情報通信と電磁波に関するCOEをめざして

−通信総合研究所の平成9年度研究計画−


企画部 企画課長
福地 ー


[重点研究分野]

 通信総合研究所は、情報通信と電磁波に関する唯一の国立試験研究機関として、情報、通信、電波、光に関する次の3つの研究系、6つの重点研究分野を設定して研究を積極的に推進します。図1は、当所の3つの研究系を示したもので、情報・通信と環境・計測という当所の大きな2つの応用分野を、それぞれの分野に汎用的に活用できる基礎・基盤分野の研究が支えている様子をイメージしています。

情報・通信系
(1)ユニバーサル通信技術
(2)有人宇宙時代の通信技術

環境・計測系
(3)地球環境と太陽惑星系の科学
(4)時空と計量の科学

基礎・基盤系
(5)生物と情報の科学
(6)光・量子・物性の科学

図1 通信総合研究所の研究体系イメージ



[平成9年度の特徴]

 平成8年度は、通信総合研究所の将来計画の検討に重要な年度となりました。まず、平成8年5月には、電気通信技術審議会への諮問第85号「技術創造立国に向けた情報通信技術に関する研究開発基本計画について」の答申が出され、情報通信分野の重要研究課題の抽出が行われ、それらの研究開発に対する国の役割が示されました。同年7月には「科学技術基本法」に基づく「科学技術基本計画」が閣議決定され、科学技術創造立国を目指した我が国全体としての研究開発推進の基本的なあり方が示されました。さらに、通信総合研究所では、研究対象分野の拡大と研究予算の急増を背景に、かねてから外部評価の必要性を認識していましたが、この期に全所的な外部評価を行いました(CRLニュース平成9年4月号参照)。このような状況も踏まえて、当所の平成9年度の研究計画の特徴を以下に示します。

(1) 研究課題の特徴

 平成9年度も平成8年度に引き続き、超高速ネットワーク、汎用情報通信端末、映像情報データベースを中心とする情報通信の基盤技術に関する研究、急増する移動通信の高度化・高品質化に対応する周波数資源開拓の研究に関する予算が急増しています。これらの研究プロジェクトは、立ち上げ段階から本格化段階あるいは成果とりまとめ段階に移行しつつあります。また、平成8年度から開始された、欧米及びアジア太平洋地域の各国との地上回線あるいは衛星回線によるグローバルネットワークの相互接続実験及びアプリケーション実証実験については準備段階から本格実験段階に入っています。さらに平成9年度には、通信総合研究所の研究ミッションが搭載された以下の実験衛星が8月以降打ち上げられる予定で、平成9年度後半には、以下の実験研究が本格化します。

  1. 高度通信放送技術衛星(COMETS):高度移 動体通信及び高度衛星放送の実験研究
  2. 熱帯降雨観測衛星(TRMM):衛星搭載降雨レーダ等による熱帯地域降雨観測の実験研究
  3. 技術試験衛星Ⅱ型(ETS−VII):大型アンテナ組み立て技術及びテレオペレーション技術の実験研究


左図は.今年度打上げ予定の衛星
上からCOMETS、TRMM、ETS-Ⅱ

(写真提供 宇宙開発事業団)

 各重点研究分野の具体的な研究課題は、通信総合研究所外部評価の結果も踏まえて、国立研究所にふさわしい課題に重点的に取り組むなど、これまでの研究課題の見直しを行い、それぞれの分野に再整理します。また、増大する情報通信と電磁波に関する研究ニーズに即応するため、平成9年度から以下の新研究課題に取り組みます。

− ユニバーサル通信技術の分野
・電磁環境の生体へ及ぼす影響に関する研究
・マルチメディアバーチャルラボの構築に関する研究

− 有人宇宙時代の通信技術の分野
・宇宙電波監視技術

− 地球環境と太陽惑星系科学の分野
・軌道上ミッション実証システム搭載用先端的地球観測センサの研究
・亜熱帯地球環境計測技術の研究

 さらに、当所の研究業務、定常業務の基盤となる次の施設等を平成9年度から整備いたします。
・長波による標準電波の発射施設
・横須賀無線通信研究センター(次項「組織の新設」参照)

平成9年度当初の全研究プロジェクトと担当組織を表1に示します。



表1.平成9年度 研究開発プロジェクト一覧 (平成9年4月現在)

