ラス・レーダ(電波音波共用探査装置)の開発研究


第二特別研究室

 当所では,新しい電波利用システムの一つと考えられ るラス・レーダ(電波音波共用探査装置)の開発研究を 行っている。近年,リモート・センシング(遠隔探査) の技術はあらゆる分野で飛躍的な発展を遂げつつある。 ラス・レーダもリモート・センシングの一種であって, 音波の大気伝搬速度が気温の平方根に比例しているとい う性質を利用して,鉛直上方に発射されたパルス音波の 伝搬速度を電波のドッブラ・レーダで測定し,逆転層の 存在などが容易に知れる気温の高度分布を連続的に遠隔 測定するという画期的な試みである。つまりラス・レー ダは地上に設置した装置でその上空の気温高度分布を映 し出すものである。このラス・レーダという新しい用語 はRASS(Radio Acoustic Sounding System)とレーダ とを組合せた新造語である。
 ところで低層大気中の汚染物質等の拡散や蓄積には風 の影響も勿論重要であるが,やはり逆転層の影響が決定 的である。逆転層はその下側の空気を閉ぢ込めてしまう 蓋(ふた)であり,その発生頻度や空間的分布状況,さら に逆転の強さなどを測定することによって汚染物質等の 拡散・蓄積の動向を知ることができる。
 1970年以来,当所で開発発展させてきた音波レーダで 探知できるのは逆転層附近に特に強く発生する大気の乱 れであり,ラス・レーダで測定されるのは気温高度分布 そのものである。両者が広く活用されることは大気汚染 気象や電波伝搬のよりよき理解のために必要なことであ る。ラス・レーダはまた,将来,低層ラジオゾンデのよ り有効な代替品として使用される可能性も大きい。
 ラス・レーダの基本的な考え方は電波のドップラ・レ ーダによってパルス音波を追跡することである。音波に よって空気の粗密が造られ,これによって空気の誘電率 つまり大気屈折率がわずかに変化し,レーダ電波のエネ ルギーの一部を反射する。反射係数は非常に小さいが, 次の二つの方法を利用すれば反射波を強くすることがで きる。
(1) レーダ送信アンテナ,音波アンテナ及びレーダ受信 アンテナをこの順に近接させて配置すると,ある高度 以上では送信された電波,音波の球形波面はかなりよ く一致するので,波面全体から反射される電波は受信 地点に集まってくる。
(2) 使用する電波の波長を音波の波長のちょうど2倍に しておくと,一つのパルス音波によって造られる数十 とか数百の波面の各々によって反射される電波は同位 相で加算される。
 このようにして強められた反射波は,音波によって空 気中に造られた波面からの反射であるので,その周波数 は反射面の移動すなわち音速に相当するドップラ効果を 受ける。ラス・レーダの場合,反射面は音速によって常 に遠ざかって行くので反射波の周波数は送信電波の周波 数より必ず小さくなる。この反射波のドップラ・シフト 周波数をパルス音波の送信時を起点として,時々刻々測 定すれば気温高度分布が測定されるわけである。なお, 反射波のドップラ・シフト周波数は,その高度における 音速をレーダ電波の波長で割り算したものの2倍の周波 数であるので極めてわずかな値である。このわずかなド ップラ・シフ.ト周波数が検出できるようになったのも電 子工学の進歩があってのことである。
 ラス・レーダにおいて,高層までその測定距離を延ば すには,大気の吸収や散乱による減衰の少ない低周波音 波を使用する方が有利であろう。また低高度からトラッ キングを開始するには連続波方式ドップラ・レーダが適 しており,パルス方式ドップラ・レーダに比較してピー ク電力や受信機帯域幅を小さくすることができる。送信 アンテナからの直接波の影響を避ける工夫を凝らして受 信アンテナを配置し,その中間に音波アンテナを設置す る。受信方式は高周波増幅,ホモダイン検波,低周波増 幅とするのが目下のところ有利であると考えられる。
 RRLラス・レーダの概要を理解して頂くためにラス ・レーダ開発の目標とする諸元を表に,また,ラス・レー ダの主要な回路構成部分のフロッグ図を示す。


