顧みますと、当所は戦後の混乱期からやっと抜け
出した昭和27年8月に郵政省電波研究所として創設
されて以来、約36年間の永きにわたり「電波研」の
愛称の下に世の多くの人達から親しまれ、社会から
の温かい御支援を受けて電波科学・技術分野での研
究活動を進め、移り変る各時代に則しての国の政策
遂行に寄与すると共に、この分野の学術振興に貢献
して参りました。今回の名称変更は当所の歴史上極
めて意義深き画期的イベントでありますが、ここに
改めて永年にわたって当所の発展に御盡力、御協力
頂いた諸先輩並びに産業界・学会・官界の関係各位
に感謝の意を表すると共に、今後の一層の御支援、
御指導をお願いする次第であります。
当所の所掌事務は郵政省組織令に規定されており
ますが、名称変更と共に所掌事務の追加も行われて
おります。すなわち、従来からある周波数標準・標
準時、電波予報警報、無線設備の型式検定・性能試
験・機器較正等の定常業務とそれらに関する研究・
調査及び電波の伝わり方の観測・研究・調査の諸事
項に加えて、今回新たに電波の利用技術に関する研究
・調査及び電気通信技術に関する研究・調査の項目
が追加されました。3年前の昭和60年4月に行われ
た抜本的組織改正と、今回の名称変更及び所掌事務
の追加により、ここ数年来進めてきた機構改革は、
形の上で必要とされる三大整備条件を満たしたこと
となります。
今後は、これまでの無線中心の研究所から電気通
信分野全般、並びに広範な電波利用技術の研究・調
査を包含する総合的な研究所として生まれ変り、大
きく飛躍発展しようとするものであります。そして
この改革は昨今の急速な科学技術の発達と高度情報
化への社会構造の変革を背景に、通信分野での唯一の
国立試験研究機関たる当所が採るべき歴史的必然性
にもとづく過程であったと考えられます。
この度の所掌事務追加により、極めて広範な分野
の研究調査を行うべき権限と責務を負うこととなり
ました。私達はここで当然のことながら権利と義務
の関係を厳粛に考える必要があると思います。もち
ろん、現実には限られた予算・要員の下で達成し得
る研究には限界がありますが、国家、社会、国民に
対して出来る限りの研究成果を挙げて要求に応える
べく不断の努力を続けていいかなければならないと思
います。そのためには、一方で予算要員面を含めて
の実質的機構組織の拡充強化に努力すると共に、現
在与えられている制約の下で最大の成果を発揮すべ
く効率的な研究活動を進めることが肝要と考えてお
ります。
ここ数年来、国立試験研究機関のあり方につい
て、科学技術会議を中心に熱心な審議が行われ、国
としての基本方針が打ち出されております。要約す
れば、科学技術の研究開発にあたっては、創造性、
国際性がとりわけ重要な基本指針とされ、特にシー
ズ創出型の基礎研究を重視すべきことが示されてい
ます。この点については郵政省が掲げている電気通
信技術に関する研究開発指針でも同様の姿勢が謳わ
れております。このうち特に国際性については、当
所は研究対象が電波という国境を越えて使われるメ
ディアであるという性格からか、IGY当時から外
に開かれた研究所として外国との研究交流が盛んで
あり、今後も比較的スムーズに一層の国際化を推し
進めることが出来ると思います。
特に強調しなければならないのは研究の本質に係
わる創造性の発揮であります。これは基本的には研
究者の個性・努力・心がまえに依存するものであり
ますが、研究の自由と自主性、そして創造性を尊重
する職場環境が大切と考えます。当所はこれまでも
研究プロジェクト設定過程に見られる如く、ボトム
アップを基本とした研究管理が行われ比較的自由な
研究環境にあったと思われますが、研究交流、人材
養成等により一層の研究の活性化を図るべきものと
思います。
近年、当研究所は、総合電気通信、宇宙通信、宇宙
科学と大気科学、電波計測、電波に関する標準の研
