CRL NEWS No.260


熱帯降雨観測衛星(TRMM)搭載降雨レーダ
−世界初の宇宙からの降雨レーダ観測始まる−


地球環境計測部 電波計測研究室長
古津 年章

図1 TRMM降雨レーダの概観(NASDA提供)


はじめに

 “エルニーニョ”に代表されるような気候変動や異常気象に対して雨は重要な役割を果たしています。地球規模の大気の流れ(大循環)は、海水が蒸発して雲や雨になるときに放出される潜熱によって引き起こされ、正確な降雨量と降雨分布を観測することはその潜熱輸送量の推定に不可欠です。昨年から続いている今世紀最大級のエルニーニョは、太平洋の降雨域と海水面温度の東西分布が平年とは逆になり、それに伴って地球規模で異常気象が頻発する現象ですが、現象が起こったことは観測できてもその原因解明や予測はこれからの問題です。その解決には、地上からの観測では不可能である熱帯海洋上の雨を正確に測ることが最も重要な課題でした。

熱帯降雨観測衛星(TRMM)は、熱帯の降雨分布の連続観測を目指して日米共同で開発された衛星であり、地球の降雨量の2/3を占める熱帯域(北緯35°〜南緯35°)の降雨の3次元分布を観測します。この衛星(図1参照)は、11月28日、技術試験衛星VII型(ETS-VII)と共にH-IIロケットにより打ち上げられ、これまで軌道上で衛星本体や観測機器の初期機能確認試験が行なわれてきました。TRMMには降雨観測を主目的としたセンサが3台、地球からのエネルギー放射および雷活動を観測するセンサがそれぞれ1台、計5台のセンサが搭載されています。TRMMによる降雨観測の概念を図2に示します。

搭載センサのうち降雨レーダ(Precipitation Radar; PR)は、宇宙開発事業団(NASDA)と通信総合研究所(CRL)が開発した世界初の衛星搭載降雨レーダです。CRLは1970年代後期から20年間に渡り、世界に先駆けて衛星搭載降雨レーダの研究開発を行なってきましたが、今回ようやくその成果が結実したとも云えるものです。

図2 TRMMによる降雨観測の概念


降雨レーダ観測の意義

 これまでの気象衛星は、主に可視・赤外の雲画像を取得するものであり、地球全体における雲の2次元分布は比較的よくわかるようになってきましたが、雲の下にある雨については観測できません。近年、マイクロ波放射計を搭載した衛星が米国で打ち上げられ、海上の降雨についてはある程度定量的な測定が可能になってきましたが、マイクロ波放射計は分解能が数十kmと粗いために、降雨の詳細な構造は観測できません。また、降雨の高度分布や陸上での定量的な観測ができないといった問題点を抱えています。これらの問題点を解決するセンサーはレーダですが、これまでは技術的な困難さにより実現できませんでした。

TRMM降雨レーダの最大の特長は、降雨の3次元構造が求められることです。降雨の高度方向の分布は、上昇気流により持ち上げられた潜熱がどの高度で放出されるか、という問題の解明に重要な情報を提供します。潜熱放出量の水平分布と高度分布が明らかになれば、その結果を大気海洋大循環モデルに適用することによって、エルニーニョの予測精度を飛躍的に向上させることができると期待されています。更にTRMM降雨レーダは、マイクロ波放射計では不可能であった陸上の降雨分布を正確に求めることができます。熱帯雨林、ジャングルなど広域であるため、また経済的な理由でこれまで信頼できるデータがなかった地域でも、世界中“均一”な精度で降雨のマッピングができるようになります。これは今まで存在しなかった新しいデータであり、地球環境問題を解決していく為にも、非常に重要な情報になると期待されています。


TRMM降雨レーダの初期機能確認試験

 TRMM降雨レーダは、13.8GHzで動作する全固体化アクティブフェーズドアレイ方式を採用しており、128系統の固体電力増幅器、5ビットPINダイオード移相器、低雑音増幅器を用いています。これにより215kmの観測幅を0.6秒で走査し、秒速約7kmという高速で移動する衛星からでも隙間のない降雨観測を行なうことができます。

