電 波 部
はじめに
図1 電離層斜め観測システム
表1 主要諸元
電離層の観測は上記5ヶ所の観測所で15分毎(毎時0
分,15分,30分,45分)に行われて来た。取得された観
測データは読み取り後,国分寺本所へ送られ,整理,配
布,保存されて来た。このシステムでは国分寺を除く観
測所の送信電波を国分寺で受信するため,各観測所の観
測時刻を順次30秒づつずらし,表2に示すようなタイム
スケジュールで行うようになっている。すなわち,運用
は,従来の毎時零分の観測を例にとれば,最初,稚内で
59分06秒から30秒までの間に頭上の電離層の観測をし,
同時にそこから発射された伝搬可能な周波数の電波が国
分寺において受信される。次いで秋田からは59分36秒か
ら60秒までの間に電波が発射される。以下同じように北
から南の観測所へ順次観測が移り変って行く。したがっ
て,国分寺では2分30秒の間に,4つの観測所のそれぞ
れ中間点の電離層の状態及び伝搬状態が,把握できるこ
とになる。図2は,電離層観測機及び斜め観測をするた
めに必要な付加装置を示したものである。この付加装置
は周波数の安定度が±1×10^-11/月であるルビジウム周
波数標準器(基準周波数と基準秒信号の原振)と送信周
波数の変化割合を正しく20kHz120msにし62MHz〜86
MHzの範囲の周波数を発生させる周波数シンセサイザが
主体をなし,同期信号を作る信号制御部を含んでいる。
付加装置でつくられた62MHz〜86MHzの周波数は,電離
層観測機内61MHzの周波数と混合され,その差成分であ
る1MHz〜25MHzをパルス電波にし,電力増幅してデル
タ型アンテナから発射する。国分寺には,斜め観測専用の
受信装置を設置し,各観測所ごとの回線自動切換器(伝搬
時間補正回路)を通して斜めイオノグラムを記録する。
なお伝搬周波数に対応した受信電界強度も同時に記録す
る。また,ネットワークとして全観測所の観測機は同期
がとれているから,地方観測所では,自所の観測時間以
外は受信機だけ働かして,他の観測所の斜め伝搬波を受
信することができる。地方観測所で完全自動観測記録方
式を行うとすれば,斜め用の記録部と回線自動切換器が
必要になる。
図2 付加装置と観測機の結合
表2 観測タイムスケジュール
斜めイオノグラム
垂直打上げによる電離層観測で得られる反射波の周波
数と高さの関係を示す図は,イオノグラムと呼び,離れ
た2点間で斜め観測装置によって得られる周波数と伝搬
距離(または時間)の関係を示す図は,斜めイオノグラ
ムと呼ばれる。図3は,昭和57年12月20日12時15分の観
測記録の例であり,上段左が稚内−東京(国分寺)回線,
右が秋田−東京回線,下段左は
山川−東京そして右は沖縄−東
京の各回線の斜めイオノグラム,
中央は東京のイオノグラムであ
る。これら斜めイオノグラムの
縦軸は,相対的(原点は示され
ていない)な伝搬距離で100q
/目盛になっている。それぞれ
の斜めイオノグラムに現われて
いる伝搬波の最も低い周波数は
最低使用周波数(LUF),最も
高い周波数は最高使用周波数
(MUF)と呼ばれ,その間の周
波数範囲が伝搬可能な周波数帯
域となる。これらは回線の長さ
によって異なる値をとる。また各斜めイオノ
グラムには,多数のトレースが現われている
が,これらは下側から順に電離層のE層を1
回反射して到達したもの,F層を1回反射し
て到達したもの,さらに2回,3回と反射し
たものなどである。多重反射による伝搬波の
ある周波数範囲も情報を伝送することは可能
であるが,多重波間の干渉が生じるので通信
の品質が低下する。ところが反射回数の最も
少ないトレースで周波数が高いところは,単
一伝搬波となるので,この周波数帯域を使用
すると,上記のような干渉がないから良好な
