プラズマ流速計の開発


熊 谷  博

  

はじめに
 ハイ・テクノロジーを支える要素は材料であると いわれている。近年,光ファイバー母材や,電子工 業用の単結晶,及びファインセラミックス等の新素 材を創り出す技術として,高温プラズマの利用が注 目を集めている。高温プラズマ(数千度)中では通 常の系では期待できないような化学反応を起こすこ とができ,高純度物質の合成も可能である。従来, プラズマはその物理的特性が主に利用されてきたが, 化学的な優れた特性も利用され始めたわけである。
 このような技術の研究促進を図るため,「超高温の 発生・計測・利用技術に関する研究」が科学技術振 興調整費により推進されている。このプロジェクト では,超高温(4千度〜1万度)の発生や計測に関 する問題,プラズマ反応を用いた材料合成及び超高 温を利用した加工等に関して,総合的に研究が進め られている。我々は,このプロジェクトの中の計測 グループに属し,超高温プラズマの流速の測定を担 当している。
  

なにを測るか
 このような目的で使われる主な超高温プラズマの 発生装置としては,高周波プラズマとアークプラズ マがある。高周波プラズマは,コイルにより,強力 な高周波(数百kHz〜数十MHz)電界を印加し,反 応炉内に超高温プラズマを作る。注入された反応物 質はプラズマ状態で反応し,新素材,新物質が形成 される。このとき,反応に関与する微粒子の速度や, 反応炉中の空間的な速度分布の情報は,反応を制御 する上で不可欠である。高周波プラズマ中には渦巻 き状の微粒子の流れがあり,その速度は,20m/s程 度と考えられている。また,溶接でおなじみのアー クプラズマでも,新素材や機能性皮膜の合成が期待 されている。アークプラズマの流速は1q/sにも達 する。
 しかし,プラズマ中にプローブを差し込んで測定 することは,超高温であること及び流れ自体を乱す ため不可能である。これまで,このような流速の測 定はほとんど行われていない。本研究では,これら の超高温プラズマ流速計の開発を行い,プラズマ炉 内の微粒子の速度の測定を行う。特に,速度の3次 元成分の測定とともに,その空間分布を測ることを 目的としている。
  

レーザ・ドップラー流速計とは
 気体や液体の流速を測る方法として,レーザ・ド ップラー法がある。原理は光のドップラーシフトを 利用するものであるが,近年のレーザの発達により 実用可能となった。我々は,この方法にいくつかの 工夫を加え,超高温プラズマの測定に適用すること にした。
 現在一般に用いられているレーザ・ドップラー流 速計の構成は,図1に示すようなものである。まず, レーザビームを二つに分けた後,測定領域で交差さ せる。ビームの交点において,ビームの中線に垂直 で,かつ,2本のビームの面内にある流速成分を検 出することができる。この測定の原理は,次のよう に説明される。ビームの交点には,同図に示すよう に干渉じまができる。散乱体の粒子がこのしまを横 切るとき,散乱光の強度は変動する。この時間変動 の速さが粒子の速度に比例する。実際には,変動の スペクトルを調べることにより,粒子の速度分布を 知ることができる。この時間変動は,異なったドッ プラーシフトを受けたそれぞれのビームの散乱光の 間で,ビートを取ったものと考えることもできる。


図1 レーザ・ドップラー流速計の原理
 (ビームの交点に干渉じまができる)

 この流速計の特長として,測定対象に光を当てる だけで測れ,流れを乱さず,かつ,遠隔測定が可能 なことが上げられる。また,レーザ光のビーム幅程 度の範囲を見ているわけで,空間分解 能が良いことも上げられる。
  

プラズマ流速計の製作
 この方式を超高温プラズマに適用す るにはいくつか問題がある。まず,プ ラズマはそれ自体で発光している。こ れは,光の散乱を利用した測定では雑 音となる。そこで流速計の検出器や, 信号処理装置には雑音に強いものを用 いる必要がある。また,反応炉内のプ ラズマには,限られた窓をとおしてレ ーザ光を当て,測定しなければならな い。さらに,測定する流速は,装置に より大きく異なるので, 広いダイナミックレン ジが要求される。
 これらの点を考慮し て製作した超高温プラ ズマ用流速計の構成を 図2に示す。反応炉の 窓が限られていること から,測定には後方散 乱光を使用する。つま り,プラズマからの散 乱光は,入射光と同じ レンズを使って集めら れる。レーザはArイ オンレーザ(2W)を使 用した。散乱光はフォ トマル(Photo‐multi‐ plier)で検出され,信号処理が行われる。