企画部
企画課
(計画推進係) 研究計画の推進及び総合調整
(成果管理係) 研究成果の発表
(広報係) 広報及び研修
(情報化推進室) 所内情報化の推進
技術管理課
(計算機係) 計算機の運用
(図書係) 図書・資料の収集・利用・管理
(出版係) 研究資料の出版
(通信係) 無線局の管理及び研究支援用通信設備の維持・管理
(試作係) 機械器具の試作及び開発
国際研究交流室 電波・電気通信技術の国際協力に関する調査研究
総合通信部
統合通信網研究室 通信網の統合化に関する研究
通信系研究室 陸上移動通信の周波数有効利用技術に関する研究
高速移動通信研究室 マイクロ波帯における高速移動通信技術の研究
放送技術研究室 高度放送システムの研究開発
超高速ネットワーク研究室 マルチテラビット光ネットワークに関する研究
ユニハ゛ーサル端末研究室 汎用・福祉型情報端末技術に関する研究開発
高度映像情報研究室 高度情報資源伝送蓄積技術に関する研究
非常時通信研究室 非常時通信技術に関する研究
通信科学部
信号処理研究室 高次脳機能と神経計算論の研究
情報処理研究室 情報ネットワークに関する研究開発
通信方式研究室 ディジタル通信方式に関する研究
宇宙通信部
超高速衛星通信システムの研究開発(*)
衛星通信研究室 高度衛星通信システムの研究開発
移動体通信研究室 移動体衛星通信技術の研究開発
宇宙技術研究室 宇宙通信の要素技術に関する研究
衛星間通信研究室 宇宙通信システムに関する研究
電磁波技術部
通信デバイス研究室 通信用アンテナに関する研究
ミリ波・サブミリ波帯デバイス技術に関す研究
ミリ波技術研究室 ミリ波構内通信技術
光技術研究室 光エレクトロニクス技術に関する研究
磁環境研究室 電磁環境に関する研究
宇宙科学部
電磁圏研究室 電離圏情報の収集と提供
電磁圏に関する研究と観測
宇宙空間研究室 極域における電波観測
STEP計画参加課題の研究推進
宇宙空間物理の研究
宇宙計測研究室 宇宙計測に関する研究
地球環境計測部
電波計測研究室 電波計測技術に関する研究
光計測研究室 地球環境の光学計測技術に関する研究
環境計測技術研究室 地球環境の新しい観測技術に関する研究
環境システム研究室 地球環境計測技術に関する国際共同研究
標準計測部
原子標準研究室 原子標準の高精度化と応用に関する研究
時空計測研究室 高精度時空計測の研究
時空技術研究室 宇宙測地技術の応用に関する研究
地震前兆電磁界の研究
周波数標準課 標準周波数・標準時の設定・比較と供給業務
標準周波数・標準時に関する調査研究
測定技術課 測定器の較正
型式検定
型式検定標準試験法の研究
第一特別研究室 先端的光通信・計測に関する研究
第二特別研究室 太陽地球系の基礎研究
第三特別研究室 超高速光エレクトロニクスの研究
関東支所
鹿島宇宙通信センター
地球観測技術研究室 リモートセンシング及び衛星電波伝搬に関する実験研究
宇宙通信技術研究室 衛星通信の実験研究
宇宙電波応用研究室 宇宙電波・VLBIに関する研究
宇宙制御技術研究室 宇宙システムの制御技術の研究
平磯宇宙環境センター
太陽研究室 太陽フレアとその予報及び太陽遠隔計測技術の研究
宇宙環境研究室 太陽惑星間環境に関する研究
宇宙天気予報課 宇宙天気予報システムの開発
関西支所
知覚機構研究室 知覚機構モデルによる知的情報処理の研究開発
知識処理研究室 通信網の高機能化に関する研究
知的機能研究室 高次知的機能の工学的実現に関する研究
超電導研究室 赤外・ミリ波技術の研究
コヒーレンス技術研究 室 量子光技術の基礎と応用に関する研究
電磁波分光研究室 レーザの新技術と分光・計測への応用に関する研究
生体物性研究室 生体物性の計測および解明に関する研究
生物情報研究室 生物情報の計測技術および解明に関する研究
ナノ機構研究室 高度情報通信のための分子素子技術の研究開発
稚内電波観測所 稚内における電離層定常観測
稚内における研究観測
犬吠電波観測所 犬吠における研究観測
山川電波観測所 山川における電離層定常観測
沖縄電波観測所 沖縄における電離層定常観測
沖縄における研究観測
ジョイントプロジェクト 南極観測本部
宇宙開発計画検討委員会
情報システム委員会
時空計測研究推進委員会
通信放送技術衛星計画推進本部
地球観測衛星実験グループ
宇宙天気予報研究計画の推進
首都圏広域地殻変動観測推進本部
周波数資源プロジェクト推進本部
COE化推進委員会
情報通信基盤技術研究開発本部
国際ネットワーク実験推進連絡会
マルチメディア・バーチャル・ラボ計画推進本部

