新 年 の ご あ い さ つ


所長 理博 田尾 一彦

 新年明けましておめでとう御座います。激動の70年代 が終わり新しく80年代の第一歩を踏み出すにあたり,職 員の皆様の新しい時代への御発展と御多幸を祝福すると 共に,部外の関係各位に対しましては本年もまた相変ら ずよろしく御支援の程お願い申し上げる次第であります。 年頭に際し所感並びに研究所が本年進むべき方向につ いてお話したいと存じます。
 新しい80年代の幕明けになったわけですが,私達を取 り巻く世界情勢及び国内情勢,特に経済環境はまことに きびしいものがあります。我が国の社会経済はかつての 高度経済成長時代から新しい安定成長時代への移行期に ありますが,社会経済の重要な基盤作りの役割を果たし ている科学技術に村しても,単に経済的成長の確保のみ ならず環境保全,安全確保,代替エネルギー開発等多様 な要請が昭和54年版の“科学技術白書”にも述べられて おります。60年代は高度成長の経済政策に支えられて科 学技術も著しく発展しました。
 70年前半に生じたドルショック及び石油ショックをき っかけとした経済不況の中で,科学技術に対する不信が, 特に原子力問題や環境問題に対して生じ,事前評価いわ ゆるテクノロジーアセスメントが叫ばれるようになって きました。私達に関係の深い宇宙開発の分野においても 同じような傾向がありました。60年代は米国とソ連が国 威をかけて競争した月探査計画に見られるように巨額の 経費をかけた宇宙開発が行われたわけですが,70年代に 入ると宇宙の利用をもっと人類の福祉のために役立てる べきであるという反省から,私達が住む地球の環境や資 源等の見直し,天気予報,通信・放送等実生活の利便の ための宇宙開発へと大きな転換が計られ今日に至ってお ります。
 我が国は第二次大戦以後の急速な経済的発展に呼応し て諸外国から新しい技術や情報を導入し,今日では世界 の先進国に伍して遜色の無い科学技術を持っております が,過去における技術開発への道は残念ながら外国技術 の導入を基としたものでありました。しかし10年程前か ら我が国でも自主技術の確立が叫ばれ始めました。その ためには,模倣から創造へと転換を計らなければなりま せん。昨年11月中旬に開催された全国国立試験研究所長 会同において“試験研究活動と創造性”というテーマで 討論が行われ様々な意見が交換されました。創造性は天 分によるもの,教育や知識によって向上出来るもの,環 境によって左右されるものであると言われております。 天分によるものは個人の素質で先天的なものであるから 致し方ありませんが,知識は努力によって得られるもの であり,また絶えず注意深く事象を観察し好奇心を持っ て疑問点を探し出すことによって創造性を涵養すること が出来ます。様々な分野の広い知識を吸収することも必 要であります。他分野で用いられている考え方なり手法 を自分の専門分野に応用した場合思いがけない効果をあ らわし難問解決の糸口になる場合もあり得るのでありま す。
 80年代を迎えてますます多様化する社会のニーズに対 応して当所も国立研究機関の一つとして科学技術のシー ズを育てるような基礎研究の面において創造的な研究を 育成することが大切だと思います。それと同時に最近は 大型プロジェクトに関連して開発的要素を含む研究も増 えてきましたが,そのような分野においては最終的なシ ステムを作り上げて行く総合性といった広い意味での創 造牲も必要であります。鹿島支所を含めて特に衛星関連 の実験結果に対してかなり多数の研究発表が報告され研 究の活動度が高まっていることは大変喜ばしいことであ りますが,内容を十分吟味して質の高いものにしていた だくことを希望致します。
 次に具体的に研究所が本年に進むべき重要研究プロジ ェクトについて昨年末大蔵省から内示を受けました昭和 55年度予算を考慮しながら述べてみたいと思います。
