電離層観測業務の改革に関する試案とINAG会議


若井  登

 まえがき
 「電離層観測業務の改革に関する試案」と題する報告 書が,総合研究官から電波研究所長に提出されたのは今 年の3月末のことです。この試案作りは,昭和54年度の 研究プロジェクトの一つとして企画され,電波部を中心 にして1年がかりで取り組まれたものですが,一般のプ ロジェクトと少し違って,この試案は一種の将来計画案 であり,また業務の見直し案でもあります。
 今のところこの試案は,関係者のための討議資料とし て使われており,所外には公開していないので,ここで 紹介させて頂くと同時に,試案の文面に表われていない 諸点および今後の試案利用の方向などを述べます。
 御存知の通り,電離層観測業務は国際的な規模で組織 的に行われています。この国際電離層観測網を全般的に 取り仕切っているのが, 国際電波科学連合(URSI)の 下にある電離層観測網諮問委員会 (INAG:Ionosonde Network Advisory Group) です。そこで本文では前 述の試案の紹介と併せて,最近開かれたINAG会合を 通して,電離層観測業務に関する国際的情勢を簡単に紹 介します。
 試案の構成
 試案の結論に,これを作ることになったいきさつが述 べられています。要点を抜粋すると,「電波研究所にお いては“電離層観測業務及びこれに関連する研究につい て,長期的展望のもとに,その改革,合理化を検討し, 具体的な案を作成すること”が昭和53年7月に生れた総 合研究官の担務の一つとして規定され,“電離層観測業 務の改革に関する試案を,総合研究官が中心となって, 昭和54年度中に作成する”ことが,研究調査項目に取り 上げられた。その背景には,当所が長年行ってきた電離 圏研究に関して社会のニーズに応えうる理念を確立する と同時に,その手始めとして電離層観測業務のあるべき 姿を原点に立ち返って見直す必要があるという判断が働 いたことも事実である。勿論当所としては,電離層観測 業務を含む関連研究に関し, 時宜に応じた目標の設定 と,必要な改善,合理化を行ってきたものであるが,本 課題設定を機に再度検討し,この分野の望ましい将来像 を,改革に関する試案という形で明文化することは誠に 有意義なことである」と記されています。
 第2章では,「電離層観測業務の定義と内容,地球物 理学的(国際地磁気超高層物理会議:IAGA的)又は 電波科学的(URSI的)側面と無線通信工学的側面 (CCIR的)とから要求される電離層観測業務の目的」に ついて述べています。
 第3章では,「電離層観測業務を取囲む内外の情勢を 正しく掌握するために,歴史的背景,日本における電離 層観測業務の推移,諸外国における電離層観測業務の動 向とその中で日本が果している役割,並びに電離層観測 業務に対する社会(データ利用者等)の評価」について 述べています。
 第4章では,第2章で記述した従来の目的に加えて, 今後電離層観測業務に寄せられる期待像を具体的に述べ ています。
 第5章では,前章までに述べられた電離層観測を取囲 む諸条件に基づいて,業務を改善するとしたら,組織上 及び運用上の観点からどのような方向が望ましいかにつ いて述べています。
 第6章では,本試案から導かれる結論について述べて います。
  試案の結論
 電離層観測業務を改善するために今後取るべき方策を 試案の第5章から抜粋します。
 「電離層観測網は将来どの程度の規模で維持されるベ きか,すなわち地球物理学的(環境観視的)目的のため, 又は無線通信上の立場から,最低限必要な観測点の数 (電波観測所の数と同意ではない)はどの程度かについ て考察する。
 電離層の概観的な特性は,今までの観測及び研究によ りほぼ解明されたといえる。しかし電離圏1中に存在する 各種の波動,上下の大気圏との関連,更に具体的にはE^^s 層の発生,伝搬等にはまだ多くの研究の余地が残されて いる。このような細かい変動又は速い現象に着目する と,研究の基礎になる電離層データは,地域的にも時間 的にもより密度濃く取得されることが望ましい。この観 点からは,観測点の数を減少させることは好ましくない 方向といえる。
 では無線通信上の立場から,観測点の数はどのような 意味を持つであろうか。
 短波通信の回線設計,月間及び逐日の運用に際して,電 離層のデータは不可欠ではあるが,平均的な正規伝搬モ ードで論ずる限りにおいては,最新の電離層観測データ を必要とするわけではなく,過去の蓄積されたデータに 基づく研究成果(電離層地図,解明された諸変化特性) を用いれば,可成りの精度で運用周波数を予測すること ができる。この意味では,今以上に観測点を密にする必 要はなく,場合によっては緯度10度おきの3点でも十分 に日本上空の平均的電離層を観視していくことができ る。
 しかし電離層にじょう乱が起こり,異常伝搬モードが 発生すると事情は一変する。このようなじょう乱時(じ ょう乱ではないが急激な電子密度変動を伴うE^^s層を介 しての伝搬も含むものとする)に,VLFからUHFに わたる広い帯域の電波を用いた各種無線通信が,時々刻 々,どのように影響されるかを予測するには,多数の観 測点におげる電離層のデータとそれらを活用するための 速報体制は不可欠である。
 次に電離層観測業務を実施するにあたって用いられる 電離層観測装置(イオノゾンデ)と,得られる記録(イ オノグラム)の処理について,望ましい姿と将来の問題 点について述べる。
(1) イオノゾンデは,ステップ周波数掃引方式であっ て垂直投射と斜入射の両用に用いられ,また周波数, 遅延時間,反射エコー振幅がディジタル化された信頼 性の高い装置であることが望ましい。また観測所の地 理的,電磁的環境によっては,FM-CW方式も検討す る必要がある。何れの方式にせよ,観測結果が直ちに ビデオ装置等により表示又び記録でき,速報用にも使 えるようにすれば電離層観測業務の価値は倍加する。
(2) イオノグラム処理については,人による判断を含む 半自動方式と,すべて電子計算機による全自動処理方 式の双方を,当所におげる研究と関連技術の進展を考 慮しながら,バランスをとって推進してゆく。
 読取るパラメータと精度については, 国際的基準 (URSIイオノグラムハンドブック)に準拠すべきで あるが,観測所における業務全般,読取り担当者の熟 練の度合などを考慮して,基幹局(URSI基準に従う 局)と準基準局(精度,パラメータ数,時間間隔,f プロット等につきある種の簡略化を行った局)の区別 の導入を図ることが望ましい。これに伴って日本独自 の電離層観測簡易読取りハンドブックの作成及び異常 現象の解析等のために必要な非数値化データ又はfプ ロットをディジタルデータから復元することについて も検討する。
