昭和56年度電波研究所研究計画


 今年度の研究計画について,重要事項を中心に記す。
 CSについては,衛星の後期利用段階として,基本実 験(各種伝送方式の実験研究等),応用実験(コンピュ ータネットワーク実験等)を行う。応用実験には外部機 関,大学との共同,協力による実験も予定されている。
 BSは,昨年6月以来TV信号の放送実験ができなく なったが,伝搬実験,降雨散乱実験,衛星運用管制実験 等を行う。8月以降は実験の規模を縮小して実行する。
 昨年のECS-b「あやめ2号」の失敗後に策定され たミリ波衛星通信実験関係では, ミリ波降雨散乱実験, CS利用サイトダイバーシティ通信実験,太陽電波の観 測等を行う。
 衛星を利用した航空・海上通信技術の研究開発では, Lバンド電波の海上伝搬実験を実施するとともに, トラ ンスポンダ関係の回路の試作検討を行う。なお,航空海 上技術衛星(AMES)実現への努力を続ける。
 衛星用マルチビームアンテナの研究では,移動体衛星 通信を目的とするビーム形成回路の開発を行う。
 超長基線電波干渉計(VLBI)システムについては, 1983年からの日米共同実験を目標に,ハードウェア の整備,ソフトウェアの開発を引き続き進める。なお, 昨年11月20日に開かれた日米常設幹部連絡会議で,NA SAと当所との間に,1984年から5年間の共同実験 継続が合意された。また,今年度からは国土地理院と当 所との問にも共同研究が行われる。
 53年度から進めている衛星搭載用能動型電波リモー トセンサーの研究開発は,雨域散乱計,放射計の航空機 搭載実験を継続するとともに,データ解析を進める。な お,合成開口レーダについては基礎的研究を行う。
 今年度予算の新規項目として,衛星を用いた捜索救難 通信システムの研究が認められた。今年は406MHz帯の 非常用位置指示無線標識(EPIRB)の開発と,海上 実験を行う。
 このほか,主な宇宙関連事項としては,ISS-b及び ISISによる観測を,NASDA及びカナダの協力を 得て継続実施する。
 衛星,宇宙関連の研究では,成果のとりまとめ作業が 進み,電波研究所季報の特集号や報告書の出版が数多く 予定されている。
 周波数資源の開発については,40GHz以上の電波伝 搬の研究及び,スペクトラム拡散地上通信方式の研究開 発を引き続き進める。なお,VHF-UHF帯のリンコ ンペックスの研究は,55年度で終了した。
 今年度予算で認められた新規項目として,複合ゴース トの測定を行う受信障害用自動測定処理システムの開発 (単年度)と,電磁環境測定装置及び測定法の開発(56〜 60年度)を実施する。
 従来から,ETS-UのVHF電波の観測データの解 析を行ってきたが,今年の夏にNASDAの協力を得て 衛星の静止位置を一時移動し,沿磁力線の効果を観測す る予定である。
 電離層斜め観測は,本所と各観測所に観測システムの 整備を行い,研究観測を開始する。
 国立研究機関公害妨止等試験研究費(環境庁)の研究 項目として,電波音波共用上層風隔測装置の開発に関す る研究を継続するとともに,オゾンの三次元分布測定用 航空機搭載レーザ・レーダの高性能化の研究に着手する。
 本省からの研究調査依頼事項については,継続6件, 新規5件を実施する。なお,NASDAとの間の共同研 究4件,技術協力2件,技術援助1件を始めとして,文 部省極地研究所,宇宙科学研究所,大学の研究所や他省 庁との共同研究,協力関係も増大しつつある。
 その他の定常的研究,業務,基礎研究については,以 下の今年度研究計画一覧表を参照されたい。