 先づ第一に私達が多大の期待を寄せて居りますのはミ リ波通信の実験的研究を行うためのECS-bの打上げで あります。御承知の様に昨年2月6日に打ち上げられまし たECS〔あやめ〕は打上げ後間もなく第三段切離しの際 に不具合が生じ受信不能になってしまいました。その後, 宇宙開発事業団による不具合の詳細な検討が行われ,そ の結果をふまえて宇宙開発委員会により本年2月5日の ECS-b打上げが決定されました。ミり波はその特性上 広帯域かつ大容量通信並びに鋭いビーム特性を持つアン テナの開発が可能であり,近い将来の衛星通信に有望な 周波数でありますが,降雨等の気象条件によって伝搬特 性が著しく影響を受けます。当所では鹿島の主局と共に 平機に副局を設け,降雨時におけるサイトダイバーシティ の実験を行い,実用通信に対する対策技術の確立等の 利用実験を行うべく,万端の準備を整えて打上げに対処 して居ります。
 次にCS及びBSについてでありますが,打上げ以来 CSに関しては2年,BSについては1年9か月が経過 し,実験実施手順書に従って実用衛星通信システムを確 立するために必要な伝送,運用,管制等に関する基本的 な実験資料が得られており,それぞれ膨大な内容の実験中 間報告書がNo.2迄宇宙通信連絡会議開発実験部会に報告 されています。本年はそれら衛星寿命の最終段階として 外部機関も参加した応用実験が実施されることになって います。小型地球局を用いた小規模ユーザによる利用に 関する運用及び技術上の問題点を研究するためCSを利 用したコンピュータネットワークの実験も開始されます。 この実験は基本実験として鹿島の主局に対して山川電波 観測所が参画することになります。BSについては基本 実験として降雨散乱実験,応用実験として標準時刻及び 周波数供給システムの実験が予定されております。放送 衛星の上り回線に使用される14GHz帯の周波数は地上業 務と衛星業務とで共用されているので,地球局から衛星 に向けて発射される大電力の電波が降雨散乱によって地 上回線に与える干渉が大きな問題になります。この影響 を調べるための実験がBSを用いて鹿島支所と犬吠電波 観測所で実施される予定であります。当所は現在短波帯 の電波を用いて標準電波のサービスを行っておりますが, 科学技術の進歩と共に更に高精度の時刻及び周波数標準 が必要になってきております。BSを利用して高精度の 上記技術の研究開発を行い衛星による世界的時刻供給シ ステムの確立を計る必要があります。この実験には本所 以外に水沢の緯度観測所,北海道大学,鹿児島大学等の 参加も予定されています。このようにCS,BSも基本実 験の間はNASDA,NTT,NHK等が関係する外部機関で ありましたが,応用実験の段階になりますとこのほかに 各省,庁,大学等との共同実験という形をとるようになる と思います。これらのプロジェクトに参加される職員は 電波研究所の主体性を忘れることなく,ある場合には可 成りのサービス精神をもって関係機関と接触することが 必要であろうと思います。
 航空・海上技術衛星(AMES)のための先行研究とし て昭和54年度は衛星通信用小型船舶通信装置及び模擬衛 星装置の研究開発を行ってきておりますが,本年も更に 将来のAMES計画を目指して高出力増幅器や航空機設備 の研究,海上電波伝搬の実験を中心とした研究が行われ る予定であります。
 このきびしい財政下にあって昭和55年度予算において 衛星用マルチビームアンテナの研究開発が新規項目とし て認められたということは注目すべき事柄でありまして, この技術は将来の移動体通信,衛星間通信に不可欠な基 礎技術でありますので十分研究していただき度いと思い ます。
 以上衛星通信に関連した事柄について述べましたが, 通信と並んで電波の有効利用の重要な分野である電波計 測の面についてふれてみたいと思います。電波の研究に はその広域性及び速達性という特性からも国際協力が必 要であリます。従来からも当所では宇宙通信に関しては 米国と,電波伝搬については米国やオーストラリアと共 同実験を行ってきましたが,特に電離層観測衛星に関し ては数年末カナダとの間に緊密な協力体制がしかれ,昨 年10月下旬には当所においてISS-b並びにISISに関す る日加作業班会議を開催しお互に研究成果並びに情報の 交換を致しました。