  試案の意義
 この試案は今のところ広く討議の対象となっているわ けではありませんが,それでも様々の意見がこれに対し て寄せられています。その代表例を紹介します。
 「最近は電離層研究とか電離層観測の必要性に関して, 内外から批判的な声が高まっている。その批判の根拠 は,遠距離無線通信において短波通信の果す役割が急速 に減少してきたことにある。しかしこの一面だけから電 離層関連研究の要不要を論ずるのは余りにも早計であっ て,より広い観点に立った分析がかねてから要望されて いた。このような時期に作られた今回の試案は,歴史的 経緯,国内外の情勢,問題点の分析,今後の方向を提示 していて一応は上記の要望にも応えていると思われる。 勿論満点とはいえないが,毎年見直すことによって,足 りない部分を補い,または適切な修正を行って,今後よ り完全な将来計画に仕上げてゆけばよいのではないか」
 これに対し,
 「改革に関する試案という主題から,もっと大幅な研 究指向の変化を予想していたのであるが,出来上った試 案は完全に現状是認形であって,目新しいことは何一つ ない。結局この試案作りは羊頭をかかげて狗肉を売る類 の仕事に終ってしまったのではないか。つまり肝心なこ とは,この業務を具体的に今後どのように改革してゆく か,それに伴って投入すべき人員,経費の規模をどう変 えてゆくのか,そしてそのためにこの試案をどのように 活用するのかである。」
 上述の意見は,試案肯定側と批判側を代表する2例で あって,どちらも正しい一面を持っていると思います。
 ここで,長くこの分野の仕事に携わり,ある時期責任 的な立場にあった一人として,この試案の意義について 私見を述べてみます。
 電離層観測が業務のほぼ中心をなしていた電波観測所 について,その進むべき方向に関する議論が可成り以前 から,地方所長会議等で起っていました。たまたまこれ と時期を同じくして,INAGやIAGA等の国際的な場 においても電離層観測の将来について活発な意見の交換 が行われていました。そこで当所においては,これら国 際的情勢をも踏まえながら,電離層観測に対する一応の 方向づけを行い,それに沿った改善策の実現に一歩踏み 出しました。そこへこの試案作りが登場したというのが 実状です。換言すれば斜入射伝搬による短期予報,イオ ノグラムの処理方式の能率化,VHF波混信予報等の研 究プロジェクトは改善策の第一歩としてすでに実行に移 されていました。このようなことから試案の内容が見掛 け上現状是認に見えるのだと思います。
 私自身今でも,“改革”という言葉は,この試案に関 しては誤解を与える言葉だったと思っています。しかし ここでは詳しく説明する紙面もないので,ただこの一語 に関しても試案作りの最中に長い議論があったことだけ を付記しておきます。
 試案を是とする側の論理としては,電離層観測業務は 詰まるところ電離圏研究という大きなジャンルの一部に 過ぎない,別の言い方をすれば,研究の目的を明確にし ないで手段である電離層観測の方向を定められる筈のも のではないという考え方があります。つまり何一つ画期 的な結論のない試案ではあるが,これは当分このままに しておいて,電離圏研究という高い又は広い観点から将 来計画を作り,その全体像に合致させる形で電離層観測 業務像を書きかえていけばよいという考え方です。現に 当所内にある電波予警報将来計画検討会というグループ が,この全体像の検討を行っています。その成果に期待 することにしましょう。
 前述のように,この試案には要員面及び経費面からの 考察が欠けています。それらを含めた実行上の問題は, 当所の全体計画の中で定められるべきものと言ってしま えば簡単なのですが,実際には考慮すべき,又次元の異 なる多くの要因が介在し,問題は一層複雑になります。 今後試案を見直していくとしたら,この点にも留意し, 実現の容易な理想像に仕上げていく心掛けが必要だと思 います。
  INAG会議
 1980年6月20日と21日にジュネーブでINAG会議が 開かれました。CCIR中間会議Aブロック会議の中, SG6会議が始まったのは6月23日です。そこに電離層 関係者が集まることを期待して,SG6会議の直前にINAG会合 を開こうとPiggott委員長が各国メンバーを 招集しました。
 私はこの両会議に出席する機会を得ましたが,ここで は特にINAG会合に絞って(CCIR会議については, 本ニュースNo.55に紹介済み),前述の試案と密接な 関連のある話題を報告してみたいと思います。
 先づ全世界的観測網の中で近く廃局になる局が2〜3 (Ottawa,Freibourg等)あると報告されました。一 方,新設局はありません。1977年のIAGA総会では, 電離層観測所のこのような漸減傾向に歯止めをかけよう と決議第2号が採択されたのです。INAG会議において は,日本の現況報告として,当面5観測所(昭和基地を 含まず)態勢を崩さないこと,むしろIonosondeの垂 直及び斜入射方式の併用により,電離層観測の電波を何 倍にも利用して短期電波予報(数時間からせいぜい1日 程度先の通信状況を予測する)を行う計画を紹介しまし た。この計画は大きな関心をもって迎えられ, INAG Bulletinにその概略が掲載される予定になっています。
 電離層観測業務の中では,イオノグラム読取り作業が 人間介在に関して最も大きな比重を持っています。各国 ともこの点については苦慮している様子で,読取り要員 の養成,それに役立つ簡易ハンドブックの編集,パラメ ータ数の整理・統合,読取り作業の半自動又は全自動等 の諸問題が話題になりました。一方,かなり以前からこ れらのほとんどすべての問題に,日本は取組んできてお り,INAG会議にはその成果のうち,斜入射実験計画, 簡易ハンドブック,ディジタイザによるイオノグラム処 理を紹介することができました。
 このように試案に書かれた問題点は,同時に各国共通 の悩みの種であり, 日本は外国よりもある意味では一歩 先行して,問題解決に取組んできた,換言すれば試案に 示された方向は正しかったということができるわけで, この点INAG会議に出席して大いに自信を深めた次第 です。
  おわりに
 以上電離層観測業務の改革に関する試案について,要 点だけは紹介した(多少ニュアンスを変えたところもあ る)つもりですが,場合によっては余りに端折り過ぎ, 意味の不明確になった点もなくはありません。今後この 試案に関して,また本記事に関して所の内外から議論が 起こり,それをきっかけにして試案の改善,更には将来 方針の確立にまで発展するならば,試案を作成した目的 は達せられたことになるわけで,この点大いに期待して 止みません。