通信を行うことができる。斜めイオノグラム
を使用すれば,回線の中点の真上の電離層の
状態を計算で求めることができるので,これ
を地球大気科学の情報として利用すれば,も
ともと電波観測所単独で得られるデータに加
えて,倍以上のデータが得られることになる。
また時々刻々変化する電波伝搬状態を把握す
るために用いれば,実回線との条件の違いや,
割当てられている周波数などの制約はあるも
のの,最適周波数を用いて信頼度の高い通信
を行うことができるようになる。最近Es層が
反射体となり,遠くで使用されている電波が,
FM放送やTVの低いチャンネルに混信を与え
るという障害が起ている。これまでは点とし
てとらえざるを得なかったこれらの情報が,
各観測所のイオノグラムと,斜めイオノグラムによって,
Es層の発生,発達状況,あるいはその移動方向など,面
としてとらえることができるようになったので,Es層に
よる混信障害の有効な予知資料になることが期待できる。
今までの5観測点が,15観測点に増えたことにより,時
刻,季節,太陽活動によって変動し,地磁気嵐によって大き
く影響される電離層伝搬情報を,さらに詳細に調べるこ
とが可能になった。
図3 東京(国分寺)の垂直イオノグラム及び東京
稚内,秋田,山川,沖縄間の斜めイオノグラム
おわりに
当所が計画した電離層斜め観測のあらましについて述
べたが,このシステムの完成によれば,これまでは考え
られなかった伝搬情報を,何時でも,誰でも,自由に利
用できるという訳である。それには若干の経費を伴うが,
同期型簡易受信機を用意すれば,国内5電波観測所から
の電波を直接受信することができるからである。いわば
伝搬情報のオープンシステムができあがった訳であるか
ら,電波科学の発展のため,あるいは電波の効率的利用
のために大いに役立つものと考えている。またこのシス
テムは,垂直打上げ観測の装置を利用し,電離層斜め観
測をネットワークとし,しかも定常的に行うことができ
るという世界でも初めての試みとして,国際電離層観測
網勧告委員会(INAG)の文書で広く紹介され各国から
強い関心が寄せられている。
(電波予報研究室 研究官 竹内 鉄雄)
通信衛星実験実施本部
はじめに
CSの応用実験は基本実験実施機関以外の参加を得て
昭和55年度に開始され,CS-2aの打上げられた57年度末
を以ってほとんど終了した。残された項目はコンピュー
タネットワーク実験のうち,電波研・東北大学の分であ
る。この応用実験への参加機関の一部は,58年5月CS-
2における公共,自営のユーザとして準ミリ波衛星回線
の実利用を開始した。このことからCSの応用実験は,
CS…2の実利用の発展に大いに役に立ったと考えられる
参加した機関は三年間の実験を総合報告としてまとめた
ので,その一部を紹介しつつ参加機関の印象などを述べ
てみたい。
CS応用実験とは
衛星通信の種々の利用形態に対する適用性を調べるた
め,関係機関(NTT,KDD,通信衛星連絡協議会,電波
利用調査研究会衛星実験部会委員等)の協力を得て実施
項目を決め,各ユーザのその分野での衛星通信実験を実
施,体得しよようとしたものである。
これらは国鉄,警察庁との公共業務用衛星通信システ
ムの実験,新聞協会と電気事業連合会(電事連),東北大,
KDDを含む準公共的な通信システムの実験,NTT独自の
将来のサービスに関する基礎実験に分けられる。
応用実験の実施方法及び成果のまとめ
CS実験と同じく実験実施計画書において実験内容の
概要,実験体制,実験システム,費用及び設備分担,実
験結果の評価公表等について明文化し,その後実験実施
手順書を定めた。その中ではCS基本実験の際と異なり
一項目一頁にまとめ簡潔に表現した。それに従って実験
を実施し,各々の機関との応用実験連絡会(NTTはCS
体制の中のCS実験連絡会)で評価検討し,後に報告書