フランス原子時計研究所に滞在して


梅 津  純

  はじめに
 昭和54年8月から昭和55年12月までフランス政府給費 留学生として,1年5ヶ月の間フランスに滞在し,原子 時計研究所(LHA:Laboratoire de l'Horloge Atomique) において光周波数の安定化について研究する機会を与え られたので,その概要を報告する。
  LHA
 LHAは大学省が管轄する国立科学研究センター (CNRS:Centre NatlonaLdlela lRec11erchle Scientifiqlue ;フランス最大の基礎研究機関)に属し,原子時計およ びそれに関連する基礎研究を行っている。LHAはパリ 第11大学(パリの南約25qのオルセー)のキャンパス内 にある。キャンパスは東西,南北それぞれ1.5q位に広 がっており,その周囲にCNRSの研究所や,大学より 一段上のランクの高等専門大学などがあり一大学園都市 の観を呈している。しかし近代的な建物が整然と建ち並 んでいるわけではなく,緑の多い落ちついた田舎の零囲 気の中に建物が散在していて,研究者には大変良い環境 といえる。LHAは研究所としての独立した建物を持た ず,大学の一部を使用している。研究者の数は14名程で, 大学の研究室をいくつか寄せ集めた位の規模であった。
 研究活動は大きく三つのグループに分けられ,各々に 4〜5名の研究者がいる。以下に各グループの概要を述 べる。
  水素メーザとその応用
 LHAにおける水素メーザの研究は,歴史も長く既に 多くの成果をあげてきている。研究所の所長であるオー ドアン氏は,この道の草分け的存在である。最近は水素 メーザを用いて水素原子の二重共鳴やスピン交換に関す る研究を行っており,さらに,セシウムビーム原子時計 にもその研究の枠を広げている。
  イオン閉じ込めの研究
 このテーマは将来の原子時計の有力候補として最近特 に研究が活発になってきている。LHAでもいち早く研 究が始められていた。ちょうど私の滞在している間に(お そらく世界で初めてと思われるが),イオン閉じ込め 手法を用いた周波数標準器の完成とその周波数安定度の 測定に成功し,沸きたっていた。この分野でもLHAが 世界の最先端を行っていることを肌で感じることができ た。
  周波数安定化レーザの研究
 今回筆者がお世話になったのがこのグループである。 周波数安定化レーザとして現在最も一般的なものとして は,赤色光に相当する633nmのヨウ素(I2)の飽和吸収 スペクトルを用いたHe-Neレーザがある。これについ ては既に国際比較もされ,広く世界各国で研究しつくさ れた感がある。しかしI2の非常にたくさんのスペクトル 線の中でHe-Neレーザの発振帯域に入るものとして,オ レンジ色の612nmのスペクトルがある。この波長は赤色 の633nmに較べ,レーザの発振強度は弱いが基準となる I2の吸収スペクトル強度は強く,線幅も狭いため,これ を用いて安定化したレーザは安定度および再現性の良い 光周波数の基準となり得ることが考えられ,現在LHA と国際度量衡局(BIPM:Bureau International des Poids et Mesures) で研究が進められている。また発振 波長を連続的に変えられる色素レーザは,原子・分子の 分光手段及び光ポンプ光源としても重要であるが,この 場合にも周波数の安定化が大きな問題点となるため,色 素レーザの研究もされている。さらに最近では,二原子 分子を光ポンプして発振させるダイマーレーザの研究が 進められている。
 筆者の従事した研究は,(1)色素レーザの周波数安定化 法の改良で,2重サーボループにより,速い変動と遅い 変動を別々に制御する方式を作成した。(2)これと並行し て,色素レーザ発振出力の瞬間的減少をなくすよう,色 素溶液循環装置の改善も行い,カルシウム原子ビーム実 験に備えた。(3)続いて,カルシウムビームを電子で励起 する実験を行ったが,前述のHe-Neレーザの612nmでの 周波数安定化を急いだため,He-Neレーザに主力を注ぐ ことになった。(4)I2の飽和吸収スペクトルを用い,2台 のHe-Neレーザを612nmで安定化し,その安定度の測定 を行い60秒平均で周波数安定度7×10^-13が得られた。 (5)次の課題は周波数再現性であるが,これは基準となる I2の吸収スペクトルの形状の影響が大であり,対称性の 良い形を得るための解析と実験が必要となった。そのた めの装置の整備を行っている途中で帰国の期日となった。 今後I2の612nmにおける飽和吸収スペクトルについての 研究が進められ,性能の向上が図られるであろう。世界 の趨勢として周波数標準の分野でも安定化レーザが重要 な地位を占めてきており,今回その点につき改めて痛感 させられた次第である。
 滞在中に感した点を以下に挙げてみる。
(1)国の内外を問わず交流が活発であり,情報交換が絶え ず行われている。(2)大学のような零囲気の中で,新しい テーマを早く取り入れると同時に基礎的な研究も着実に 行っていくという研究に対する姿勢。細かな要求に対し て正確かつ迅速に対応しいく技術者達の努力。(3)第1線 で活躍中の著名な研究者によるゼミナール(パリのコレ ージュド フランスで毎週開かれている)が広く一般に 公開されており、学問に対する国の基本姿勢を見る思い であった。