(企画部長)




電波研究所における校正業務


通信機器部 機器課

  まえがき
 科学や技術の発展には,正しい計測技術が基礎となる ことはよく認識されている。しかし,計測器に関する校 正は,基本的な行為であり,着実な努力が払われている にもかかわらず,本来地味な脇役的仕事であるため,目 立たない存在となっている。
 元来,計測によって得られる測定値の信頼性は,厳密 に管理された基本単位(長さ,質量,時間,電流,温度, 光度)から導かれた誘導単位(たとえば,電圧,電流, 電気低抗,周波数など)の国家標準を基にして得られる 実用標準を仲介とした“計測器の校正”によって確保さ れる。このようにして得られた測定値が,国内的には勿 論,国際的にもただ一つの標準に結び付けられたとき真 に評価できる測定値としての意義をもつのである。
 当所におげる校正業務は,発足してから既に20数年を 経過し,この間,電波監理に必要な無線局検査用測定 器,電波監視用測定器および型式検定試験用測定器,そ の他,部内外の一般測定器など数多くの測定器の校正を 実施してきた。他方,校正設備の開発整備にも努力して きた。以下校正業務の内容と設備の現状などについて紹 介する。
  当所における校正業務の沿革
 昭和25年,電波法,放送法および電波監理委員会設置 法のいわゆる電波三法が制定され,電波監理総局(現在 電波監理局)の行う無線局の検査に使用する測定器の校 正は,当所機器課の前身である電波監理総局電波部技術 課において実施することになり,電波技術審議会の答申 をうけて,無線設備の性能試験や型式検定試験に使用す る測定器の校正に必要な高周波実用標準の維持,および 電圧,電流,インピーダンス,電界強度などの校正に関 する方法を決定した。その後,昭和27年8月行政機構の 改革により,電波研究所が新しく発足したが,この改革 以来,型式検定,校正等の関連業務は当所で行うことに なった。各種実用標準の維持確立と校正範囲の拡張およ び校正精度の向上についても当所で行うこととなった。
 一方,電波監理局では,無線局の検査および電波の監 視規制などの業務用測定器の測定値が,検査結果の判定 や電波発射停止などの行政処分を行なうための技術的根 拠になることから,その測定器の正確さは極めて重要で ある。そこで,昭和28年12月,局達8-1「地方電波監理 局における測定器の校正に関する取扱い規程」を制定し て,各地方電波監理局には副標準器を設け,この副標準 器を毎年定期的に,当所に搬入し校正することとした。 各地方監理局では,この副標準器を使用して,当該監理 局の測定器を自主的に校正することを原則とする測定器 校正体制が整えられた。
 更に,当所では可能な限りこれらの設備を一般にも開 放すべく,昭和34年4月郵政省告示第277号により,部 外からの測定器も,有料で委託をうけて校正することに なった。その後,校正範囲の拡大,手数料の改訂など所 要の変更を加え,今日に及んでいる。


