CRL NEWS No.258


知的ニュースリーダ (HISHO) の研究開発


関西支所 知的機能研究室長
井佐原 均

1.はじめに

 人間は、その知的活動の多くを言語に基づいて行っている。関西支所知的機能研究室では、人間の知的機能の解明のため、言語理解・言語生成といった自然言語処理の基礎研究を行なうとともに、その基盤となる技術として知識・感性等の研究を行っている。これらの研究成果の実証と普及のために、各要素技術の研究から得られた知見を用いて、実用レベルのシステム開発と、タイ・中国等の国々との国際協力にも積極的に取り組んでいる。 本稿では、実用システム開発として行なっている知的ニュースリーダの研究開発について概説する。

 近年、ネットワークの普及に伴い、ネットワーク上を流れる情報の量は日々増加の一途を辿っている。しかしながら、個々のユーザが対応できるデータの量には自ずと限界があり、ネットワーク上の情報の効率的かつ有効な利用が課題となっている。このような状況の下、我々はユーザが興味をもった記事に対して関連記事を検索する上での問題点を解決し、話題の関連性に基づいて記事を読みすすめられるような知的ニュースリーダを開発している[1、2]。ここでは、従来の情報検索や要約生成とは異なり、記事を一種の対話テキストとみなして、記事の話題の流れを「情報文脈」として扱う。これによりユーザは興味を持った記事から、その記事の話題に関する情報文脈を遡り、必要な情報を過不足なく得ることができる。

 知的ニュースリーダは、平成8年度末にそのプロトタイプモデルが完成し、HISHO(Helpful Information Selection by Hunting On-line)と名付けられた。

2.ネットワークニュースの特徴

 ネットワークニュースには大きく分けて、「新聞記事型(newswire-like newsgroups)」と「討論型(newsgroups for discussion among users)」の二つの種類がある。新聞記事型は fj.meeting に代表されるように何かの事実を通知するタイプのものである。もちろん、このようなニュースグループ中の記事も大変に有効ではあるが、その記事数は多くはない。さらに最近では、この種のアナウンスはWWW のホームページでなされることが多い。一方、討論型 には、その他大部分のニュースグループが含まれる。質問に対して、回答が行われ、さらにコメントがなされ、といった過程を経るものである。新聞記事型の記事はおおむね自己完結型であり、キーワードを利用する単純な手法でも同じ内容を取り扱う先行記事を検索することが可能である。しかしながら、討論型の記事は内容的にも参照的にも自己完結ではない。このため、検索において何らかの技巧が必要となる。現実のネットワークニュースにおける記事の量、情報の量を考えるに、討論型のニュースグループを無視することはできない。むしろ、討論型のニュースグループの方に有益な情報が多いと言えよう。

 これまでの情報検索は、キーワードを用いた全文検索や、そこからの要約生成・情報抽出が研究の中心であった。しかしユーザの実際の利用を考えた場合、このような手法は討論型のネットワークニュー スに適した方法とは言えない。自分が興味を持った内容については、要約してしまったのでは重要な情報が落ちる可能性があり、むしろ適切なスレッド(議論の流れ)を選んで、その全文を提示することが望ましい。また、毎日は見られないが、時間がある時には、ニュース(群)を眺めて見る、といったニーズに対応できるシステムが必要である。  我々は、人間の知的創造性の向上を支援する環境開発の一環として、情報の密度を上げるためのスクリーニング技術に注目し、知的ニュースリーダの開発を行っている。本研究ではまずネットワークニュース上の情報の効率的利用を妨げている問題点を明確にし、問題点の解決を試みている。さらに記事の話題の一貫性に注目することにより必要な情報を取り出す方法を提案している。我々のシステムの特徴は、ユーザが興味を持った記事を情報検索のキーとして用いること、キーワード抽出等の自然言語処理技術を適用して記事の間の意味的距離を計算すること、ネットワークニュースをある種の対話テキストと考え、話題転換点の検出などに、そのヒューリスティックスを用いること、である。  本システムの想定する典型的な利用法は次のよう なものである。


図1 HISHOと秘書

 ユーザは多忙で、毎日はニュース記事を読むことができない。数日ぶりに少し時間ができて、膨大な未読記事の中から、最近のニュース記事をいくつか読み、その中に非常に興味のある記事を見つけた。ユーザは、これまでの、この話題についての議論の流れ、あるいは関連する投稿を知りたいと思った。さて、ニュースリーダはどうやってユーザを支援するのか。。。。。