表 RRLラス・レーダー諸元


図 RRLラス・レーダのブロック図

 当所におけるラス・レーダ開発計画は昭和51年初頭に 始まる調査段階を経て,早速,昭和52年度予算要求へと 進められ,関係各位の絶大なる御支援,御尽力のもとに, 環境庁に一括計上される国立機関公害防止等試験研究費 によって推進されることとなった。この種の試験研究費 の通例として,開発研究計画の大枠は次のように設定さ れている。すなわち,初年度(昭和52年度)ラス・レーダ 基本構成システムの関発,第2年度(昭和53年度)小規 模野外実験結果によるラス・レーダ基本構成システムの 改良及び周辺装置開発,第3年度(最終年度)野外実験場 における連続測定と低層ラジオゾンデ観測との比較,と いうのが筋書きである。
 このような経緯のもとに,わが国では未経験のラス・ レーダ各部の技術開発に関する研究に着手した。ラス・ レーダの基本構成システム試作のための仕様書作成につ いても種々の曲折を経て,昭和52年8月,電波研仕第5213 号 ラス・レーダ(電波音波共用探査装置)仕様書と して制定された。これと並行して,ラス・レーダと いう無線局(電波計測実験局)開設のための準備,諸 作業を促進させることができた。仕様書に基づくラ ス・レーダ試作装置については,入札の結果,日本 無線株式会社で製造されることとなった。一方,無 線局開設については関係各位の御理解のもとに昭和 53年3月31日にA0445MHz,100Wの実験局として 予備免許が与えられた。試作装置ということもあっ て,完成期限の若千の延長の後,昭和53年9月14日, 無線局検査合格,以来,本格的な実験研究を開始す ることとなった。
 さて,ラス・レーダを当所構内のソーダ実験車車庫附 近の空地に展開して,各部の動作特性確認実験から 始めたものの周囲の地物からの近傍反射等の電波障 害に妨げられて,実験は思うように進まなかった。 そこで,電波障害の比較的少い広大な野外実験場で のラス・レーダ性能評価実験を計画した。
 実験の内容は,(1))送信アンテナ・受信アンテナ間 のアイソレーション測定,(2)送・受信アンテナ遮へ い網効果測定,(3)音波アンテナ遮音壁効果測定,(4) 総合動作テスト,(5)音波レーダ観測並びにラジオゾ ンデ観測との比較実験,である。実験場所は, 防衛庁技術研究本部第一研究所・飯岡支所長の 御好意により,電離層レーダ観測施設の点在す る12万平方メートルの平坦広大な同支所構内の 一部を借用する運びとなった。実験期間は昭和 53年10月18日から11月8日までである。飯岡で の実験に引き続いて,当所構内の野外実験場(野 球場)での補足実験を実施した。
 これまでの実験の成果から,先ず,システム 全体として予期した通り作動すると言えよう。 無論各部に改良すべき点が多々あることは言う までもない。現在のセットで地上高400〜500メ ートルまでのエコー受信は容易であるし,時に は700メートル位まで,測定高度が延びること がある。写真2はRRLラス・レーダによる測 定例である。問題点は総合動作時における雑音 である。目下のところ,エコー受信の限界を左 右する因子は送・受信アンテナ間のアイソレー ションの他に,送信機雑音も重要な因子と考え られる。ラス・レーダの開発研究計画は,今ま さにその第一段階を乗り越えようとしている。