図1 電波研究所の実用標準

  実用標準の現状と校正内容
 当所の実用標準は図1に示すとおりで,周波数の標準 を除いては,標準電池,標準低抗器群からなる研究所標 準を用いて直流電圧電流実用標準を校正し,この校正値 を基準として大部分の各種実用標準を種々の誘導手段, たとえばバレッタ,サーミスタ,熱電対などの仲介素子 を用いて定期的に校正し,所要の精度を維持している。 また研究所標準は,年1回定期的に通産省所管の国家標 準によって校正される。現在,標準電池と標準低抗器は ±0.0001%,精密可変減衰器(減衰量実用標準を校正す るための仲介器)は±0.01dBの精度で校正し,国家標 準→研究所標準→研究所実用標準→測定器の校正系統で トレーサビリティの体系が整えられている。各種実用標 準の概要は次のとおりである。
 直流電圧電流標準は精密直流電位差計を仲介にして, 標準電池と比較校正された7桁指示の積分型ディジタル 電圧計と標準低抗器を実用標準とし,直流電圧,電流を 校正する方式である。
 高周波電圧標準はボロメータブリッジ法によってい る。これは低抗ブリッジの一辺にサーミスタを使用し, サーミスタの消費電力による低抗変化を利用して,サー ミスタに加えた高周波電圧を直流電圧に置換して高周波 電圧を精密に測定する方式である。
 高周波電力標準はカロリメータ方式を採用している。 すなわち,水冷負荷に高周波電力を吸収させたときの温 度上昇と,直流によって校正された交流参照電力を同一 負荷に吸収させたときの温度上昇とが等しくなるように 温度比較ブリッジで監視し,このときの交流参照電力を 測定して高周波電力を求めている。
 電界強度標準は電界強度測定器の校正を目的としてお り,電界強度測定器のアンテナの型式により,誘導磁界 方式と標準アンテナ方式とに分けられる。誘導磁界方式 はループアンテナを使用する電界強度測定器の校正に用 いられるもので,磁界発生器により,ビオ・サバールの 拡張の定理の適用される標準磁界を作り,これを被校正 電界強度測定器で測定する方式である。標準アンテナ方 式はダイポールアンテナを使用する電界強度測定器の校 正に適用される。電界発生器で校正地点に放射電界を与 え,この電界中に標準アンテナをおき,これに誘起する 電圧をあらかじめ高周波電圧標準で校正した電圧計で 測定して,その地点の電界強度を決定し,これを標準電 界として校正に用いる。
 変調度標準は振幅変調度測定器の校正を目的としてお り,ブラウソ管オシロスコープ上に十分増幅した被変調 波を描き,ブラウン管の偏向直流電圧を変えて被変調画 像を垂直にスライドし,画像の寸法比を直流電圧比に変 換して変調度を求める方式を採用している。
 減衰量標準は高周波減衰器の校正を対象とする。直線 性のよい高感度受信機と標準可変減衰器からなる精密減 衰量測定装置を使用し,同装置の高感度受信機を仲介に して,被校正減衰器の減衰量絶対値または相対値を標準 可変減衰器の減衰量を基準として比較校正する方式であ る。
 周波数標準は,当所の周波数標準部で設定維持してい る国家標準から1MHz,5MHzの標準周波数を直接得 て,周波数逓倍,逓降器に加え,種々の基準周波数を得 る方式をとっている。
 これらの実用標準を使用して,校正を行っている主な 対象機種,校正範囲および校正精度を示すと,表1のと おりである。
 また,表1に掲げた機種のほかに,当所では,妨害波 測定器の性能試験を実施している。この性能試験は,昭 和48年度から50年度にわたり電波技術審議会において審 議され,郵政大臣に答申されたCISPR(国際無線障害 特別委員会)規格に準拠した性能の妨害波測定器(周 波数範囲10kHzから1,000MHzまで)を対象とし ており,現在500kHzから300MHzの範囲の試験が 可能である。なお,10kHzから500kHzまで,およ び300MHzから1,000MHzまでの範囲の性能試験に ついても一般の委託に応じられるよう,現在準備を進め ている。