図2 プラズマ流速計の構成

 散乱光の信号処理には,光子相関法を用いている。 この方式は,流速計の信号処理としては,最もS/N 比を稼ぐことができ,プラズマの強い背景光の中か ら,信号成分だけを取り出すことが可能である。こ れまで,光子相関法では,あまり速い流速の測定が できなかったが,この装置では,光子相関器の前に バッファ・メモリを入れ,信号を一旦蓄えることに よって,1q/s程度までの測定が可能となった。
  

テスト測定結果と今後の計画
 実際のプラズマを使った測定はまだ行っていない。 ここでは,コンプレッサーからの空気の流れを測っ たテスト結果を紹介する。図3は,光子相関法によ って得られた散乱光の自己相関関数と,これをフー リエ変換した速度分布である。微粒子が測定領域の 干渉じまを横切ることにより,散乱光には周期的な 時間変化が生じる。この周期成分が,相関関数に現 れている振動に対応する。この例は非常に短い測定 時間(0.01秒)で得られたものである。このため, ほぼ1個の粒子が測定領域を横切った効果を表して いると考えられる。フーリエ変換の結果,流速は15 m/sであり,速度分布の広がりも小さい。この結果 から,高感度,高時間分解能の測定ができることが 分かる。逆に,積分時間を長くすれば,粒子の集団 の統計的性質を求めることができる。


図3 テスト測定結果

 この測定からは,微粒子の粒径も知ることができ る。相関関数に現れている振動の振幅は,微粒子の 粒径によって変化する。つまり,散乱光に周期的な 時間変化が現れるのは,粒径が干渉じまの幅よりも 小さい場合である。粒径が大きくなると散乱光の時 間変化はなくなる。この関係を使えば,流速と粒径 の同時測定も可能である。粒径からは,プラズマ炉 内の反応の進行や,新物質の合成の具合を直接的に 知ることができる。
 現在,速度の3次元成分が測定でき,かつ,空間 分布が取得できるようにこの装置の拡張を行ってい る。さらに,実際のプラズマを測定して,性能の確 認を行うために,小型アークジェット装置を製作し て試験を行う。最終的には,本装置を大規模なプラ ズマ炉を使って流速の測定を行うことを計画してい る。本装置の関発が,超高温プラズマを利用した新 技術の発展に大きく貢献することを願っている。

(電波応用部 電磁波利用研究室 主任研究官)




字宙からの降雨観測計画(TRMM)その2


畚野 信義

 昨年3月の本ニュース第120号に紹介したように, 我々がほぼ10年前から進めてきた宇宙からの降雨観 測の研究は,NASAと共同での航空機実験,さら に,Tropical Rainfall Measuring Mission(TRMM) 衛星計画への参加へと発展してきている。

 航空機実験はNASAのP-3Aによるワロップ ス島周辺での実験を1985年から1986年に終了し,次 いで第2期として,DC-8を用いて高度1万m以 上の高空からハリケーンの観測を1987年から1988年 にカリブ海を中心に行う計画である。

 一方,TRMMは1985年11月の第1回ワークショ ップで搭載観測器の種類と性能についてほぼ概要が 固まった。これに関連して1986年夏,NASA長官 の諮問委員会から発表され,NOAA長官,NSF 会長の支持をうけた米国の地球観測計画(Earth System Science Program)の中でRainfall Mission が1990年代前半に位置付けられるなど,その意義や 必要性についての認識が深まってきている。

