航行衛星(NNSS)電波を用いた電離圏の研究


相京 和弘

 NNSSとはNavy Navigation Satellite System (米海軍航行衛星システム)の略で、昭和40年に実 用化され全世界で最も普及している全天候の衛星航 法システムである。このシステムは現在、高度約 1000qの極軌道をもつ5〜6個の衛星で構成され、 衛星の発射する電波を受信し位置決定、すなわち測 位を行う。各々の衛星は400MHz及び150MHzの2波 の電波を常時送信しており、その電波を位相変調し て2分ごとの時刻信号及びその時刻における衛星の 位置決定に必要な軌道情報データを送り出している (図1)。受信者は時刻信号の間の2分間に400MHz 波の周波数をカウントすることによりその間に変化 した衛星と受信者との直線距離、すなわち距離差を 知る。両端の時刻における衛星の位置は解読した軌 道情報を用いて計算する。これらの観測を受信者が 衛星を受信している15分位の間に複数回行い空間的 位置の差が一定の軌跡である回転双局面群の交点を 求めれば受信者の位置が決定できることになる。す なわちこのシステムは基本的にはロランやオメガと 同じ双曲線航法の一種である。


図1 航行衛星(NNSS)電波受信の概念図

 さて、受信周波数が送信周波数とずれろ現象は ドップラー効果として古くからよく知られている。 衛星電波を地上で受信する場合、受信されるドップ ラー周波数をその原因別に大きい順で分類すると、 (1)送信体と受信体の相対運動によるもので送信周波 数に比例する項、(2)伝搬路上の電子の総数(全電子 数)に比例し送信周波数に反比例する項、(3)電離圏 の屈折が主に効く項の3項からなる。NNSSでは 2波の送信位相が同期しているので、2波の受信周 波数の位相を送信周波数比(8/3)でそろえて差を 取ると(1)項を消去でき、電離圏効果を含む項のみを 取り出すことができ、その項はほぼ(2)項で代表され る。このようにNNSSを受信することによって電 離圏の情報を取り出すことができること、NNSS の周波数が電離圏の電子密度不規則構造による擾乱 (シンチレーション)を比較的被りやすい周波数で あること、及び複数の衛星を利用するのでかなりの 時間率でデータが取得できることなどから、現在で はNNSSは電離圏研究にとって非常に貴重な存在 ともなっている。NNSSの次世代の航行衛星シス テムとしてNAVSTAR/GPSがあり、これに ついては本ニュースNo.126及び第71回研究発表会 に詳しく紹介されているが、そのシステムでは電離 圏効果の軽減のため2波のLバンド(1.6GHzと1.2 GHz)を使用しており、また、1波のシステムでも 高い周波数のためNNSSより電離圏の影響が少な く、より高精度の測位が可能である。

 衛星のビーコン電波を利用した電離圏の研究は宇 宙開発の黎明期から世界各地で行われ我が国におい ても当所を中心に長期にわたる観測データを基に成 果を挙げてきた。利用された衛星は初期ではビーコ ン・エキスプローラなどの移動衛星とシンコムなど の静止衛星である。最近では衛星のTT&C系の電 波がVHF帯からL又はS帯へ移行しており、利用 可能な静止衛星が少なくなったため、NNSSが電 離圏研究に不可欠ともなっている。

 電波部ではISS-bのテレメトリ電波の利用に 続きNNSSの電離圏研究への利用を図るため昭和 57年度から文部省水沢緯度観測所の協力を得て同所 で取得、編集されたNNSS受信データを入手、 ETS-Uのファラディ観測による全電子数との比較に よる較正を行うとともに、ISIS-2,ISS-b との同時観測データと合わせ総合解析を行い静穏時 と擾乱時の全電子数及び電離層厚の緯度分布を求め るなどの解析を行ってきた。昭和59年度において、 第26次南極越冬隊の研究観測の一環として、極域電 離圏中の諸現象の中の主に不規則構造に関連した現 象を詳しく調べる目的で昭和基地におけるNNSS の受信を計画し、受信システムを製作した。市販の NNSSの受信機は;廉価上、安定した性能が期待 できることから、その改造を行い、ドップラー信号 処理装置を新たに試作、その他、記録部を付加して 受信系を構成した。受信データから求められる電離 圏に関する情報は緯度方向の全電子数分布、不規則 構造による振幅と位相のシンチレーション特性、そ して2波の位相差から電離圏ホログラフィーの技法 により導出される不規則構造の高度の情報である。