表1 校 正 範 囲

 最近における校正,性能試験の年間実施件数は平均70 台程度あり,校正に要する期間は1件あたり,事務処理 期間を除き,1週間から10日1位である。妨害波測定器の ように試験項目の多い機種の性能試験の実施には, 1か 月をこえる期間を必要とする。電界強度測定器の校正は 屋外(当所野外実験場)で実施しているが,近年周囲の 宅地化に伴い,電磁環境条件が悪化し,対策を検討する 必要にせまられている。VHF帯電界強度測定器の校正 に使用している標準アンテナ方式は非選択性のため,混 信波の影響を被る危険が大きい,したがって,混信妨害 排除能力を持たせたアンテナに切り替えることも検討中 である。
  校正業務の重要性
 当所の校正,性能試験の業務範囲のうち,その試験周 波数範囲は現在のところMF帯からUHF帯の一部まで が主体である。しかし,最近要求される周波数範囲は, 下はVLF帯から上はSHF帯に及ぶようになってき た。CISPR規格に準拠した妨害波測定器は,既に述べ たように,VLF帯およびLF帯もその測定対象となっ ている。SHF帯においても,1GHz以上を使用する無 線局が既に2万局を越え,毎年約10%の割合で増加して いる。当所で実施している型式検定対象機種にもSHF 帯のものが増えていくことと思われる。したがって,同 周波数帯における電波監理用測定器の精密校正と信頼性 の向上はますます重要かつ急を要する。これらの状勢を ふまえ,現在重点的にVLF帯,LF帯およびSHF帯 の各種実用標準器と関連設備の開発整備を行っている。
 また,貿易の技術的障害に関する国際協定が発効する など,国際的にも規格の統一や公開を図っていこうとい う動きが強まり,国際的な技術面のトラブルを生じさせ ないためには,製品検査に使用される計測器の測定値が 国際的に通用するものでなげればならない。わが国の国 家標準の長さ,質量などの物理機械量の標準は通産省工 業技術院計量研究所,電気,光,放射線などの標準は同 院電子技術総合研究所,周波数,時間の標準は当所で維 持している。これらの国家標準は,国際比較を行い標準 値の維持と精度の向上の研究が続けられている。このよ うな国家標準を背景として,電波監理に関連する測定器 の一般部外からの委託校正および性能試験は当所で行 っているが,その外,直流や低周波関係の測定器の校正 は,工業技術院の指導のもとに準公的性格を持つ法人組 織である日本電気計器検定所が,また高周波関係は機械 電子検査検定協会が民間企業の社内標準器または一般測 定器の校正サービスを行っている。地方機関としては, 東京都立工業技術センターが,直流,交流計器等の校正 試験を行っている。一般にも校正の必要性が認識され, 国家標準の供給体制が整えられてきており,体系を組織 的に充実していく必要がある。


高周波電力計の校正

  おわりに
 科学技術の進展とともに高性能の測定器が,ますます 増加し,これらに対する試験設備の精度の向上も必要で ある。また,これに合わせて国内におけるいわゆるトレ ーサビリティの確立の努力がなされねばならない。
 当所においても,試験周波数範囲の拡張とともに試験 設備の機械的,電気的安定度の向上と人為的な誤差の低 減など,合理的な高精度の校正の実施と拡充を図ってい きたいと考えている。

(主任研究官 上田輝雄)