 忙しい人のためのニュースリーダは、単に最近のニュースの要約を提示するだけではなくニュース記事の内容に沿って適切な流れを選択するものでなければならない。そこで、我々は記事中の単語の統計的分布等によって決定される「情報文脈」の概念を提案する。この「文脈」を用いることにより、ユーザは、その記事に適切なタイトルや参照関係がない場合にも、話題の流れを追うことができる。

 記事検索に関わる様々な決定を行うためにはキーワードやニュースのサブジェクトフィールド中のタイトルをシステムに与えるだけでは十分ではない。従来のニュースリーダは、これらの情報を用いて記事を分類しているが、たとえばタイトルはしばしば記事の内容とは異なるので、そのような単純なスクリーニング手法では不必要な記事を数多く抽出してしまう。

 システムの実際の利用手順は概略、以下のようになる。

  1. ユーザが記事群中に興味のある記事を見つける。
  2. サブジェクト、リファレンス情報を用いてリファレンスツリーを成長させる。
  3. リファレンスツリー中の各記事の関係について、関連の深いものかどうかを判定する。
  4. 関連の深いものについてはさらにリファレンスツリーを成長させていく。
  5. 元記事(の含まれる流れ)の意味的特徴をキーとして、リファレンスで繋がっていない関連記事をも抽出し、ツリー構造を成長させる。

 このシステムの主要な特徴は、記事をあらかじめ分類することなく、ユーザの興味に沿って、動的に検索することにある。本システムは辞書を用いずに記事間の意味的距離を測定するため、特定のニュースグループに範囲を限らずに必要な情報を抽出することが可能である。

4.知的ニュースリーダの機能

 知的ニュースリーダシステムは、ネットワークニュースを複数の話者による対話テキストとして捉え、以下のような手法を用いて記事の検索を行う。

1)ニュース記事による対話の流れの構成・復元
 ニュース記事はメッセージIDを持ち、各々の記事が参照する記事のメッセージIDをReferencesヘッダという形で保持することにより、話題の参照関係を保存している。しかし現実には、様々な理由により意味的に完全なリファレンスツリーを構成することが困難な場合がある。これに対し、 知的ニュースリーダは、 ダミー記事の挿入や、記事の日付情報などを用いた参照の前後関係の推定などの手法を用いて、リファレンスツリーをできる限り復元する機能を持つ。

2)ユーザが興味を持った話題の抽出
 ニュース記事においても通常の対話と同様に、話題の拡散や逸脱が起こり、しばしば、同一のリファレンスツリー内に複数の話題が併存する。知的ニュースリーダはリファレンスツリー内での話題の転換点を検出し、ユーザがある話題に興味を持ったときに読むべき記事の範囲を提示する機能を持つ。話題転換点検出の手法は文献[3]において提案された二つの手法を組み合わせて用いる。

3)抽出された話題をキーとした、類似した話題の検索
 ネットワークニュースではしばしば同じ、または類似の話題を扱った記事が投稿される。知的ニュースリーダはユーザがある記事を読んでそこに含まれる話題に興味を引かれたとき、同じ、または類似の話題を扱ったリファレンスツリーを検索する機能を持つ。この検索は複数の話題間の類似度をもって行うが、類似度は、話題転換点で分割されたリファレンスツリーの部分集合である記事群から抽出したキーワードとその頻度・スコアからベクトルを求め、それをもとに、他のリファレンスツリーから同様にして求めたベクトルとの内積を計算することによって求める。キーワードの抽出とそのスコア付けには文献[4]の手法を用いる。今後は神経回路網モデルを用いた記事間の類似度計算を行う予定である。

5.知的ニュースリーダ・プロトタイプシステム

 知的ニュースリーダ・プロトタイプシステムは(1)ユーザのデスクトップの計算機で動作し、グラフィカルユーザインタフェースを提供するニュースリーダ部と、(2)ニュースリーダ部のサーバとして動作するサーバ機能、サーバ機能が受け付けたリクエストを実際に処理する言語処理機能、キャッシュデータベースを管理するデータベース管理機能を含む言語処理部からなる。プロトタイプモデルにおいては、ユーザには、以下の5つの要素からなる画面が提示される。