 製作した受信システムのテストを兼ねて、昭和基 地へ輸送する途中、東京からオーストラリア西海岸 のフリーマントル(昭和59年11月11日からの14日 間)までの砕氷艦“しらせ”の船上にてNNSS観 測を行った。観測場所を移動しながらのこの種の実 験はおそらく初めてのものであろう。観測は順調に 行われ取得データはフリーマントルから空輸、解析 された。11月15日に大規模な磁気嵐が発生し、チャ ート上のドップラー周波数冉H、冉Lの記録にも大 きな乱れが現れた。さらにその嵐の回復相にあたる 11月17日の0〜12時UTの連続した10パスの差分 ドップラー周波数冉dのトレースに常に規則的な正 弦波状の乱れが見られた。図2のトレースはその初 期に北緯17°、東経134°にて続けて観測された例で、 上が冉d、下が32kHzを中心にした冉Hである。こ のような乱れは、空間的スケール(300q、高度換算 で水平スケール190〜300q)から中規模の伝搬性電 離圏擾乱(TID)と呼ばれ、大気重力波など大気 圏下部での乱れと密度に関連し、大気の力学を理解 する上で重要な現象の一つであり、今後もHFドッ プラー観測などの他の観測手段との同時観測によっ てさらに研究を進める必要がある。

 続く昭和60年3月から約10か月間、昭和基地にお いてデータを取得し、昭和61年から本所において解 析に着手した。これまでに取り上げられた研究課題 は二つある。一つは前に述べたTIDの発生に関す る統計的研究、他は測位に及ぼす地磁気擾乱効果に 関する統計的研究であるが、ここでは後者について 述べる。


図2 NNSSの差分ドップラー周波数に見られる伝搬送性電離圏擾乱

 一般的に測位誤差の原因を大別すると衛星及び受 信系に関するものと電波伝搬に関するものがある。 前者は系統的な誤差であり推定が後者に比べ容易で ある。前述のように伝搬路上の全電子数が、測定さ れるドップラー周波数に及ぼす効果は、二周波法で はシステム内部で消去されることになっているが、 実際には(3)の効果が無視し得なくなることがある。 特に極域の電離圏においては不規則構造が多く発生 しNNSSの周波数帯では電離圏透過波の振幅と位 相ともに、いわゆるシンチレーションを被ることがし ばしばある。シンチレーションの程度が激しいと二 波が独立に不規則構造に散乱されることとなり(2)項 の補正を行っても測位誤差は大きくなることが予想 される。また、電子密度勾配の存在も(3)の効果を強 める働きをする。

 昭和基地で二周波法により取得した9565パスのN NSSを統計解析した結果によると、全データの平 均位置からのずれ刄チの平均は約150mで、500m以 下の距離に95%のデータが含まれていた。いま地磁 気擾乱(電離圏擾乱)の大きさの目安として昭和基 地のK指数を用い、刄チがそれによってどの様に変 化するかを調べた結果を図3に示す。すべてのデー タ及び測位に適したパス(衛星最大仰角=10〜75°) のデータともほぼ同じ傾向を示し、データ数が多い K指数が1〜6の場合には刄チがK指数に対し120〜 190mの範囲で直線的に増加することが分かる。こ の誤差は平均値であるが、中には電離圏の補正を 行っても数qに及ぶ誤差が生じることがあり、その 原因として電離圏がどの程度かかわっているか不明 な点も多い。簡単なモデルによる解析結果によると 電離圏の効果のうち(3)の項は(2)の項の10^-2のオーダ であるが上記の結果は(3)項が予想以上に大きいこと を示唆している。現在、本所で取得したデータの解 析を埼玉大学と共同で進めているが、それらの結果 の正しさを裏付けており、さらに衛星電波がスポラ ディックE層で散乱されトレースからその一次元の スケールが推定できること、衛星のパスと受信点と の相対位置により系統的な誤差が生ずることなど興 味深い結果も得られている。