写真1 飯岡で実験中のRRLラス・レーダ


写真2 RRLラス・レーダによる測定例
(1)低周波増幅部出力,(2)ドップラ検出部(PPL回路)出力,
(3)ドップラ検出部(波長計測回路)出力

 このように,ラス・レーダの開発過程で否応 なく様々の経験を強いられてきた。送・受信ア ンテナ間のアイソレーションの確保,つまり送 信アンテナからの直接波による妨害を避ける工 夫,あるいはエコー受信に必要な信号対雑音比 については,信号レベルは適当なモデルを仮定 すれば計算できるが,雑音レベルは目下のとこ ろ受信機の雑音レベルではなくて送信機による ものが問題であること,等々である。これら機器の問題 が一段落するところで,音波あるいは電波の伝搬上の問 題が当然,浮上してくる筈である。つまり,乱流による コヒーレンシイの劣化が問題になるであろう。またドッ プラ・シフト周波数算定において各測定点と受信アンテ ナの位置関係・鉛直方向からのずれによる補正値も無視 することはできない。
 上空の気温高度分布を地上で測定できるラス・レーダ は将来,公害予測,事前環境評価のための省力化機器と して極めて有望と見込まれている。
 当所で試作されたラス・レーダの改造が進められ,安 定な動作が約束される状態になれば,ラス・レーダは特 色あるリモート・センサとして先ず逆転層が頻発する大 気境界層研究用に威力を発揮するであろう。
 冒頭に述べたように,音波レーダで探知できるのは逆 転層附近に特に強く発生する大気の乱れであり,ラス・ レーダで探知されるのは気温高度分布である。通常,逆 転層が存在すると,その下側は温度が低く上側では温度 が高いので熱は逆転層を通して上から下向きに流れて次 第に逆転層の高度を上昇させる。すると逆転層の下側に 蓄積された汚染物質はその濃度が薄められる。また逆転 層の解消により拡散してしまう。逆転層の出現,消長の 監視に極めて有用なラス・レーダ開発及び音波レーダ開 発は重要な意味をもつものである。

(第二特別研究室長  福島 圓)




第34回ISISワーキング・グループ会議に出席して


松 浦 延 夫

 電波研究所がISIS-WG(国際電離層研究衛星ワーキ ング・グループ)に正式参加した1966年から13年目にな る本年1978年9月27日から29日まで,第34回ISIS-WG 会議がカナダのオタワで開催された。筆者はこの会議に 出席するとともに,現在運用中の我が国の電離層観測衛 星ISS-bに関するカナダとの国際協力の具体的な問題に ついて話し合うため,オタワ出張を命ぜられ,9月24日 から10月3日までオタワに滞在した。
 1960年に米・加共同のTopside Soundingプロジェクト が発足し,1961年代の米国のロケット実験を経て, Alouette-T(1962年9月29日打ち上げ),Alouette-U(1965 年11月29日),ISIS-T(1969年1月30日)及びISIS-U (1971年4月1日)が打ち上げられており,この中でISI S-TとISIS-Uが現在運用中である。ISIS-WGは米 ・加・英の参加の下に1964年に発足し,現在ではその活 動の度合いに差異はあるが,米・加・英・仏・日・豪・ 印・ニュージーランド・ノルウェー・フィンランドの10 か国の関係機関が参加している。ISISプロジェクトは 4個のAlouette/ISIS衛星を中心に18年間活動を続けて きた国際協力事業であり,その期間の長さ及び成果から みて特筆すべきものである。今回のISIS‐WG会議の中 で,NASAのNSSDC(National Space Science Data Center) の技術文献ファイルに格納されているAlouette/ISIS 衛星に関する現在迄の論文数がJackson氏(前ISIS‐WG議長) から報告されており,衛星毎の論文総数 は次の通りである。
   Alouette-T    423編
   Alouette-U    249編
   ISIS-T      145編
   ISIS-U      207編
論文数だけで衛星の成果を見積もるのは必ずしも妥当で はないが,研究衛星としての立派な成果を窺わせるもの である。
 しかし,ISISプロジェクトは現在まで問題なく推移 してきたわけではない。1970年頃からはNASAのSTADAN (Satellite Tracking and Data Acquisition Network) 等のISIS支援縮少問題があり,ISIS・WG参加各国機 関がISIS衛星の重要性を強調し,現在までNASAの支 援を得てきている。1976年頃からは本家本元のカナダに おいて,ISISプロジェクト継続のための予算措置に関 する危惧が話題に上るようになった。今回のISIS-WG 会議においても,ISISプロジェクトの今後の計画が議 題にされたが,WGの議長であるカナダのHartz博士の 表現によれば,1979年の予算決定を待たねばならないが, 恐らく1979年はISISの運用を継続していけるようであ る。18年間続いてきたISISプロジェクトが終局に向き つつあるという感触は否めない。今回のWG会議では, Alouette/ISISに関連するシンポジウムを1980年に開催 することが討議され,現在までのISISプロジェクトの 成果の締め括りに力点を置いたシンポジウムが計画され ている。
 第34回ISIS-WG会議は27日と28日の午前中はCRC で行われ,28日の午後からは会場をオタワ市の中心に近 いNRCのHerzberg Instituteに移してExperimenters Meeting が行われた。28日の午後には丁度NRCの講堂で 米国のオーロラ研究の権威者であるポストン大学の Eather教授の「Dayside Aurora」についての講演会があり, WG会議出席者一同聴講した。同教授の講演は, Dayside Auroraの観測結果が磁気圏のReconnectionモデルに疑 問を投ずる主旨のものであった。Experimenters Meeting では各研究者から研究結果の報告が行われ,筆者は ISS-bの成果として,電離層臨界周波数の世界分布図,最低 混信用波数と臨界周波数の関係,空電発生頻度の世界分 布図,プラズマ及びイオン組成観測の結果等を紹介した。
 今回のオタワ出張目的の一つであるISS-bに関するカ ナダDOC(Department of Communicationis)との協力に ついては,ISIS-WG会議開催前の9月25日及び26日の 両日筆者がCRCを訪問し,Hartz博士 (DOC,Radio and Radar Research Branch次長,ISIS-WG議長), Boulding氏(ISIS運用担当)及びISIS研究者グループと 話し合うことができ,ISS-bの運用及びISS-bの利用実 験についての具体的な問題を討議した。この経過及び具 体的内容については機会を改めて御紹介したい。