12月1日に軌道上で初めて降雨レーダの電源を投入し、レーダが正常であることを確認しました。衛星高度が観測時の基準値(350km)に達した後、12月8日5時45分(日本標準時)に降雨レーダを観測モードに設定し、降雨レーダの初期機能確認試験を開始しました。この試験はNASDAが中心となり、CRLは、CRLが開発を行なったオンボード地表面検出機能などの試験を分担しました。レーダの機能は正常であり、性能も打上げ前の試験結果をよく再現していることを確認しました。この試験結果を踏まえたTRMM降雨レーダの性能を主要諸元と合わせて表1に示します。

表1 TRMM降雨レーダの主要諸元と性能
項 目 諸 元・性 能
レーダ方式
周波数
観測幅
観測高度範囲
距離分解能
水平分解能
検出可能降雨強度
重量、消費電力
設計寿命
アクティブフェーズドアレイ
13.8 GHz
215 km
地表〜高度15 km以上
250 m
4〜5 km
0.5 mm/h
465 kg、213 w
3年



観測画像

 初期機能確認試験のなかで既に多くの降雨観測データが取得されていますので、その中から特徴的な一例として台風28号の観測データを紹介します。

12月19日13時頃(日本標準時)、TRMMは日本の約1,500km南方の台風28号を観測しました。その観測例を図3に示します。図3上は高度2.5kmの降雨強度水平断面を、また下はA-B線に沿った鉛直断面です。台風の渦巻き構造とその降雨強度の非対称性(東側に広範囲の強雨域)、また“目”付近で降雨の高さが12km以上に達していることがよくわかります。このように熱帯降雨の立体構造が定常的に取得できる観測装置はTRMMレーダが初めてであり、熱帯低気圧の発達/減衰過程の研究、降水のモデル化、降水内部での熱収支、それを駆動源とする大気力学、更に気象/気候の研究に貴重なデータを提供するものと期待されます。

図3 TRMM降雨レーダで観測した台風28号の水平および垂直断面
(1997年12月19日)



おわりに

 98年2月以降、TRMM降雨レーダは定常的な観測を開始し、降雨レーダデータから降雨強度などを求めるデータ処理アルゴリズムの検証と調整を実施することになっています。またCRLでは、NASDA地球観測センターから毎日TRMM降雨レーダのデータをオンラインで受信し、定常的な性能モニタを行います。

TRMM降雨レーダの詳しい検証を行なうには、衛星と同期した同一領域の観測データが必要であり、そのため98年5月に石垣・宮古島周辺でCRLが開発した航空機搭載降雨レーダ(愛称 CAMPR、CRLニュース97年3月号参照)や気象庁石垣島レーダなどを用いたフィールド実験を計画しています。これらの検証を通してアルゴリズムを確立し、観測データをなるべく早期にユーザに提供したいと考えています。

地球環境の計測とそれを用いた環境の監視・予測技術は、ハードウェアの開発から、科学研究、データの実利用に至る極めて広範囲の技術者、科学者の協力が必要です。特に衛星データから科学研究に役立つ情報を取り出す技術、すなわち科学研究と一体化した計測技術は、工学と理学の境界領域として今後ますます重要となってきます。TRMMの場合、衛星搭載機器開発、データの定常処理・配布はNASAおよびNASDAが中心となって実施しています。一方、科学研究は気象、水文関係の国立研究機関や大学が中心となっています。図4に示すように、我々はその間をつなぐ計測技術開発の中心として、これらの機関と協力し、衛星からの降雨レーダ観測技術の確立に向けて努力してゆきます。

図4 TRMM計画におけるCRLの役割



第39次南極地域観測隊出発


宇宙科学部宇宙空間研究室
蒔田 好行



写真1 所員に見送られる草野隊員



写真2 修復訓練の様子



写真3 完成したアンテナ

 南極観測が始まって以来40年が経過したが、今年も無事に第39次南極地域観測隊が、11月14日に観測船「しらせ」で東京港晴海埠頭から出発した。当所からは、草野健一郎氏が、電離層定常部門の越冬隊員として参加している。更に、今回の観測隊には、日本の南極観測が始まった1956年以来初めての女性越冬隊員として、東北大大学院助手の坂野井和代さんと京大大学院助手の東野陽子さんの2人も参加している。

 出発当日は、ぐずついた天気にも関わらず、丸橋宇宙科学部長をはじめ、大勢の人が見送りに駆けつけ、横断幕やエールなどで激励した。特に母親からの「ケンボー」の叫びには、当分会えなくなるという悲しみも含まれているような気がした。正午には色とりどりの紙テープが風になびく中、汽笛を鳴らして「しらせ」が出港した。