 米国のNASAとの間の協力関係につきましては,衛星 通信の初期の時代にRelay 2,Syncom 3及びATS-1 等の衛星を利用した宇宙通信のパイオニア的実験研究が 行われ,1976年にATS-1の実験終了と共にここしばら く関係が薄くなっておりましたが,80年代を迎えて再び 新しい協力関係が生まれてくる可能性があります。一つ は米国が80年代の中頃に打上げを予定している金星周回 衛星計画であります。これは,NASAがISS-bの成果に 着目してISS-bに搭載したトップサイドサウンダーを金 星周回衛星に搭載し金星の電離層を探測しようという計 画であります。その為この計画を,日,米,加の国際協力 プロジェクトとして進めたいという要望があり,当所と してはNASAのプロジェクト参加公募に対しプロポーザ ルを出している現状であります。この研究計画は当所が ISSに続けて宇宙電磁環境の計測を行うものとして考え ている電磁環境観測衛星(EMEOS)計画とも密接に関 係を持つ計画であります。他の一つはVLBI (Very Long Baseline Interferometer)の研究であります。これは, 一昨年以来3回にわたって行われた“宇宙分野における 日米合同調査計画専門家会議”の審議結果をふまえて, 昨年9月に東京において米国側からプレス科学技術担当 大統領特別顧問,フロッシュNASA長官等を迎えて非エ ネルギー分野における“科学技術研究協力に関する日米 会議”が開催されましたが,その日米共同研究の合意項 目の中の一つとして取り上げられたものであります。 VLBIについては既に昭和52年鹿島支所と横須賀電気通 信研究所との間で予備テストが実施されましたが,1983 年に予定されている日米間の地殻運動に関する共同実験 に備えて精度の向上を目指した準備を行うことが必要に なってきました。このような観点から再びNASAとの協 力体制がつくられつつあります。この他平磯支所のチャ ープサウンダーについては現在行われている西独マック スプランク研究所のほかに英国のレスター大学との間で も共同実験を行う計画が進んでおります。
 リモートセンシングに関する世界的な研究の進展に呼 応して当所としても衛星,地上を問わずまたレーザや音 波を含めてあらゆる周波数帯での研究を促進し電磁波の 有効利用を計り社会の福祉にも役立つ基礎研究を進めな ければなりません。80年代にはエネルギー問題は益々多 様化し代替エネルギーの研究も盛んになることと思いま す。当所としてもマイクロ波による電力伝送等は将来問 題として考える必要があります。
 世界無線通信主管庁会議いわゆるWARC-79も終わり, その結果をふまえて当所としても今後周波数資源の開発 に取り組まねばなりませんが,既利用周波数帯における スペクトラム拡散地上通信方式並びに未利用周波数帯の 40GHz以上の電波伝搬の研究は,長期的な展望に立った 周波数の効率的割当計画に対する技術基準を確立するた めの研究でありますので、電波監理局とも十分な協力体 制をとりながら研究を進めて行く必要があります。
 本年は財政再建の第一年といわれますように私達を取 りまく財政事情は誠にきびしいものがあります。また人 員面においても公務員の第五次削減計画も実行されよう としております。このように予算並びに人員の両面にお いて枠がきびしく限られておりますが,出来るだけの成 果をあげるよう努力していただきたいと思います。昨年 は不幸にも三人の職員を病で夫いましたが,どうか本年 は職員の一人一人が健康に注意され,きびしい情勢下で はありますが希望をもってそれぞれの職場で活躍される ことを祈って新年のごあいさつと致します。