図3 電離圏擾乱の度合(K-指数)と平均測位からのずれとの関係

 昭和62年1月からはNNSS電波の伝搬に及ぼす 低緯度に特有な電離圏不規則構造、特に赤道域の磁 力線に沿って分布するバルブと呼ばれる電子密度の 低い領域の効果を調べる目的で、受信システムを沖 縄電波観測所に移しデータを取得している。また昭 和62年6月からは中低緯度の不規則構造の分布とN NSS電波の伝搬との関係を調べるため、京大超高 層電波研究センタのMUレーダとの同時観測を計画 している。航行衛星としてのNNSSはあと数年で その運用が停止されることになっているので、次世 代のGPSの電離圏研究への利用も検討していると ころである。今後は衛星の受信実験単独でなく他の 複数の手段を同時に用いた総合観測が電離圏研究を 発展させる上で益々必要になると考えられる。

(電波部 電波媒質研究室長)




1.2GHz帯構内伝搬特性


岩間  司

  

はじめに
 近年、情報社会の発展により情報伝達の需要が高 度化、多様化してきている。特に比較的狭い範囲で 使用する無線通信の需要が高まっている。これらを 背景に昭和61年5月に、新たな無線局制度として小 電力無線設備(おおよそ空中線電力0.1W以下の無 線設備)を用いて同一の構内で無線業務を行う構内 無線局について、いくつかの技術基準が定められ た。現在のところ、構内ページングシステム、テレ メータ・テレコントロールシステム、移動帯識別装 置及びデータ伝送システムについて技術基準が定め られている。しかし、これらのうちで2.45GHz帯を 用いる移動体識別装置を除くと、構内無線局は400 MHz帯を用いている。このため、今回技術基準が定 められたデータ伝送システムでは、4800bps以下と いう比較的低速のデータ伝送速度を対象としてい ろ。しかし、実際にパーソナルコンピュータなどを 用いて無線LANなどを構築するためには、誤り訂 正符合等を考慮すると十分な速度であるとはいえな い。財団法人電波システム開発センター(RCR) では、昭和60年6月から61年9月にわたり準マイク ロ波帯である1.2GHz帯を用い、伝送速度32kbpsと いう高速度のデータ伝送を行うことのできる構内デ ータ伝送システムの研究開発を行うため、試作装置 の開発及び検討を行った。電波研究所では、RCR の依頼により1.2GHzにおける構内伝搬特性の測定 を行った。
  

機内伝搬とは
 伝搬特性とは、一般的に距離特性、中央値変動特 性及び瞬時変動特性を示すが、ここでは主に距離特 性を中心に話を進める。
 これまで市街地における道路上の近距離伝搬特性 については、かなり一般的に利用できそうなデータ が収集されているが、構内については瞬時変動特性 や特定の家屋等における鳥かん図的なデータしか収 集されていない。この理由として、比較的距離があ る場合は、電波が伝搬する地形を市街地、郊外地、 解放地などのように大まかに分類することによっ て、伝搬路の統計的性質はマクロ的に見るとほぼ同 じであるとしてまとめることができる。しかし、構 内のように伝搬距離が短い場合の伝搬では、電波の 伝搬路が様々な形態をとり、かつ伝搬距離が短いた め各々の伝搬路の状態を統計的にまとめることが難 しいためである。
 構内伝搬は、大きく屋内伝搬、屋外伝搬及び屋内 ・屋外間伝搬の3種類に分けることができる。今回 の測定は、屋内伝搬及び屋外伝搬の二つの項目につ いて測定を行った。屋内では、伝搬路の状態を考慮 してほとんど障害物のないケースとして当所の講堂 を、また逆に伝搬路に障害物が多く存在するケース として、装置などの障害物の密度が高い研究室を用 いて測定を行った。屋外では当所の敷地のうち、測 定車が走ることのできる部分を使って測定を行っ た。
  