プロトタイプモデルの動作例を図2に示す。


図2 HISHOプロトタイプモデル 動作例

6.おわりに

知的ニュースリーダ(HISHO)はプロトタイプモデルが完成し、現在その試用と並行して、実用システムの開発を行っている。プロトタイプモデルの試用に際しては、心理実験およびテストセットの利用等を通して、客観的な評価が出来るよう心がけている。今後は、実用システムに必要な機能を網羅した実用システム第1版を平成9年度末を目度に完成させ、平成11年度末までに実用システムの公開版を完成させる予定である。


参考文献
[1] 小作浩美、井佐原均:話題の関連性に着目した
    知的ニュースリーダの提案、平成7年電気関係
    学会関西支部連合大会 (1995)  
[2] 井佐原均、小作浩美:Intelligent Network
    News Reader、1997 International Conference
    on Intelligent User Interfaces (1997)
[3] 内元清貴、小作浩美、井佐原均:対話型ネット
    ニュースグループにおける話題転換点の推定、
    言語処理学会第3回年次大会 (1997)  
[4] 後藤康雄、林博之 ほか: キーワード抽出自動
    システム、第37回システム制御情報学会研究
    発表講演会 (1993)  



情報通信研究棟竣工


通信システム部 総括主任研究官
杉本 裕二



完成した情報通信研究棟



竣工式典




 通信総合研究所は、情報通信基盤技術に関する基礎的・汎用的技術の研究開発プロジェクト、太平洋諸国やアメリカ、ヨーロッパ諸国とのネットワーク国際共同実験プロジェクト、非常時通信技術、マルチメディア仮想研究所など、21世紀の情報通信をめざして、基礎から応用まで幅広い情報通信に関する研究開発を進めている。これらのプロジェクトは、研究所構内に点在する種々の建物内で研究されているが、プロジェクト相互間の連携をはかるためにも、情報通信関連の研究拠点になる建物が必要になった。
 そこで、1995年から2年間の計画で、総床面積5,300F、4階建ての建物(「情報通信研究棟」あるいは「5号館」と呼ぶ)を建設し、1997年6月末に完成(写真-表紙参照)、7月23日に竣工式を実施した。

 竣工式は、約150人もの方々に参加いただき、午後3時から挙行した式典では、主催者挨拶後、産・学・官の方から祝辞をいただき、また工事施工の報告もいただいた。式典後、約1時間、情報通信研究棟での研究の一部を披露するための、見学会を行なった。その後、12面マルチスクリーンのビデオウォールが設置されている情報通信研究棟のロビーで、祝賀会を行なった。

 建物の完成から竣工式までの期間が短く、また7月中旬には、研究所の大幅な組織変更、それに伴う人事異動があった。このため、完成後、短期間で研究室、実験設備の移設、見学の準備等を行ない、予定通りに竣工式を挙行することができた。

 この新しい情報通信研究棟を活用して、情報通信の分野で、産学と連携をとりながら、今後ますます研究をおしすすめていきたいと考えているので、皆様方のご協力をお願いしたい。

 最後に、暑い中わざわざ足を運んでいただいた来賓の方々、情報通信研究棟建設関係者、竣工式のスタッフの方々に感謝する。


竣工式の概要

1.竣工式典  (午後3時から1時間、4号館大会議室)

主催者挨拶古濱洋治 通信総合研究所長
来賓挨拶甕 昭男 郵政省技術総括審議官
来賓挨拶青木利晴 NTT代表取締役副社長
来賓挨拶辻井重男 中央大学理工学部教授
前電子情報通信学会会長
工事施工報告森本文忠 建設省関東地方建設局
甲武営繕工事事務所長
研究概要紹介塩見 正 通信総合研究所
通信シ ステム部長

2.見学会 (午後4時から1時間、情報通信研究棟)

広帯域通信システム
 HDTV会議通信実験システム
 DAVIC仕様HDTV-VoD実験システム
高度映像情報
 次世代ダイナミック・ハイパメディアシステム
 知的映像コンテンツ処理技術
 マルチメディアデータベースの知的検索
 次世代医療画像処理技術
福祉型情報端末技術
 手話認識・生成
 視覚障害者用GUI
超高速光通信技術
 光パルスCDM伝送
 空間CDMA並列多重伝送
 光ミリ波無線通信
ビデオウォール


