CCIR研究委員会最終会議


栗原 芳高・中橋 信弘・古漬 洋治

  まえがき
 標記の会議が1981年8月19日から11月3日までの79日 間,ジュネーブで開催された。筆者等は,日本代表団の メンバーとしてこの会議に出席したので,以下に会議の 模様,特に当所と関係の深い事項を中心にして報告す る。
  会議の概要
 今回のCCIR研究委員会(SG)最終会議は,1980年 のSG中間会議に続くもので,1982年のCCIR第15回 総会に直結するものである。また,この最終会議をとり まく情勢として,1979年の世界無線通信主管庁会議 (WARC-79)と,それの準備のため1978年に開かれたSP M,更に今後に予定されるMobile(移動業務),HF-BC (短波放送),Space(宇宙)に関するWARC, BS (放送衛星)に関するRARC(地域主管庁会議)及び それの準備会合等があり,今最終会議では,これらと深 く係わりをもちながら審議が行われた。特に,1983年開 催予定のWARC-Mobileに関しては,その準備のため のSG8特別会議が,今最終会議会期中の9月7日から 18日まで開かれた。
 会議の成果として特徴的なことは,ディジタル技術, 宇宙通信技術,中でも放送衛星に関するものが急増して いることであった。
 会議への参加主管庁は57か国,私企業・国際機関等は 計67で,参加者総数1166名,(トップは米国の118名, 日本は51名で,英・伊・加・西独に次ぎ6位)であった。 寄与文書の総数は1280件で,日本の寄与文書は112件(案 件数101件),その内当所からの寄与は18件(案件数は17 件)である。表に当所からの寄与文書とその審議結果 を示すが,ほとんどすべての寄与文書の趣旨が採択され た。なお表中の処理文書について,通常とあるのは従来 通りのもの,即ち改訂部分あるいは新設部分のみを内容 としたものであり,5000番台とあるのは改訂あるいは新 設されたテキストの全文を含んだものであり,今会合か ら発足した文書処理方法である。
  SG2(宇宙研究及び電波天文)
 日本からの寄与文書は4件,内当所からのものは,Doc. (Document)2/123の1件であった。これは,表に示 したようにDoc. 10-11S/119とダブルナンバーとなっ ているもので,BS実験により得られた姿勢制御の精度 を紹介している。審議の結果,Reportの中に,ピッチ及 びロールについては±0.03°,ヨーについては±0.3°の誤 差であること,ただし,ホイールの回転速度のゼロクロ ス及び太陽の干渉の影響で,過渡的にはこの値を超える ことが採録された。
 データ中継衛星(DRS)関係は,専ら米国の寄与文 書をもとに審議が行われ,従来のRep.(Report)及びRec. (Recommendation)の統合がなされるとともに,新しい 情報として,将来計画であるTDAS (Tracking and Data Acquisition System) の記述等が加えられた。ま た,DRSの枠を超え,広い観点から衛星間リンクを扱 う新Q.(Question)が採択された。