(*):部に所属するプロジェクト



(2)組織の新設
 組織については、急速に進展する情報通信の研究ニーズに即応するために、また科学技術基本計画に提言されている柔軟な研究組織の実現のために、情報通信関連の部の全面的な再編をはじめ、次の組織改正を平成9年7月に実施します。

  1. 通信システム部及び情報通信部の設置:
    ここ数年の情報通信の研究ニーズの急速な高まりに対し、従来の総合通信部はシステム技術から要素技術にわたる広範な分野を研究対象としてきましたが、ますます増大する情報通信分野の研究を円滑に進めるために、研究対象分野の再編成を行い、システム研究を主体とする通信システム部と要素技術を主体とする情報通信部を設置します。

  2. 光技術部の設置:
    将来の情報通信分野やリモートセンシングなどの計測分野での光技術の重要性の増大を考慮し、基盤的な光技術に関する研究を効率良く一元的に推進する光技術部を設置します。

  3. 横須賀無線通信研究センターの設置:
    移動通信を代表とする無線通信技術の重要性が急速に増大しています。無線通信分野は基礎的な研究だけではなく、民間とも協力して国際的な視野をもって規格化・標準化を意識して研究を進めることが非常に重要です。そこで、無線通信関係の民間研究機関の集約化が図られている横須賀リサーチパーク(YRP)に横須賀無線通信研究センターを新設し、将来は当所の無線通信部門の研究を集約することとしました。同センターは民間研究機関等とともに同一の研究棟(YRP1号棟、図3参照)に入り、まさに同じ屋根の下で産学官の融合で新しい研究スタイルを試みながら研究開発を進めることとしています。このセンターでの試みが国の研究機関としての新しい役割を示す契機になることを期待しています。

    図3 YRP研究開発センター1号棟完成予想図


  4. 研究チームの新設:
    急速に進展する情報通信と電磁波の研究開発ニーズに即応するとともに、科学技術基本計画でも提言されている所長裁量の発揮による機動的な研究開発推 進体制を実現するために、時限プロジェクトを所長裁量で推進する研究チームを6つ新設します。

これらの組織改正を行ったあとの、新組織図を図4に示します。


通信総合研究所組織図(平成9年7月以降)


(3) 研究交流及び研究環境の充実
 急増する情報通信と電磁波の研究ニーズに即応するためには、産学官や国内外の研究者の交流がますます重要となっています。そこで、国内外、各セクタとの研究交流を引き続き積極的に推進するとともに、産学との協同研究制度、大学との連携大学院制度、STAフェローシップ制度、科学技術特別研究員制度等の多様な制度の活用により研究者あるいは研究補助員の確保につとめます。多様化する研究課題に対する適切な研究指導力の確保するために、引き続き客員研究官・顧問制度を活用します。科学技術基本計画の提言を受けて、平成8年度末に整備した特許権等の知的所有権の研究者個人への帰属、民間との共同研究を促進するための研究者の兼業規制の緩和、フレックスタイム制の拡充などの措置を活用し、引き続き研究環境の充実に努力します。さらに、研究基盤としての所内外ネットワーク機能の活用により、所内情報化、所外広報活動等の情報化を充実させます。このような、研究環境の充実を図り、平成9年度においても、引き続き各研究分野において中核的研究拠点(COE:Center Of Excellence)化を目指して努力します。特に、平成6年度に科学技術振興調整費によるCOE化設定領域に選定された「先端的光通信・計測に関する研究」は4年目を迎え中間評価で高い評価を得て後期段階に入るため、その期待に応えるべくいっそう充実に努めます。