測定結果
 屋内伝搬では、伝搬路の状態を受信アンテナから 送信アンテナが見える伝搬(見通し内伝搬)、送受 信アンテナ間に障害物が一つある伝搬及び送受信ア ンテナ間に障害物が二つ以上ある伝搬に分けた。こ の場合の伝搬路の分類方法は、障害物の材質の種類 などを考慮していない大ざっばな分類方法である が、幸い今回の障害物は障害物としてはもっとも減 衰の大きい金属製のラックや測定機器が主だったた め、この分類法と測定結果の間はかなり相関が取れ ている。測定に用いた研究室は通常のオフィスに比 べかなり障害物が多いため、今回の測定では電波の 減衰が小さい見通し内伝搬から金属製の障害物に遮 られてかなり減衰の大きい伝搬までの幅広い伝搬デ ータを収集することができた。屋内伝搬特性の測定 結果を図1に示す。見通し内伝搬の伝搬特性は自由 空間における伝搬の理論値とほぼ一致する。また、 障害物の数が二つ以上ある場合は、測定データに対 し障害物の数は余り影響していない。これは障害物 によって減衰しながら伝搬する電波よりも回りから 反射、回折してくる伝搬モードの方が支配的になる ためと思われる。また、今回の結果で、図中には示 していないが、いくつか行った廊下の様な狭い空間 の測定結果から、この様な空間では、電波の伝搬は 導波管的なモードで伝搬するという結果も得られ た。この様な結果は、地下街やトンネルなど閉じて いる空間での電波伝搬般の測定結果などでも報告され ている。


図1 屋内伝搬特性

 屋外伝搬では、伝搬路の状態を見通し内伝搬と見 通し外伝搬の二つに分けた。この場合伝搬路が建物 や塀などによって遮られた場合を見通し外伝搬とし ており、構内の樹木によってのみ遮られている場合 は見通し内伝搬とした。この測定結果を図2に示 す。しかし、測定結果を見ると特に伝搬距離40m以 上では、見通し内伝搬の測定値が自由空間における 理論値を下回っている。これは、樹木による影響で はないかと思われる。また、見通し外伝搬の測定結 果の中で伝搬距離30m付近から60m付近にかけて極 端にレベルの低いデータがある。このデータは、送 信アンテナと受信アンテナの間が大きな建物によっ て遮られ、回折波や反射波のレベルも低いためにこ の様な低いデータになったものと思われる。この様 な特異な点が構内伝搬では生じやすい。


図2 屋外伝搬特性

 今回の測定から、屋内、屋外とも完全な見通し内 伝搬では、自由空間における理論値とほぼ一致する ことが分かった。また、見通し外伝搬では、屋内の 障害物が二つ以上ある伝搬は屋外における見通し外 伝搬より減衰が大きく、屋内における伝搬条件は、 屋外における伝搬条件よりも過酷であることが分 かった。これは、一般的に屋内の方が様々な障 害物の密度が高く、かつ壁などに遮られるため 屋外に比べ障害物の密度が高くなるためと思わ れる。
  

おわりに
 今回の測定は、期間や測定場所などの制限が あったため必ずしも十分なデータ量がそろって いるとはいえない。しかし、準マイクロ波帯を 用いていることや様々な伝搬状況を仮定して測 定を行っていることで、今後、構内伝搬を考え る上で有益な資料になると思われる。今回の測 定結果が、新たな構内データ伝送システムの実 用化に多少なりとも寄与できれば幸である。

(総合通信部 通信系研究室 技官)




