試験研究活動と創造性


所長 理博 田尾 一彦

 我が国の科学技術振興に占める国の試験研究機関の役割の重要性にかんがみ, これら機関相互の連携の強化,機関の運営 に関する情報の交換等を促進し,更に行政部局と研究機関との意志の疎通を図り, 国の試験研究機関における研究活動の活発 化と科学技術政策の今後の展開に資するため,科学技術庁では毎年1回全国の国立試験研究機関, 特殊法人研究機関,関係行 政機関の長を集めて試験研究所長会同を開催している。 昭和54年度の所長会同が11月14日,九段会館において科学技術庁長官 主催の下に科学技術会議議員,原子力委員会委員,原子力安全委員会委員, 宇宙開発委員会委員等を来賓に迎えて科学球術庁 の園山計画局長司会の下に開催された。本年度のテーマとしては “試験研究活動と創造性”が取り上げられ,特別講師として 森英夫氏(三菱電気取締役,技術本部副本部長,元通産省電子技術総合研究所長) の講演があり,それに引き続いて上記テー マについて次の四人の研究所長の意見発表が行われた。
     科学技術庁無機材質研究所長         田中 広吉
     農林水産省熱帯農業センター所長       岡部 四郎
     通商産業省工業技術院電子技術総合研究所長  中島 達二
     郵政省電波研究所長             田尾 一彦
以下に述べるのは当日行った私の意見発表の講演の概要である。