3.祝賀会 (午後5時から1時間、情報通信研究棟1 階ロビー)


見学会
祝賀会


情報通信研究棟の概要

1.施設概要
 4階建て、総床面積5,300F
 総工費  約25億円
 主要設備
 ビデオウォール
 マルチメディア実験・会議室(3面マルチスクリーン)
 光通信実験室
  視覚実験室、聴覚実験室
  国際ネットワーク実験施設
 スタジオ、映像評価室、AV実験室
2.情報通信研究棟での主な研究項目

(1)基礎的・汎用的技術の研究開発
 超高速ネットワーク技術
  超高速光通信
  マルチキャリア・ネットワーク相互運用性
  ネットワーク高信頼性
 ユニバーサル端末技術
 汎用福祉端末
 グラフィカル・ユーザ・インタフェイス
 高度映像情報技術
 超高精細映像生成・圧縮・伝送
 知的先端映像コンテンツ処理
 次世代ハイパメディアプラットフォーム
(2)高速国際ネットワーク実験
 GIBN、高速衛星通信
 APII/APAN
(3)先進的応用研究
マルチメディア仮想研究所
非常時通信

略語
GIBN; Global Interoperability for Broadband 
Networks
APII; Asia Pacific Information Infrastructure
APAN; Asia Pacific Advanced Network



CRL施設一般公開


企画課 広報係
山田 慎太郎

 毎年夏に行っている当所の施設一般公開ですが、小金井本所では、従来より希望の多かった2日間開催(8月1、2日)という初の試みを行いました。また、平磯宇宙環境センターでは昨年と同じく7月20日(海の日)、鹿島宇宙通信センターと関西先端研究センターで8月2日の土曜日開催と、それぞれ地域住民の要望に応える形で一般公開を行いました。正直言って職員への負担は大きかったと思われますが、CRL全体での一般公開来場者数5,627名を考えれば、その意義は十分にあったと確信しています。

 例年、CRLニュースでは小金井本所の一般公開を中心に紹介していましたが、今回については、休日開催でそれぞれ見学者数の急増した平磯、鹿島、関西について紹介させていただきます。本所の公開内容についてはインターネットのホームページ (http://www.crl.go.jp/kk/koukai/index.html)に詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。

一般公開参加者推移
(縦軸:参加者人数、横軸:年度)



平磯宇宙環境センター施設一般公開

 7月20日「海の記念日」快晴。昨年から恒例となった施設一般公開の日です。一昨年までは、8月1日に一般公開を実施してきました。昨年、国民の祝日として「海の日」が制定されたのを契機に、豊かな海の環境に恵まれているひたちなか地区の「海の日慶祝行事」実行委員会から、「海の旬間」行事の一つとして施設公開の協力要請を受け、本所・支所に先駆けて7月20日の休日公開を行いました。この時の見学者は270名で、一昨年までの3倍以上に増加し、さらに本年は昨年を上回る450名の見学者となりました。公開に当たっての新聞折り込み、各所へのポスターの配布、市報掲載等の広報活動の成果が感じられました。また、今年は、ひたちなか地区の行事の一環として施設4個所のスタンプが貰えれば、抽選で巡視船「あかぎ」や高速船スーパージェット「ブルーソニックス」に乗船出来るというスタンプラリーが行われ、当センターがコースの一つに設定されたことも大きな要因であったと思われます。

 公開当日は、10時からの開場にもかかわらず9時40分にはすでに十数名が待っており、慌てて受付けを開始する状況でした。
今年の公開項目は、

  1. 平磯宇宙環境センターの歴史館、
  2. 太陽活動を電波で観測、
  3. 宇宙天気予報の司令塔、
  4. 太陽表面を精密観測する望遠鏡、
  5. 光でとらえた太陽活動の様子、
  6. インターネット体験コーナー、
  7. 屋外の観測装置(太陽電波望遠鏡、黒点監視望遠鏡、GMS4号用受信アンテナ)
でした。
これらの平磯センターのメインプロジェクトである宇宙天気予報を中心とした各コーナでは見学者が多く、説明、質問への応対等職員は汗を拭き拭き大わらわでしたが、これもまた嬉しい悲鳴といえます。コーナの一つである歴史館では、1915年(大正4年1月)発足からの機器や写真が展示され、マルチメディア社会の今日では大変な珍品?で年配の方々は懐かしそうに見入っていました。