第8回AIAA(アメリカ航空宇宙学会)通信衛星システム 会議に出席して


塚本 賢一

 標記会議(8th American Institute of Aeronautics and Asironautics, Communication Satellite Systems Conference) が1980年4月20日から5日間,米国フロ リダ州・オーランド市郊外のOrland Hyatt Houseで 開催された。会場はKennedy Space Centerへ車で1 時間半位の距離の所にあり,ここでCS並びにBS実 験に関する2件の発表を行うと共に,諸外国からの論文 発表を聴講したので,その概況を報告する。
 会議は2年毎に開催される国際集会で,電波研究所か らは前々回のモントリオール会議,前回のサンジェゴ会 議に続き3回自の参加である。 この会議はIAF会議 (本年9月東京で第31回会議が開かれた)と共に世界各 国における衛星通信の発展動向を知る上で極めて有意義 な場である。今回は世界各国から約500名が参加し,発 表論文総数約130件に及んだ。論文発表は21日から24日 午前まで, 3セッションづつ並行して行われ,24日午後 はKennedy Space Centerへの見学旅行があった。私 の知る限りでは日本からの参加者はNTT(3),KDD (2),NASDA(1),NEC(2),東芝(1),工学院大 学(1),RRL(1)の11名である。各セッションでは 平均6件の論文発表が質疑応答を含めて30分づつ行われ た。
 今回特に感じた事は,(1)Space Shuttle時代を目前 にして多くの大型衛星構想が明確に打ち出されたこと, (2)WARC-BS,WARC-79を経て使用周波数の具体化 と,軌道・周波数の有効利用を図った衛星構想,(3)ディ ジタル衛星通信網,(4)20/30GHz帯衛星通信系の開発 に関する発表が多かったことである。以下に主要な発表 内容を紹介する。
 衛星運用実績に関する分野では,(1)日本からのCS (RRL,NTT,NASDA共著),BS(RRL,NHK, NASDA共著)の実験結果,BSの三軸姿勢制御(NA SDA),(2)カナダのANlK-A,CTS,(3)西独OTS-2, (4)アメリカMIT Lincoln Lab.のLES8/9,同じく国 内衛星通信系の ATT/GSAT, Western Union, American Satellite Corporationのネットワーク運用 等,数多くの発表があった。特にCTSは帯電による一 部ソーラパネル故障,テレメトリ送信電力低下等幾多の 不具合発生にもかかわらず,設計寿命2年に対し約2倍 の運用実績を残して昨年11月そのミッションを終了して いる。OTS-2は11/14GHz帯,6中継器を持つ三軸 衛星で1978年5月に打ち上げられ,現在独,仏,英,伊 を始めIntelsat加盟のヨーロッパ各国で通信,伝搬実 験が行われており,設計寿命3年に対し,更に3年延長 の1984年中頃まで運用可能の見込みである。LES8/9は 1976年に対地同期楕円軌道に打ち上げられた三軸安定の 兄弟衛星で,移動体を対象とした通信並びにKバンドて の衛星間Crosslinks通信技術確立をミッションとし ており,姿勢制御を始め,全体計画が極めて順調に進行 している。
 近い将来の衛星計画に関する分野では,カナダのAN IK-C,インドのINSAT-1,西独のTV-SAT,更に はESAのL-SAT,インドネシアのPALAPA-B等 についての詳細発表があった。ANlK‐CはTelesat Canadaが14/12GHz 帯の一連の新衛星シリーズと して1982年に導入しようとしているもので,バンド幅 54MHz,16RFチャンネル,偏波による周波数再利用等 を盛り込み,Telescope Spin型衛星として回線稼働率 99.97%,寿命8年,蝕中全チャンネル同時運用を目標と している。INSAT-1は直接放送(5.9/2.6GHz),気 象観測(可視及び赤外VHRR,402MHz/4GHzデータ 収集),長距離通信(6/4GHz,12RFチャンネル)の多 目的三軸衛星で,1981年に寿命目標7年で2基打ち上げ られる。打ち上げ機はANIK-C,INSAT-1,いずれも STS又はDelta 3910である。TV-SATは西独の直接 TV放送衛星で,1983年3月にARIANEロケット又 はSTS/SSUS-Aにより打ち上げられる。これにはUnified Propulsionシステム, 超軽量(ULP)ソーラアレー, RITAイオンエンジン,高出力TWT(12GHz,260 W以上),CFCアンテナ等多くの新しい技術が採り入れ られ,中継器5台ミッション寿命7年を目標にしている。
 将来の大型衛星構想の分野では,1990年代のIntelsat システムヘのSpace Platform導入の可能性, MBB社によって提案されたGEO-SPAS(Shuttle Pallet Satellite) の概念に基づいたNORDSAT衛星(12 GHz 450W 8台,250W 8台搭載)の開発構想等を始 めとしてOrbital Antenna Farms又はGeostationary Platformsに関する多くの論文が発表された。
 衛星搭載機器開発の分野では,スキャニングスポット ビーム,20/30GHz帯マルチスポットビーム,Lバンド フェーズドアレー,マルチビームによるKaバンド連続 カバレッジ等種々のアンテナ技術,マイクロ波コンポー ネント,直線化TWTA,12GHz帯大電力TWTA, 低雑音受信機等ミッション機器に関するもの及びULP ソーラバネルとセル,NiH^^2電池,推進系,姿勢制御コ ンポーネント等パス機器に関する多くの論文が発表され た。特にSS-TDMA,SS-FDMA等の通信方式と関連 づけられたマルチビームアンテナや信号処理並びにルー ティングの中継器構成に関するもの,パケット通信,帯 域圧縮及び誤り訂正通信,ディジタルチャープ変調,デ ィジタルファクシミリ伝送等極めて多彩な分野の発表が あった。
 その他NATOディジタル衛星通信,Pleet Satcom プログラム等の軍事衛星,Landsat,TIROS-N等の観 測衛星,救難対策通信衛星,移動体対象EHFシステ ム,レーザ通債システム等に関する発表があり,特に 新しい周波数帯開発として20/30GHz帯衛星通信シス テム導入の動きが甚しく,この周波数帯の伝搬侍性,偏 波識別度劣化補償技術等と共に,NASAが依嘱した多 数のメーカによる国内衛星通信システム開発構想の提案 発表が注目された。
 以上会議での発表内容の概要を述べたが,取り扱われ た範囲が極めて多岐にわたり,しかも講演が複数会場で 並行して進められたため,その場で十分内容を捉え得な いうらみはあった。詳細については予稿集を見て頂けれ ば幸いである。しかし衛星開発が急速に進展している世 界情勢を肌で感ずることが出来,極めて有意義な経験で あったと思う。
 終りに当って,本会議参加の機会を与えた下さった関 係各位に深く感謝致します。

(鹿島支所長)




