属になりました、安田浩朗と申します。東京で生まれ、神奈川県で育ちました。趣味は、読書・ドライブです。大学では色素ドープ微小ポリマー球におけるレーザ発振についての研究を行い、その後企業の研究所等でロジックLSIのプロセス・デバイス技術の研究開発などに従事しました。

 当研究所では、ミリ波用の電子デバイスの研究に取り組む予定です。まずは、ミリ波実験棟のクリーンルームにある化合物半導体のMBE装置や絶縁物の堆積装置を使いこなすことから始めるつもりです。未熟者で気の回らないこともあると思いますが、皆様のご指導・ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

電磁波技術部 大堂 雅之

 はじめまして。電磁波技術部・通信デバイス研究室に配属になりました大堂雅之(おおどうまさゆき)です。出身は大阪で、高校時代まで過ごしました。大学(東京工業大学)から東京で生活するようになり、今年度で十年目に突入しました。大学時代の研究テーマは「電磁波回折・散乱問題の高周波近似解法」で、極めて理論的な研究でしたが、こちらでは実用的なアンテナ(主にミリ波帯)について研究する予定です。できるだけ早く、こちらでの生活に慣れて、研究に専念できるように努力するつもりですが、まだまだ未熟者ですので、先輩方からのアドバイスを受けながら一人前の研究者になりたいと思います。私生活の面では、「名は体を表す」の格言通り、体が大きい(太い)ので、今年度はダイエットに努める所存です。

地球環境計測部 久保田 実

 1996年10月7日生まれ、30歳、血液型A型、東北大学理学部地球物理学科出身、博士論文のタイトルは 「南極昭和基地におけるオーロラ活動に伴う熱圏中性風の中規模変動に関する研究」で、光を使った超高層(高度80-300km)大気のリモートセンシングをこれまで主にやってきました。

 生まれは埼玉県与野市ですが、大学及び大学院在学中は11年間(うち1年半は南極に行ってましたが)仙台で暮らしました。この原稿を書いている5月頃ちょうどあちらは山菜のシーズンで郊外に出れば山菜採りが楽しめます。でも東京ではそんな楽しみはないだろうと諦めていました。しかしCRL内や寮の周辺にけっこうタラの芽などが生えているのを見つけて最近ちょっと嬉しく思っています。

地球環境計測部 足立 樹泰

 はじめまして。地球環境計測部環境システム研究室に配属となりました足立樹泰(あだちたつひろ)と申します。京都大学の出身で、レーダによる大気温度・風速プロファイルのリモートセンシング法の開発に関する研究を続けてまいりました。今後は通信総合研究所で行われている先端的工学研究の成果を理学分野へ応用し役立てるような仕事をしたいと思っています。私は大阪育ちで関東に住むのは初めてなので、毎日の生活はたいへん新鮮です。ただ、身に染みついた大阪弁は抜けきらず、当分「標準語」で話せそうにありません。関連の研究室には親しくして頂いている先輩諸氏も多く、気分一新新しい研究に打ち込めそうです。みなさまどうぞよろしくお願い致します。

地球環境計測部 瀬田 益道

 皆様、こんにちは。「超新星残骸と分子雲との相互作用の観測的研究」で博士号(理学)を取得後、ドイツはケルン大学でポスドクとして一年間電波天文学の研究を行ってきました。趣味は、読書、旅行、サッカー、スキーなどですが、最近はあまり時間がとれません。CRLでは、サブミリ波受信機の開発を中心に研究を展開する計画です。研究は素晴らしい創造行為だと思っています。まだまだ未熟者ですが、やる気と好奇心は旺盛です。よろしくお願い致します。

標準計測部 古屋 正人

 はじめまして、このたび標準計測部時空計測研究室に配属となりました古屋正人と申します。出身地は新潟の豪雪地帯です。大学時代は地球惑星物理学を専攻しており、修士・博士課程を通じて大気海洋の地球回転変動への影響について研究していました。地球科学では従来から、観測実験技術の革新によってブレークスルーがもたらされているように思えます。自分としても将来的には、そのような技術開発の現場に携われたら、と考えております。