 本日は森先生を始め既に三人の所長さん方から“試験 研究活動と創造性”についてそれぞれのお立場から貴重 な御意見の発表が御座いました。非常に難しいテーマな のでどういう点に焦点をしぼったらよいかとまどいまし たが,私なりの意見の発表をさせていただきたいと存じ ます。
 研究者はその知的創造活動によって自然の調和を見出 し,あるいは科学技術の革新を通じて人類社会の福祉の 向上に寄与するよう努力しなければならないと思います。 それら研究者の集団である研究所も研究者が十分彼等の 創造性を発揮出来るような研究管理を行うことが大切で あります。秀れた創造的な研究を行うためには次の三つ の基本的な条件が必要であると思われます。
    (1) 人材  (2) 知識  (3) 環境
(1)の人材は研究者自身の素質ともいうべきものであり, (2)の知識は後天的に教育や研修による自己研鑽によって かちとられるべきものであります。(3)の環境は研究を遂 行する場合の組織,研究費,指導者等を含めた問題であ り,私のコメントではこの問題の中で特に組織について 取りあげてみたいと思います。
 研究活動と創造性を論ずる場合,研究活動の自由性に ついて考えてみる必要があります。研究者の知的活動は 一般業務にたずさわっている人達と違って時間的に拘束 されるべきではないし,研究のプロセスによっては通常 の勤務時間外に行われることも数多くあります。このよ うな点については大学関係の研究者は教育公務員特例法 によって研究テーマの選択及び勤務時間等に関し,かなり の自由度が認められています。しかし研究公務員の場合, 現在は一般公務員と同じ勤務体制がとられており,研究 テーマについても各省庁で多少の違いはあるにしても, 一応国立の試験研究機関として取りあげる領域があり大 学のように自由に好きなものを選択するわけには行きま せん。限られたわく内で、如何に自由度を保つかというこ とが必要になります。従って国立試験研究機関としては 社会のニーズに対応して科学技術のシーズを育てるよう に基礎研究の面において創造的な研究の芽を育成するこ とが大切であると思います。勤務体制等についても自由 度を考慮すべきであるとする研究公務員特例法が一時直 研連でも論議されたことがあったようでありますが,研 究部門だけでの機関の場合はよいが,試験的なルーチン 部門を持っている機関では研究とサービス業務との両者 の調和を保つことが難しいと考えられますので上記特例 法の実現は難しいと思われます。
 試験研究活動は日進月歩で進展しております。従って 科学技術の進歩発展の時間的変化との関連で研究機関の 組織を考える場合,我が国の現状では研究開発の進展の ために作られた組織が,ある時点では最も望ましい機能 と構造を持っていても,研究活動の時間的推移の方が早 いため,やがてその組織が固定化されて機能を失いがち になる場合が多々あるような気が致します。先程御説明 のありました無機材質研究所のような比較的新しく設立 された研究所は例外として,現在殆どの国立試験研究 所においては部,課,室制の官庁組織制度が採用されて います。いわゆる“縦割り”組織であります。責任体制 を明確にし命令や指示系統を明らかにするという点では 非常によい組織でありますが,研究開発活動と官庁組織 制度との適合性についてはかなり問題点もあるという考 え方もあるようであります。最近のように専門が細分化 し境界領域の研究分野が増えてくる一方,大型の研究プ ロジェクトが増えつつあり,学会のみならず同一の研究 所内でさえも一つの研究部で処理出来難い研究プロジェ クトが増加してきております。このような場合この“縦 割り”組織では共同研究体制がとり難いという弱点があ ります。しかし日本の現在の組織制度では機動性をもっ て常に研究活動に呼応するように組織を自由に改廃して 対処することは困難な状況にあります。一たん作られた 組織は数年あるいは10年以上にわたって継続し,新しい 組織要求もなかなか認められないのが現状であります。 その結果,新しい研究開発分野の創造やあるいはインタ ーディシプリナリーな分野の研究の進展に阻害を与える 危険性をはらんでおります。それではそれを解決するに はどうしたらよいかということになりますが,多くの場 合既存の組織はそのままにして特定の研究プロジェクト を目的としたインターディシプリナリーなタスクフォー ス的な研究プロジェクト制度がとられることになります が,これも運用に気を付けないと機能を十分発揮するこ とが出来ない危険性があります。
 次に電波研究所で採用している大型研究プロジェクト についての体制を事例として申し上げたいと存じます。 電波研究所でも宇宙開発に本格的に取り組むようになり ましてからこれに関連する大型研究プロジェクトが増加 致しました。勿論組織として衛星関連実験を担当する部 は存在しておりますが,大型研究プロジェクトのためコ ンピュータの大量使用を始めデータ解析等関係する他分 野の協力を必要とするようになり既存の組織だけでは研 究並びに実験推進には不十分となってきたため,所内に 実験計画や実施,あるいは研究推進のための本部を設立 して関連分野各部の協力を得ながら研究活動を進めてお ります。本部長には指示系統の混乱を防ぐために大型研 究プロジェクトに最も関連のある研究部長を任命し,予 算面での権限も与えて運用をし易くしてあります。
 比較的規模の小さい研究室単位で実施している研究プ ロジェクトに関しては自由度もかなりあり研究の創造性 を推進出来る環境が保たれていると思われますが,大型 の研究プロジェクトの場合に創造性を如何に醸成するか ということが問題であります。元来創造性というのは自 己主張であり個性的なものであります。大型研究プロジ ェクト推進のためには多くの研究者の協調が必要であり, その中において元来個性的である創造性を生み出して行 くためには研究管理面でも考慮しなければならない問題 であります。電波研究所では研究者を大型研究プロジェ クトに参加させる場合,エクスペリメンターとして研究 者自身の研究プロジェクトが全体的な大型研究プロジェ クトに調和するよう,換言すれば大型研究プロジェクト 推進の一環として各人が研究プロジェクトを遂行して創 造性が発揮出来るよう配慮しているつもりであります。
 試験研究活動と創造性という難しいテーマでありまし たが,組織面での機動的な運用と大型研究プロジェクト における各研究者の創造性の活用という点について,電 波研究所内での運用を述べて私の意見発表を終わりたい と存じます。