 観測隊はこの後船上観測を実施しながら、アフリカ大陸の南方に位置する南極昭和基地に向かう。12月中旬には現地に到着する予定である。途中、オーストラリア西海岸のフリーマントルで生鮮食品の積み込みや給油を行うため1週間停泊する。これ以降、観測隊は文明社会としばしの別れとなる。

 昭和基地到着後は、越冬に必要な物資と観測資材の輸送を行い、更に基地の建設作業等があるが、今回は、宙空部門でオーロラを観測しているHFレーダ(TVアンテナの10倍近い物が16本2組の計32本ある)が、昨年の猛烈なブリザードにより破損したため修復作業をしなければならない。始めの予定にはない作業のため、少人数で大量のアンテナを修理しなければならないという例年以上に過酷な作業になる。

アンテナの修復訓練を出港まぎわに本所グランドで行ったが、その様子を写真2、写真3に示す。



APIIテクノロジーセンターにおける
マルチメディア技術者育成研修の実施


第1研究チーム
松本 和良


 APII(Asia-Pacific Information Infrastructure)テクノロジーセンターは、昨年度2月13日にアジア太平洋地域諸国とのネットワーク相互接続技術、マルチメディア・ネットワークに関するアプリケーション技術等の国際共同実験・研究及び、マルチメディア技術者の育成研修等の実施を目的として、通信総合研究所関西支所(兵庫県神戸市西区岩岡町)に開設されたものであり、昨年度11月にマニラにて開催されたAPEC非公式首脳会議において、橋本総理大臣よりAPEC諸地域へ活用を呼びかけており、また、今年度11月のバンクーバーでのAPEC首脳宣言では、APIIが21世紀のアジア太平洋地域における競争力確保のために必要不可欠な基礎であると認識されている。

 国際共同実験・研究については韓国、シンガポールと2Mbps専用回線を結び、ネットワーク相互接続実験を実施し、さらに次世代インターネット実験研究、遠隔医療実験等について研究を開始している。マルチメディア技術者育成研修について、今年度12月1〜12日の間、APT(Asia-PacificTelecommunity、タイ国バンコックに本部をもつ情報通信関係の国際機関)主催により当該加盟国29ヶ国の内15ヶ国(バングラデシュ、ブルネイ、インド、インドネシア、イラン、ラオス、マレーシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム)より各国1名ずつ合計15名の参加を得て、また日本国内の情報通信関係の主要企業の協力を得て実施した。今回実施した研修は、昨年度2月14日〜28日の間に国際協力事業団主催で9ヶ国9名の参加を得て実施した研修に次いで、APIIテクノロジーセンターを活用した研修の第2弾となるものであり、さらに近々中国郵電部との研究者交流を、そして来年度4月にはマルチメディア技術者育成研修の第3回目をそれぞれ実施する予定である。

 本マルチメディア技術者育成研修では、マルチメディア技術(B-ISDN、情報圧縮技術、マルチメディアデータベース技術)の動向についての講義のほか、インターネット構築利用技術(TCP/IP、セキュリティ、E-mail、News、Telnet、FTP、情報検索、HTML/WWW)、ビデオ・オン・デマンド活用技術(概論、VoD実験実習)及びサイバースペース構築利用技術(概論、サイバースペース構築実習)についての講義と実技演習が行われた。その研修スケジュールの中ほどに京阪奈学術研究都市にある奈良リサーチセンター及びマルチメディア振興センターのマルチメディア情報通信実験施設見学を1日間、さらに京都見学を1日間実施した。

写真1 APTマルチメディア研修 講義風景
写真2 インターネット構築利用技術の実習

この研修について今後の参考のためにカリキュラムに対応したアンケート調査を前回と同様に実施し、研修についての評価及び各国の状況について、次のとおりの回答が得られた。

@研修カリキュラム全体:

  • 研修内容について、最先端技術に関する高度な内容を含んでいたが、概ね理解できた。
  • 研修結果について、自国に帰ってからのマルチメディア技術の開発や導入に本研修が案内役として、概ね役に立つと期待される。

Aマルチメディア情報通信技術全体:

  • 将来技術としてこれから導入する段階にあり、最新技術を見通す指針として本研修内容が有効である。
  • 自国でのマルチメディア情報通信の普及、技術者の育成に同様な研修事業を自国内で実施することが必要である。

Bインターネット、WWW、情報圧縮技術:

  • 各国とも急速に普及しつつあるが、特にインドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンは相当浸透し、例えば多くのインターネット・サービス・プロバイダーが活動している。
  • JPEG、MPEG等の情報圧縮技術は、PC、インターネットの普及などと関連して幅広く利用している。

CB-ISDN、ATM交換技術:

  • 将来ぜひとも導入が必要な技術であり、本研修が導入のよい案内役となると期待される。

 最後に、アジア・太平洋地域の情報通信基盤の発展に貢献していくことを目的に、郵政本省、通信総合研究所、APT又は国際協力事業団その他の密接な連携のもと、ネットワーク相互接続技術、マルチメディア・ネットワークに関するアプリケーション技術等の国際共同実験・研究及び、マルチメディア技術者の育成研修等を、本APIIテクノロジーセンターをいっそう積極的に活用して推進していきたい。



第26回電波研親ぼく会開催される


総務部 庶務課
飯塚  幸義


 恒例の電波研親ぼく会が平成9年10月24日に開催され、OB,現役を含めて約100名の方が参加された。

当日は新しく完成した情報通信研究棟(5号館)の見学会も行われ、広い室内に整然と並べられた実験機器を見て、「研究環境も内容も大きく変った、マルチメディア関係は説明を聞いても解らない」とあるOBの方が感想を述べていた。

総会では古濱所長より「通信総合研究所の動き」と題し、国研としての役割から他の機関に先駆けて実施した外部評価の意義、更には行政改革と当所の在り方など多岐にわたって報告が行われ、出席者は厳しい状況の中で「後輩達は頑張っている」との印象を受けられたものと確信している。

懇親会では何年ぶりかで参加したという方もいて、お互いの近況から昔の思い出話などに花が咲き、時間が足らなかった方もいたようである。また、挨拶の中でも行政改革の関係では「OBができることは小さい、研究所の将来は現職に頑張ってもらわなくてはならない」といった激励もあり、和やかな中にも厳しい一面を見た親ぼく会であった。



ドイツバイエルン州シュトイバー首相ご一行の訪問


企画部企画課長
熊谷  博


 ドイツは連邦制の国であり、州のトップも首相と呼ぶそうですが、ミュンヘンを抱えるドイツでも有力な州政府一行を12月4日、CRLにお迎えすることになりました。首相をはじめ、州議会議員、政府幹部、大使館関係者と、地元報道関係者の総勢二十余人と言うふれこみで、我が国では、天皇や首相にも会見されています。

さて、当日はCRL始まって以来(?)ともいうべき歓迎体制を敷き、玄関ホールには日独両国の国旗を掲げ(実際は垂らし)、CRL自慢の1号館の電光掲示板には、Willkommenを表示すると言うサービスぶり。これは、到着の時には気づかれなかったのですが、お帰りにはたっぷり見て喜んで頂きました。また会場には卓上用の国旗セットが用意され、大会議室はあたかも国際会議場を思わせる仕上がりぶりでした。当初、来所予定であった首相婦人は、どこかへエクスカーションへ行かれたということで、姿をお見せにならず残念でした。出迎え、挨拶から動画を含むCRL概要説明までは、つつがなくとはいかず、大幅に時間を超過してしましました。

見学では、国際ネットワーク実験(GIBNプロジェクト)のスタジオ、超高速光通信実験室、熱帯降雨観測衛星(TRMM)、COMETSプロジェクトの車載局および車載の立体HDTVのデモを見て頂きました。国際ネットワーク実験スタジオでは、鹿島センターとHDTV会議で結び、オーストリア出身のクラウス君に鹿島側で出演してもらい、ドイツ語で会議をしてもらいました。このなかで、首相側は、日本は米国とは積極的に共同研究等を実施しているが、ヨーロッパとは積極的ではないのではないかと言うような、当たっているような、いないような指摘もあったとか。見学後の質疑応答にも力が入り、大幅に時間超過するというハプニングもありました。州首相側には一貫して、自州内の民間企業活動の活発化が念頭にあるようで、CRLと州内のジーメンス社との共同研究の可能性等の質疑応答が熱心に交わされました。

このようなVIPが大挙して来所されたことはこれまであまり経験が無く、CRLを無事出発されるまで緊張の連続でした。見学の中身を十分ご理解いただいたかどうかは別として、CRLの歓迎ぶりに大変満足してお帰りになったということでした。CRLの知名度も上がり、このようなお客様をお迎えすることは名誉なことですが、今後は受け入れの経験の蓄積とともにインフラ整備を図り、我々もさらに腕を磨く必要がありそうです。準備や見学を担当された皆様、本当にご苦労様。