究の五つの柱を立てて多彩な研究プロジェクトを推
進して参りましたが、今年度からは更に新名称の研
究に相応しい新規研究項目として、超伝導応用、バ
イオエレクトロニクス、人工知能等幅広い分野の基
礎研究を基盤に将来の超高速・高能率・高機能の通
信ネットワーク構築を目指しての電気通信フロン
ティア技術研究開発がスタートします。また放送及
び通信の複合型衛星、宇宙天気予報システム、宇宙
からの降雨観測のための2周波ドップラレーダ等
の研究開発に関する新規予算項目もスタート致しま
す。
幸い昨年度統合通信網研究室が、そして今年度、
衛星間通信研究室の新設が認められ、また昨年度の
大型補正予算により将来の研究シーズ醸成のための
貴重な研究施設整備を進めることが出来ました。更
に今年度予算も絶対額はわづかながらも前年度比
3.3%増と上向きに方向転換して明るいムードを得
ております。
名称変更を機に将来展望を明確にすべく「21世紀
を目指した通信総合研究所の研究の目標」という
キャッチフレーズで全所的な総意を反映しての五つ
の大きな研究目標が設定されようとしております。
それらは高機能知的通信、人間・生体情報、有人宇
宙時代通信、地球惑星系環境、そして電磁波物性・材
料の研究であり、これまで当所が進めて来たすべて
の研究分野を含み、かつ21世紀へ向かっての壮大な
夢を載せた内容であります。これらの目標の下に具
体的な研究の進め方を詰めていくこととなります。
夢は大きい程よいと思います。しかし、現実には
かなり厳しいものがあります。夢と現実とのギャッ
プをいかにして埋めていくかが、これからの大きな
課題であります。
永年にわたり多くの先輩によって培われ、蓄積さ
れてきたポテンシャルエネルギーを糧に、新名称に
相応しい研究所として発展し、社会の要望に応える
立派な研究成果を挙げるべく一同力を合わせて前進
したいと存じます。新生「通信総合研究所」発足に
際して御挨拶申し上げると共に、皆様の御支援をお
願いする次第です。
(所長)
この改正で、電波研究所が「通信総合研究所」に
名称を変更し、また、所掌事務に新たに「電波の利
用の技術に関する研究及び調査」と「電気通信の技
術に関する研究及び調査」を加えることになりまし
た。これで昭和60年4月に実施した内部組織の改正
と併せ、文字通り電気通信に関する総合研究所とし
て大きく第一歩を踏み出したことになります。
今更言うまでもなく、昭和27年8月に設立されて
以来、電波研究所の研究及びその成果は、これまで
国民生活に大きく寄与しているものと理解していま
す。短波通信に欠かせない電離層の観測及びそれに
必要な電離層諸現象の研究をはじめ、近年の宇宙通
信の実用化時代を築いた通信衛星等の人工衛星の研
究開発、大陸間の距離を数センチメートルの誤差で
測定する超長基線電波干渉計(VLBI)の研究開
発、周波数資源の開発等の成果は高く評価されてお
り、成果を挙げれば枚挙にいとまがありません。
しかし、このような電波研究所の研究活動も研究
所発足当時の所掌事務からくる研究分野の制約に加
え、最近の厳しい予算シーリングと大幅定員削減に
よって、昭和60年4月の組織改正にもかかわらず、
電電公社の民営化後の電気通信分野の大変革に呼応
した社会的、国家的ニーズに十分応えられる状況に
なかったところです。もちろん、このような問題
は、電波研究所だけに限ったことでなく、約80にも
及ぶ国立試験研究機関全般にわたる深刻な問題と
なっており、科学技術会議の答申等においても指摘
されているところであります。
このような動きの中で、景気対策として昭和62年
度の大型補正予算が組まれ、このうち電波研究所の
研究開発施設に60数億円が認められました。また、
昭和63年度予算では産学官の連携等で推進する「電
気通信フロンティア研究開発」、「放送及び通信の複
合型衛星(BCTS)のための研究開発」等例年に