電波研究所寄与文書の処理状況1

電波研究所寄与文書の処理状況2

 深宇宙関係も米国の寄与文書のみであったが,論議の 中心は,深宇宙の定義に関するものである。即ち,現行の 無線通信規則等では,およそ月以遠の空間(38万q以上) となっているのを,約200万q以遠の空間とするよう, 新Rep. 及び新Rec. を米国は提案したが,ソ連等が慎重 論を唱え,結局,Q. 及びS. P. (Study Prolgram)の中 で今後の研究課題とされるにとどまった。
 リモートセンシング関係で,日本として特に問題とし たのは米国から出された18GHz帯におけるパッシブセン サに関する文書であった。これは,SG2のほかSG4 においても審議され、我が国の通信衛星計画の実態と矛 盾しないよう修正が行われた。
 可視・赤外領域における通信,特に伝搬については, 新たにQ. が設けられるとともに,英国の寄与文書をも とにRep. 681の改訂が行われた。その際,当所の指摘に より所要の修正が加えられた。
 WARC-Space関係では,SG2としても対応する ため,1980年の中間会議においてIWP2/1を設置し, 1981年5月に第1回会合を用いた。そして今会期中に第 2回会合を開き,第1回会合をもとに作成されたRep. を部分的に改訂し,TWP2/1の作業を一応終了した。
  SG4(固定衛星業務)
 日本からの寄与文書は13件,その内当所からのものは 3件(実質5件)で,これらの処理状況は表に示す通りで ある。まず,Doc. 4/264については,鹿島における実験 をベースに宇宙局の運用及び保守に関する新Q. と,これ に基づく2件の新Rep. を提案したものであるが,残念 ながら採択されるに至らなかった。即ち,英,仏,米, ソ連の代表からコメントがあったので,日本代表は議場 の内外で局面打開のため努力した。しかし米代表の反対 が固く,このような結果に終わった。
 Doc. 4/265は,サイトダイバーシチに関するもので, 鹿島局及び平磯局のTDMAシステムに適用された最先 端のディジタル技術を紹介したものである。また,Doc. 4/267は,鹿島局でBSにより行った,上り回線の電力制 御の実験結果を述べたものである。これら二つの文書は, 審議の結果,共にRep. 552の改訂に反映された。
 その他,特記すべきことは,(1)地球局のアンテナパタ ーンの設計目標値に関する新勧告案が,インドの保留, 中国のコメント(適用年次は総会で決めるべきである) 付きながら採択されたこと,(2)CSのアンテナパターン について,その実測データが先の中間会議でRep. に取 り入れられたが,説明文との間に矛盾があることが分っ て,今会合で訂正したこと,(3)地球局アンテナ天空温度 の仰角特性について,西独からの寄与文書を当所の指摘 で修正したこと,(4)CS実験でも使用されている小容量 局について,従来のRep. から分離し新Rep. が作成され たこと,(5)WARC-Spaceについて,IWP4/1が 中心となって準備作業を行ってきたところ,一応の成果 を得たので,IWP4/1は今後,軌道有効利用に関す る専門家グループに戻ることとなったこと,(6)固定衛星 業務ハンドブック(MSFS)について,先の中間会議 以来関係者により作成準備がなされてきたが(当所は伝 搬データを提供),今会合で草案を審議し,今後の発行手 続きを決めたこと等である。
  SG5(非電離供覧内伝搬)
 日本から12件の寄与文責を提案し,当所からは,ブラ イトバンド高度の地上気温依存性,降雨減衰の周波数ス ゲーリング,衛星地上間伝搬データなどに関する4件の 寄与文書を提案し,いずれも貴重なものとして,関連テ キストの改訂に反映された。
 IWP5/4(周波数帯分配用世界地域区分に関す る技術・運用上の研究)においては,5月に会合を開き, 新区域の設定はメリットが少ないように思われるという 結論をSG5最終会議に提出した。これを受けて,本総 会では,この報告を第15回CCIR総会に提出し,今後 の作業は同総会の決定に委ねることとし,IWP5/4 を廃止した。
 SG5では,重要な項目はIWPで事前に検討する傾 向が強くなっている。伝搬推定法はIWP5/2が担当し ているが,その担当分野があまりにも広がりすぎたとし て,地上の放送・移動伝搬を担当するIWP5/5が新設 された。議長には,フランスのBerthod氏が選出され, 日本を含む12か国が参加した。
 長年懸案であった降雨減衰推定法について,一応の合 意が得られ,降雨気候区分も全面的に改訂された。
 また,無線通信規則との不整合,関連Report間の不 一致が問題となっていた干渉に関するテキストが修正さ れ,統一のとれたものとなった。
  SG6(電離媒質内伝搬)
 日本から4件の寄与文書を提案し,当所からは,電離 層観測衛星(ISS-b),国際電離層研究衛星(ISIS), 及び技術試験衛星U型(ETS-U)を用いた観測デー タの解析結果に関する3件の寄与文書を提案し,いずれ も有用な情報として,関連Reportに採録された。
 IWP6/12の成果に基づいて,1984年に開催を予定され ている短波放送に関する世界無線通信主管庁会議 (WARC-HFBC)のための実用的短波電界強度計算法が まとめられ,新Reportとして採択された。また,この Reportが1984年WARC-HFBCで用いられるのに最 適なものであり,更にIWP6/12は,次期中間会議 までに,精度その他の検討を続けて,その結果を中間会 議に報告すべきであるとの新Resolutionが採択された。
 IWPの大幅な見直しが行われ,従来11あったIWP のうち,その任務を遂行完了した,あるいは,その活動 が不活発になっているIWP6/3,6/4,6/9,6/10, 6/11の五つが廃止された。
 なお,最高利用可能周波数(MUF)の定義が改訂さ れ,従来のstandard MUFとclassical MUFとを合せ て,basic MUFなる言葉が造られた。これは伝搬上純 粋に決まるMUFであり,運用上決まるOperational MUF と対比して用いることとなった。
  SG7(標準周波数と報時信号)
 日本から4件の寄与文書を提案し,当所からは,放送 衛星を用いた時刻・周波数分配及び平均原子時の安定度 に関する2件の寄与文書を提案し,いずれも有用なもの として,関連Reportに採録された。