としてまとめた。
実験の内容の概要
公共業務のように新しく衛星通信を経験する所は,ア
ンテナの設置,局の運用を含む初期回線設定を重要視し,
その上でその業務に必要な端末機器(TV,FAX,写真
伝送,データ伝送等)を用いた伝送品質の評価実験を行
っている。新聞協会並びに電事連は送受信系を電波研あ
るいはNTTに依存したのでその場合は主として端末機器
の接続,伝送品質の評価が中心となっている。電波研や
NTTは,前記のような地球局運用に関しては十分経験が
あるので,応用実験として参加する項目には,サイト
ダイバーシチのように自然現象に対処するための
かなり高度な研究要素を持つものや,NTTの高機能画像
会議等のように将来の統合ディジタルサービスを目指し
たシステムの具体的な評価を行うもの並びにネットワー
ク制御のような詳しい制御プロトコル(データのやり取
りに対する取り決め的なもの)を開発するものなどがあ
る。
実験の実用的な成果と問題点
警察庁はその業務の特殊性から非常災害時等の事件現
場からの情報を送る手段として,衛星通信を活用しよう
としており,前述のように,局の運搬や地球局設定訓練
を東京,大阪,静岡,福岡,千葉等の主たる管区警察で
実施し,地区の関係者が衛星通信に対応できるように教
育を行うとともに,衛星利用に対し理解を深めようと努
力を行った。また,実験としては,TV,FAX等のSS(ス
ペクトラム拡散方式)の実験とか電話交換機や超短波無
線機との接続実験を行っている。SS等は警察庁らしい
実験であるといえる。
災害対策用衛星通信システムに関する実験は当所2局
(鹿島,山川)と警察庁2局(東京,福岡)が参加して
行われ,災害対策共通チャネル用付加装置を用いて,非
常時の共通チャネルの確保に関して割込通話等の模擬訓
練を行ない,運用上の問題を明らかにした。主な問題点
は, システムの運用手順に対する通話者の習熟度や,運
用の原則を徹底させることなどであった。これにより災
害発生時,パニック状態になる回線の中で共通チャネル
を確保できることを証明したが,今後この方式はSSと
並んで災害通信に必ず取り入れられて行くものと考えら
れる。
国鉄も最近の新聞で報道されているように地震発生の
際の新幹線の安全対策としてCS-2を実利用しているが,
応用実験では国鉄技研が中心となって回線の基本特性,
データ伝送特性,静止画,ファクシミリ等の伝送実験を
行ない,衛星通信利用の基礎技術を習得した。
また,57年9月1日には国土庁−静岡間の防災訓練の
中で衛星ルートによる地震警報の通達,災害地への救援
活動の即時化等に関して大きな役割を果たした。以上の
ような応用実験を通じて現在のCS-2利用の基礎が築か
れて来た。
新聞紙面伝送の実験は都合2回行われた。それらはD
回線規格相当(帯域幅3.4kHz)のFM-SCPC回線(当
所)を利用したアナログ方式による紙面電送実験及びI
回線規格相当(帯域幅48kHz) の衛星回線(当所はPS
K-SCPC,NTTは準ミリ車載局の電話チャネル132回
線のうち12回線使用)を利用したディジタル方式による
紙面電送実験に分けられる。
内容については当所ニュースでも紹介されたことがあ
るので(No.74,1982.5),詳細は省き具体的な問題点につ
いてふれておく。
一回目の紙面電送実験では他の応用実験と同じく,基本
的な回線品質の測定の他に新聞社特有の回転ドラム式写
真伝送装置やデータ伝送機器を用いて鹿島と共同通信社
の屋上及び鹿島と読売新聞社の屋上との間で伝送実験を
行った。この中では各種のパラメータ(RF出力,モデル
出力等)をいろいろ変えて,それが伝送品質に与える影
響を細かく調べ且つ実利用に役立つデータが具体的な評
価とともに得られている。
前述のように中間周波数帯以上は当所,以下は新聞協