写真1 ドレスアップされた大会議室風景





写真2 COMETS車載局をご視察される
シュトイバー首相(右端)



村井 純慶應義塾大学教授を招へい



写真 辞令交付を受けられる村井教授(右)

平成8年7月2日に閣議決定された科学技術基本計画に基づき、平成9年6月4日に公布・施行された『一般職の任期付研究員の採用、給与及び勤務時間の特例に関する法律』により、国立の研究機関に任期付研究員を採用することができるようになりました。通信総合研究所では、この制度に基づく初めてのこととして、平成9年11月1日付けで村井 純慶應義塾大学教授を任期付研究員として招へいす ることとになりました。任期は平成10年10月31日までの1年間で、通信システム部超高速ネットワーク研究室長として次のような職務に当っていただくことになっています。

  • 次世代インターネットシステム構築のための研究プロジェクトを統括する。
  • 研究計画全体の構想を練り上げ、当該研究室の研究者の指導を行いながら、マルチメディア社会における高度なサービスに対応できる通信プロトコルの策定、試験システムの設計開発を行うとともに、本研究プロジェクトの推進のために、国内、国外の研究者と研究協力等の調整を実施する。

【村井教授の略歴】
昭和30年3月29日生
昭和59年7月 慶應義塾大学大学院博士課程修了
昭和62年3月 工学博士号取得
平成9年4月 慶應義塾大学環境情報学部教授
  〃    慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科教授



ニューリーダー自己紹介



横須賀無線通信研究センター 無線伝送研究室長 藤瀬 雅行


 皆さんこんにちは。11月にKDDから横須賀無線通信研究センター(YRC)に参りました藤瀬です。やっと少しずつこちらでの仕事のペースがつかめてきたところです。

自己紹介と言うことですが、私は昭和50年に国際電信電話株式会社(KDD)に入社し、研究所で主に光海底ケーブル通信に関連する光計測技術の研究に携わりました。特に、光ファイバの特性や障害点を把握するための光計測装置の研究開発に取り組みました。計測技術は通信システムの開発や実用化を支える基礎技術ですが、長距離光ファイバの特性をいかに精度よく測るかが当時のテーマでした。その後、関西にあるATR光電波通信研究所に出向し、光衛星間通信の研究やアレーアンテナの研究に従事しました。ATRは国や民間企業あるいは海外の研究機関から、様々な研究スタイルを持った研究者が集まって来ています。若い研究者はそのマルチカルチャーの中で切磋琢磨し、立派な研究成果を出して学位を得た人も多く、派遣元に戻っても活躍されています。この時の仲間とは今でも気軽にコミュニケーションができ、ヒューマンネットワークとして大きな財産となっています。

さて、こちらでの仕事ですが、人と車と道路を一体のシステムとして捉えた将来の高度道路交通システム(ITS)に関連する無線技術の研究や、今の携帯電話やPHSよりもさらに大量の情報を移動環境の中で自由にやり取りできる、高速移動マルチメディア情報通信の研究に取り組んでいきます。国と民間機関の研究目的や役割はおのずと異なることは明らかですが、いずれも社会に役に立つ技術の確立を目指すと言う点では同じです。そのためには実用される技術や標準化に繋がる技術の方向を見極めながら、果敢にチャレンジすることが大切ではないかと思っています。幸いに、YRCは国の内外から移動通信分野の最先端の研究資源が集まったエキサイティングな環境、横須賀リサーチパーク(YRP)で研究を進めて行くことができます。また、近年移動通信の分野は、ユーザーが急増しサービスのニーズも多様化してきており、追い風が吹いていることはご承知のとおりです。このような周囲状況に恵まれた中で、他の研究集団と協調し競争しながら、一日も早くYRCが無線通信研究におけるアジア太平洋地域のセンターとなるよう、皆さんと一緒に努力していきたいと思っております。YRCを野球チームに例えるなら、大森監督(センター長)のもと、各専門分野のポジションを持った研究者の皆さんと力を合わせ、時には守備に出たりバッターボックスに立つこともあると思いますが、主にコーチとしての役目を果たしていきたいと思っております。