衛星利用コンピュータネットワークの調査


岡本 裕允

  はじめに
 科学技術庁中期在外研究員として,昭和54年9月1日 から9月27日まで,英,仏,加,米の4か国11機関を訪 問し,標題について調査する機会を与えられたので,そ の概要を報告する。
  調査の目的
 現在当所は,昭和52年12月に打ち上げられた,実験用 中容量静止通信衛星(CS,さくら)によって,基礎的 な衛星通信実験を実施し,着々と世界に誇るべき成果を 上げつつあるが,これに続くCS実験として,20/30GHz 帯によるコンピュータ・ネットワーク実験の実施を計画 している。
 この衛星を利用したコンピュータ・ネットワークは, 地域的に離れて設置された独立の機能を持つ複数のコン ピュータ間を,地域的に平等性を持ち,かつ多量の情報 伝送能力のある衛星回線で結ぶことによって,僻地を含 む広い地域からのコンピュータ利用を可能にし,同時に, 各々のコンピュータ資源の利用効率と信頼度の向上を図 るものである。
 このため実験の開始に先立って,衛星を利用したコン ピュータ・ネットワーク及びその関連技術である,パケ ット交換網や各国の国内通信衛星システムについて調査 を行った。
  訪問した機関
 成田を夜たって,アンカレッジ経由,マウントバッテ ン伯の死を悼む半旗の翻るロンドンに早朝に到着。ロン ドンでは,英国郵電公社電気通信本部で,1980年春の実 運用を目指して実験が続けられているパケット交換網 (EPSS)及びヨーロッパ地域通信実験衛星(OTS)の 実験内容等について調査し,我々の実験について討論し た。
 ロンドンの下町は,英国病などという言葉とは裏腹に, 言い知れぬ活気が渦巻いていた。聞くと,オイルダラー が集中しているのだという。真偽はとも角,先入感と第 一印象は全く食い違った。
 フランスでは,パリの南西部にある国立電気通信研究 センタ(CNET)と同ゴメツ地球局並びにモンパルナス のトランスパックを訪問した。ゴメツ地球局は,田園風 景に囲まれた小さい実験局で伝搬データを蓄積していた。 トランスパックは,パリ第一の高層ビルの29階に位置し, パリ全市を一望のもとに見下ろして絶景であった。ここ でフランスの国内公衆パケット交換網トランスパック等 を調査し,CNETでは,1983年の打上げを目指し開発中 の国内通信衛星テレコム-1のシステム内容について聞 いた。
 イギリスでもフランスでも,我々のCS実験に強い関 心を示し,特に地球局施設の低雑音性能については詳細 を知りたがった。
 パリから大西洋を横断し,モントリオール経由でそろ そろ紅葉しかかったカナダの首都オタワに入る。街全体 が新品といった印象。
 オタワでは,中心街にあるカナダ通信省,テルサット・ カナダ,トランス・カナダ電話システム及び西の郊外に ある通信省電気通信研究センタ(CRC)を訪問した。当 所に滞在された,通信省のロスコー氏の根回しの良さも あって,連日担当者と共通の話題について討論が続けら れ,両国の背景の違いを認識するとともに,カナダの実 用化と密接に結びついた宇宙開発に強い感銘を受けた。
 米国では,ワシントンの連邦通信委員会(FCC)で, 我が国にも知人の多いディクソン氏が手配された方々と 討論できた。またその西北郊外のコムサット研究所を訪 問し,同研究所の衛星を利用したコンピュータ・ネット ワーク実験について調査した。コムサット研究所の隣接 地には,SBSが主管制局の整地を行いつつあった。また その後,スタンフォード大学にトバギ教授,ハワイ大学に アブラムソン教授を訪問し,我々の実験計画についての 意見を聞いた。
  おわりに
 以上の各機関を訪問し,多くの方々と面談した結果, 衛星を利用したシステムは,地上の既設通信網から切離 し,独立に運用することによってその拘束から解放され, 逆に衛星通信の持つ特長である伝送路の広帯域特性,地 域的広域性・平等性等の接続の自由さ,分散局に対する 同報性等の諸メリットを十二分に生かすことになるとい う結論に達した。このシステムを発展させるためには, 衛星の大電力化,高性能で安い小型局の実用化,プロト コルの標準化等の開発努力が必要である。
 最後に,このような機会を与えられたことに対し,関 係の各位に深甚の謝意を表する次第である。

(情報処理部長)




