中国の電波研究


若井 登

  

科学院から招待状
 上海,西安,洛陽,新郷,北京の旅,といっても 中国観光パックツアーの広告ではありません。私が 5月に中国の電波関係研究機関を訪問したときのコ ースです。昨年12月に上海天文台長から,共同研究 の打合せのため招待したいという手紙を頂いたので, 内々承諾の意向を伝えたところ,正式な招待状が天 文台の上部機関である中国科学院から届きました。 中国は横の連絡が余り良くないと聞いていましたが, 折角のチャンスなので,当所に最も関連の深い,電 子技術研究院の中国電波伝播研究所(新郷市)も訪 問したいと申し出たところ,ホスト役の叶台長(中 国天文学会副会長も務める。)が,いろいろ調整の末, 新郷を含む全日程を作ってくれました。従って訪問 の主体は各地の天文台であり,それに,原子周波数 標準関係の仕事をしている計量研究所や,大陽地球 間物理の大学研究室,さらに前述の電波伝播研究所 などが加わった,3週間の旅程となりました。
 以下冒頭に記した土地順に,各研究機関の活動状 況,当所との関係,共同研究などについて紹介しま す。なお,洛陽は西安から新郷への途上にあり,丁度 週末にあたったので,龍門の石窟や少林寺の見学と いう粋な計らいにより立ち寄ったものです。
  

上海
 上海天文台は,日中科学技術協力協定の中で取り 上げられている,VLBIと衛星時刻同期実験のパ ートナーであり,当所との問の覚書の交換もすん でいて,日頃から研究者の往来は盛んである。特に 昨年9月には,鹿島との間で初のVLBI実験を行 い,.基線長を1852075.22±0.03mという画期的な精 度で決定して,社会的に大きな反響を呼んだ。
 今回の訪問は,今年の6月に行う2回目の実験と 技術的諸問題の討論が目的であった。その実験に使 う予定の米国製VLBIシステムMark-V型機が,私 が滞在中の5月3日にたまたま入荷した。6月の実 験はこの新設システムと6mのパラボラアンテナと の組み合わせで行うが,来年3月までには25mのパ ラボラアンテナを余山(上海の西約20q)に設置 し,全システムをそこに移して,世界ネットワーク に仲間入りしたいと叶台長は話していた。又将来計 画に関しては,ウルムチと昆明にもVLBI局を設 置して国内ネットワークを作りたいが,日本のK-3 システムはもっと安くならないか,磁気テープの 経済的負担をどうするか,高密度記録はどの方式が 良いかなど,具体的かつ切実な質問が提示された。
 もう一つの共同研究項目である,衛星を用いた時 刻同期実験については,ごく最近当所の森川主任研 究官が訪問して,直接技術指導を行ったので,順調 に受信施設の整備が進捗しており,叶台長から感謝 の意を表された。
 さて私の講演は5月5日の午前中全部を費やして 行われた。しかし英語から,中国語への翻訳があるの で実質時間はその半分である。内容は天文台の人に も興味をもってもらえるよう,通信関係よりも理学 関連技術,例えば大気科学やリモートセンシング技 術に重点をおいた。中でも日米VLBI実験による プレート運動の実証は最も興味をひいたようである。
 上海では,郵電部第一研究所,上海市計量技術研 究所,上海市測定技術研究所を訪問し,当所の研究 紹介の講演と討論を行った。
  

西安
 陜西天文台は西安市の東方約20qの臨潼という町 にある。上海からの飛行機の遅れにより,ホテルに 着いたのは6日の牛前2時であったが,その日の朝 すぐ講義をしてくれという。その理由は,私の講義 をきくため,標準電波(短波はBPM,長波はBP L)送信所の人達(大文台の職員)が十数人,3時 間かけてやってくるはずとのことであった。彼等を 含めて40人位の職員に,9時から12時まで,電波研 究所の紹介を含む最近のトピックス講義した。陜西 天文台は標準電波局を運用しているせいか,電離圏 伝搬には深い関心をもっている。質問はJJY局の 施設の詳細,運用の仕方,太陽地球間物理に関連す る電波予報警報の問題,斜入射実験,冬期異常吸収 等中間圏物理,長中波伝搬等についてであり,当日 はJJYやJG2AS局に関する事項だけを討議し た。そして日が暮れないうちにと,BPM局の人達 は蒲城(臨潼の北東約120q)送信所に帰っていった。
 苗台長は,上海天文台同様,当所と協力関係を確 立するための合意書の作成に積極的であった。8日 の午前中に,この点に論点を絞って意見を交換し, 周波数比較データの交換,電離層及び電波伝搬デー タの交換,衛星を用いた時刻同期実験の推進,原子 時決定手法の共同研究,並びに科学者の交流促進な どを盛り込んた協力研究の合意書案を双方の合意の もとに作成した。その日の午後は,前々日の討議で 残された伝搬関係の諸問題について,夜10時すぎ まで熱心な質疑応答が行われた。陜西天文台での周 波数標準に関する研究レベルは高い。しかし今回あ まり詳しい討議が行われなかった。その理由は,恐ら く,1983年秋にその道の専門家の佐分利氏(当時 の総合研究官)が訪問していることと,私がその道の 素人なので先方が遠慮したことによるのであろう。