 IWP7/4の成果に基づいて,衛星を用いた時刻信号 と標準周波数の分配に関する新勧告が採択されると共に, 従来三つのテキストに分散していた人工衛星を介しての 時刻信号と標準周波数の分配に関する記述が一つのテキ ストにまとめられ,使い易くなった。また,静止気象衛 星を用いてタイムコードを分配することの有効性を述べ た新Opinion案は,ほぼ原案通り採択された。これにつ いて,日本から,タイムコードに加えてレンジングシグ ナルの追記を主張したが,提案の有用性については理解 されたものの,レンジングシグナルは衛星システムには 既存の情報であるから,殊更記載すべき事項ではないと して受け入れられなかった。
 中間会議において議論を呼んだ時刻同期に影響を及ぼ す相対論的効果の問題は,1980年9月に開催された秒の 定義に関する諮問委員会(CCDS)で引き続き議論さ れた。この結果と,米国からの提案を基にして,テキス トの大幅な改訂が行われ,内容が最新のものになった。
  SG8(移動業務)特別会議
 遭難安全用の電話,ディジタルセレコール(DSC), 狭帯域直接印刷電信(NBDP)に関する日本のチャネ ル配列案は,SG8最終会議にも既に提出され,米国案 と共に採択された。これを基に審議が進み,結論として, 2案とも技術的に可能であるが,日本案は将来NBDP の割当周波数を変更する必要がないので運用上の利点が あるとの言及がなされた。
 2182kHzのSSB化については,日本などの意見を取 り入れて,SSB(J3E)は技術上の利点はあるが,  将来の全世界遭難安全システム(FGMDSS)の実施 前にSSB化すると,既存の聴守受信機の取替が必要と なるので,SSB化のスケジュールはFGMDSSへの 移行計画に依存することとなった。
 非常用位置指示無線標識(EPIRB)の将来の利用 と特性に関して,CCIRにおける衛星EPIRBの勧 告は次会期(1982−86)の最終会議に作成される見込み であるので,1983年のWARC-Mobileで技術運用特性 を勧告するのは時期尚早であるとされた。また2182kHz を用いる将来のEPTRBは,CCIR Rec. 493-2(MODF) に従うべきであり,121.5MHz及び243MHzを 用いるEPIRBの信号特性はICAOの基準に従うべ きとされた。
  SG 10-11(放送衛星)
 SG10-11合同会議は,録音・録画(10-11R)及び放 送衛星(10-11S)の両分野を対象に,先の中間会議と 同様,SG10,11とは区別して開かれた。この報告では, 10-11Sについて記すこととする。10-11Sへの日本か らの寄与文書は9件,内当所からのものは表に示したよ うに5件で,いずれもテキストに反映された。
 当所の寄与文書は,1件を除いて直接BS実験と関連 しており,特にDoc. 10-11S/114は,諸外国の要請 に応えてBS実験の結果を総合的に報告したものである。
 フィーダリンクの電力制御については,日本の寄与文 書及び携行資料,並びにEBUの遅着文書を基に活発な 討議が行われた。そして電力制御のメリット,デメリッ トがあげられ,その有効性については今後の検討が必要 とされた。SG4においては,上り回線の電力制御は有 効としているのと対照的である。なお,BSによるフィ ーダリンク電力制御の実験結果は,10-11Sのテキスト に取り入られた。
 BSの姿勢制御については, SG2にも提出された文 書をもとに,10-11Sのテキストに取り入れられた。そ の際,ヨーの制御に使用するMECO (Monopulse sensor and Eearth sensor Combination) 方式に関連し て,外国代表のコメントにより, BS衛星の直下点方向 と鹿島局方向とのなす角が約7°である旨,加えられた。
 前記のように,放送衛星は先の中間会議からSG10, 11とは別個の場で審議されたが,今会合ではこの方向 がより明確になった。即ち,放送衛星に関するQ. 2件, S. P. 15件として再編成された。ただし, この中には内 容的にも新しいS. P. ZL/10-11も含まれている。これ は仏提案をもとに,放送衛星のTT&C信号,RF特 性試験信号を研究することとしたものである。
 WARC-Spaccについては,先の中間会議で設けら れたIWP10-11/1が報告書を提出してきた。その内 容は,また,IWP4/1の報告書の一部を構成してい る。今会期中の10-11Sは,時間不足のため,十分な審 議ができなかったので,IWP10-11/1は今後も存続 させ,報告書改訂の作業を行うこととされた。
 新しくTWP 10-11/3が今会期中に設けられ,各地 域毎の,できれば世界規模の,地上又は衛星テレビジョ ン回線における複数音声信号の統一基準について研究す ることとなった。そして日本もこのIWPへの参加を表 明した。また,このIWPの設立にも関連して,ディジ タル音声方式,多重方式,変調方式についてRep. の作 成及び改訂がなされた。
  あとがき
 今最終会議は,79日間にわたって全SG会議及びSG 8特別会議が開かれたため,日本から51名の代表団が参 加し大いに活躍した。当所からは,栗原所長が首席代表 として出席し,古濱が会議前半のSG5,6,7,8を 中橋が会議後半のSG2,4,10-11Sを担当した。1980年 の中間会議においては, SG4,10-11Sに対し当 所から代表を派遣できなかったが,今回はこれらのSG もカバーすることができた。
 どのSGでも共通的なことであるが,ディジタル技術 に関する問題が脚光を浴びており,今後この今野の寄与 が期待されている。IWPについて言えば,その活動が SG会議の審議方向を決める場合が多く,IWPの段階 における寄与が今後共重要であると思われる。
 SG4の審議最終日に,CCIR事務局のDr. Maoが 今期会合を最後に引退することが披露され,1949年以来 の氏の活躍に対し,Kirby委員長から感謝の言葉と記念 品が贈られた。
 今期会合は,日本の暦の上で丁度秋に当たり,会議の 初めの頃は,残暑の中,好天に恵まれ湿度が低く快適で あった。名物のレマン湖の大噴水は,9月末までは毎日, 10月に入ってからも晴天の日には眺められた。ジュネー ブだけでなく,スイス各地の花飾りも,旅行者の目を楽 しませてくれた。ジュネーブのコルナウァン駅は地下街 の建設工事中であったが,その後ほぼ完成した由である。
 今回の会議参加については,準備段階及び会議開催中、 種々の面で所外,所内の関係各位にお世話になり深く感 謝しています。

