所長 栗原 芳高
私は7月1日付をもちまして第9代目の電波研究所長
を拝命致しました。身に余る光栄と存じますが,責任の
重大さに身のひきしまる思いでございます。皆様の御支
援,御鞭達によりつつがなく職責を果したいと存じます
ので,よろしくお願い申し上げます。
御承知のように昭和27年の電波研究所発足当初におけ
る研究分野は大別して3つに分けられておりました。す
なわち,(1)電波の伝わり方の研究,(2)周波数標準の研究,
(3)無線機器の型式検定及びこれに伴う無線機器に関する
研究でありました。これらの研究分野につきましては過
去30年近くにわたる諸先輩の御努力によって数々の成果
が挙げられ,今日の電波研究所の発展を支える基盤をな
しており,今後も一層の成果が期待されているものであ
ります。
その後時代の推移とともに宇宙時代,情報化時代の幕
開けを迎え,現在の電波研究所の研究分野は大別して5
つに分けられます。すなわち,(1)宇宙通信及び人工衛星
の研究開発,(2)宇宙科学及び大気科学の研究,(3)情報処
理,通信方式,無線機器の研究,(4)周波数標準に関する
研究,(5)周波数資源の開発 でございます。今後ともこ
の大枠に大きな変化はございませんが,この機会に最近
の研究情勢の主な動きについて御説明中し上げたいと存
じます。
まず第一の分野でございますが,CS及びBSは打上
げ以来2年有余を経過して今日では基本的な定常実験の
大部分を終了し,いよいよ収獲期に入ってまいりまし
た。すなわち,これから実施する応用実験を含めた実験
の成果は,通信・放送衛星機構が設置・運用する実用衛
星CS-2及びBS-2の設計・製作に反映され, 実利用
に役立つことになっております。ただ残念なことに,最
近BSの画像送信機能が停止したため画像評価に関する
応用実験実施の見通しは暗くなりました。しかしながら
幸いなことにその他の機能に格別な異常はないので,次
期衛星の開発に資するための資料は十分に得られるもの
と確信しております。
また世界にさきがけて開発したミリ波通信衛星ECS
も誠に残念なことに日の目を見るに到らず,当所の研究
計画も大きな打撃をうけたわけでありますが,営々たる
準備努力と大きな地上設備投資を無にしないための関係
者の努力が実を結び,代替実験として「CS利用による
サイトダイバーシチ実験」,「ミリ波降雨散乱実験」及び
「ミリ波太陽電波観測」の3項目の実施が可能となりま
した。 これらの実験の成果は次期実験用静止通信衛星
ECS-K計画に反映される予定であります。
ECS-Kはミリ波帯中継器及び準ミリ波帯高性能中継
器をとう載する新構想の衛星で,昭和61年度に打上げる
ことを宇宙開発委員会に要望しております。当所関係の
新規要望事項としてはこのほかに,22GHz帯送信機及
び国産12CHz帯TWTをとう載する実験用放送衛星
EBS,衛星とう載用合成開口レーダ及び衛星利用捜索救
難システムがあります。これらの新規要望事項はいずれ
も大変意欲的な内容をもっており今後の研究活動を高め
る上で極めて重要な意義をもっております。
更に,かねてから要望を続けている航空・海上技術衛
星AMES計画につきましては,小型船舶用高性能アン
テナ装置が完成し本年秋には地上実験を実施する段階に
なりました。また航空機とう載アンテナ装置も本年度予
算が認められましたので来年度は是非とも衛星用中継器
EMの予算を獲得したいと考えておりますが,本計画は
郵政省,運輸省及び科学技術庁(宇宙開発事業団)との
共同計画となっておりますので,各省足並みを揃えた努
力が今後とも一層必要であります。
通信技術衛星ACTS-G関係につきましても長年の努
力が実を結び,本年度からマルチビームアンテナの予算
が認められ研究を開始することができました。マルチビ
ームアンテナは次代の衛星にとって欠くことのできない
基本技術となるもので,今後の発展が期待されます。
次に第2の分野において御承知のISS-b(うめ2号)
は打上げ後約2年半を経過してもなお健在で,現在も貴
重なデータを送り続けております。これらのデータをも
とに作成された電離層臨界周波教の世界地図は国の内外