会と言うことで,そのインターフェース条件の調整に苦
労した。
信号がなかなか通らず,いろいろ点検した結果レベル
が合っていなかったことがわかったというようなことも
あった。当所内の実験の中でも端末をつなぎ換える時,
同様なトラブルが起っている。
また2回目のディジタル紙面電送実験では,装置が大
がかりで動かせないため,当所とNTTの車載局が朝
日新聞社に行き,鹿島折り返し2ホップ及び車載局折返
しの実験を行った。この時の大きな問題としてBER(ビ
ット誤り率)特性が10^-8よりよくならないと言う現象が
あって,技術者一同苦労したが未解決のまま残った。も
う少しスケジュールに余裕があれば,原因解明ができた
と思われる。一つの推測としては,電源ケーブル,測定
用の信号回線等も既設の装置に合わせた無理な配線をし
たためノイズを拾ったという可能性がある。
いずれも出来合のもののつなぎ合せと言うことで苦労し
たが,今後は一体化されたものまたインターフェースの
しっかりしたものを作れば問題ないと思われる。この紙
面電送に関しては上記のような問題も含めて実用にはま
だまだ解決すべき問題があるのでCS‐2を利用した郵政
省のパイロット実験の中でさらにそれらの問題を解決し
て行こうと考えている。
電事連の実験は主として9.6kbit〜2.4kbit のデータ
伝送とFAX伝送の実験であった。実験は表向きは電力中
英研究所が窓口になり,FAXメーカーが協力してデータ
を取得した。ここではFAX伝送信号が,9.6kbitでは
通信ができない事態が発生した。調査点検の結果FAX
特有のトレー二ング信号のやり取りで不具合が起こるこ
とを発見し,機器を少し改良して解決した。これはFAX
を実用的に衛星回線に使う時の一つの問題点を発見し,
解決した事例である。なお,当所やNTTが中心とな
って行った応用実験については記述を省略する。
応用実験終了に当って
今まで述べて来たように参加各機関はその業務の特殊
性に応じた衛星回線利用実験を行い,警察,国鉄等は
CS-2に向けて実利用の基礎を確立した。その際,応用実
験に使った装置を一部改修してCS-2への利用に供して
いる。
一連の応用実験が特に印象に残ったのは新聞協会との
実験であった。まず一つに技術スタッフが,しっかりし
ていること,即ちそれぞれの担当者が現場に非常に許し
い技術者であったため我々の方でもかなり専門的な対応
をすることができた。データ取得もパラメータをいろい
ろ変えて測定する等かなり本格的な実験を行っている。
また,朝日新聞での実験の時に,新聞社内を詳しく見学
し, そのディジタル処理技術について認識を新らたにし
た。新聞社がこのように先端技術を先行してどんどん利
用していることに驚くと共に我々もこの分野での衛星技
術の利用が,促進されるよう力を入れてゆきたいと感じ
た。新聞社は,衛星利用の可能性は把握したものの,実
用に際しての利用コストや10^-10の誤り率の保証,さらに
降雨減衰による稼動率の低下と地球局の大きさ等の問題
を中心に衛星利用の導入に関して慎重に調査検討を進め
ている。
終りに応用実験の推進に当られた方々に感謝致します。
(衛星通信部 第一衛星通信研究室長 乙津祐一)
巖本 巖
はじめての外国出張
ゴダード宇宙飛行センターのゲート前に立つ筆者
OPEN会議
会議は宇宙研でよくやる設計会議のようなもので100
名程度が参加し,1日目には計画の進捗状況の簡単な報
告の後オーロラのイメージングについて集中的な議論が
行われた。発表者はよく準備していて説得力があり,特に
女性の弁舌は見事であった。多重波長でオーロラの撮像
を行う必要性などを説くために見せられたダイナミック
エクスプロアラー衛星のオーロラの写真はすばらしいも
のだった。日本の計画については特別にプログラムに追