余山天文台の1.8m新望遠鏡の前で筆者と叶台長

  

新郷
 新郷市にある中国電波伝播研究所と当所とのつき 合いが始まったのは,昭和54年(1979年)のことで ある。当時の 所長が4名の所員とともに当所を訪 れ,翌年には当所の田尾所長と栗原企画部長が中国 を訪問して,技術情報の交換と人の交流が始まった。 具体的には書簡の交換により,日本からは南極を含 む国内5観測所のデータを,中国からは4観測所の データをそれぞれ提供するという,電離層データの 交換が軌道に乗った。ただし条件として,中国側の データは世界資料センター(WDC-C2)を通じ て第三国に漏らしてもらいたくないということであ った。当時は中国はまた国際電波科学連合(URS I)に加盟していなかったので,日本側もこれを了 承し,諸外国から当所に送付されるデータの内,中国 データだけは,特定の利用者に限って提供してきた。
 広大な地域を擁する中国の電離層観測データは非 常に貴重であり,世界中の科学者がそれを欲してい る。従ってこのままいつまでも閉鎖的な利用を続け るのは好ましくないと考え,私は新郷での初日の5 月13日に,電離層データをWDC-C2を通じて 世界に公開することを提案した。その結果,最終日 の15日にまとめた協力研究の合意書案の音頭に, 電離層データの公開を両機関が積極的に推進すると 明記された。
 電波伝播研究所と当所との間では,中国側からは 1984年9月の沙所長外2名の来日,日本側から は羽倉電波部長,小口第三特別研究室長,古濱超高 周波伝搬研究室長の訪中があり,お互いに技術的細 部まで理解が進んでいた。従って施設の見学中にも 目新しいものは特になかった。研究も地についてき たが,その反面観測はしているが解析や解釈にはま た十分手が回っていないという感じもした。7年前 約1000人だった所員は,今や1400人を超えている。 当所とは好対照である。そのうち良い研究成果がど んどんでてくるのではなかろうか。
 私の講義はここで初めて電気通信中心に論点を絞 ることができた。他の3天文台と違って唯一の工学 研究所だからである。そこで私は,昨年4月の日本 の電気通信界の改革と,それと連動した当所の機構 改革から話を始めた。そして全般的に当所の研究テ ーマの紹介をしたが,特に宇宙通信とリモートセン シング,また電離層の斜入射観測網や電波予報警報, 更には南極観測に質問が集中した。これらを共同研 究のテーマとして取り上げ,協力研究合意書を交換 しようということになり,滞在の最後の日の夜行列 車ぎりぎりまで,各テーマの討論と合意書の案文作 成作業が行われた。
  

北京
 北京天文台は市内北部にあるが,観測施設は郊外 にある。その一つ密雲観測所(市の北東約120q)を1 日がかりで訪問し,所員に講義をして,9mのアン テナが28基東西基線上に並ぶ232MHz電波干 渉計を見学した。銀河のサーベイを行っていた。ま た19日には,太陽電波の研究を行っている沙河観 測所(市の北西約40q)を訪問した。2.8GHzと5 GHzで太陽の全電力束を測定していた。
 このように,北京天文台は主として電波天文に力 を入れており,台長の王教授は中国天文学会長を務 めている人であるが,当所との研究協力については さほどの熱意を示さなかった。
 北京では,原子標準器を含む各種の標準の中心で ある中国計量科学研究院,及び太陽地球間物理現象 を研究している北京大学地球物理学部を訪問した。
  