外 国 出 張


CCIR第2固IWP8/13
メルボルン会合に出席して


 CCIR/SG8に設けられている将来公衆自動車電 話方式に関する中間作業班IWP8/13の第2回メルボ ルン会合が昭和62年3月11日から18日の間、オーストラ リアのメルボルンで開催された。CCIRを含め13か国 から45名が参加した。また、入力寄与文書件数は26件 (日本5件)であった。三つの作業班(WG)に別れて 審議され、必要に応じて全体会合がもたれた。当初、筆 者は周波数を検討するWGに参加していたが、突然、他 のWGで伝搬特性の問題を扱うことになり、主に、その WGの審議に参加した。小エリア伝搬特性が議論の対象 となり、当所で実施した1.2GHz帯伝搬実験結果を電波シ ステム開発センターから取りよせ寄与した。日本からの 寄与文書は報告案の随所に取り入れられた。また、本会 合に先立って、IEEEメルボルン支部主催のDigital Mobile Radioワークショップにも参加した。

(総合通信部 通信系研究室長 猿渡岱爾)



CLEO'87に参加して


 昭和62年4月27日から5月1日まで、米国のメリーラ ンド州ボルチモアで開催されたCLEO'87(レーザと 光エレクトロニクス国際会議)に出席した。会議では、 主にレーザリモートセンシング関連のセッションを中心 に参加した。今回は特に“Symposium on Lidar in Space (宇宙におけるライダーシンポジウム)”が三つの招待講 演のもとに企画され、部屋に入りきれないほど多数の聴 衆の参加があり盛会であった。レーザリモートセンシン グの宇宙への応用については、諸外国特に欧米におい て、それらの要素技術の重要性は以前より認識されてい たが、CLEO'87やこの分野での他の国際会議からみ ると、リモートセンシングとしての重要性も最近強く認 識されつつある。このため、長期的視野に立って研究開 発の方針計画が立てられ、一歩づつ着実に力を蓄えなが ら研究が進められており、欧米のこの分野での層の厚さ を痛感した。

(電波応用部 光計測研究室 主任研究官 板部敏和)



AGU'87春期総会に出席して


 昭和62年5月18日から21日まで、標記の学会が米国ボ ルチモア市で開催され、これに出席した。AGU(米国 地球物理学連合)は、地球物理学全体を網羅しており、 分野も多岐にわたり、本総会での発表件数も全体で1500 件程度である。学会では主に測地学のセッションに出席 した。この中でGPSに関係した発表は約30件あり、相 変わらず活発な研究が行われている。筆者は、日本での GPS測位精度について、事前評価結果を発表した。米 国でのGPS研究は、かなり進んでおり、システムとし ては完成の域に達しているとの印象を受けた。ほとんど の発表は実験結果の解析に関するもので、今や精度とし て、10^-8の桁が問題にされている。
 このほか、当所でもおなじみのゴダードや海軍天文台 を訪問し、多くの人と討論することができ、有意義で あった。

(企画調査部 企画課 主任研究官 熊谷 博)



IGARSS'87に参加して


 IEEEのGRSS主催(今年は一部URSIとの共催) の1987年地球科学とリモートセンシング国際シンポジウ ム(IGARSS'87)が、昭和62年5月18日から21日 までアメリカ合衆国アンアーバー市のミシガン大学で開 催された。IGARSSは毎年開かれているもので、八 つの会場の47のセッションで約320の論文発表が行われ、 参加者総数は約420名であった。このなかで特に目につ いたものは、干渉型合成開口レーダ技術に関するもので あった。日本はURSI分含めて15件、そのうち電波研 究所が4件(URSI1件)の発表をし、また、筆者は 2件、NASDAの代理も含めると合計4件の発表を 行った。全セッションで開始時刻を統一し、キャンセル でも繰り上げないやり方は好評であった。JPLによる 多偏波SAR画像処理の実演、元宇宙飛行士の講演会、 ヘンリーフォード博物館での夕食会や大学施設の見学等 の時間外の活動も多彩であった。帰路、NOAAの環境 研究所とJPLを訪問して、見学と討論の機会を得た。

(電波応用部 電波計測研究室長 尾嶋武之)