パリ第11大学キャンバス

  フランス雑感
 パリの冬はうっとうしく長い。パリは北緯49度近くに あり,東京と比べると約13度も高緯度のため,秋分を過 ぎると冬が駆け足でやって来る。太陽高度は東京と比べ ると一年中13度分低いわけだから,太陽が現われたとし てもその光は何ともたよりない。その上大抵具りか小雨 で,冷え込むとみぞれか雪となり暗く冷えびえとした日 が続くとやり切れない思いであった。その上1日のうち でも天気は急変する。パリの天候は10月頃から翌年の3 月頃までこの様にぐずついているので,パリの冬にはう んざりしてしまった。1月に帰国したが東京でさんさん と降りそそぐ太陽の光を浴びたとき,その有難さをしみ じみと感じたものである。
 フランスの朝はパン屋から始まる。朝6時半頃にはタ バコ屋,カフェも開く。早朝から生活が始まる零囲気は 気持の良いものである。焼たてのクロワッサンを買って 帰り,コーヒーで簡単な朝食を済ませて一日が始まる。 研究所には9時頃着き正午まで仕事,昼休みは1時30分 頃までで,その間に皆で昼食をとる。職員食堂はいつも 長蛇の列,しかし待つだけの甲斐はある。質・量ともに 申し分なし,なるほどこれが彼等の活動力のもとかと納 得する。充実した食生活はさすが農業国フランスである。 おまけにCNRSからの補助があるので安いときたら言 うことなしである。ワイン,ビール,などもいろいろな 種類がとりそろえてある。食後は小さいカップに入った とても濃いカフェエクスプレスを飲むと大体1時半とな る。以後6時まで休みなく集中的に仕事をする。お茶の 時間などは全くない。しかし6時になると大ていピタリ と仕事を止める。実にけじめがよく,研究・生活両面に おける単純明解な態度の一つの表われであろう。研究所 の人々は皆親切で,仕事の指導のみならず,個人的にも 度々家庭に招いて頂き御馳走になったことは大変なつか しい思い出となっている。
 最後にこの様な機会を与えて頂いたフランス政府,科 学技術庁,郵政本省の各位,田尾前所長,栗原現所長, 佐分利周波数標準部長始め当所各位に深く感謝致します。 フランス語講座でお世話になったDupuis夫人,日本科 学技術情報センター参事鴨原良樹氏にも心から感謝致し ます。

(周波数標準部 標準値研究室)




CCIR・IWP6/12会合に出席して


栗 城  功

  はじめに
 1981年1月19日から21日まで,CCIR(国際無線通 信諮問委員会)のSG6(電離媒質内伝搬を所掌とする 研究委員会)に設置されたIWP6/12(HF放送プラ ンニング会議で使用するための適切な伝搬予測法を確立 することを担務とする第12暫定作業班)の第1回会合が, 米国コロラド州のエステスパークで開催された。エステ スパークは,マイル・ハイ・シティとも呼ばれる州都デ ンバーから北に約110q離れた標高2000mをこす高所にあ って, ロッキー山脈国立公園の入口になっている。そこ のホリデーインが会場となった。