[研究所の将来構想]

 平成8年度に実施された通信総合研究所外部評価の助言を受け、外部有識者の委員からなる「通信総合研究所将来ビジョン検討委員会」を設置し、国の研究機関としての当所のあり方等について検討するとともに、主要な研究分野の見直しを行い、重点研究分野のそれぞれの中長期の研究計画を充実させます。この研究課題の見直しにあたっては、外部評価での指摘や平成9年4月に答申された電気通信技術審議会諮問第87号「科学技術基本計画を踏まえた情報通信研究開発基本計画の充実について」の提言を踏まえて検討いたします。


[おわりに]

 平成8年度には、電波研究所時代を含めて通信総合研究所45年間の歴史の中ではじめての全所的な外部評価を実施しました。この外部評価でいただいた種々のご指摘は、通信総合研究所の重点研究分野、研究運営方針に策定に有益であり、高い評価をいただいた点はその維持拡充に、問題点として助言いただいた点はその解決に、平成9年度以降本格的に取り組む必要があります。また、平成9年度には当所にとって新しい組織である「センター」、「チーム」を設けることができます。これらの組織についても、その目指す特徴を十分に活かし、急増する情報通信と電磁波に関する研究ニーズに即応できる新しい研究スタイルを実現させる必要があります。

このように、通信総合研究所は常に望ましい研究分野の選定、研究体制の実現を図りながら、情報通信と電磁波に関するCOEをめざしていきます。



平成9年度通信総合研究所予算の概要


総務部 会計課長
阿部 真



2年連続40%増で約200億円

 通信総合研究所の平成9年度予算は総額199億9289万円と、大幅な増額が認められた。(図1参照)厳しい財政状況の中でも、経済構造改革特別措置として、基礎科学研究、情報通信基盤等の科学技術分野は、政府の重要施策とされ、日々めまぐるしく急成長を遂げる情報通信への国民の期待に応え、科学技術分野での国の貢献を求めたものとなった。

 一昨年、議員立法で科学技術基本法が成立し、昨年7月には政府の科学技術基本計画が定められた。
基本計画では、我が国は自ら率先して未踏の科学技術分野に挑戦していくことが必要との認識にたち、バブル崩壊後の不況の中で日本全体の研究開発投資が平成5、6年度と2年連続減少したのを深刻に受け止め、政府の研究開発投資が対GDP比で欧米主要国より低い現状を打破していこうという方針を打ち出している。これらの伏線が、今回の大幅な増大に繋がっていることを銘記すべきだろう。

通信総合研究所の予算推移


情報通信基盤、利用料が2本柱

 内訳で見ると、一般財源は2%と微増だが、電波利用料は約39億円と75%増、公共投資約40億円が予算増の中心である。公共投資のうち、情報通信基盤関係費が約22億円あり、一般財源分と合わせると約60億円となり、情報通信基盤と利用料が予算の2本柱である。

 項目としてはマルチメディア・バーチャルラボ技術開発の推進、電磁環境の相互影響に関する研究、長波標準施設の整備、亜熱帯地球環境計測技術の研究開発及び横須賀無線通信研究センターの整備が新規に認められたことが特筆される。

また、電磁環境とマルチメディア関連では実験庁舎の建築費が認められた。


横須賀無線通信研究センター新設実現

 組織では、懸案であった移動通信技術の国際的研究開発拠点を目指す横須賀テレコムリサーチパークへの進出を柱とする組織改正が認められた。

 組織改正では、横須賀無線通信研究センター(YRC)の新設に伴い第3特別研究室をスクラップしたほか、総合通信部、通信科学部及び電磁波技術部を新たに通信システム部、情報通信部及び光技術部に振り替えることになった。

 また、所長直属の時限的でフレキシブルな組織として6研究チームが認められた。(研究室の振り替え)当面のミッションとしては国際ネットワーク実験、移動通信システム、COMETS実験、アラスカ国際共同研究等が予定されている。

 科学技術庁の中核的研究拠点(COE)として研究が強化されている光部門では、光技術部の新設に併せ2研究室の純増が認められた。


4名増員 研究職303名に

 要員は、研究職5名の増員要求のうち4名が認められ、定員削減計画による行政職3名削減が行われ、合計425名と総数で1名増となった。この結果研究職は300を突破し303名となった。