CISPRハーグ会議に参加して


杉 浦  行

 昨年5月4日から16日までオランダ国ハーグ市におい て,21か国から154名の代表が出席して,各種装置から 発生する妨害波の測定法及び許容値を検討する国際無線 障害特別委員会 (Comite International Special des Perturbations Radioelectriques, 略してCISPR)が開 催された。今回の会議には日本から10名もの代表が参加 し討議に加わることができた。CISPRの目的は,無線妨 害に関する国際的合意を促進し国際貿易を助長するため に,各種電子電気機器,点火装置,電力供給系,工業・ 科学・医療用装置,ラジオやテレビジョン放送受信機な どから生じる妨害波の測定法及び妨害波の許容値の検討 を行うことである。さらに,ラジオやテレビジョン受信 機の妨害排除能力(Immunity)に関する検討も行ってい る。この会議には特にEC諸国が積極的に参加しており、 国内規格としてCISPR規格を取り入れているため,これ らの国々に電気製品等を輸出している我が国でも関係各 機関がCISPRの動向に注意を払うようになってきた。
 会議が開かれたハーグ市(Den Haag)は首都アムステ ルダムから南西約60qの地点にある人口約60万の公 園の多い静かな町で,オランダの政府官庁や各国大使館 が集まっている政治都市である。また,国際司法裁判所 になっている平和宮もハーグにある。会場には,繁華街 から少し離れた中央駅(鉄道)近くのPTTビルディング 9階の国際会議場があてられ,その二つの大会議室で, 小委員会や作業グループがいつも開催されており,別の 会議室で運営委員会も開かれた。さらに今回は3年ごと の総会も開かれ,CISPRの規約等の審議もなされた。 CISPRの会議は殆ど毎年開かれているが,1年間に提出 される文書の数は非常に多く,2週間でそれらの文書を 詳しく審議するのは困難で,今回も重要な項目について のみ時間をかけて討議がなされた。また1年毎の会議で は時間が不足するため,半年後に会議を開くことに決め た小委員会もあった。期間中は朝9時半から夕方の5時 半まで熱心に討議がなされ,しばしばコーヒー・ブレイ クや昼食時にも作業グループが開かれることもあった。 また,各国の代表は中央駅近くのホテルと,会議場から バスで30分も離れた海岸寄りのホテルにまとまって宿泊 したため,ホテル内でも各国代表と顔を合わすことにな り,食事の時などにも情報交換をして友好を深めること ができた。
 今回も六つの小委員会で妨害波の測定法や許容値に関 する多くの議題が審議されたが,これらの詳細は既に電 波技術審議会第三部会に報告書として提出してあるので, ここでは今会議についての筆者の感想を幾つか記すこと にする。毎回の事ではあるが,今回も代表者総数の四分 の三をヨーロッパ勢が占めており,これらの国々から提 出された文書が圧倒的に多かった。日本からも幾つかの 文書を提出したが,経済大国と言われるわりには貧弱で あった。ヨーロッパ諸国と日本とではCISPRに対する関 心が違うが,我が国も今後一層積極的にCISPRに寄与す る必要があると思われる。また今会議で家庭用電気機器 の許容値を緩和する案が,アメリカ,日本,ドイツ等か ら提出されたが,この案に関して家電工業が栄えて製品 を輸出している国とそうでない国との意見の対立が厳し く,結局緩和案は通らなかった。今後緩和案を各国に認 めさせるには,製造上困難であるという理由の他に,緩 和しても無線通信に影響を与えない事を示す具体的な資 料を提出する必要があると思われる。
 今度の総会で次回のCISPR会議を日本で開く事に決 定した。現在関係各機関が本年7月の東京開催に向けて 準備をしているが,各国の代表も東京会議を心待ちして いるようであった。


ビネンホフ(Binnenhof)

 終りに今回のCISPR会議に出席する機会を与えて下 さった所長及び幹部の方々に深く感謝致します。

(通信機器部 標準測定研究室主任研究官)


短   信


天然資源の開発利用に関する日米会議(UJNR)
地震予知技術専門部会第1回合同部会の開催

 日米両国間の地震予知技術の研究協力を進めるための 第1回合同部会が12月17日,111日の両日,竹橋会館にお いて,米国側からヒル部会長(地質調査所調査部長)を はじめ総勢5名の代表が,日本側から佐々木部会長(国 土地理院長)以下国内委員10名が出席して開催された。 当所からは川尻室長(委員)及び中島主任研究官(オブ ザーバー)が出席した。
 会議では日米両国諸機関の地震予知における役割, 地震予知のための監視体制及び地震予知研究の現状につ いて,日本から9件,米国から8件の発表があり,これに ついて討議した。当所に関係のある宇宙技術を利用した 地震予知については,米国測地局のジョン・ボスラー博士 から,簡易な地上設備を数千個配置する GPS(Global Positioning Satellite)利用の測距システムにより数百 qの距離を1〜3pの精度で測る目途が得られたこと, また,1980年代中頃迄に24個のGPSが打上げられること 等が報告された。米国航空宇宙局のフリン博士は,宇宙技 術としてレーザレンジング,電波星利用のVLBI及び GPS利用の測距システムに言及し,Geodynamicsの研究に は地球規模での観測が必要で現在24か国と協力の話し合 いを進めており,当所とのVLBI協同実験の重要性を強 調した。
 18日午後は本会議のまとめを討議し,次の4項目の決 議を採択した。即ち(1)両国研究者の長期問の交流が重要 である。(2)データ交換は相互に有益であり研究の促進に 寄与する。(3)宇宙技術を利用して地殻プレート運動,極 運動,地球自転を決めることは重要であり,地殻変動を 地域的に監視するための宇宙技術の利用は今後この部 会で取り上げる。(4)次期合同部会は1981年に米国で行う。
 以上短期間の会議であったが極めて能率良く討議され, 所期の目的を達成して閉会した。