IAF会議に出席して


林理三雄,小坂 克彦

  はじめに
 第30回のIAF(International Astronautical Federation, 国際宇宙航行連盟)大会は,西独ミュンヘン市で,1979 年9月16日から9月22日までの間開かれた。我々は,CS, BS及びETS-Kを含む各衛星実験の結果に関する発表 を主目的として参加する機会を得た。過去何回か当所か らも参加しているが,電気及び通信関係者には,まだな じみが薄い感があるので,簡単に紹介しておく。
 IAFは非政府機関による各国の社会及び技術,また多 角的に宇宙空間の問題を取り扱う協議機関で,1951年設 立され,現在は,35か国57のメンバー(団体)が加入し ている。国際連合の宇宙空間平和利用委員会の正式オブ ザーバーでもあり,パリにその本部が置かれている。我 が国からは,航空宇宙学会,日本ロケット協会,経団連 宇宙開発推進会議の三団体が加入している。
  会議の内容
 会議は17日午前の開会式に始まり22日まで6か所の会 場に分れて,49のセッションが開かれた。論文総数は454 件であるが,講演中止のものもかなりあり,実際に報告 されたものは約80%と推測される。
 開会式では,ドイツ宇宙航行学会の会長,ババリア州 知事,ミュンヘン市長等が挨拶し,報道関係者も多数取 材していた。その挨拶の中で,印象的であったのは,人 類が直面する問題を解決するためには,技術革新が不可 欠であり,昨今よく耳にする“Return to Nature”では 前進がないと強調していた事である。
「ミッションモデルと宇宙計画」と題するフォーラムで は,討論に熱を帯びて来ると,英語での討論のはずが, ドイツ語,フランス語等が入り混って,我々には,まる で判らなくなってしまう事もしばしばであった。主な テーマは
 1. ふくそうする通信量をさばくための周波数計画の 必要性
 2. 軌道上の不要衛星除去の問題
 3. 衛星を含めた宇宙空間飛翔体の衝突問題
 4. 宇宙利用に関する法体系
等で,これ等のテーマに対する国際協力が主問題であっ た。要はこれまでの,野放しの宇宙開発に対する警鐘が 議論の目立った対象であったと感じた。
 我々が出席出来た,通信関係セッションでの内容につ いて言えば,全体としての印象は,宇宙飛翔体に関して は,多目的大型化を目指し,地上局系は,小型簡易化を 目指したシステムが多いように感じた。内容を大別すれ ば,(1)運用システム(固定衛星システム,海事衛星シス テム),(2)実験システム,(3)将来システム等の三つに分類 出来る。(1)の例は,小型地球局とCATV網との接続シス テム(米国内ではすでに1500以上のCATV網が稼動中 との事),新聞印刷のための衛星経由FAX伝送用の小型 地球局システム等,(2)では,カナダの直接TV放送システ ム,IBM及びCOMSATからのコンピュータ通信システ ム,アラスカでの衛星通信システム等である。(3)に関し ては,フランスのビジネスサービス用国内衛星システム, 西独の低レベル送信で十分な画質の得られるディジタル TV放送システム,米国の多目的使用大型静止衛星プラ ットフォーム,フランスの2000年代マルチセル構造衛星 等が上げられる。
  会議へ出席しての印象
 会議の主な会場は,ドイツ博物館であったが,我々の 発表はそこから少し離れたPenta Hotelで9月19日の午 前中に行われた。実験結果を主にして発表したが,反響 は大きかった。CSについては,スピンモジュレーショ ン,降雨減衰の影響はどうか,またBSについては,姿 勢の保持精度は,本当に実用放送を行うのか,音声放送 はどうかの質問があった。また伝搬関係では,サイトダ イバーシティ効果,クロスポーラリゼーション劣化等に ついて質問があったが,会議の性格上,通信部門は比較 的層が薄く,参加者も少なかった様に感じた。また発表 も計画についてのものが多くを占めていた。我々は会議 の全期間の出席が出来ず,21日にはミュンヘンを後にし たが,会議出席者数は,約500名/日と推測される。
 日本からミュンヘンへは,大韓航空で,ソウル→アン カレッジ→パリ(オルリー空港→ドゴール空港)→ミュ ンヘンと,複雑なコースで向かった。パリでは,飛行機 待ちの時間を利用して見物もしたが,日本語はもちろん, 英語がまるで通じないのには困惑した。ミュンヘンは静 かな学園都市の感じで,市民も親切であった。また,ビ ールの町でもある。9月23日からビール祭りとの事であ ったが我々にはその期を逸したのが残念に思える。しかし, 会議後のビヤホールで“軍艦マーチ”,“上をむいて歩こう” の演奏が始まったのには驚きもし,喜びもした。周囲の ドイツ人も喜び,肩を組んだり,握手をしに来たり,お おらかなお国振り,経済力等の背景を何となく感じた。
  おわりに
 関係各位の援助及び協力を得まして,このIAF会議に 参加し,発表出来ました事をここに感謝致します。

   (衛星通信部 第一衛星通信研究室長)
(鹿島支所 第二宇宙通信研究室主任研究官)