その他
 北京大学に限らず,各地の天文台は,当所が発射し ているJJDの電波を毎日受信しているものと思っ ていた。しかし聞いてみると,知ってはいるがコー ド解読用の本が古くなって受信していないという。 当所はIUWDSの西大平洋地域警報本部として, アジア地域全域にサービスしているのだから,JJ D放送は出来るたけ多くの利用者に利用してもらわ なくてはならない。当所の宣伝不足を痛感した。
 講議,討論,施設案内の外に,中国側は観光にも 気を配ってくれて,週末には上海では蘇州,西安では 秦始皇帝陵や乾陵,楊貴妃と蒋介石で有名な華清池, 新郷では洛陽の近くの龍門の石窟など,北京では万 里の長城や故宮博物館などを旅程に組込んでくれた。
 中国のラッシュアワーは正に自転車の海になると いう話はよく聞くが,これが1日4回起こることは 知らなかった。1回目は朝8時,2回目は昼食を食 べに帰る12時,3回目は午後の勤務につく2時(た だし新郷では5月4日の夏時間採用後昼休みを3時 間にしたので午後3時),そして4回目は帰路につく 6時から6時半頃である。
 夏時間といえば中国は今年初めて実施したとのこ とで,初日は5月4日の日曜日であった。中国は広 いので東西の時差は3時間位あるが,東経120°時間 を更に1時間早めるとなると,西の地方では太陽の 南中が16時ということになる。やはり生活上は相 当不便であろうと思う。
 今回の出張により,電波研究所と中国の諸機関と の研究協力がより密接になったと思うし,私自身も 非常に多くを学ぶことができた。

(所長)




MF/HF帯電力束密度分布測定用アンテナの試作


川名 達一

  

1.まえがき
 日常生活の中で電波の利用が普及するに伴い,各 種の無線局が増え続けている。電力束密度分布の測 定は,このような情勢に対処して電磁環境を計測す る方法の一つとして計画したものである。その測定 に使用するアンテナの開発は6年前に始められた。 始めにVHF/UHF帯(80〜1000MHz)用のア ンテナを開発し,その経験に基づいてMF/HF帯 (500kHz〜40MHz)用の試作を行った。その目的 ・原理は同様であり,構造も共通した部分がある。 従って,ここでは両者を含め,時間的な順序に従っ て解説する。
 当初,提示された,このアンテナに必要な主な特 性は次の3点であった。
(1) 3次元的な無指向性を有すること。
(2) アンテナの構造・設定位置を変えることなく,広 い周波数帯域にわたり,掃引測定用に使用可能。
(3) アンテナ係数を正確に規定し得ること。またそ れに基づいて電力束密度分布を導出できること。
などである。理由は国内の広い地域にわたり,電力 束密度分布のマップを作成しようという遠大な計画 があり,そのためには自動車等によって能率よく, 速やかに測定しなければならないからである。
  

2.動作原理と構成
 上に述べた所要特性を考慮して計画したアンテナ の原理は極めて簡単である。いま空間のある1点に 到来している未知の電波をベクトルAで表す(図1 参照)。これを例えば簡単な1本の短い(半波長又 はそれ以下)ダイポールアンテナで測定しようとす るならば,アンテナエレメントの方向を調整し,ア ンテナ出力が最大値を示す方向を探さなければなら ない。


図1 原理説明図

 そこでダイポールアンテナを3本に増やし,互い に直交するように配置してみる。各ダイポールアン テナはその指向特性により,Aがそれぞれに投影さ れた成分だけ受信する。ベクトル合成の考え方によ り,この三つの受信成分を合成すれば(幾何学的に ピタゴラスの定理と同じように考える),この系に 対する入射角が変化してもAの絶対値Aは求められ る。Aは電界強度に比例し,その2乗は電力束密度 に比例する。従って3本のダイポールアンテナを使 用すれば,固定した状態のまま,任意の方向から到 来する電波を測定できることになる。ダイポールア ンテナの代りに微小ループ(波長に比べて)アンテ ナを用いれば、磁流素子の考え方により,ダイポー ルアンテナと同様に解釈することができる。
 実際のアンテナとしても,動作原理で説明したよ うにダイポールアンテナで構成することにより,ま えがきに述べた(1)の特性は実現できる。また,ダ イポールアンテナを半波長により短い範囲で使用す れば,短縮ダイポールアンテナとして(2)の特性も ある程度実現できる。ダイポールアンテナは電界強 度標準としても使用されており,これと置換して較 正することりより,(3)の条件も満足される。微小 ループアンテナについてもほとんど同様に考えるこ とができる。
  