平成9年度予算額総括表

           

(単位:千円)

       

9年度

8年度

対前年度

対前年度

増減額

比(%)

       

A−B

A/B

(組織)通信総合研究所

19,992,899

14,068,817

5,924,082

142.11

     

3,311,097

3,102,911

208,186

106.71

     

 

58,865

56,431

2,434

104.31

     

16,622,937

10,909,475

5,713,462

152.37

重要事項

7,692,892

7,605,042

87,850

101.16

 

地球環境計測技術の研究開発

630,330

477,031

153,299

132.14

   

@

短波長ミリ波帯電磁波による地球環境計測技術の研究

51,418

56,364

-4,946

91.22

   

A

光領域アクティブセンサーによる地球環境計測技術の研究開発

37,780

29,800

7,980

126.78

   

B

地球環境計測・情報ネットワークに関する研究開発

21,739

17,398

4,341

124.95

   

C

高分解能3次元マイクロ波映像レータ゛による地球環境計測・予測技術の研究

125,301

120,754

4,547

103.77

   

D

地球環境のための高度電磁波利用技術に関する国際共同研究

299,428

207,415

92,013

144.36

   

E

海底電磁界観測システムの研究開発

94,664

45,300

49,364

208.97

 

宇宙通信技術の研究開発

2,002,614

1,799,850

202,764

111.27

   

@

宇宙電波による高精度時空計測技術の研究開発

111,100

104,650

6,450

106.16

   

A

衛星間通信技術の研究開発

50,558

131,001

-80,443

38.59

   

B

宇宙天気予報システムの研究開発

89,001

74,564

14,437

119.36

   

C

宇宙からの降雨観測のための二周波ト゛ッフ゜ラレータ゛の研究

139,187

130,010

9,177

107.06

   

D

高度衛星通信放送技術の研究開発

622,437

904,181

-281,744

68.84

   

E

小型衛星通信技術の研究

0

52,562

-52,562

 
   

F

分散衛星システムによる宇宙通信の研究

61,200

48,000

13,200

127.50

   

G

次世代の通信・放送分野の研究開発衛星の研究開発

593,093

209,578

383,515

282.99

   

H

静止軌道上遠隔検査技術の研究

45,122

43,600

1,522

103.49

   

I

ギガビット光衛星通信システムの研究開発

113,596

47,540

66,056

238.95

 

J

軌道上ミッション実証システム搭載用先端的地球観測センサの研究

18,000

0

18,000

 
   

K

首都圏広域地殻変動の観測

159,320

54,164

105,156

294.14

 

電気通信フロンティアの研究開発

660,379

565,256

95,123

116.83

   

@

共通経費

36,444

35,741

703

101.97

   

A

超電導体による超高速・高性能通信技術の研究開発

88,539

80,298

8,241

110.26

   

B

知覚機構モデルによる知的情報処理の研究開発

49,578

35,521

14,057

139.57

   

C

超多元・可塑的ネットワーク基礎技術の研究開発

41,335

45,386

-4,051

91.07

   

D

次世代通信のための高次知的機能の研究開発

51,540

35,680

15,860

144.45

   

E

インテリシ゛ェントヒューマンインターフェースの研究開発

46,584

34,831

11,753

133.74

   

F

未開拓電磁波技術の研究開発

151,981

121,778

30,203

124.80

   

G

生体機能に関する研究開発

90,291

85,721

4,570

105.33

   

H

高度情報通信のための分子素子技術の研究開発

86,624

75,810

10,814

114.26

   

I

自律型知的ソフトウエアエーシ゛ェントの設計原理の研究開発

17,463

14,490

2,973

120.52

 

情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発

3,631,450

4,294,963

-663,513

84.55

 

グローバル広帯域ネットワークの実用実験の推進

144,776

188,568

-43,792

76.78

 

ア ジア・太平洋地域における情報通信基盤技術の開発

379,650

142,144

237,506

267.09

 

非常時通信技術の研究開発

58,766

47,500

11,266

123.72

 

周波数資源の研究開発

161,573

70,760

90,813

228.34

   

@

光領域周波数帯の研究開発

93,073

70,760

22,313

131.53

 

A

電磁環境の相互影響に関する研究

68,500

0

68,500

 
 