個人情報としては、家内と大学生と高校生の娘二人の四人家族です。出身地は福岡県で大学を出るまで九州で生活していました。九州と言えば酒に強いイメージを持たれますが、残念ながらあまり飲めません。ちなみに、九州に居る母は既に定年退職しましたが郵便局に勤めていましたので、郵政省には二代でお世話になることになり、少なからぬご縁を感じています。住んでいるところは海老名市ですが、丹沢や大山は比較的近く、天気のいい週末には山歩きが楽しめます。山歩きがお好きな方がおられましたらお声を掛けて下さい。これと言った信条はありませんが、「過去に感謝を、現在に信頼を、未来に希望を」が好きな言葉です。以上のようなバックグラウンドですが、どうぞよろしくお願いいたします。



自見郵政大臣ご視察



12月18日に来所された自見郵政大臣 標準時の説明をお聞きになる自見郵政大臣(左)

 12月18日、自見庄三郎郵政大臣がご視察に来所されました。大臣は、当所幹部引見に引続き、概要説明をお受けになり、その後各研究現場を御視察されました。ご覧いただいたのは、手話対話支援システム、国際ネットワーク、ポストパートナーズ、標準時刻、首都圏広域地殻変動観測といった項目で、視察先では所長の説明に熱心に耳を傾けられました。中でも電波時計には特に深い関心をお持ちになられたようで、電波時計と標準時刻設備の表示を見比べるようして、その正確さを実感いただきました。



外部誌上発表



Geophysical Research Letters (1997年9月)
Polar Stratospheric Clouds Observed at Eureka (80゚N,86゚W) in the Canadian Arctic During the 1994/1995 Winter
永井 智広、内野 修、板部 敏和、柴田 隆、水谷 耕平、藤本 敏文

IEEE Microwave and Guided Wave Letters (1997年9月)
Multiple-Frequency Generation of Sub-Terahertz Radiation by Multi-Mode LD Excitation of Photoconductive Antenna
谷 正彦、松浦 周二、阪井 清美、萩行 正憲

IEICE TRANS. FUNDAMENTALS. "Special Section on Nonlinear Theory and the Applications" (1997年9月)
Cancellation Technique used for DS-CDMA Signal in Nonlinear Optical Link
黄 巍、E.A.Sourour、中川 正雄

Japanese Journal of Applied Physics. Part1 (1997年9月)
Far-Infrared Reflectance Study of Coupled Longitudinal-Optical Phonon-Hole Plasmon Modes and Transport Properties in Hevily Doped p-type GaAs
深澤 亮一、阪井 清美、S.パーコヴィッツ

Optics Letters (1997年9月)
Laser Cooling and Isotope Separation of Cd+ Ions Confined in a Linear Paul Trap
田中 歌子、今城 秀司、早坂 和弘、大向 隆三、渡辺 昌良、占部 伸二

宇宙科学研究所研究報告 (1997年9月)
Space Flyer Unit (SFU)で観測されたガス環境
佐々木 進、賀谷 信幸、佐川 永一

映像情報メディア学会 学会誌 (1997年9月)
遅延波がOFDM伝送に与える影響
都竹 愛一郎、太田 弘毅、中村 玲子

画像ラボ(日本工業出版) (1997年9月)
柔らかい画像検索における特徴選択
加藤 宗子

雑誌「電磁環境情報EMC」 (1997年9月)
テストサイトとその特性評価
杉浦 行

情報通信ジャーナル (1997年9月)
宇宙環境を安全に利用するために−宇宙放射線環境の監視とその予測−
富田 二三彦

電子情報通信学会誌 (1997年9月)
手話音声対話支援システムの初期バージョンを開発
呂 山

Mal Cryst Liq Cryst (1997年9月)
Functional Dendritic Macromolecules : Preparation and Optical Properties
横山 士吉、中浜 龍夫、益子 信郎

Japanese Journal of Applied Physics (1997年9月)
Ultrafast Photoconductive Detectors Based on Semi-Insulating GaAs and InP
谷 正彦、阪井 清美、三村 秀典

International journal of remote sensing (1997年9月)
The Identification of rice fields using multi-temporal ERS-1 C-band SAR data
黒須 隆志、藤田 正晴、千葉 和夫

映像情報メディア学会誌 (1997年9月)
グレースフルデグラデーション機能を実現したOFDM変復調器の開発
永塚 守、都竹 愛一郎

電子情報通信学会 通信ソサイエティ論文誌 (1997年9月)
成層圏無線中継システム用送電ビーム制御のための到来角検出部に関する基礎実験
藤野 義之、石井 守、藤田 正晴