3.構造
 MF/HF帯用アンテナは動作周波数範囲を500k Hz〜40MHzを目標としている。その波長は600m〜 7.5mとなる。電磁環境の計測という立場からすると, 1波長より近い距離で測定する場合も考えられる。 その場合,空間インピーダンスが377Ω(電界強度の 磁界強度に対する比)とは異なる場合も起こり得る。 従って正確に電力束密度分布を評価するためには, 電界と磁界をそれぞれ測定する必要が生じてくる。 そこでダイポール構成(写真1参照)とループ構成 (表紙の写真参照)の2台を用意した。


写真1 ダイポール構成による電力束密度測定用アンテナ

 MF/HF帯は波長が長いため,ループアンテナ の場合,ループの直径を大きくしないと実効高が低 くなるが,また,大きくし過ぎるとサイドロープが 生じることになる。一方,取り扱いを容易にすると いう点からも手頃な大きさにする必要がある。これ らの点を勘案し,ループの直径を60pとした(実際 は8角形の対辺間の距離が60p)。ダイポールもこ れと歩調を合わせ,1本のダイポールの全長を60p とした。この長さは40MHzの場合を考えても,短縮 ダイポールとなっている。使用する三脚は,既に開 発したVHF/UHF帯用のものを共用する。
 3個のアンテナエレメントの出力は,広帯域整合 トランスを経て高周波同軸切替器に接続する。切替 器は計算機制御により動作する。切替えられたアン テナエレメント出力は受信機によって測定された 後,計算機により合成処理される。
 広帯域整合トランスと高周波同軸切替器との間を 接続する同軸ケーブルにはフェライトリング(μr= 2000)をかぶせ,ケーブル外被電流による電磁界じょ う乱の抑圧を図っている。その結果,合成パターン と真円との差を約±1.5dB以内に抑圧できている。
  

4.電気的特性
 当所グランドで測定した結果,周波数537kHz〜40 MHz(測定周波数537kHz,1134kHz,4MHz,10MHz, 20MHz,40MHz)について,合成パターンと真円との 差は約±3dB以内,アンテナ係数(測定点における 較正された電界強度−アンテナ出力電圧(dB))は 34〜43dBであり,VHF/UHF帯用アンテナと同 等またはそれ以上の特性のものが得られた。
  

5.おわりに
 本誌の性格上,具体的なデータ等については省略 したが,関心のある方は例えば信学技報EMCJ10 月号を参照されたい。なお,本アンテナの開発途上 には幾多の曲折があった。筆者が提案した,直交3 軸上にアンテナを配置する方式も,当初は必ずしも 信用されたわけではなく,アンテナエレメント間の 相互干渉が懸念された。先づプロトタイプが作られ, 各エレメントのパターンの確認測定から始まった。 自動測定装置が普及していない当時のことではあ り,角度を少し変えるごとにアンテナに駆け寄る作 業が人海戦術によって2か月も続いたが,実験的に もアンテナエレメント間の干渉は少ないことが確 認された。このようにしてVHF/UHF帯用プロ トタイプを自作し,その結果に基づいてメーカーに 発注して実用アンテナを完成させた。この間,アン テナパターン測定の自動化,サイトアッテネーショ ン実験,微弱機器のための近距離伝搬実験に備える ため,自動測定装置の製作を計画した。試作係(現 試作開発係)の努力により出来上がったこの装置は 所期の目的を果たし,MF/HF帯用に使用され た。

(標準測定部 測定技術研究室長)




《外国出張報告》

カナダ国立研究院(NRCC)に滞在して


佐川 永一

 当所はカナダとの共同研究として第12号科学衛星 (EXOS-D)搭載用の低エネルギーイオン質量分析器 (SMS)の開発を進めている。共同研究は,搭載 機器の開発と観測データの解析を含むものであるが, 現在は昭和64年2月の衛星打上げを目指したフライ トモデルの設計と目加のデータ交換のためのデータ 処理系を検討している段階である。このSMS計画 推進のために昭和60年3月20日から1年間カナダ国 立研究院(NRCC)に滞在した。

 SMS計画の主担当者はカナダ側ではNRCCへ ルツベルグ天体物理研究所(HIA)のB.A.Whalen 博土で,これまでも打合せのために当所をたびたび 訪れている。Whalen博士の所属する Space Physics SectionはHIAの一部で,約20名ほどで 構成され,宇宙線,磁気圏プラズマや地磁気変動な どの広い範囲の研究者が活動している。HIAには 外にPlanetary Atmosphere,Astronomy, Spectroscopyのセクションがあって,全体では200名 程度の規模であり,HIAの名前はカナダのノーベ ル賞受賞者のDr. Hertzbergにちなんでいる。彼 は80歳を超える高齢であるが,今でも毎日 Spectroscopyの人達と一緒に仕事をしている。HIA には外にも1人80歳を超えた人がOfficeを持ち元 気に活躍している。