      (所  長)
      (調査部長)
(超高周波伝搬研究室長)




IEC/SC12Fドブロブニク会議に出席して


久保田 文人

  はじめに
 昭和56年10月12日から22日まで11日間にわたり,ユー ゴスラビア国のドブロブニク市において,IECのSC12F (移動無線)及び同WGの会議が開かれた。筆者は 他の2名の代表,中村嘉男(日本電気)及び後藤昭夫(東 芝)の両氏と共にこの会議に出席したので,その概要及 びSC12Fの活動状況を報告する。
  IEC/SC12Fについて
 IEC(国際電気標準会議)は,1908年創設された国 際機関であって,電気及び電子の分野における標準化に ついて国際協調を促進することを目的に活動を行ってい る。組織は総会,理事会の下に約80の専門委員会(TC), 約110の分科委員会(SC)を持ち,各分野で専門的な 標準化作業が進められている。
 TC12(無線通信)は8分科委員会(表参照)から成 り,無線通信及び放送技術分野における,設備や機器の 性能測定法の標準化を責務としており,性能規格の研究 を進めるCCIR等地の国際機関と協力関係を保ちなが ら,国際協調に貢献している。TC12に対応する国内の 審議担当機関は電子通信学会にあって,郵政省も積極的 に協力を行っている。
 SC12Fは1972年,移動業務用機器を扱う専門のSCと して誕生して以来,今日までに一部分未完ながら次の IEC Publicationを作成した。
 No. 489-1 移動業務用機器の環境条件
   489-2 AM,FM送信機の測定法
   489-3 AM,FM受信機の測定法
   489-4 SSB送信機の測定法
   489-5 SSB受信機の測定法
   489-6 選択呼出装置の測定法
   489-7 秘話装置の測定法
 IECのPublication Standardは,強制力はないが 各国が国内規格又は団体規格として採用することを勧告 しており,近年GATTスタンダードコードの見地から, 一層その重要度を増してきたと言うことができる。
 移動業務,特に陸上移動は,各国で独自に発達したた め,性能規格及び測定法の統一は困難であったが,最近 CCIRで漸く勧告化が行われ,また12Fの標準化作業 も進行するに至った。わが国でも電波技術審議会が陸上 移動狭帯域化通信方式の審議にあたってこれら国際的情 勢を考慮し,技術基準はCCIR勧告に準拠するととも に,標準測定法として上記489-2〜5の採用を答申し ていることは周知のことである。