特別研究

12,074

7,933

4,141

152.20

   

@

STEP計画期間における関連観測の強化

12,074

7,933

4,141

152.20

 

10 組織・要員

11,280

11,037

243

102.20

電波利用料

3,645,215

2,003,157

1,642,058

181.97

   

@

マイクロ波帯における高速移動通信技術

286,324

175,131

111,193

163.49

   

A

ミリ波帯通信用デバイス技術

481,500

369,300

112,200

130.38

   

B

ミリ波構内通信技術

810,000

378,000

432,000

214.29

   

C

移動体通信用無線局のデジタル化ナロー化技術

450,000

307,000

143,000

146.58

   

D

放送用周波数有効利用技術

387,000

202,388

184,612

191.22

   

E

インテリジェント電波有効利用技術

319,941

310,220

9,721

103.13

   

F

陸上移動通信における同一チャネル干渉軽減技術

315,015

186,715

128,300

168.71

   

G

電波監視機器等の整備・維持運用

97,785

74,403

23,382

131.43

 

H

横須賀無線通信研究センターの整備

188,444

0

188,444

 
 

I

宇宙電波監視施設の維持運用

309,206

0

309,206

 

公共投資重点化枠

3,974,407

0

3,974,407

 
   

@

基礎的・汎用的技術研究開発

993,050

0

993,050

 
   

A

情報通信の高度化のための脳機能の研究

66,950

0

66,950

 
 

B

マルチメディア・バーチャル・ラボ技術開発の推進

1,170,000

0

1,170,000

 
 

C

電磁環境の相互影響に関する研究

1,000,000

0

1,000,000

 
 

D

長波標準電波施設の整備

654,407

0

654,407

 
 

E

亜熱帯地球環境計測技術の研究開発

90,000

0

90,000

 

その他の経費

4,680,385

4,460,618

219,767

104.93

 

皆減皆増の経費

148,471

169,830

-21,359

87.42

 

標準予算系統

4,531,914

4,290,788

241,126

105.62

※皆減皆増の経費:電磁環境測定装置及び測定法の研究開発、電離層観測諸施設整備、無線機器の型式検 定等施設整備、標準電波施設整備
標準予算系統の経費:一般行政、人当経費、一般管理費、経常研究、電離層諸現象の国際観測等、宇宙空間の実験研究、標準電波施設の維持運用、無線機器の型式検定等、電子計算機システムの維持運用、実験研究用共通施設の維持運用、特別経費

★:新規事項



待遇表現の丁寧さの計算モデル

−感性を取り扱う自然言語処理システムの実現に向けて−


関西支所 知的機能研究室
白土 保



1. はじめに

 従来の自然言語処理研究の多くは、言語の論理的側面に注目したものでした。しかし、人間と同じようにことばを取り扱うことができるような計算機を実現するためには、これらの論理的機能に加え、 人間の感性の働きを模擬する機能を計算機上に実装することが不可欠となります。

 このような観点から、関西支所知的機能研究室では、感性を取り扱うことのできる自然言語処理システムの実現に向けた基礎研究のひとつとして、待遇表現の丁寧さに関する計算モデルの研究を行っています。


2. 待遇表現の丁寧さの計算モデル

 待遇表現とは、話し手が、聞き手及び話題に含まれる人物と自分との間に、尊卑、優劣、利害、疎遠等どのような関係があるかを認識し、その認識を言語形式の上に表したものです。ここではこれらの関係を総称して“待遇関係”と呼び、また待遇表現に対して人間が持つ心理的な丁寧さの度合いを“待遇値“と呼ぶことにします。ほとんどの待遇表現の待遇値は一次元の値として表現できることが、従来の研究により明らかにされています。従って本研究では、待遇表現 P に対する待遇値がスカラー量V( P )として計量化できるものとします。

 今回我々は、待遇表現の丁寧さに関する計算モデルの基本的枠組みとして、待遇表現に語尾を付加した際の待遇値変化の計算モデルを提案しました。

 このモデルではふたつの仮定:

  1. それぞれの待遇表現に対し、その表現が用いられるべき待遇関係が一次元の確率分布として表される、
  2. それぞれの語尾に対し、その語尾が付加される待遇表現が用いられるべき待遇関係が一次元の確率分布として表される、