URSI‐Fオープンシンポジウム等に出席して


古濱 洋治・小口 知宏

 はじめに
 国際電波科学連合第F分科会(URSI-F:非電離圏の 電波現象)の主催する「1GHz以上の周波数の電波伝搬 における低層大気の影響」と題するオープンシンポジウ ム(以下,URSI-Fシソポジウムと略称)が,昭和55年 5月26日から30日までの5日間,カナダ国レノックスビ ルにあるビショップ大学(Bishop's Univ.)で開催され た。また,北アメリカ電波科学連合総会及び米国電気電 子学会アンテナ伝搬シンポジウム(North American Radio Science Meeting and IEEE/AP-S International Symposium以下, URSI/AP-Sシンポジウムと略 称)が,6月2日〜6日の5日間,同国ケベック市にあ るラバール大学(Laval Univ.)で開催された。これら のシンポジウムに出席したので,その概要及び印象につ いて述べる。尚,シンポジウムの詳しい内容について は,URSI-F小委員会及びアンテナ伝搬研究会の報告 書を参照して戴きたい。
 URSI-Fシンポジウム
 当シンポジウム(第19回URSI総会については本ニ ュースNo.31参照)のテーマは,上記の通り非常に限定 されたものであったが,19か国から約70編の参加論文と 107名の参加があった。この内,この様な学術的なシン ボジウムに中華人民共和国から2名の初参加者があった ことは特筆に値する。我が国からは,小口と古浜,及び KDD研究所からの2名を加えて,4名が参加した。
 このシンポジウムの特徴の1つは,7つの研究セッシ ョンと,これらに対応してワークショップが開かれたこ とである。各研究セッションでは,1時間程度のレビュ ーと15分間程度の論文発表が10編内外行われ,続いてこ れらの討論が行われた。日本からは,「降水粒子による 散乱」セッションで,小口によりレビュー及び論文発表 が,「衛星地上間回線における降雨減衰予測」セッショ ンで,古濱による論文発表が,また,「見通し内伝搬に おける大気の影響」セッションでKDD研究所の古田治 氏により論文発表が行われた。ワークショップは,午 前,午後のセッションに対応して,午後7時から9時ま で,2つ並行して開かれた。ここでは,シソポジウムの 成果を取りまとめて,CCIR(国際無線通信諮問委員会) SG5(大地及び非電離圏伝搬)会議に寄与するための報 告書を作成する作業が行われた。これらの成果は,「酸 素及び水蒸気によるミリ波の吸収」及びこのシンポジウ ムのテーマと同名タイトルの2つの文書として,3週間 後に同会議に報告された。前者は,主として水蒸気分子 によるミリ波帯電波の異常吸収に関する報告であり,特 設ワークショップAで作成され,後者はワークショップ 1〜7で作成されたものである。尚,当シンポジウムの レビュー及びワークショップレポートはRadio Science誌 に,論文はAnnales des T^^el^^ecommunications誌に掲 裁されることになっている。
 当シンポジウムにおいて,衛星のビーコンを用いた伝 搬実験報告が多数行われ,それらの進捗状況に特に興味 を覚えた,これらの内容の多くは,2,3年前に日本の 学会,研究会で報告されたものに類似しており,論文を 英文で発表しておくことの重要性を再認識した次第であ る。また,シンポジウム参加者の多くから,一様に言わ れたことは,1978ISAP(国際アンテナ伝搬シンポジウ ム),1979CCIR総会などが非常に良く運営され素晴し かったこと,最近の日本の工業製品は質が良く安価であ り貿易摩擦を起こしていること,電波伝搬の研究は世界 第一級であること等々である。これらを反映してか,次 回あるいは次々回のシンポジウムを是非日本で開催して 欲しいという非公式の要望がかなり聞かれた。次回の ISAPあるいはURSI-B(電磁界と電波)オープンシ ンポジウム等の共催をも考慮しながら,近い将来URSI- Fオープンシンポジウムを日本で開催することを検討す る必要があると思われる。
 UBSI/AP-Sシンポジウム
 米国URSI国内委員会の主催するNational Radio Science Meeting 及びIEEE/AP-Sシンポジウムの合 同集会は,毎年6月頃開催されているが,今年は前者の 開催にカナダ国URSI国内委員会が加わり, North American Radio Sience Meetingと後者との合同集会 として開催された。そのため,参加登録者は例年より多 く,27か国900名に及び,約500編の参加論文があった。 その内訳は,総会4件,URSIセッション224件,AP-S セッション148件,URSI/AP-S合同セッション133件で あった。これらの論文は,ポスターセッションを含め, 9つのセッションで並行して発表された。
 我が国からは,国立研究機関,大学,メーカ等から10 数名参加した。当所からは,鹿島支所第三宇宙通信研究室 河野宜之主任研究官と筆者が参加し,それぞれ「超長基 線電波干渉計」及び「見通し内伝搬」セッションで論文 を発表した。私は,これらの外,URSI-F関係のセッ ションに参加したが,参加者の約半数は,一週間前の URSI-F シンポジウムヘの参加者であり,意見を交換 し,親交を深めるには甚だ好都合であった。
 リモートシングのセッションでは,衛星,航空機,地上 等で取得したデータの解析結果,アルゴリズムの概要な どが多数報告されたが,マイクロ波ラジオメータを用い て,衛星から降雨強度を測ることの実用化に取組んでい るグループもあり,特に興味を覚えた。彼等によると, 陸域の上空でも,強い降雨強度の場合を除いて,測定可 能であるとのことであった。衛星地上間伝搬について は,衛星ビーコンの降雨減衰とレーダデータとの比較, 2偏波レーダの運用などに興味を覚えた。
 このシソポジウムは,北米のバリとも言われるケベッ ク市で開催された為,観光には多彩なものがあり,多数 のツアー,パーティが計画されていた。第1日目の夜に はカクテルパーティが開かれ,第3日目の夜は旧ケベッ ク市の中心にあるホテルシャトーフロンテナックで晩さ ん会が開かれ,楽しい一時を過ごした。第4日目の夜は チーズとワインのパーティで最後の夜の更けるのも忘れ て談笑した。
  あとがき
 カナダから帰国して5日後に,CCIR中間会議SG5 会議に出席のため,ジュネーブに向けて出発した。 CCIRでは,これらのシンポジウム参加者の多くと再会し た。このため,初めての国際会議出席にもかかわらず容 易に馴じむことができ好都合であった。CCIRについて は,改めて述べることとしたい。最後に,今回のシンポ ジウムヘの参加に当って御配慮戴いた関係各位に謝意を 表します。