表 IEC/TC12の構成

  トブロブニク会議の概要
 SC12F会議には10か国20名の代表が集って開かれた。 議題はPublicationの原案である14件の幹事国文書で, これに対し各国から77件の意見文書が寄せられた(日本 からは7件提出した)。会議ではそのうちの7件の原案に ついて審議したが,概略は次の通りである。
●AM,FM及びSSBのアンテナ内蔵型受信機の輻射 及び測定治具での測定法−ほぼ完成し,「6か月規則」 に従って各国から文書による賛否の投票手続をとること とした。
●NADレポート:インパルス雑音による受信機性能の 劣化度評価法−すでに完成しているNAD(雑音振幅 分布)測定法と合わせて,IECレポートとして発行す ることが決った。
●選択呼出装置のRF測定法−改訂作業を行ったが完 成に至らず,次回送りとなった。
 続いて開かれたWG(Working Group)は,幹事国文 青の原案作成を任務としており,日本からは先の中村氏 と筆者がメンバーに登録されている。今回は技術的に興 味深い項目が審議された。概略は次の通りである。
○ストリップライン測定治具−ドイツから報告され, 標準測定法の中へ取入られることになった。
○ランダム・フイールド測定法−日本から提案した。 従来の輻射測定と異なった考え方が理解され,引き続き 寄与を求められた。
○データ伝送用送信機及び受信機の測定法−各国が分 担して執筆した草案を審議し,幹事国文書原案の作成を 行った。
○SSB送信機隣接チャネル電力測定法−議論を行い, 英国が分担する原案作成のガイダンスを示した。
  おわりに
 ドブロブニク会議では,最も注目していたAM,FM 送信機隣接チャネル電力測定法が未審議のまま次回送り になるなど不満な点もあったが,永年にわたって検討さ れてきた問題に結着がつけられたことは評価されよう。
 SC12Fはこの10年間の活動で,アナログ通信方式の 測定法はほぼ完成させてきた。今後は最近急速に実用化 が進行しているディジタル通信方式を主として取扱うこ とになる。わが国はこの分野で世界のトップクラスの技 術水準にあり,今後は積極的にその成果を委員会に寄与 し,国際的な技術水準の向上に協力していくことが必要 であると考えられる。
 最後に,今回の会議出席の機会を与えていただいた関 係各位に対し深く感謝致します。

(通信機器部通信方式研究室研究官)


短   信


第43回電離層観測技術打合せ会議開催

 電離層斜め観測計画の一環として実施した山川電波観 測所の観測機の改造がこの程完了し,既に改造を終えた 稚内電波観測所との間で実験が可能となったので,各観 測所の実務担当者による打合せ会議を2月18日と19日, 山川電波観測所において開催した。
 本計画は「短期電波予報警報のための電離層観測」の 一環として電波の電離層伝搬状況の実時間観視を行うも のである。すなわち,各観測所で発射される定常電離層 観測波を国分寺(または他観測所で)で受信することに より即時的あるいは即日的な予報をその目的とする。
 会議の前半では装置のシステムの紹介とその取り扱い についての説明及び実習を行い,後半には稚内から発射 された定常電離層観測波を山川で受信するとともに今後 の実験計画推進に関する討論を行い,実務担当者一同が 現地でなくては得られない体験をし成功裸に会議が終了 した。