歴史館 コーナー


 アンケートでは、説明員の方々の親切で丁寧な説明、当センターを初めて知った、研究成果の素晴らしさ、今後も一般公開を続けて欲しい、創成期の先輩諸氏の写真に感銘をうけた、子供向けの企画も、等々数多くの意見を頂きました。

 平磯センターは小人数で、イベントの開催は肉体的・精神的に疲れますが、見学者の暖かいお言葉に励まされ来年も多くの方々に見学して頂けるように頑張りたいと思います。また、OBの方々からの暖かいご支援を心より感謝いたします。

武田 久子(平磯宇宙環境センター 庶務係長)



鹿島宇宙通信センター施設一般公開

 今年の鹿島センターの一般公開は、今までの平日開催から初めて土曜日(8月2日)に開催されました。今年は、研究本館が完成したこともあって開場時刻の午前10時前から来所者の姿が多く目に付き10時にはたくさんの人で受付はパニック状態になる程でした。

 昨年までは平日開催ということもあって、夏休みの子供たちがお母さんと一緒に来るケースが多かったのですが、今年は土曜日開催ということもあって、お父さんも同伴し家族で来られた方が多かったように思われます。

 今年の公開内容はというと第一会場は「体験!バーチャルリアリティ」と題し、CG(コンピュータグラフィックス)による太陽系惑星+5000個の小惑星や、静止・周回衛星の軌道運動の様子を立体動画像を通して実感的に体験できるようにしました。やはり映像による説明が一番分かりやすいようで、アンケートでも「立体映像はわかりやすくて良かった」等、大変好評でした。

 第二会場は「マルチメディアの宇宙たまご“コメっち!?”」と題し、COMETS衛星及び実験計画等をパネルで説明し、実験車両(通信実験用と放送実験用)と実験車用アンテナを展示しました。また、大会議室にてN−STARと光ファイバを使用し、本所と結んでHDTV会議システムのデモを行い、映像を見ながらお互いに会話をしたりしましたが、最初は見知らぬ人といきなり話すのは照れるようで恥ずかしがっている人が多かったようです。Internet体験コーナーでは大人、子供を問わず大変人気を集めていました。

 第三会場は「電波でしらべる地球のようす」と題し、電波を使って地球の状態を調べるというリモートセンシングの一般的紹介からはじめ、研究室が直接携わっている雨と雲のリモートセンシングについて詳しくパネルを使って説明を試みました(TRMM衛星搭載降雨レーダの機能確認試験機の現物展示もしました)。

 特に、航空機搭載の降雨レーダ等については、実際に取得したデータを示し理解しやすいように心がけたせいか「説明員の方が熱心に説明してくれて良かった」等の感想が多く書かれていました。

 第四会場は「地球の中から宇宙の果てまで」と題し、日本で3番目に大きな鹿島宇宙通信センターの34mパラボラアンテナにタッチしてもらい、そのタッチ証明書を発行しました。初めて触れる大きなパラボラアンテナに最初は皆戸惑っていた様子でしたがなかなか好評でした。

 電子オルゴールの工作コーナーでは、「イッツアスモールワールド」「かっこうワルツ」のメロディオルゴールを200人の子供たちに半田付けで作ってもらいました。長蛇の列で大好評でした。どの子も初めて持つ半田ごてに冷や冷やドキドキ。音が出た時のみんなの笑顔が大変印象的でした。

 また、1億kmを1mに換算した約50mの太陽系模型で惑星の距離の違いを実感してもらったり、超音波を利用してVLBIの原理で2点間の距離測定を実演したりしました。

 その他の会場では、大会議室において迫力のある250インチのスクリーンに鹿島センターの紹介ビデオ(ハイビジョン)を上映したり、また、スタンプラリー&クイズを実施し、正解者に当センターの名前入り星座下敷(12種類)を差し上げました。とても評判が良かったようです。

 鹿島センターへの見学者は昨年の約2倍、過去最高の1458名になり、社会の関心の高さや期待の大きさを感じました。今後、職員一人一人がその事をもっと自覚していく必要があると思います。最後に、公開にご協力いただいた関係者の皆様と猛暑の中ご来場いただきました皆様に感謝すると共に、引き続き暖かいご支援とご理解をお願いいたします。

菅谷 明彦
(鹿島宇宙通信センター 管理係長)