(電波部超高周波伝搬研究室長)
 (第三特別研究室主任研究官)


短   信


第31回IAF会議東京で開催さる

 国際宇宙航行連盟(International Astronautical Federation, 略称IAF)の第31回会議が極東で初めて9月 21日から28日まで高輪プリンスホテルで開催された。 IAFは,1950年パリで欧州各国11の学術団体の集まり として発足した非政府機関で,当初は狭い意味の宇宙航 行学を主体とした天文関係者の集まりであった。その後 人工衛星の誕生以来,各国における宇宙開発の進展と共 に,宇宙開発に関連して広く宇宙工学,宇宙科学,宇宙 医学並びに宇宙法学各分野の総合的国際団体として成長 し現在は36カ国,58学協会の連合体となっている。
 今回の会議では,“Application of space developments” のメインテーマの下に46セッションに分かれて 356論文が発表され,総参加者数は36ヶ国から計1078名 (この中,日本から459名)であった。当所は準備段階よ り参画し,発表論文数8,参加者69名であった。また, 本所及び鹿島支所は見学コ-スに指定され,見学者が訪 れた(本ニュース,No.55参照)。



航空・海上技術衛星(AMFS)模擬実験実施

 通信機器部海洋通信研究室では,昭和54年度に開発し た航空海上技術衛星模擬装置及び小型船舶地球局装置を 利用した,通信・伝搬実験を本年10月10日から10月30日 にかけて,福井県三方郡美浜町早瀬海岸において実施し た。実験は船舶局装置を地上に固定して,1.伝搬実験 (波浪観測用ブイで波高をモニタしながらフェージング 特性,ハイトパターン特性の測定),2.通信実験(各種変 復調方式での回線品質の評価)及び船舶(福井県水産試 験場所属,福井丸147トン)を利用した,(1)各種仰角で の伝搬特性の測定,(2)小型アンテナ安定台の追尾特性の 測定,等を行った。データは順調に取得できた。なお実験 期間中,台風19号及び発達した低気圧による悪天候があ り,最大波高約3mまでのデータを得ることができた。 観測したデータはフレキシブルディスクに収容し,現在 データ処理中であるが,波高約2mの海面状態で,仰 角約5度の場合でのフェージソグは,AMESで使用が 予定されているLバンド(1.5GHz)では,ショートパ ックファイヤアンテナ(G=14dB)で10〜12dB,パラ ボラアンテナ(直径1.2m,G=22dB)で受信した場 合3〜4dBのデータが得られている。今後,波高値を パラメータとした各種フェージング特性等の解明を行う 予定である。今回の実験及び12月に予定している第2回 の実験の結果等をAMESシステム設計に十分生かし, AMES衛星の実現を更に着実に進めていきたい。



第9回電波研親ぼく会開かる

 電波研究所親ぼく会は,元職員及び現職員相互の親ぼ くを図ることを目的として,昭和47年に発足したもの で,10月25国に第9回目の総会及び懇親会を迎えた。参 加者は108名と盛会で従来の減少傾向に歯止めがかか り,講堂も狭く感じられた。出席者は久し振りの再会に お互いの健康を喜び合い,懐しい昔話に花を咲かせる 人,現職と意見の交換をする人等何時までも話は尽きな い様子であった。頃合いよく北は北海道から南は沖縄ま で,それぞれの地で勤務した人々がグループとなり,転 勤節の余興が始って懇親会は最高潮,時の経つのを忘 れ,楽しい一時を過した。女性は3名と今年も少なく, 女性の参加を望む声が強く出された。またIFRB専門 委員としてジュネーブに駐在中の藤木栄さんが,ホーム リーブにより帰国しており,元気に挨拶をされた。7時 過ぎ来年の新講堂での再会を楽しみに,別れを惜みつつ 散会した。