 1986年6月にワシントンで開催された宇宙分野に おける日米科学技術協力の幹部連絡会(SSLG: Standing Senior Liaison Group)には日米双方から TRMMを提案し,新規の協力項目として承認され, 筆者とNASA本部のDr. Theonが双方のコンタク トパーソンとなった。7月下旬から8月上旬にかけ てNASA,NOAAの幹部へTRMM,特にその 日米協力について説明(Briefing)が行われること になり,参加を要請され出席した。NASAの Edelson副長官(宇宙科学と応用担当),GSFCの Hinner所長,NOAAのFletcher副長官(研究担 当)ほか多くのNASA,NOAAの要人と会見し たが,いずれもTRMM計画と日米協力に賛成し, 協力を約束した。なかでもEdelson副長官は特に強 い関心と支持の姿勢を示し,観測ミッションの分担 のみならず,衛星本体の製作,打ち上げロケットを も含めた様々な形の日米協力の可能性を検討するこ と,特にH-Uロケットによる打ち上げは現在の米 国の事情もあり,そのような新しい形の対等な協力 は非常に有意義であるという考えを示した。

 この会見にはNASAの国際部等からの出席もあ り,様々な意見も出されたが,結論としてSSLG の米国側代表のEdelson副長官が日本側代表の斎藤 成文宇宙開発委員会委員長代理へTRMMに関する 日米協力の推進と日本による打ち上げの検討,その ためのFeasibility Studyの早急な開始を提案する 手紙を送ることになった。1986年9月4日付けのこ の手紙が到着したことにより,科学技術庁は検討を 開始し,NASDA,気象庁,郵政省等と協議し, 前向きに対処するとの方針を決定した。10月にはN ASA本部から,Dr. Tilford(Director,Earth Science & Applications Division)が来日し,科学技術 庁において打ち合わせが行われ,早速Feasibility Studyを開始し,そのためのExpert Panel Meeting を昭和61年度中に開くこととなった。さらに,1986 年11月にTRMM計画の米国側担当責任者Dr. Theonが来日し,科学技術庁においてTRMM計画 について説明を行い,打ち合わせの結果,Expert Panel Meetingは1987年1月に東京で行われること になった。1986年12月10日付けで,科学技術庁研究 開発局の長柄局長からEdelson副長官あてに,日本 は前向きに対応しFeasibility Studyの開始に同意し, 翌年早々のExpert Panel Meeting開催を正式に提 案をする手紙が送られた。

 1987年1月20日に開かれた第1回Expert Panel Meetingに対して,米国側は表1に示すようにNA SAの担当者,GSFC及び大学の研究者,NOAA の副長官等からなる8名の参加者を送ってきた。 なかでもNOAAの副長官の一人が参加し, TRMMへの強い支持を述べたのは米国側の 本計画と日米協力への期待の大きさを示すも のである。表2の議事次第に示すように,当 所からも古津電波計測研究室主任研究官と藤 田第一宇宙通信研究室長が降雨レーダの設計 とデータ解析手法について発表した。日本側 からは科学技術庁宇宙国際課長,宇宙開発課 長を始めNASDA,気象庁,郵政省,関連 研究機関のほか,松野,寺本両東大教授,土 屋千葉大教授等約30名が出席した。翌1月21 日には霞が関ビル33階の東海大学校友会館に おいて,主に大学,各種研究機関の研究者約 50名の参加を得て,前日とほぼ同じ内容の講 演会が行われた。さらに,23日には,東大, 気象庁,NASDA,科学技術庁等において 米国側参加者が分担して講演,説明等を行った。


表 1


表 2

 今後の計画として,1987年3月から4月,東京で 開催が予定されているSSLGのCooperative Activities Planning Group会議の際に,第2回Expert Panel Meeting,次いで,8月ハワイで米国 Matsunaga上院議員と近藤鉄雄経済企画庁長官が中 心になって開催が計画されているISY(International Space Year:1992)のためのアジア・太平洋会 議に日米双方からTRMMについて講演を行うとと もに,これと並行して第3回Expert Panel Meeting を行う。さらに,11月上旬,別途学術振興会の後援 で松野東大教授が中心になって計画されている「El- Nino and Southern Oscillation Phenomenon」のシン ポジウムと連結して大規模なTRMMシンポジウム を開催し,同時に第4回Expert Panel Meetingを 開き,その報告をもってFeasibility Studyを終了す る予定である。第1回Expert Panel Meetingの Wrap-upにおいて,筆者はFeasibility Studyの出 発点,あるいは目標として,日米協力の分担を,