会場直後から賑わう受付風景



体験バーチャリティの順番を待つ長蛇の列



34mパラボラアンテナタッチ証明書を発行している様子



工作コーナーで初めて持つ半田ごてにドキドキ





関西先端研究センター施設一般公開


 7月30日に研究棟玄関改修工事が完成し、玄関前のロータリーに大きな庇が付け加えられ、どうにか一般公開に間に合いました。
玄関内には受付のテーブルを並べ、KARCのきれいどころに座ってもらいました。
そして奥の郵便局の出店ではドラえもんの記念切手が大人気で、例年の倍近い売り上げを記録したようでした。

 情報系研究室で恒例になっているインターネットカフェは、無理矢理存続をお願いした結果、多くの人達を引き付けることができました。これは今流行のインターネットが自分で操作できる楽しみや、プリクラをパソコンで遊べるのが良かったようです。
研究棟2階大会議室は、研究棟の各研究室が仕切りをたて自慢の作品を展示しました。

 知識処理研究室の視線ロボットや、知的機能研究室では新開発の「HISHO」、知覚機能研究室のステレオ美術館などです。

 物性系のコヒーレンス研究室も大会議室を使い、半導体レーザの展示実演を、また、会議室の外では、例年超伝導物質を使い見学者の人気を博している超伝導研究室が、今年はミニチュア鉄道を利用して模型の電車を走らせ、子供たちの目を釘付けにしていました。電磁波研究室は、自分達の1階の実験室を使い、レーザー光線を使いアピールしました。第二特別研究室では電波の発生を、自作の模型でわかりやすく見せていました。

 バイオ系3研究室は、恒例の交流棟玄関を会場にシャボン玉遊び・折り紙遊びで子供たちを引き付けていました。

 APII棟は特別な飾り付けはありませんが、内容が今流行のビデオ・オン・デマンドで遊べるようになっていました。

 近畿電気通信監理局では電測車を持ち込み、例年どおり交流棟の玄関前にセット、屋外で猛暑の中、がんばっていました。

 研究棟2階の小会議室ではビデオ上映中の大きな表示をつけたせいか、20人分の椅子が常時満席、立ち見もある状態になってしまいました。部屋は狭いのですがプロジェクターによる、大画面がよかったのかも知れません。内容はCRLとKARCのPRビデオで、これを交互に流していました。

 一般公開に来る人達の大半は、乗用車を使用するので、まず外来者駐車場を増設しました。現用の職員駐車場57台分をあて、それでも不足するので、研究棟南側斜面に臨時に54台分を線引き、ピーク時は100%利用されました。
さらにKARCへの道順を示すため10ヶ所の交差点へ右折・左折・直進などの看板を設置しました。これはわかりやすくて好評でした。
そして、車以外で来場する方々のため、JR沿線の人達に的をしぼり、バスのチャーターを今回初めて行ってみました。JR大久保駅からKARC間を、駅発30分・KARC発00分の6往復ダイヤで運行しましたが、結果的に32/32名の乗車で失敗に終わりました。原因はPR不足のようで、ポスターやインターネット上にはバスチャーターの周知が間に合わず、また、新聞の折り込みチラシにはダイヤが記載されていながらバス停の表示が無いなど、準備不足が災いしたようです。

 以上、反省点は多々あるものの、今回の入場者数が昨年の5割り増しは素直に喜ぶことにしたい。

平川 久夫(関西支所 管理課長)


玄関内に置かれた受付けと出張郵便局




外 部 誌 上 発 表



随意性眼球運動における学習、記憶(1997年5月)
朝倉書店「視覚情報処理ハンドブック」
藤田 昌彦

電子情報通信学会 英文論文誌 (1997年5月) 
Automotive Radio Noise in Lower Frequency Microwave Bands(1-3 GHz)/ Measured in a Van Running 
in an Urban Area
山中 幸雄、杉浦 行

電子情報通信学会英文論文誌(通信) (1997年5月) 
Current Topics of Microwave EMI Antennas and Measurements 
杉浦 行、桑原 伸夫、岩崎 俊

日本学士院刊行Proceedings of the Japan Academy ser.B (1997年5月)
Experiments to locate sources of earthquake-related VLF electromagnetic signals
藤縄 幸雄、高橋 耕三、松本 拓己、川上 則明