において大変高く評価されております。その他のミッシ
ョンについても同様な資料が作成されつつありますが,
開発の成果を最大限に活用するため今後も可能な限り衛
星の運用を継続する予定でおります。またISSで開発
した短波帯サウンダは米国の金星周回探査衛星へのとう
載計画が推進されておりますし,ISSを改良発展させた
電磁環境観測衛星計画も引続き宇宙開発委員会に要望を
提出しております。
地上における電離層観測業務につきましては,昨年度
総合研究宮を中心とした全所的な検討・見直しが行われ
「電離層観測業務の改革に関する試案」が前所長あてに
答申されました。これによると(1)電離層観測乗務は,従
来言われてきた短波通信との限定された関連から脱却
し,広いスペクトルにわたって電波と電離圏との係り合
いに注目しながら,今後発展する広範な無線通信技術へ
の寄与ができるように業務内容の改善を進めること,(2)
電離層観測業務は,地球大気の一部としての電離圏を観
測する最も標準的でかつ有効な手段であることを再認識
して,世界的な規模において協調実施すべきこと,(3)イ
オノゾンデの機能向上,並びにイオノグラム処理の自動
化等により電離層観測業務の省力化,能率化をはかるこ
と,と結論されています。電離層観測業務の在り方につ
いては種々論議のある所でありますが,本答申は現時点
における考え方をまとめた当面の指針として活用する方
針であります。
リモートセンシング関係ではマイクロ波雨域散乱計が
完成し,現在飛行実験実施段階に入っております。実験
の成果はミリ波伝搬に影響する雨域の測定のみならず,
海面散乱等マイクロ波リモートセンシングの基礎となる
データと解析結果が得られるものと期待しています。前
にも述べた合成開口レーダはこの技術の延長線上におい
て考えております。大気汚染の監視と発生機構を解明す
るための航空機とう載型レーザ・センサの研究開発も現
在飛行実験実施段階にあります。同じく大気環境リモセ
ン関係のラスレーダは昨年度で開発を終了し所期の成果
を収めております。本年度からは今迄の成果を活用して
電波音波共用上層風隔測装置の開発に着手し,来年度か
らは新方式の開発にも着手する予定であります。
第3の分野における最近の新しい課題は電磁環境問題
でありましょう。電磁環境の実態と,それの通信や他の
社会システムとの係わり方を的確に把握することは,今
後更に増大する電磁波利用に応えるために避けて通れな
い課題であり,当所に最もふさわしい態様を検討し,具
体的な施策を打ち出してゆく予定であります。このほか
の話題としては,来年度,待望の大型電子計算機(現在
の約4倍規模)が導入される予定で,電波研究所の研究
活動に大きく寄与するものと期待しています。
第4の分野における最大の課題は超長基線電波干渉計
(VLBI)技術の開発であります。VLBIは宇宙技術の分
野に深く関連しておりますが,技術全体としては周波数
・時刻標準技術における超高精度・超高安定度技術が不
可欠の要因となり,また情報処理技術等多くの分野の協
力が必要となって参ります。このため昨年9月,周波数
標準部長を本部長とする「超長基線電波干渉計システム
研究開発推進本部」を設け,鹿島支所第三宇宙通債研究
室を中心として全所的に開発を推進しております。
第5の分野の周波数資源の開発は順調に進んでおり,
未利用周波数帯においては現在の80GHz帯から来年度
は150GHz帯に進展する計画であり,更に光領域周波
数帯の開発に関連するサブミリ波帯の検討も進める予定
であります。既利用周波数帯では移動無線におけるリン
コンペックス方式は野外実験を実施してまとめの段階に
あり,スペクトラム拡散地上通信方式はエンジニアリン
グモデルの試作を進めております。この分野は特に電波
行政と深い係わりをもっておりますが,他の分野におい
ても直接または間接に電波行政に寄与しているプロジェ
クトも少くありません。本省の研究調査依頼事項のうち
本年度実施するものは14項目にものぼっており,研究の
実施に当たっては電波監理局と緊密な連けいを保ちなが
ら進めて行く必要があります。
以上概観しましたように,現在電波研究所が当面して