(電波部衛星データ解析研究室長)




Impressions of Japan


by O. S. Roscoe
Department of Communications,
Government of Canada

  My six months in Japan have certainly been memorable ones. With the kind help of many friends at the Radio Research Laboratories, I have visited many interesting places. I have been able to learn a little bit about the culture of Japan, and have been able to get some feeling of the spirit of Japan.
  I have enjoyed the historic and cultural attractions in the Kansai area and have toured Kyushu, as well as visiting the many interesting spots in Tokyo and within a day tour from Tokyo. I have been fortunate to be able to participate in hikes to the top of Mount Fuji, and to Ozegahara. On all of my trips, I have had my camera, so that I will be able to enjoy what I have seen over again many times, and to show my family and friends in Canada the many wonderful sights that are to be seen in Japan.
  What has impressed me very strongly is the tremendous variety that there is in Japan, the mixture of the new and the old of the modern and the traditional, of intensive agriculture surrounded by rugged nature, of peace and tranquility side-by-side with hustle and bustle. Tall skyscrapers and glittering superstores rise in the midst of hundreds of little shops. Ladies in Kimonos and boys wearing clogs mingle with people dressed in the latest in international fashions. Rice paddies, lotus patches, grape orchards, and tea plantations are nestled among rugged mountains. Peaceful gardens are just a wall away from busy streets. Mountains may be snow cappeed, or may be spewing forth smoke and ashes. Hot springs spout just a short distance away from cool mountain streams. Sumo wrestling enjoys equal popularity with baseball.
  Another impression is that roots of Japanese culture are deep, and are strong enough to resist the change pressures exerted by today's society. Modern life does not seem to have affected people's participation in and enjoyment of the many traditions and festivals which date back to events that happened in the past, sometimes more than a thousand years ago. I have enjoyed the Gion Matsuri, neighborhood Bon Odori festivals, the Tanabata festival, to name a few. There seem to be an endless variety of festivals. At least one or two different ones take place somewhere within easy distance every week.
  The simplicity and tranquility of some unique aspects of Japanese culture are notable. Those which I have enjoyed particularly are Japanese gardens, ikebana, and the tea ceremony.
  Being a mountainous country, Japan's scenery is also impressive. Even though the country is generally thought of as a small country, wide vistas may be enjoyed in many places, such as from the Aso highway in Kyushu. The graceful shapes of volcanic mountains, such as Fuji and Kaimon, are seen, as well as weath- ered granite gorges, of which the Shosenkyo gorge is an example. One of the most interesting spots is the Oze marsh, nestled in the mountains in Nikko National Park. Ozegahara is well worth visiting several times in different seasons.
  One cannot describe impressions on Japan without mentioning that what is frequently said about the crowding is true. Crowds are a way of life, on the trains, in the shops, on the streets and roads. However, the very efficient railway transportation system enables Japan to cope with the crowds. In contrast except for a few expressways the road system is not efficient. This may be a blessing in disguise, because if it were better, there would just be more automobile traffic !
  In spite of a]] the beautiful sights that there are in Japan, my most memorable impression is of the people. Everywhere that I have gone, I have enjoyed tremendous hospitality. Everyone has been cordial, friendly, and helpful. I have also enjoyed the very great honour of being invited to many homes. The people of the Radio Research Laboratories have received me with particular warmth and kindness. I will never forget the many friendships that I have enjoyed. My wife Joan has been able to share the same hospitality that I have enjoyed from the beginning for the two weeks that she was able to spend in Japan, and this has made her visit memorable for her also. We are both very grateful, and hope we will have the privilege of meeting many of our Japanese friends again, and to extend our hospitality to them in Ottawa. (Nov. 30,1978)