を基に、待遇表現に語尾を付加した際得られる情報量が定義されます。この情報量は語尾の付加による待遇関係の変化を定量化したものですが、更にこれを用いて語尾の付加による待遇値変化Δが定義されます(モデルの詳細については省略します)。

 このモデルからは、語尾を固定した時その語尾を付加することが(文法的に)可能な任意の待遇表現Pについて、関数Δと待遇値V( P )との関係がほぼ線形となることが予測されます。この予測を確かめるため、以下の心理実験を行いました。


3. 心理実験

実験には、

  • 待遇表現: 話者が、ある事柄について「知っている」という意図を聞き手に伝える際に用いる待遇表現21種類(表1)
  • 語尾: “よ”
を用いました。“よ”の付加により、待遇表現の丁寧さが概して減ずることが予測されます。


1:分かる 8:知ってる  13:存じてます 18:承知している
2:分かります 9:知っている 14:存じています 19:承知してます
3:分かってる 10:知ってます 15:存じております 20:承知しています
4:分かっている 11:知っています 16:存じあげてます 21:承知しております
5:分かってます 12:知っております 17:存じあげております
6:分かっています
7:分かっております

表1 心理実験に用いた待遇表現


 心理実験は10代〜70代の日本人男女97名を被験者とし、一対比較法により行いました。一対比較法では、計量化の対象となる42種類(待遇表現21種類+それぞれの待遇表現に“よ”を付加して作った表現21種類)の待遇表現の中から異なる全ての待遇表現の対( 42 C 2 通り)が作られ、一対ずつ被験者に呈示されます。被験者は一対の待遇表現の丁寧さを比較し、より丁寧な表現だと感じた方に○印を、両方の表現が同じ位丁寧であると感じた場合は△印をつけるよう求められます。呈示された待遇表現の対、及び回答の例を図1に示します。

 それぞれの待遇表現に対する待遇値は、これらの回答を基にサーストンの比較判断の法則による計量化手続きを適用することによって求められます。この際それぞれの待遇値は、最小の待遇値を0とした相対値として得られます。


知っているよ 知ってます
知っております 存じてますよ
分かってる 知っている
・・・・・・・・・・・・・・・・・

図1 回答例


4. 実験結果

 実験結果を、それぞれの待遇表現 P i , i =1,2,..,21に関し待遇値V( P i )を横軸上の値、“よ”の P i への付加による待遇値変化Δ i を縦軸上の値としてプロットしたものを図2に示します。図の各点に添えられた番号は、表1における待遇表現の番号を表します。

 図2に示す点群は、元の待遇表現の待遇値が大きいほど、“よ”の付加によって待遇値が大きく減少する(即ち、元々丁寧な表現ほど、“よ”の付加によってその丁寧さが大きく損なわれる)傾向があることを示しています。また、これら点群に対し直線による回帰を行ったところ、直線へのあてはまりの良さを示す決定係数R 2 は0.84となりました。

 この結果は、Δ i とV( P i )との関係がほぼ線形であることを示唆し、先の予測を支持します。

図2 語尾“よ”の付加による待遇値変化


5. おわりに

 今回紹介した計算モデルは、待遇表現に対する心理的な丁寧さの度合いを待遇表現の構成要素から計算する枠組みを提案しています。従って本モデルは、単に待遇表現の生成システムへの応用が期待されるだけでなく、待遇表現の学習過程(素朴な表現の獲得に始まり、次第に高度な待遇表現を学習して行く過程)に関するヒントを与えるものと考えられます。

 現在のモデルでは、第三者に関する話題を含む表現は想定していません。今後、このような表現も取り扱うことができるように、モデルを拡張して行くことが必要となると思われます。



平成9年度科学技術講演会を開催して


企画課 広報係



写真1 大橋力 先生の講演

 通信総合研究所(CRL)では、毎年4月の科学技術週間に、科学技術講演会を実施しています。今年度は4月17日(木)に、小金井市公会堂において、『より自然でやさしい通信をめざして』と題し、感性脳科学者大橋力氏(写真1)、CGアーティスト河口洋一郎氏(写真2)の両先生を講演者にお招きし、音や映像について色々な観点から御講演いただきました。

 当日の来場者は240名で、毎年徐々にですが増加してきており、我々の努力が地域住民の方々に理解されてきていると思われます。お答えいただいたアンケートを見ても、「面白かった」、「勉強になった」との好評の声が多く、主催する側として胸をなで下ろすものでした。