会場付近の風景

 この会合への参加国,機関,企業(出席者数)は次の 通りである。
 米国(8),カナダ(2),西独(2),英国,印度 イタリア,サウジアラビア,フランス,フィンランド, 日本(各1),CCIR,IFRB,BBC,VOA, Deutsche Wolle(各1)。
 このIWPは1979年に開催されたWARC(世界無線 通信主管庁会議)の決議DI(放送業務に分配されたH F帯のプランニングのための会議の召集について)およ び勧告H(HF放送に関する会議に必要な技術情報の準 備について)に基づき,1980年に開かれたCCIRの中 間会議において採択された決定36(HF放送プランニン グ会議で使用するための伝搬予測)に従って発足したも のである。
 IWP6/12の議長には,中間会議に於て米国D. L.Lucas 氏(通信科学研究所)が既に選ばれており, 補佐役はG.W.Hydon 氏(同上)がつとめた。
 会議には各国から合計31件の資料が提出され検討が 行われた。それらを大別すると, CCIRのReport252-2,Supplement 252-2 の予測法及びその他の方法によ る予測値の比較,又はそれ等と実測値との比較を行った ものが6件, 各種予測法の計算所要時間について言及し たものが8件,簡易化した予測法を提案したものが6件, 計算法に取り入れられる太陽指数や電離層臨界周波数な どに関するものが4件,その他となっている。
 我が国からは,所内に設けられた対策作業班が作成し, 電技審1-4小委員会の分科会で審議した「HF空間波 電界強度の測定値と予測値の比較」を提出した。これは, 秋田電波観測所が永年測定し続けてきた標準電波の電界 強度と,現在当所が所有している3つの予測法 (Rep.252-2,Sup.252-2及びHFMUFES)及びその他の 簡易法によって求めた計算値との比較を行ったもので, 太陽活動度の高かった年,中位の年及び低かった年の四 季にわたって検討を加えたもので,他国から提出された ものにくらべ大変すぐれたものであった。
 この会合は第1回目であったので,最適予測法を決め るところまでは行かず,予測法の位置づけとでも言うべ き大枠決めに留った。今回の検討をもとに,Sub-Working Group(参加国未定) で更に検討を加え,それらを 4月か5月に開催される第2回目の会合で論議すること になった。
  研究所訪問
 エステスパークとデンバーの中間位の所にボルダーが ある。会合のあと,通信及び電波科学のメッカとも云わ れる商務省の通信情報庁(NTIA)に所属する通信科学 研究所(ITS)と海洋大気庁(NOAA)に所属する環境 研究所(ERL)を訪問した。
 ITSでは,応用電磁科学部(部長:D.L.Lucas)と 伝搬予測とモデル開発研究室(室長:C.M.Rush),ま たERLでは所属の宇宙環境研究所(SEL)の研究部(部 長:K.Davies)の電離層物理研究室(室長:R. Donnelly)と支援部(部長:R.Grubb)を訪れ,最近の 研究について意見の交換を行った。 またNOAA所属の 波動伝搬研究所(WPL)と国立地球物理及び太陽地球デ ータセンタ(NGSDC)にも足をのばし,研究活動を見, 聞きした。
 おわりに米国コロラド州で開かれた,IWP6/12会 合への出席及びITS,ERL等の訪問の機会を与えて下さ ったことに対し深く感謝します。またITSの秋間浩博士, SELに滞在中の菊池崇主任研究官の御好意にも深謝い たします。

(調査部通信調査研究室長)


短   信


宇宙開発計画決定さる

 第5回宇宙開発委員会定例会議が3月18日に開催され, 第一部会から報告された宇宙開発計画(昭和55年度決定 )が決定された。当所に関連した改定部分は次の通りで ある。
@海域及び陸域観測衛星シリーズについては,観測手段 の記述が具体的となり,合成開口レーダ,多周波マイク ロ渡放射計等による観測技術及び情報処理技術の研究を 行うとしたこと。A電磁圏及び固体地球観測衛星シリー ズについては,金星電離層観測計画(VISE)関係の記 述を削除し,電離層観測衛星技術を一層発展させ,より 高度な電磁環境の観測技術の研究を行う。B実験用中型 放送衛星(BS)については,トランスポンダの不具合の ため,今後は,衛星放送に用いる電波の伝搬特性,三軸 姿勢制御技術に関する実験等を引き続き行うことを目的 として運用する。C移動体通信技術衛星シリーズについ ては,衛星を利用した捜索救難のための技術の研究を行 う。その他,ETS-Vについては,昭和57年度打ち上 げを目標に引き続き開発を進めること,H-Tロケット については,所要の開発を行うこととし,この一環とし て昭和60年代初頭に打ち上げることを目標に,H-T 2段式試験用ロケットの開発を行うこととなった。



RRL/NASDA共同研究委員会(第5回)開催さる

 標記委員会が3月11日, 当所においてNASDA側から 鈴木副理事長ほか21名,当所から栗原所長ほか21名の参 加を得て開催された。
 委員会は,栗原所長,鈴木副理事長の挨拶の後,昭和 55年度共同研究等の成果報告及び昭和56年度共同研究等 の実施計画について審議が行われた。
 56年度は,「TDRSによる追跡管制技術の研究」, 「AMES Lバンドダイプレクサ及びインタフェースの検討 」と,「マイクロ波リモートセンサの研究」が共同研究 として,「レーザを用いた衛星姿勢検出法に関する研究」 が技術協力として,「DCSに関する技術的調査研究」が技 術援助として,それぞれ継続されることになった。また, 「ETS-Uによる電波伝搬特性の研究」を新規の技術協 力とすることが承認された。
 引き続き,当所の56年度研究計画とNASDAの56年度, 事業計画の概要説明が行われ閉会となった。