SOLAS条約発効への準情進む

 1974年海上人命安全条約(1974SOLAS)は,昨年5 月24日,ルーマニアが第25番目の締約国となったことに より,規程によって本年5月25日に発効する。この条約 は1914年,「タイタニック号事件」を契機に,当時の先 進海運国が海上における人命の安全を確保するために, ロンドンで採択したのが最初である。現行の条約は, 1960SOLASと呼ばれ今回の改正は4回目である。船舶の高速 化,大型自動化に加え,タンカー,液化ガス運搬船,原 子力船等の出現に対応して,船舶の安全に関する新たな 国際統一を目指して行われたのが,今回の改正である。 電波関係では,無線電話の遭難周波数(2182kHz)によ る電波の到来方向を知るための無線装置(ホーミング装 置),警急自動電話装置(電話用オートキーヤー),レー ダー装置等の設置及び2182kHzの無休聴守が義務づけら れることによって,事実上,無線電話警急自動受信機 (2182kHzオートアラーム)の設置が強制されることになる。 さらに,主管庁が必要と認めたときは,その領海を航行 する船舶はVHF帯の無線電話装置を設置しなければなら ない。
 ホーミング装置の設置は,条約発効後建造する船舶か ら適用される。一方,レーダーは,既に国内、法上の措置 によって事実上,ほとんど要件を満たしている。
 以上の関係から,当所の型式検定業務が,急ぎ対応を 迫られることになったのは(本ニュースNo.42及びNo.43参 照),2182kHzオートアラームの型式検定の実施であった。 昨年7月4日,この技術基準を定める関係省令が改正公 布され,同10月15日,8社のメーカーから受検の申請が あった。事前に予備調査を実施し,指導を行ったことも あって,ほぼ満足すべき基準に達しており,試験の結果 は何れも良好で,8社の申請第1号機は,同11月21日に 合格した。
 義務聴守など,法改正を要する部分については,去る 第90国会において電波法改正が成立し,これをうけて必 要な省令の改正が進むことになった。ホーミング装置の 型式検定開始の準備も,省令改正に合わせて,今後進め られていくことになる。



CCIR等対策委員会の設置

 CCIR対策委員会は,昭和44年に設置されて以来,当 所からCCIRに関して寄与する事案の審議を行ってきた。 しかし,最近,例えば電波技術審議会の第一部会 (CCIR担当)以外の各部会に対する寄与,あるいはWARCな ど関連会議に対する事案の検討に関して,所として十分 な調整・審議を行うための場がなく不都合が生じてきた。 そこで,これらの問題と最も類似性のあるCCIR対策委 員会の設置要綱を改正し,その名称をCCIR等対策委員 会と改め,本来のCCIR関係事案に加えて,上記問題等 についても審議を行えるよう所掌の拡大を行うこととな った。このような制度の充実により,徒来,見落とされ がちであった分野への寄与に対する当所としての責任の 明確化はもとより,関係者の活動,業績の把握も容易と なった。



一般的問題を取り扱う世界無線通信主管庁会議 (WARC-79)終わる

 WARC-79の開催については,本ニュースNo.44に記載 したところであるが,去る12月6日,予定の会期を6日 間延長し,議各国代表が最終文書に署名して閉会した。 本会議の開会は,総会議長の選出をめぐり,先進国と 発展途上国との間で調整が難航し,3日間の遅れという 異例の幕明けとなった。南北の主張の差は全会期を支配 し,当初は長期延長も懸念されたが,全体として決裂は 避けることで一致し随所で妥協が実り,大きな成果が得 られた。
 会議の結果の中で当所に関係する主な点は,@標準周 波数業務と報時業務を一括した定義が生まれ, 4,8,16MHzでも実施できることとなったこと A136MHz〜 137MHzの宇宙業務が削除された(1980年代は使用可) こと B2GHz帯以上の宇宙研究,宇宙運用業務の随所 に,衛星間通信が認められたこと C800MHz帯に移動 衛星業務が認められたこと D準ミリ波帯の4周波数帯 に標準周波数・報時衛星業務が認められたこと E静止 衛星の位置保持及びアンテナ指向精度が厳しくなったこ と等であり,新無線通信規則の大部分の条文は,1982 年1月1日に発効する。
 また,静止軌道の利用に関し,計画使用のためのWA RCを1982年(CCIR総会のあと)とその1年ないし 1年半後の2回開くよう管理理事会に働きかけることとな った。