 NRCC本部はOttawaの街はずれの広大な敷地 にあるが,HIAは市の中心部にある昔の本部の建 物の中にあり,この古い建物は立派な玄関やシャン デリア,そして皆が“牢獄”と呼んでいる地下のカ フェテリア(人口のところに頑丈な鉄の扉がある) などがあって,印象的であった。Space Physics の人達は朝10時にはこのカフェテリアでのお茶の時 間に参加する。座る場所もほぼ決まっており,一杯 42セントのコーヒーで30分ほど雑談をする。午後3 時には別な場所で,やはりお茶を飲むことになって いる。雑談の話題は様々であるが,深刻な方ではN RCCの機構改革の噂で,財政赤字と技術革新でN RCCも新しい対応を迫られているとか,また,遊 びの話題として,広大な土地柄か,皆が家庭莱園を 経営しているので,その関係の話題が多い。HIA の建物は東京でいえば霞ヶ関のような場所にあり, 外国から元首級が訪加のときには,建物の前の通り にその国の国旗が並ぶ。今年の1月には中曽根首相 が訪れ,道には沢山の日の丸が並んだ。

 Ottawaの最も印象的な季節は冬である。世界の 首都の中でも冬期の平均気温は一,二を争うほど低 いとのことである。日中の最高気温が-15℃を超え ない日には寒さが身にしみて,外で遊ぶ気はしなく なるが,Ottawaの中心部を流れる運河は全長8q を超えるスケートリンクとなって,冬の楽しみの一 つになる。最後に長期滞在の機会を与えて頂いた関 係者に感謝します。

(電波応用部 宇宙環境計測研究室 主任研究官)


世界最長のスケートリンクと国会議事堂



短 信



電波の日表彰について


 6月1日第36回電波の日にあたり,中国と共同で行っ たVLBI試験観測の成功及びミリ波帯電波伝搬実験の 成功に多大の貢献をされた次の3関係者に対し,電波研 究所長から表彰状並びに感謝状がそれぞれ贈呈された。
 「表彰状」ソニー株式会社情報処理研究所:中国と 共同で行ったVLBI試験観測においては,世界最高水 準の小型高密度磁気記録装置を準備され,大量の観測デ ータの収集及び観測の効率化に協力された。
 「感謝状」株式会社日立製作所中央研究所:ミリ波 帯電波伝搬実験にあたり,送信装置の最適な設置場所を 提供され,多年にわたり実験に協力された。
 「感謝状」東京経済大学:ミリ波帯電波伝搬実験に あたり,光・ミリ波帯送信装置及び気象観測器の最適な 設置場所を提供され,多年にわたり実験に協力された。



秋田博'86


 「秋田博'86」は,「明日の秋田が見えてくる」をテー マに21世紀の秋田県の姿を展望することを目的として郵 政省をはじめ関係省庁の後援により本年7月18日から8 月24日までの38日間,秋田県向浜スポーツ公園内で開催 される。
 この博覧会には,通信政策局技術開発企画課,当所情報 管理部及び電波部の協力を得て秋田電波観測所が参加出 展し,研究業務の一端を紹介するための準備を進めてい る。
 出展項目は,@手軽に使えるミリ波の無線装置(50GHz 帯簡易無線局),A人工衛星から電波で見た秋田(SIR -B実験),Bニューメディアを身近にするパソコン通信 (郵政省のパソコン推奨通信方式(JUST-PC)) である。



夏の一般公開の御案内


 当所では春と夏の2同,研究施設を一般に公開してい ますが,今年も例年どおり,夏の一般公開を所の創立記 念日である8月1日(金)に行います。
 専門的知識が十分でない方々にも分かっていただける 内容になるよう,全所を挙げて取組んでいますので,多 くの方々が来所していただけますよう御案内申し上げます。
 公開日時 昭和61年8月1日(金)10時から16時
 公開場所 本所(小金井),支所(鹿島,平磯),及び電 波観測所(稚内,秋田,大吠,山川,沖縄)
 なお,本所(小金井)における公開項目は,◎雲の上 から地表を調べる,◎小さなアンテナで衛星通信,◎日 本標準時はこうして決める,◎電波でさぐる地球のまわ り,◎コンピュータからの雑音を測る,◎アンテナから でている電波を見てみよう,など33項目です。