災害対策用衛星通信システムに関する実験

 災害対策用衛星通信システムに関する実験は去る3月 23日から3月27日にわたって行われ成功裡に終了した。 本実験はCS応用実験の一環として実施されたもので, 当所鹿島支所のFM-SCPC局(主局)及び新たに山川電 波観測所に設置したPSK-SCPC局(移動局),警察庁 A局(本庁),B局(福岡県警移動局)にFM-SCPC装置及 びチャンネル制御用プロセッサ装置を付加し,上記4局 間で基礎実験及び実際に則した総合通信実験を実施した。 実用時を想定した一般通信実験緊急割込み通話実験,緊 急同報通信実験とこれらを組み合せた実験も実施した。 各局間総合特性,想定緊急通信等,所期の性能が確認さ れた。



CSダウンリンクに対する第2回干渉量測定実施

  CS回線が地上方式から受ける干渉量の測定(本ニュ ース第59号)のうち横須賀市内での測定をこの3月実施 したので報告する。
測定日及び測定地点は以下の通りである。
 10日,11日;日産自動車追浜工場テストコース内
 12日   ;電電公社円海山中継所下空地
 日産迫浜工場内では,地上系受信アンテナ後方におけ るビーム内での測定として,地上系ビームの広がりを考 慮し,地上系ビームにほぼ垂直な方向に4か所移動して 測定した。写真は測定の様子を示したものである。地上 系の電波は写真右方向からほぼ水平に入射しており,通 常の状態では干渉は検出できない。しかし,写真のよう に金属板を用いて反射させた場合,干渉によるノイズの 増加がRF帯で約5dB見られた。
 円海山においては,地上方式送信アンテナの極く近く (約40m)での測定を実施したが,互いにビームの方向 が異るため干渉は検出できなかった。
 11月と3月の二回の測定により,CS回線(準ミリ波 帯)は,余程条件が悪くない限り,地上方式からの干渉 を受けないことがほぼ明らかとなった。


日産追浜工場内での測定の様子



「広域オゾンモ二タのための航空機搭載型レーザ・レー ダ装置」の開発

 通信機器部物性応用研究室では,環境庁の試験研究費 により 「広域オゾンモニタのための航空機搭載型レーザ レーダ装置」の研究開発を進めている。開発中の航空機 搭載型の装置は,過去数年間研究を行って来た「CO2 レーザを用いた大気中オゾン測定用差分吸収方式」をも とに,受信方式にヘテロダイン検出法を取り入れて小型, 高感度化を図ったものである。小型航空機グランドコマ ンダを用い,東京湾での海面,仙台平野での雪面,関東 平野での市街地,田畑,森林等,各種地表面からの反射 光を受信する飛行実験を25時間以上行った。取得した実 験データのこれまでの解析では,この装置によりオゾン の環境濃度(0.03ppm)を測定できうる見通しがつい た。現在,データ解析結果をもとにして装置の改良を行 い,今夏の光化学スモッグの観測に向けシステムの整備 を進めている。


航空機実験の様子



上層風ラスレーダの開発

 第二特別研究室では,環境庁に一括計上される国立機 関公害防止等試験研究費により,昭和55年度より3年計 画で,電波音波共用上層風隔測装置(上層風ラスレーダ と略称する)の開発研究を推進している。
 最近,上層風ラスレーダの開発に資するための試作装 置が完成し,また,上層風ラスレーダ無線局(周波数 890.5MHz,Fo,10W)検査も合格して,いよいよ本格 的な実験を開始する運びとなった。
 上層風ラスレーダの開発研究では,これまで開発を進 めてきた気温高度分布測定用のラス・レーダを3台組合 せて上層風を算定する方式と,反射電波強度集束像追跡 方式の2方式についての実験研究を進める予定である。 後者の方式は,地上の音源から大気中に発射されるパル ス音波で形成される球形音波面に向けてCW電波を発射 した時,その反射波は,大地上に比較的小さい集束像を 結ぶこと,及び音波射線が気流によって変位することを 利用し,アレイ状に配列された多数の独立な受信機によ って反射電波集束像を追跡して上空の風向風速高度分布 を遠隔測定しようとするものである。