 高尚な趣味は持ち合わせておりませんが、しいて言えば東京六大学野球の観戦で、いつか母校が初優勝する日を本気で夢見ています。皆さんどうぞよろしくお願いします。

関西支所 久保田 徹

 はじめまして、このたび関西支所ナノ機構研究室に配属になりました久保田 徹です。私は、これまで東京工業大学の助手時代に、有機物超薄膜の電気伝導とその素子応用を行ってまいりました。つまり、人間を形作る有機物質の中の電子の動きを研究し、それを電子素子に応用しようというわけです。本研究室配属後も同様の研究を続けることとなります。

 私は、文部省からの転属の ため、楽しい(??)新人研修は免除され、4月1日からすぐに、どこを見渡しても畑ばかりの関西支所での新しい生活と研究がスタートしました。この研究に没頭できる最高の環境と、最新の設備の整った通信総合研究所で、これから新たな研究成果を出し、がんばっていきたいと考えています。また、せっかく関西に来ましたので、これからはドライブがてら近畿、中国地方のあらゆる所を見て回りたいと思っております。

 今後、研究と共にあらゆる点でご迷惑をおかけすると思いますが、宜しくお願いいたします。

関西支所 カジ・サルワル・アベディン

 今年4月に東北大学電気通信研究所から関西支所に赴任しました、カジ サルワル アベディンです。昭和40年バングラシュ生まれ、母国の工科大学を卒業し、平成5年に山形大学工学部の修士、8年に東北大学電子工学科博士の学位を修得しました。

 最先端の研究を行う日本のこの研究機関で研究をすることができ、非常に嬉しく思っております。

 次世代の情報伝達に必要とされる超高速光通信に利用できるテラヘルツ周期を持つサブピコ/フェムト秒パルスの発生を目指して光ファイバーレーザの研究を行いたいと思います。現在では関西支所のコヒーレンス技術研究室に所属しております。皆様どうぞよろしくお願いします。

関西支所 鍋谷 彰

 皆様はじめまして。東京での研修を終え、関西支所生物情報研究室に配属となりました鍋谷彰です。大阪の出身で、大阪大学理学部、国立循環器病センターとずっと大阪で生活してきました。馴染み深い関西で研究を続けられるので喜んでいます。今まで私は分子遺伝学の分野で研究をしてきまして、遺伝情報が機能する時に染色体やクロマチン構造がどのような役割を果たすかに興味を持っています。中でも生殖細胞を形成する過程である減数分裂は、解明すべき不思議なことがまだ多く残っています。こちらでも減数分裂や染色体をキーワードに、研究に取り組みたいと思っています。

 CRLは今まで自分が所属してきた場所と違い、研究分野や得意とする技術の異なる人たちが集まった所と感じています。こんな環境から刺激をいっぱい貰って、自分の研究に幅を広げて行きたいと思っています。そういう自分にとって、研究室と関西支所のアットホームな雰囲気はとても嬉しく感じています。どうぞ宜しくお願いします。実は話好きの人間ですので、気軽にお声をかけて下されば有り難いです。

関西支所 小嶋 寛明

 初めまして。関西支所の生体物性研究室に配属となりました小嶋寛明です。大学時代からモーター蛋白質(例:筋肉の収縮を司るアクチン-ミオシン系)、及び1分子計測をキーワードにして研究を進めてきました。CRLでは今までの仕事をベースにして、生物分子機械としてのモーター蛋白質の運動メカニズムの解明、さらにはそれを工学へ応用することをめざして研究に取り組んで行きたいと思っています。私の取り組んでいる研究分野は非常に学際色が強く、大きな進歩は必ずと言っていいほど他分野での新しい技術の開発に伴って起こります。そういう意味でCRLにおいて他の研究室の皆さんより受ける刺激は私にとって宝の山であると思います。いろいろ皆様のところに相談に伺うことも多いかと思いますが、そのときはどうぞよ ろしくお願い致します。