いる課題,また将来取り組もうとしている課題は誠に多
岐にわたってきております。加えて国の財政事情は益々
厳しさを加え,要員につきましても年々削減が進んでき
ております。このような情勢のもとでは,私達は改めて
電波研究所がおかれている立場と任務の重要性を再認識
し,国家公務員としての自覚のもとに職員の一人一人が
創意工夫を重ね,最大の成果を上げることが切に望まれ
るものであります。私自身誠に微力ではありますが,電
波研究所発展のために全力を傾倒する所存でございます
ので,重ねてよろしくお願い申し上げます。
まえがき
本年3月26目に宇宙開発委員会により決定された「宇
宙開発計画」(昭和54年度決定)に対する見直し要望が,
別記のとおり,6月17日郵政省から宇宙開発委員会に提
出された。要望事項は,@自主技術による宇宙開発の促
進策について,A航空・海上技術衛星(AMES),B実験
用静止通信衛星K型(ECS-K),C実験用放送衛星(EBS)
D通信技術衛星(ACTS-G),E電磁環境観測衛星(EM
EOS),F衛星とう載用合成開口レーダの開発研究,G
衛星利用捜索救難システムの研究の8項目である。この
うち,昨年の見直し要望に比べ今回新たに出されたもの
は,@BCFGである。
今度の見直し要望の背景として特記すべきことは,本
年2月22日に打ち上げられたECS-b(あやめ2号)が,
残念ながら昨年に続き再度失敗したことで,3月3日に
開かれた本年第1回の宇宙開発委員会第一部会におい
て,郵政省はミリ波衛星通信技術の開発の重要性を強調
している。
要望をまとめるまでには,3月から所内においては宇
宙開発計画検討委員会(委員長:加藤前次長)が主体と
なって討議を進めるとともに,電波監理局宇宙通信企画
課及び宇宙通信開発課,宇宙開発事業団,AMES連絡会,
電々公社,NHK等との緊密な連絡調整を経て行った。
以下に,当所と関係の深い見直し要望事項について述
ぺる。
図1 通信・放送分野の衛星の位置づけ(参考)
航空・海上技術衛星(AFS)
既に昨年及び一昨年の宇宙開発委員会による見積り方
針では,「開発研究」を行うとされたものであるが,予算
が認められなかったことから54年度決定の宇宙開発計画
の中では「研究」の段階にとどまった。そこで,今回の
要望でも「開発研究」を要望し,打上げ時期も,昨年の
要望と同じく昭和60年度としている。 AMESは,当所
にとっては,CS,BS,ECSに続くべき最も重要な衛星
計画であり,昭和60年度打上げを是非実現させたい。
AMESは科学技術庁(宇宙開発事業団),運輸省,郵
政省の共同計画であり,郵政省ミッションは,開発項目
として,衛星とう載ミッション機器(Lバンド固体化直
線大電力増幅器等)及び航空機々上設備(船舶用アンテ
ナ,航空機フェイズドアレイアンテナ等)を担当し,実
験項目としては,電波伝搬実験及び通信実験を担当する。
システムの主な仕様は昨年とほぼ同様で,重量約350
s,スピン安定(アンテナデスパン方式),アンテナはし
バンド2ビームオフセットバラボラアンテア及びCバン
ドグローバルビームホーンアンテナ,回線容量は電話換
算で14チャンネル程度,周波数は地球局〜衛星がCバン
ド(5GHz),衛星〜移動局がLバンド(1.5/1.6GHz),
船舶局G/Tは-15〜-10dB/K(ただしアンテナゲイ
ンは9〜i4dB),寿命は打上げ後約1.5年,打上げロ
ケットはN‐Kとなっている。
なお当所の55年度予算として「衛星を利用した航空・
海上通信技術の研究開発」が認められたので,海上伝搬
実験及び航空機とう載アンテナの開発を進めている。
実験用静止通信衛星K型(FCS-K)
郵政省ではFCS計画としてミリ波衛星通信実験を行
おうとしていたが,衛星の打上げ失敗により,その実験
は不可能となった。そこで標記のECS-Kを本年新たに
要望したものである。ECS-Kは,ECSの開発成果を踏
まえたミリ波帯電波の開拓のほか,既に実用化が進めら
れている準ミリ波帯(20/30GHz)についても高性能化
を図ろうとしている。
開発項目は衛星とう載ミッション機器として,ミリ波
中継器,準ミリ波高性能中継器,ミリ波・準ミリ波アン