 米国側:衛星本体,二つのミッション(可視・赤 外放射計,マイクロ波放射計),追跡・デ ータ伝送・処理

 日本側:ロケット,一つのミッション(降雨レーダ) とし,グランドトルース,データ利用は両者対等の 参加を提案したが,日米双方とも特別な対案や反対 がなく,ほぼ妥当な線として受け入れられたと考え ている。約1年後Feasibility Studyの結論が得ら れれば,来年4月には報告と次の段階への提案がま とめられ,日本側は宇宙開発委員会の見直し作業に 提出され,米国側はNASAへProgram Proposal として提出されて,1988年8月,GSFCにProject Officeの設置(Phase B入り),1989年10月 (1990予算年度)からPhase-C/Dに入る。これら が順調にいけば1993年から1994年に打ち上げにこぎ つけることができると期待される。我が国ではこの Feasibility Studyをスムーズに進めるため,科学技 術庁の音頭で,@TRMMの必要性と意義,Aグラ ンドトルースとミッション計画,Bシステム検討の三 つのサブグループが設けられ,@は気象庁と大学, Aは気象庁,BはNASDAが中心となって検討が 進められることになった。

 第1回Expert Panel Meetingが開催された翌日 の1月21日付けでEdelson副長官から長柄局長あて, 日本の決定を歓迎するとともに,Feasibility Study の結論が前向きであることを期待する旨の手紙が発 送された。

 いろいろな内幕話は別として,だいたい上記のよ うな経緯で,Feasibility Studyがスタートした。約 10年前,電波研究所が計画し,多額の経費と多数の 人々の努力を注ぎ込んできた宇宙からの降雨観測は, 実現にほのかな光が見えるところにこぎつけた。多 くの方々の御理解と御援助の賜であり,今後とも一 層の御支援を心から願っている。

(企画調査部長)




外国出張報告


カナダにおける通信端末機器
認証制度の調査団に参加して


 昭和61年12月16日から22日まで,郵政省の上記調査団 に参加し,カナダ通信省等を訪問した。調査の目的は, 我が国で製造された通信端末機器を同国の通信回線で使 用する場合の制度上の問題点を明らかにするもので,調 査の主な内容は以下のようなものであった。@オタワに ある通信省での日加相互認証制度のフィロソフィーに関 する協議及び制度の実情調査,A同付属研究所での技術 基準及び試験業務の調査見学,Bベルノーザン研究所で の自動試験システムの見学,Cトロントにおける同国特 有の制度で,かつ各種認証制度の中で重要な役割をはた している専門技術者制度に関する調査,Dカナダ標準協 会での安全性の認証実務の調査見学。
 通信省の格別の配慮により,関係官が全行程に同行さ れ,かつ,各機関とも事前に十分な資料及びスタッフを 用意するなどの対応をしてもらい,所期の目的を上回る 成果を得ることができた。反面,実質3日の行程の中で 時差と戦いながら,6回の協議,3か所の見学,3回の パーティを消化するには若干体力の不足を感じさせられ た旅行ではあった。

(通信技術部 信号処理研究室長 吉田 實)



PTC'87(第9回太平洋電気通信会議)に出席して


 昭和62年1月18日から23日まで,ハワイ州ホノルル市 で開催された標記の会議に初めて出席した。PTCは, 広く太平洋地域の学会,電気通信事業体,メーカー,ユ ーザ等が独立,非営利の法人として昭和55年に設立した 国際組織であり,同地域における電気通信協力促進等 を目的としている。
 本会議では,通信技術者だけでなく行政,経済等の分 野の関係者約560名が通信という問題について討議し, 郵政省からは塩谷通信政策局長が高度情報社会へ向けて の政策について講演を行った。筆者は超小型地球局の応 用というセッションで,ミリ波帯衛星通信のアジア・オ セアニア地域への適用について発表した。最終日のサマ リーのスライド紹介の中に,論文に載せた図面3枚が含 まれており,興味を引いたようであった。また,超小型 地球局(VSAT)技術のワークショップにも興味深く参 加した。

(宇宙通信部 衛星通信研究室 研究官 磯部 俊吉)