Telecom FRONTIER,SCAT Technical Journal (1997年5月)       
生物に学ぶ情報処理パラダイムの基礎研究
澤井 秀文

Electronics Letters (1997年5月)                             
Supermode Beat Suppression in Harmonically Mode-locked Erbium-doped FibreRing Lasers with 
Composite Cavity Structure
小野寺 紀明

電子情報通信学会誌 (1997年5月)                              
マイクロ波駆動飛行船と利用技術の展望
藤野 義之

Journal of the Optical Society of America (1997年5月)
Talbot array illuminators providing spatial intensity and phase modulation
クラウス ヴェルナー、有本 好徳、小舘 香椎子

Optics Communications,Elsevier Science,North Holland (1997年5月)                                                
Angle-independent beam steering using a liquid crystal grating with multiresistive electrodes
クラウス ヴェルナー、井出 昌史(シチズン技研)、諸川 滋(シチズン技研)
土屋 昌弘(東京大)、神谷 武志(東京大)

電子情報通信学会英文論文誌 IEICE-A (1997年5月)
Extraction of fundamental frequencies from duet sounds
白土 保、柳田 益造(同志社大)

Annales Geophsicae (1997年6月)                              
The effect of the high speed stream following the corotating interaction region on the geomagnetic 
activities
亘 慎一

Genes and Development (1997年6月)                           
Nedd5,a Mammalian Septin,is a Novel Cytoskeletal Component Interacting with Actin-based 
Structures
木下 専、Sharad Kumar、A.Mizoguchi、Chizuka Ide、A.Kinoshita、
原口 徳子、平岡 泰、野田 亮

IEEE Trans.Appl.Superconductivity (1997年6月)             
Quasi-Optical NbN/AIN/Nb Mixers in Submillimeter Wave Band・・
鵜澤 佳徳、王  鎮、川上 彰

IEEE Transaction on Applied Superconductivity (1997年6月) 
Noise Temperature Measurement of YBCO Josephson Mixers in Millimeter and Submillimeter Waves
島影 尚、鵜澤 佳徳、王  鎮

IEEE Transaction on Applied Superconductivity(1997年6月) 
Josephson Array Oscillators with Microstrip Resonators
川上 彰、鵜澤 佳徳、王  鎮

IEEE Transactions on Applied Superconductivity (1997年6月)
High current density NbN/AIN/NbN tunnel junctions for submillimeter wave SIS mixers
王  鎮、鵜澤 佳徳、川上 彰

IEEE Transactions on Applied Superconductivity,vol.7,No.2*CJune 1997. (1997年6月)  
Observed Photon-Assisted Process in Mesoscopic SNS Mixers
松井 敏明、太田 浩

IEEE Transanction on Applied Superconductivity (1997年6月) 
S-N-S Weaklink Junctions Fabricated by Nanometer Lithography
広瀬 信光、太田 浩、松井 敏明、福田 守

J.Apple.Phys. (1997年6月)                                   
Molecular stacking in epitaxial crystals of oxometal phthalocyanines
柳 久雄、見上 竜雄、夛田 博一、照井 通文、益子 信郎

Transactions of the IEICE of Japan (Communications) (1997年6月)
Correction: "A preliminary study of non-uniform beam filling correction for spaceborne radar rainfall 
measurement"
古津 年章、井口 俊夫

情報通信ジャーナル (1997年6月)
インテリジェントなアンテナの実現を目指して
三浦 龍

電気学会論文誌 (1997年6月)                                  
マルチメディア知的データベース構築用CADの提案と応用事例
茂出木 敏雄、飯作 俊一

電気通信(電気通信協会発行の機関誌) (1997年6月)
ディジタル放送の技術解説
都竹 愛一郎

日本神経回路学会誌 (1997年6月)
書評 下條信輔「サブリミナルマインド 潜在的人間観のゆくえ」
青木 美奈

オーム社 ウェーブサミット講座 (1997年6月)
VLBI技術
高橋 冨士信、近藤 哲朗、高橋 幸雄

Optics Communications (1997年6月)
Mutual selection equilibrium theory for rainbow-shaped mutually pumped phase conjugation
王 慧田、吉門 信、有賀 規



FEBS Letters (1997年6月)
Bi-directional movement of actin filaments along long bipolar tracks of oriented rabbit skeletal muscle 
myosin molecules
山田 章、吉雄 麻喜、中山 治人