テナ,高速度回線切替器を,また,地上設備として,大
局用高性能送受信システム,大局用高性能通信端局シス
テム,可搬型及び小局用高性能通信システムを予定して
いる。
衛星システムとしては,重量約350s及び約550s
の2種類を考えているが,いずれにしても昭和61年度打
上げを強く要望している。
実験用放送衛星(EBS)
BSの開発成果を踏まえて実用化が進められている
12GHz帯の周波数による衛星放送システムについて,
より高出力の国産TWT増幅器の開発をめざすととも
に,高品位テレビジョン,ディジタルテレビジョン等新
しい放送需要に応えるため,22GHz帯衛星放送技術の
確立を目的として,FBSを新たに要望した。
開発項目は,12CHz帯高出力国産TWT増幅器(100
W以上200〜300Wを目標),22GHz帯送信機(50W
を目標),アンテナ(12122GHz共用),22GHz帯直接
受信装置である。
衛星システムの概要は,重量約550s,3軸姿勢安定
方式,設計寿命3年,12GHz帯トランスポンダ2台(上
り14GHz帯),22GHz帯トランスポンダ2台(上り14
又は27GHz帯)であり,打上げ時期は昭和62年度を要
望している。
EBS及び前記のAMES,ECS-K等の実験衛星,並
びに実用衛星との関係を,参考のため図1に示す。
通信技術衛星(ACTS-G)
これは昭和52年度以来要望してきているもので,本年
の要望は昨年と同様である。即ち,将来の宇宙通信需要
の増大や多様化に対処するための技術開発の一環とし
て,ACTS-Gを打上げ移動体通信及び衛星通信に係る
技術を開発しようとするもので,昭和60年代前期の衛星
打上げを目標に,当面はマルチビームアンテナの研究に
重点をおくことにしている。予算面でも,55年度に初め
て「衛星用マルチビームアンテナの研究開発」が認めら
れ,今後4か年計画として進める。
システムの概要は,打上げロケットがH-T,3軸姿勢
安定方式,ミッション機器はマルチビームアンテナ及び
通信用送受信装置とし,システム構成例の参考図を図2
に示す。同図におげる周波数計画は,昨年の世界無線通
信主管庁会議(WARC-79)の結果を踏まえたもので,図
に見るようにマルチビームアンテナは2GHz帯アレイ
(19ビーム)及び8/7GHz帯開口(数本)のものを考え
ている。
図2 ACTS-Gシステム概念図(参考)
電磁環境観測衛星(EMEOS)
本年の要望内容は,昨年と同様である。即ち,ミッシ
ョンは,能動型電波観測ミッション(中・短波帯サウン
ダー,超短波サウンダー,マイクロ波ビーコン),受動型
電波観測ミッション(中・短波帯電波雑音観測装置,超
短波・極超短波帯電波雑音観測装置),及び環境直接測定
ミッション(プラズマ・高エネルギー粒子測定装置,イ
オン・大気組成測定装置,磁場測定装置)の3種類であ
る。
衛星システムの概要は,重量約350s,打上げロケッ
トはN-K又はH-T(2段式),スピン安定(磁気トルク
による姿勢制御機能付き),円筒形,寿命3〜5年,テレ
メトリは2GHz帯,データ記録方式はテープレコーダ
及びバブルメモリ装置とし,打上げ時期は昨年と同じく
昭和61年度頃を要望した。
米国の金星周回探査衛星(VOIR)に関して,昨年5月
NASAに対し当所が提案した日・米・加の共同プロジ
ェクト:金星電離層観測(VISE)については,NASAに
おけるミッション評価の作業が遅れている模様で,現在
までのところ正式の回答は来ていない。しかしながら,
55年度予算として「衛星とう載用電離層観測機器の研究
開発」が認められたので,VOIRとう載用中・短波帯サ
ウンダのエンジニアリングモデルの開発を目下鋭意進め
ているところであり,また,NASAに対しては,これ
まで機会ある毎に作業の進展を働きかけてきている。ま
た,VISE計画推進には,宇宙開発事業団との連けいが
不可欠であり,本年度から同事業団と当所との共同研究
を強化しようとしている。
衛星とう載用合成開口レーダの開発研究
合成開口レーダ(SAR:Synthetic Aperture Radar)