短   信


東海地震防災訓練にCS,BSが参加

 さる11月16日,東海地方に巨大地震の警戒宣言が発令 されたという想定で,大規模地震対策特別措置法に基づ く第1回の総合防災訓練が行われた。これは国土庁中央 防災会議が中心となり,関係省庁や静岡県などが参加し て行われたもので,郵政省は,電電公社,NHK,宇宙 開発事業団の協力を得て,同日午前7時から12時まで, CS(さくら)及びBS(ゆり)を使った防災訓練を実施 した。
 これは,大規模地震等の非常災害時における通信の確 保及び被災状況等に関する情報の的確かつ迅速な伝達に, 通信衛星及び放送衛星を利用することは極めて有効であ ると考えられるところから,非常災害時におけるこれら の利用に関する技術的問題点を把握し,その有効性を確 認するとともに,あわせて防災関係者の理解を深めるこ とを目的として行われたものである。
 CS実験では,準ミリ波車載局を地方対策本部(静岡 県庁)に設置して,CS−CS副局(横須賀通研)−地上 回線を経由して中央対策本部(国土庁)や被災地域と結 び,通話試験を行った。BS実験では,鹿島のBS主局 と,被災訓練現地(焼津市)に臨時に設置した可搬B型送 受信局とで交互に現地の状況や中央対策本部の模様を送 信し,関係各所に配置された簡易受信装置で受信した。
 CS,BSを使った始めての防災訓練であったが,所期 の成果を上げ無事終了した。



「ふじ」南極へ出発

 昭和54年11月21日,第21次南極地域観測隊43名は観測 船「ふじ」で秋も深まる晴海埠頭から南極に向け出港した。 今回は西オーストラリア入植150周年の記念式典に「ふ じ」が参加するため,例年より4日早く出港した。当所 からは野崎憲朗研究官が電離層定常観測担当の隊員とし て参加している。予定通りゆけば正月には昭和基地に到 着して第20次越冬隊から観測を引き継ぐことになってい る。従来通りの電離層定常観測の他にオメガ電波受信測 定,昭和基地とみずほ基地間のVHF散乱波通信テスト・ リオメータ吸収と地磁気脈動の相関観測等を実施する予 定であり,また新たに人工衛星テレメトリ受信として気象 衛星タイロスN用の装置を設置する。テレメトリ受信担当 者が電気通信大学から参加したので今回の当所からの参 加は1名となった。さらに航空機2機(セスナ,ピラタ ス)を越冬させ,航空写真,磁気測量に加えて床縁の監 視,アイスレーダによる大陸氷厚測定,やまと,セロン ダン山脈の偵察等大型のオペレーションを計画している。




直研連共通問題研究会の開催

 各省直轄研究所長連絡各協議会(直研連と略称・代表幹事 田尾所長)は,11月13日番町共済会館において昭和54年 度共通問題研究会を開催した。
 会議では,直研連に加入している国立試験研究機関90 機関のうち67機関の研究所長,試験所(場)長等のほか, 人事院及び科学技術庁からの来賓,オブザーバーを加え 総数101名の参加者によって活発な討議が行われた。
 会議は,先ず全体会議においで田尾所長が経過報告等 を行った後,分科会に分けて議事を進めた。
 第1分科会においては「国立研究機関の使命と使命達 成上の問題点」について,6人の研究所長からの所見発 表を受けて討議を進め,また,第2分科会においては「処 遇改善と人材の確保(筑波移転手当問題を含む。)」につ いて討議を行った。その後,再び全体会議を開いて各分 科会の座長が討議の総括を行って閉会した。



「ゆり」による標準層波数供給実験

 周波数標準部では衛星による時刻,周波数標準供給方 式の実用化研究の一環として,昭和55年度に実験用中型 放送衛星「ゆり」を用いた実験を予定し,準備中である。
 その予備実験が,11月12日から17国まで鹿島主局にお いて実施され,同時に本所,北海道大学及び水沢緯度観 測所での受信測定も行われた。
 地上放送網でのテレビ信号を高精度な標準供給に利用 する方法は,当所での研究開発を契機に,すでに国内に 普及しているが,これを衛星からの信号によってより高 精度化しようとするものである。
 今回の予備実験では,主として標準周波数の供給精度 として問題になるドップラー周波数シフトを補正する送 信方式のテストが実施された。現在,データを解析中で あるが,高精度の補正が可能であることがほぼ確かめら れ,この結果は本実験での制御方式に活用される。