日加親善富士登山(上右端が筆者)


これは科学技術庁振興局の求めに応じてロスコー氏がまとめた, REPORT ON WORK AND EXPERIENCES IN JAPAN の一部分を基に,同氏が電波研究所ニュース用に執筆しなおしたものです


短   信


日米合同調査計画に関する日本側提案決まる

 昭和53年12月12日から4日間,東京で開催される第一 回日米専門家会議を前に,日米合同調査対策会議(本ニ ュース第31号)において関係各省庁から提案された各共 同研究テーマが審議され,日本側提案としてまとめられ て米国に送付された。
 これによると,郵政省が提案したテーマ(本ニュース 第30号)のうち,衛星を用いた捜索救助実験計画への参 加は,運輸省電子航法研究所と共同で地上部分に参加す るとともに,周波数拡散方式を用いた新しいシステムを 検討することとされた。また,衛星太陽発電所について はこれに関連した基礎的調査研究を米国と連携を保ちつ つ協力して進めること,衛星による時刻同期に関する実 験では,現在実施中のGPS(Global Positioning System) を用いた日米間国際比較実験を継続発展させ,将来 TDRSS(Tracking and Data Relay Satellite System)を 利用して行うことを考慮するとされた。その他, TDRSS及び国内通信衛星の情報交換に関しては通信技術, 衛星運用管制等の情報に,またVLBIに関してはこれを 用いた日米間の測距に関心をもっているとされた。静止 衛星によるプラズマ・ポーズ観測については,OPEN (Origins of Plasma in the Earth's Neighborhood)計 画との協調をとりながら,その実現の可能性に関心をも っていること,またISEE衛星データの受信については, 日本で直接受信し,米国による観測を補うとともに,こ れをもとに利用研究を行う希望がある,とされた。
 なお,スペースラブ利用の2件については宇宙開発委 員会第2部会での審議を待つことにし,我が国で検討中 の課題として紹介されることになった。



南極越冬隊員の出発

 昭和53年11月25日,第20次南極地域観測隊は大勢の人 々に見送られ,観測船「ふじ」で秋晴れの晴海埠頭から 昭和基地に向け出発した。当所から小宮紀旦(通信機器 部)と小島世臣(電波部)の両技官が参加している。昭 和54年元旦の前後に昭和基地への空輸第1便を送る予 定である。NHKによる,昭和基地からの通信衛星イン テルサットを利用したテレビ生中継放送は,1月28日開 始予定。第20次隊は定常観測の他,地学部門及び気水圏 部門に重点をおいて観測し,人工衛星テレメトリによる 超高層研究,地球化学・医学等の環境科学の調査も併せ て行う。小島隊員は定常観測担当で電離層定時観測,オ ー口ラ・レーダ観測,リオメータ及び電界強度測定によ る電離層吸収の測定を行う他,昭和基地までの往路「ふ じ」船上における中波電界強度と,電離層観測衛星 (ISS-b)との同時観測による空電雑音の測定を担当す る。今回は昭和基地に,ICを主体とした9-B型新電 離層観測装置の搬入設置と関連周辺装置とのインターフ エースをとることも大きな作業である。小宮隊員は研究観 測部門の超高層担当で,人工衛星ISlS-T,U及びEXOS-A より発信される科学データ等,テレメトリ電波の受信 を行う。また昭和基地の電磁環境の測定として人工及び 自然電波雑音の測定を行うことになっている。