第15回電波監理局技術調査調と電波研究所との 事務打合せ会議開催さる

 標記会議が2月19日,本省から佐藤技術調査課長ほか 9名,当所から若井企画部長ほか25名が参加して,当所 大会議室において開催された。この会議は,電波研究所 の事務をつかさどる技術調査課と当所との間の意思疎通 を円滑にするため,毎年2回開催されている。年度初め の会議では,新年度の行政計画・研究計画の進め方につ いて,年度終りの会議では,本省協力依頼調査研究事項 に対する当所からの報告を中心に討議している。
 今会議では,56年度依頼のあった12件の研究調査事項 に対して当所担当者から成果を報告したほか,型式検定, 機器の較正問題等について活発な意見交換を行った。



第7回RRL/NASDA共同研先委員会開催される

 標記委員会が2月24日,当所において開催された。 NASDA側からは大沢副理事長ほか21名,当所からは上 島次長ほか23名が出席した。
 委員会は,上島次長,園山理事の挨拶の後,昭和56年 度共同研究等の成果報告((1)共同研究 衛星間通信技術 を用いた追跡管制及びデータ中継衛星システムの調査研 究,(2)共同研究 航空・海上通信ミッション機器と衛星 本体の整合性の研究,(3)共同研究 マイクロ波リモート センサの研究,(4)技術協力 ETS-Uによる電波伝ぱ ん特性の研究,(5)技術協力 レーザを用いた衛星姿勢検 出法に関する研究,(6)技術援助 DCSに関する技術的 調査研究)及び昭和57年度共同研究計画の提案7件につ いて審議が行われた。
 この後,当所の昭和57年度研究計画とNASDAの昭 和57年度事業計画の概要説明が行われた。



昭和51年度研究プロジェクトのヒアリング終る

 昨年12月初旬に行った昭和56年度重要研究項目進捗状 況の中間ヒアリングに引続き,当所幹部による昭和57年 度研究プロジェクトのヒアリングを1月21日から2月18 日の間実施した。電波監理局(行政)の研究調査依頼事 項も含めて継続推進するもの95件,新設を希望するもの 5件及び終了するもの10件が審議された。その結果大部 分のプロジェクト案については,研究実施上の問題点を 指摘し研究の方向付けを行ったうえで提案通り同意され たが,一部については他のプロジェクトとの統合や細目 事項の変更・中止が指示された。また,一部新設希望プ ロジェクトについても時期尚早であることが指摘され た。これらの審議結果は企画部で整理され「昭和57年度 研究調査計画案ヒアリングの審議結果」として「評価」 と「意見」を付して各部に通知される。昭和57年度研究 プロジェクト(案)は各主任担当者により指摘事項と実行 予算を踏まえて修正された後承認されることになる。



ISISの運用継続

 国際電離層研究衛星(ISIS)について,カナダ国通信 省通信研究センター(CRC)は運用期限をさらに1年 延長し,1983年3月まで継続する見通しであることが, CRC所長Dr. Blevisからの書簡で明らかとなった。 ISIS-1及び2号衛星のテレメトリ受信は現在,鹿島支 所及び南極昭和基地で行っている。本年4月以降につい てもカナダが運用継続することを前提に,昭和基地へも 受信用磁気テープを既に輸送するなど我が国も継続態勢 を整えていた折から,今回の書簡を歓迎している。これ により昭和57年度も両地球局において同衛星からのデー タ受信を引続き実施することとなった。



緯度観測所との間でVLBI共同研究の覚書き締結

 超長基線電波干渉計システム(VLBI)の研究開発に 関して,当所と文部省緯度観測所の間で共同研究を実施 するための覚書が,昭年56年12月に取り交わされた。
 本覚書の主な目的は,当所で開発中のVLBIデータ 解析プログラムについて,緯度観測所における地球回転, 固体地球の運動並びに大気に関する最新の研究成果を導 入し,わが国独自の高精度解析ソフトウエアを開発する ことにある。
 当所のVLBIシステム研究開発5か年計画は,すで に第3年次を終了し,58年度末に予定している初の日米・ 共同実験実施にむけて,システム開発は順調に進んでい る。59年度以降5か年間の共同観測の継続についても, 既にNASAとの合意をみている。この観測は,大陸間 プレート運動,精密時刻比較及び地球回転運動などにつ いて画期的なデータを与えるものとして,国内外から大 きな期待がよせられている。
 国内精密測地網規正を目標とするVLBIシステム開 発については,すでに国土地理院との間で共同研究を推 進しているが,今回の緯度観測所との共同研究の発足に よりソフトウェアの面でも一層の充実がはかられ,わが 国VLBI技術の進展に大きく寄与するものと期待され る。