短 信



「電波の日」表彰について


 第37回「電波の日」(6月1日)に当たり、電波技術 の研究開発、教育等に尽力された個人1名及び近傍界測 定用大型スキャナの開発並びに衛星追尾光学装置の製作 に多大の貢献をされた3関係者に対し、電波研究所長か ら表彰状がそれぞれ贈呈ざれた。
 「谷 惠吉郎」
 多年にわたり電波技術の研究及び教育に尽力し、短波 用ビームアンテナを開発したほか、日本最初の水晶制御 方式による短波発射実験に成功するなど無線通信の発展 に多大の貢献をした。
 「新日本工機株式会社」
 当所のアンテナ近傍界測定システムの開発に協力し多 くの困難を克服して、我が国初の大型スキャナ装置を完 成し、アンテナ測定法の研究推進に多大の貢献をした。
 「明星電気株式会社守谷工場」
 当所の衛星追尾光学装置の開発に主担当として協力し 多くの困難を克服してマウント及び駆動系を完成し、地 上衛星間光伝送実験並びに光学観測の成功に多大の貢献 をした。
 「ソフトウェアコンサルタント株式会社」
 当所の衛星追尾光学装置の開発に協力し多くの困難を 克服して衛星追尾用ソフトウェアを完成し、地上衛星間 光伝送実験並びに光学観測の成功に多大の貢献をした。
 「神和光器有限会社」
 当所の衛星追尾光学装置の開発に協力し多くの困難を 克服して各種望遠鏡等光学系を完成し、地上衛星間光伝 送実験並びに光学観測の成功に多大の貢献をした。



第8回平和堂「時の功労賞」を受賞


 6月10日、標準測定部周波数標準課標準電波係山西光 夫係長は、第8回平和堂「時の功労賞」を受賞した。
 本賞は、平和堂貿易株式会社が昭和55年に創設した賞 で、“時”に関係した事柄で広く社会に貢献した人に贈 られ、毎年、時の記念日(6月10日)に表彰される。
 当所では、セシウム原子時計群及びセシウム一次周波 数標準器などにより日本標準時を維持し、標準電波(J JY:2.5、5、8、10、15MHz及びJG2AS:40kHz) により、24時間休みなく日本全国に正確な時刻と周波数 を供給している。今回の受賞は、そのような報時業務の 社会への多大なる貢献が認められたことによるものであ る。



第72回研究発表会開催される


 去る6月5日、標記の発表会が当所4号館大会議室に おいて開催され塚本所長のあいさつのあと8件の発表が 行われた。
 講演者が分かりやすい発表を心がけたこともあって、 会場では活発な質疑、討論が続出し、活気にあふれてい た。また、聴講者は休憩時間にもロビーでお茶を片手に 討論を続けたり、同時に行われた関係施設の見学でも熱 心に質問をするなど、終日熱気がみなぎっていた。
 34社の会社の方を含め、官庁、事業団、大学並びに個 人としての来聴者212名の参加を得た発表会は、最後に 立野次長の閉会の辞があり、成功りに終了した。
 なお、今回も多数の来聴者からのアンケートによる質 問、意見をいただいており、これらを発表会の一層の発 展、充実に活用していく予定である。



宇宙開発計画の見直し要望

 郵政省は6月16日宇宙開発委員会に対して、宇宙開発 計画の見直し要望を提出した。要望事項は、@実利用に 供する人工衛星の開発について、A放送・複合技術開発 衛星(BCTS)について、B宇宙環境予報システムに ついて、C宇宙からの降雨観測のための二周波レーダに ついての4項目である。このうち当所関係は、BCの2 項目である。
 宇宙環境予報システムについては、宇宙通信、衛星搭 載電子機器、宇宙活動における人体等の安全に重大な影 響を及ぼす宇宙環境及びこれを支配する太陽活動を、宇 宙ステーション等を用いて総合的に監視し、必要な予報 を行う宇宙環境予報システムを構築することとし、所要 の研究を行う。
 宇宙からの降雨観測のための二周波レーダについて は、宇宙からの全地球的な降雨観測に必要となる衛星搭 載用二周波レーダ技術の研究開発を実施することとし、 所要の研究を行う。