電子情報通信学会・論文誌(B-II) (1997年9月)
電波干渉の抑圧を目的とした、衛星搭載フェーズドアレーアンテナの適応的ビーム形成実験
松本 泰、田中 正人、小園 晋一、高橋 卓、李 還幇、井家上 哲史

IEEE Transactions on Geoscience and Remote Sensing (1997年9月)
On Average of rain Radar Rain Echoes in a Nonstationary Conditions
阿波加 純、井口 俊夫

American Astronomical Society (1997年10月)
Fluctuation of Extragalactic Reference Frame due to Gravitational Lensing in Our Galaxy
細川 瑞彦、大西 浩次、福島 登志夫

Biophysical Journal (1997年10月)
Mechanics of single kinesin molecules measured by optical trapping nanometry
小嶋 寛明、武藤 悦子、樋口 秀男、柳田 敏雄

bit (共立出版) (1997年10月)
データベースの曖昧検索による医療診断の支援
茂出木敏雄、飯作 俊一

Europhysics letters (1997年10月)
Obserbation of squeezing using cascaded nonlinearity
笠井 克幸、G.Jiangrui、C.Fabre

Experimental Brain Research (1997年10月)
Adaptive modifications of human postsaccadic pursuit eye movements induced by a step-ramp-ramp paradigm.
小川 正、藤田 昌彦

Humann Genetics (1997年10月)
New p57KIP mutation in Beckwith-Wiedemann syndrome
畑田 出穂、鍋谷  彰、森崎 裕子、Zhenghan Xin、大石 洋子、富木 秀文、新川 詔夫、井上 正宏、河本 洋介、岡田 明、E.Steichen、大橋 博文、福島 義光、中山 雅弘、向井 常博

IEICE Trans. (1997年10月)
Parameter-free Restoration Algorithms for Two Classes of Binary MRF Images Degraded by Flip-flap Noises
張 兵、メディヌリシラジ、野田 秀樹

IEICE Transactions on Electronics (1997年10月)
NbN/AIN/NbN tunnel junctions applied as terahertz SIS mixers
王 鎮、鵜澤 佳徳、川上 彰

Journal of Atmospheric and Solar-Terrestrial Physyics (1997年10月)
Preliminary results from joint measurements of E-region field-aligned irregularities using the MU radar and frequency-ag Optics Letters (1997年10月)
Optical Wave-front transformer using the multiple-reflection interference effect inside a resonator
B.DINGEL、井筒 雅之、村川 幸史

情報通信ジャーナル (1997年10月)
大気中アスベストのリアルタイム検出装置を開発
廣本 宣久

電子情報通信学会和文論文誌・分冊DII (1997年10月)
修正視標の提示遅延がサッカードの適応に及ぼす効果
皆川 双葉、藤田 昌彦、雨海 明博

学術情報処理研究 (1997年10月)
New Data Compression for Multi-Dimensional Numerical Simulation
田 光江、山下 和之、松元 亮治

電気設備学会誌 (1997年10月)
測地衛星
大坪 俊通

電気設備学会誌 (1997年10月)
航行衛星
今江 理人

"Quantum Communication,Computing,and Measurement" Plenum Press,New York (1997年10月)
Unitary control process for quantum optimum detection
佐々木 雅英、広田  修

電波受験界 10月号 (1997年10月)
鹿島宇宙通信センター −研究本館−
小園 晋一、吉村 直子、山本 伸一、木村 和宏

Applied Optics (1997年10月)
Emission Characteristics of Photoconductive Antennas Based on Low-Temperature-Grown GaAs and Semi-Insulating GaAs
谷 正彦、松浦 周二、阪井 清美、中島 信一

電子情報通信学会論文誌 (1997年10月)
陸上移動通信におけるTDD用送信ダイバーシチの一検討
諏訪部 亮、浜口 清、守山 栄松

Zeitschrift fur Physikalische Chemie (1997年10月)
The Preparation,Orientation and Electronic Structure of Poly(p-phenylenevinylene) (PPV) Monolayers on Silicon Surfaces
M.Keil、A.Rajagopal、横山 士吉、外林 秀之、A.M.Bradshow、柿本 雅明、今井 椒夫

日本気象学会 機関誌「天気」 (1997年10月)
航空機からの雲・降水のリモートセンシング−衛星観測のための技術実証及び衛星検証
熊谷 博