加してもらって,大家教授が発表し,又中曽根−レーガ
ンのシャトル利用に関する合意の一部が読みあげられた
りして注目された。2日目はデータ処理についての議論
だったが,エイキン氏との約束で,センタ内の見学をし
た。エイキン氏は前には我々と同じようなD層のロケッ
ト実験をやっていたが,最近では成層圏の観測にくらが
えしていた。特別に見せてもらったニーマン氏の質量分
析に関する装置は立派なもので,今はガリレオ計画(木
星探査を計画)の準備中とのことであった。門外漢でよ
くはわからないが,紫外・赤外天文衛星のデータ解析を
楽しそうにやっているのを垣間見たりもした。
日加協力の話すすむ
国際協力の話では丸橋さんに手伝ってもらって,まず
テーラー氏に会った。彼はベネット型質量分析器では我
々の大先輩で,協力には大いに乗り気であったが,測定
器については契約会社との合意が必要といった面倒な問
題があり,とりあえず情報の交換という程度にとどまっ
た。本命のホエイレン氏が我々がNASAに居るというこ
とでカナダからとんできてくれた。カナダでは近い将来
に科学衛星計画はないらしく,日本の計画に参加するこ
とに非常に熱心である。同氏は我々が予定しているのと
全く同様の測定器を開発しており,日加政府間の包括的
協定を踏まえ,又日本のきびしい財政事情も考慮して,
結局,測定器の製作はカナダが担当し,データは対等に
使うという条件で共同実験をすることになった。帰国後
の話になるが,ホエイレン氏と他1名が来日して共同提
案の中味をつめ宇宙研へ提出した。
おわりに
今回の出張の機会を与えて頂いた大家教授及び西田教
授をはじめとする宇宙研・文部省の関係の方々,諸手続
を進めて下さった当所の関係の皆様,それに公私にわた
って非常に御世話になった丸橋主任研究官に厚く感謝致
します。
(衛星計測部 第二衛星計測研究室長)
桜沢 晃
昭和52年8月の末,私は白っぽい夏の背広に身を包ん で'オスロの波止場に立っていた。日本の秋のような爽 やかな空気の中で,燦々と降りそそぐ陽光を浴び,海か らのそよ風に吹かれながら,オスロ・フィヨルド観光船 の出発時刻を待った。
陽を浴び,そよ風に吹かれて,ただそれだけに身を任
せているような思いの中に,ふと「旅人と我が名呼ばれ
ん」という言葉が浮び出た。今の私の気持を表現するに
は,この言葉が一番ぴったりした。仕事に伴う気苦労か
らの解放と見知らぬ場所に独りで居る解放感。
では,下の句をどうつけようかと考えていると,向う
から若い女性が軽やかな足どりで歩いてくるのが目に入
った。確かに日本の人だ。こんな遠くに,観光シーズン
も終りだというのに,若い女性の一人旅か。近づいたら
挨拶しようと,人恋しい気分になった。しかし,横の方
から若い,ノルウェー人らしい男性が,急ぎ足で現われ,
二人は腕を組んで,マケルスフス城の方へそれてしまっ
た。
淡い失望を覚えながらベンチに坐り直して,下の句に
もどった。旅を棲処とした芭蕉は「初しぐれ」としたが,
私の場合は心象としても現実の風景としても「初しぐれ」
には無縁であった。他と関わりをもたないことから生ず
る,解放感と哀愁のないまぜたような気持はあった。し
かし,それは,落着くべき場所をもった人間のもつ安堵
感に支えられていた。このオスロの,乾いた,光った大
気のよう角透明さを帯びた哀愁は,どう言い表わしたら
よいのだろうか。
明るき陽ざしを浴びつつ,オスロ港にて詠める,
旅人と我が名呼ばれん, ・・・・・・
と,苦吟しているのか,思考停止しているのか,わから
ないままに時間は経ち,やがて,がっしりした, 3,
40人は乗れそうな観光船が,軽やかに桟橋に着いた。船
から出てきて,乗船を呼びかけた案内人は,15,6才に
見える,普段着の少女だった。
(前衛星計測部長)
▲壁タイルの脱落
▲つい立やテーブルの倒れた実験室