短 信



飯田室長最優秀賞に入選
テクノ懸賞論文
「日本の研究開発システムはどうあるべきか」


 当所の飯田尚志宇宙技術研究室長は,科学技術のシン クタンクである産業工学研究所が主催した「テクノロジ ー・コンセプト太陽賞」に論文を応募し,最優秀賞に入 選した。論文は,「ビッグプロジェクトのスタート“How?” −国立機関の研究技術者の立場から−」と題し,国立研 究機関において,特に研究者自身の発想に基づいて大規 模プロジェクトをスタートさせるには何が必要かを論じ ている。予算の厳しいシーリングなどの条件の下で,新 しい大規模プロジェクトをスタートさせるには,かなり の理論武装が必要であるが,これは研究技術者にとって は必ずしも得意とはいえない。そこで,論文ではどのよ うにすればよいか,具体的な事例とともに述べた。
 懸賞論文は「日本の研究開発システムはどうあるべき か」をテーマとする課題部門と自由部門について募集が 行われ,飯田室長は後者に応募し,去る12月15日に西澤 潤一東北大学教授ら3名の審査員による審査結果が発表 されたものである。なお,論文は近々,「TECHNOLOGY CONCEPT」誌上に掲載される。



GPS利用高精度測位システムの開発


 電波研究所では,GPS(全世界測位システム)を用い た干渉型の相対測位システム(名称:PRESTAR)の開 発を1985年に開始した。本システムは拡散コードを必要 としないで,数十qから数百q程度離れた2点の3次元 相対位置を10^-7程度の精度で決定できるもので,小型で 安価であり,短時間観測で結果が得られるという特徴を 持つ。
 現在,装置を開発中であり,1987年3月末までに試作 器を完成し,この装置によって測定できる衛星・受信局 間の距離と予測値との比較,ごく近くに設置した2台の 受信装置を用いた基礎実験を行い,性能を確認する予定 である。次に解析ソフトウェアを用い,100m程度離れた 2点間の距離を求め,さらには,VLBIで位置が決定 されている地点に受信装置を置いてGPS衛星の軌道を 測定する予備実験も行っていく予定である。
 本システムは,高精度相対測位により地震予知をめざ した地殻変動の測定や精密測地に利用できるほか,高精 度の時刻比較,時刻同期にも応用できる。また,電離層 の研究や大気の揺らぎの研究などにも役立つ。



航行衛星(NNSS)による電離圏の観測


 電波部電波媒質研究室と電磁圏伝搬研究室では,沖縄 電波観測所と共同して,航行衛星(NNSS)の電波を利 用した電離圏の観測を沖縄で開始した。NNSS衛星は 米国によって打ち上げられた高度約1,000qの極軌道周 回衛星で現在,6個稼動している。この衛星は,位相の 同期した150MHzと400MHzの二つの電波を常時発射し ている。地上に置かれた受信機で,2波の位相差の時間 変化(差分ドップラー)を検出することによって,衛星電 波の伝搬路上における全電子数を測定できる。衛星軌道 がほぼ南北方向であるから,静止衛星を利用した場合と 異なり,特に電離圏の緯度方向の構造に関する情報が得 られる。沖縄からは,磁気赤道の南側から中緯度にかけ て衛星が可視となり,赤道電離圏に生起する現象,すな わち,電場による赤道異常の発達や赤道スプレッドF (プラズマ・バブル)及びそれらと中緯度電離圏との結び 付きなどについて,新しい知見が得られるものと期待さ れる。



科学技術週間記念講演会及び関連施設公開の御案内


 当所では科学技術週間の行事として,講演会及び関連施 設の公開を実施いたします。講演内容は電波計測と移動 通信の研究の紹介です。多くの方々の来所をお待ちして います。
 実施日時  昭和62年4月14日(火)
       ○講演会:13時から15時(当所大会議室)
       ○施設公開:15時から16時30分
 講演題名  ○リモートセンシング
        −宇宙から見た地球−
       ○これからの移動通信
        −いつでも,どこでも,だれとでも−
 施設公開  上記講演の関連施設数か所
 お問い合せは企画調査部企画課(0423-21-1211, 内線262)へ