 来年も同様の催しを行うことになると思いますが、より多くの方々に楽しんでもらえる様に計画して行きますので、その節は多数御来場頂けますようお願いいたします。
最後に御協力いただいた皆様に感謝いたします。


写真2 CG作品を示して講演される河口洋一郎先生



外 部 誌 上 発 表


「合成開口レーダを用いた海域情報解析技術の研究」報告書 日本水路協会 (1997年3月)
SARによる海洋油汚染観測と海氷状況調査の現状と展望
浦塚 清峰

テレビジョン学会 (1997年3月)
次世代CATVシステムの研究 −広帯域インタラクティブCATV実験施設の概要−
井口 政昭、菊地 修、清水 信作

人工知能学会誌 (1997年3月)
ゲーム理論とマルチエージェントシステム
伊藤  昭

電気学会 論文誌C (1997年3月)
MUSIC法によるミリ波帯屋内基地局間の伝搬路特性の評価
張間 勝茂、真鍋 武嗣、井原 俊夫

電子情報通信学会誌(教養のページ) (1997年3月)
合成開口レーダの最近の話題
浦塚 清峰

電波技術協会報 (1997年3月)
静止衛星のニアミス監視
川瀬成一郎

IIEEエレクトロニクス (1997年3月)
HDR Satellite Codec with Concatenated Multilevel Codes (Electronics Letters)
アーメト゛サイフテ゛ィン、門脇 直人、今井 良一、岡沢 治夫、山本 稔

Nature (1997年3月)
RNA結合タンパク質のリン酸化が栄養増殖から減数分裂への細胞周・ ]換を制御する
渡辺 嘉典、篠崎 聡子、近重 裕次、平岡 泰、山本 正幸

Japanese Journal of Applied Physics Letter (1997年3月)
New Technique for Fabrication of Two-Dimensional Photonic Bandgap Crystals by Selective Epitaxy
濱野 哲子

Journal of Atmospheric and Terrestrial Physics (1997年3月)
Develpment of A High-Resolution Imaging Riometer for the Middle and Upper Atmosphere Observation Program at Poker Flat,Alaska
村山 泰啓、森 弘隆、貝沼 昭司、石井 守、五十嵐 喜良、山岸 久雄、西野 正徳

Solar Physics (1997年3月) Identification of the Solar Source for the 18 October 1995 Magnetic Cloud
Z.Smith、亘 慎一、M.Dryer、P.Manoharan、P.McIntosh

国立極地研究所 (1997年3月)
JARE DATA REPORTS:Radio Observation Data at Syowa Station,Antarctica from January to December,1995
稲森 康治、一之瀬 優

情報処理学会論文誌 (1997年3月)
文脈依存的に単語間の意味距離を計算する一手法
小嶋 秀樹、伊藤 昭

電気学会誌 (1997年3月)
ワンボード型ロックインアンプの開発
水本 厳、高辻 和美、益子 信郎

平成8年度 外国人招へい研究者研究発表資料集 (1997年3月)
Study of the effects of equatorial ionospheric anomaly on the earth-space propagation
S.Saroso、五十嵐 喜良

International Journal of Remote Sensing (1997年3月)
Rainfall rate profiling with attenuating-frequency radar using nonlinear LMS technique under a constraint on path-integrated rainfall rate
藤田 正晴、佐竹  誠

電子情報通信学会 英文論文誌(IEICE Transactions on Communications) (1997年3月)
Size-Based Resource Scheduling for Wireless Message Transport
井上 真杉、森川 博之、水町 守志

電子情報通信学会・論文誌 B-II (1997年3月)
CMAアダプティブアレーアンテナを用いた同一チャネル干渉低減法
古川 博史、神尾 享秀、笹岡 秀一

平成8年度 外国人招へい研究者研究発表資料集 (1997年3月)
Sodium fluorescence lidar technology improvement
S.Gong、五十嵐 喜良

Japanese J. Appl. Phys.Part 1 SSDM’96 特集号 (1997年3月)
Emission Properties of YBa2Cu3O7-δ-Film Photoswitches as THz Radiation Sources
谷 正彦、斗内 政吉、萩行 正憲、王 鎮、小野寺紀明、阪井 清美