は,最も高性能な能動型電波リモートセンサーの一つと
して期待されているもので,既に米国のSEASATとう
載実験によりその有効性が認められ,現在カナダ
(SURSAT),ESA(COMSS,LASS)等において開発が進めら
れているものである。
SARは,能動型電波リモートセンサー共通の特長と
して,昼夜の別なく,また天候に左右されることなく観
測が可能であるほか,周回衛星の軌道上の移動にともな
って得られる一連のデータを処理することによって,等
価的に大口径アンテナによるものと同じ高分解能データ
の取得が可能である。
SARによるリモートセンシングに関し必要とされる
開発内容を大きく分けると,@衛星とう載用機器の開発
(ハードウェア),Aデータ解析・利用技術に係る映像
作成技術の開発,Bデータ解析・利用技術に係る測定デ
ータ内容の解析技術の開発となる。このうち,@及びA
は主としてNASDAが担当するものと考えられるの
で,当所は主にBを行うことを考えている。
開発計画の内容は,衛星とう載SARにより得られる
観測デ-タの解析と有効利用を目的として,昭和56〜63
年度の8年間において,航空機とう載用SARシステム
を開発製作し,これを用いた航空機実験を行うと同時に,
グランドトルース,シートルースの資料を収集し,衛星
によるSARデータの解析のためのアルゴリズムを確立
するとともに,SARシステムの各種パラメータが観測
結果へどう影響するかというSARシステムの評価を行
おうとするものである。現在考えている観測周波数は,
Lバンド(約1.3GHz),Cバンド(5111〜6GHz),及びX
バンド(約10GHz)の3周波(同時観測)である。
なお,SARの研究開発は,NASDAとの密接な連け
いが必要と考えられることから,当所はNASDAに対
し共同研究として推進しようとしている。
衛星利用捜索救難システムの研究
衛星を利用した非常用位置指示無線標識
(EPIRB:Emergency Position Indicating Radio Beacon)方式
は,現在の地上方式に比べ,遭難通報のカバレージ,応
答時間,信頼性の面で格段に優れた機能を発揮するもの
と期待され,将来のグローバルな救難システムの重要な
構成要素となっていくものと考えられる。米・加・仏・
ソは共同でタイロスNを昭和57年に打ち上げ,これを使
用して捜索救難実験を行おうと計画している。
我が国も海洋国として,国際的な捜索救難システムの
開発に資することが必要と考えられ,当所においては周
波数拡散技術を用いた小型・軽量・安価なEPIRBを開発
するとともに,CSを利用する検証実験,MOS-1を利用
する実験等を計画している。
(企画部第一課長 中橋信弘)
上田 輝雄
はじめに
打ち合わせチーム一行(中央鈴木総括顧問,左端筆者)
おわりに
ジョルダンは,シリア砂漠の南辺に位置し西はイスラ
エル,東をイラク,北をシリア,南をサウジアラビアに
取巻かれ,アカバ湾で海に接しているもののいわゆる内
陸砂漠国家である。日本の約4分の1の国土面積に280
万人(1978年)の人口を有するが,国土の大部分が降雨
に乏しい砂漠地で農地が少なく食糧の自給度も低い。ま
た,石油資源に欠け,燐鉱石,銅など多少の鉱物資源に
は恵まれているが,全般的に経済環境に恵まれた国とは
いえない。したがって,日本を始め工業先進国を手本と
し,工業立国をめざして近代化を押し進めており,今回
訪れた王立科学院電子工学部の職員も技術の吸収には非
常な熱意を示していた。なお,ESTCは我々の携わって
いる技術協力プロジェクトのほかに無償資金協力プロジ
ェクトによる建物も供与されることになっており,昭和
56年2月に竣工する予定で,建物と同時に供与機材を最
大限に活用し,将来近隣アラブ諸国の電気通信分野の技
術センターとしての役割を果たすべく,職員一同意欲に
燃えている。また,日本の技術に全幅の信頼感を持って
いるので本プロジェクト関係者並びに関係機関において
は,この期待を裏切らないよう特に留意すべきであると
感じられた。
最後に,この機会を与えて下さった関係各位に厚く感
謝致します。
(通信機器部 機器課 主任研究官)