なく多くの新規プロジェクトが認められました。ま
た、組織関係についても、昭和62年度の統合通信網
研究室に続き、昭和63年度には衛星間通信研究室の
新設が認められたところです。このように、研究所
を取り巻く環境は着実に変貌しつつあります。
最近、我が国における基礎的、創造的な分野の研
究開発の強化が叫ばれています。特に、科学技術の
面においても世界を先導し国際社会の発展に寄与す
ることが望まれているところです。「通信総合研究
所」は、電気通信分野における唯一の国立試験研究
機関としてその役割は極めて大きく、有線分野を含
めた電気通信の基礎的、先端的な研究を総合的、効
率的に実施していくことが今後強く求められるのは
必須でありましょう。この度、「通信総合研究所」
として生まれ変わるわけでありますが、これを機会
に、新たな研究領域に数多く挑戦し、世界をリード
する研究所として我が国のみならず世界の電気通信
の発展のため、今後一層研究に努められることを切
に希望する次第です。
最後に、21世紀に向けて通信総合研究所の新たな
飛躍を期待するとともに、今後の益々の御活躍と御
発展を祈念して、挨拶にかえたいと思います。
今年は、ヘルツの電波発見から、ちょうど百年目
に当たり、電波の重要性が日増しに増大していると
きだけに、今“電波”の看板をおろすのは、時代逆
行のようだが、実はそうでもなさそうである。
今は部外者である私にとって、この度の改革の経
緯や目的については、限られた一情報から判断せざる
を得ない。しかし新研究所の任務を定める郵政省組
織令の中に、「電波の利用の技術に関する研究及び
調査」という新しい項目が加わったことで、電波に
関する研究は、むしろ従来より強化されると理解し
ている。
そもそも、今回実現した所掌追加と名称変更は、
本来ならば、3年前の組織改正と一体となって行わ
れるべきものであった。しかし当時は、いわゆる臨
調による、政府機関の見直しや整理統合が行われて
いるときであって、関係者の努力にもかかわらず、
組織改正だけが切り離されて実現したという経緯が
ある。
所掌に追加されたもう一つの項目は、「電気通信
の技術に関する研究及び調査」である。つまり、従
来の電波通信(無線通信)に限ることなく、これか
らは、有線通信を含む電気通信全般を研究対象にで
きるわけだから、通信総合研究所は、電波研究所が
看板をぬりかえた姿ではなくて、全く新しい研究所
といえるのかもしれない。
上述の二つの追加分野の関係を図示すると、図の
ようになるはずである。聞くところによると、昭和
63年度は四つも新規研究課題(電気通信フロンティ
ア、通信放送複合型衛星、宇宙天気予報、宇宙から
の降雨観測二周波レーダ)が認められたそうである
が、それらは、図の各部分にバランス良く対応して
いて、タイミングの点でも申し分ない。
さて36年ぶりの所掌拡大という、景気のいい話で
はあるが、こんな時にこそ心しなければならないこ
とが、いくつかある。
その一つは、いわゆる応用研究とか開発研究のよ
うな、見栄えのする項目に目を奪われて、それらを
支える基礎研究への人と予算の投入がおろそかにな
ることである。長年の基礎的研究に培われた、肥沃
な土壌がなければ、研究費という肥科をあわてて大
量につぎ込んでみても、花も咲かないし、実も実ら
ない。
もう一つ気になるのは、ビルドのためにはスク
ラップが必要という論理に引きずられて、脱ぎ去る
べき古い殻と一緒に、守らなければならない伝統ま
で捨ててしまうことである。
思うに、伝統とは人から人へ伝えられるものであ
る。電波研究所には、日本として国際的な責務を
負っている地味な業務がいくつもあるが、そのノウ
ハウを次代に伝える努力を怠ってはなるまい。
分かり切った事を今さら申し上げるのは、所員の
皆さん全員に、研究所が持つ使命を、この際もう一度
根本的に見直して頂きたいという気持からである。
ともあれ、新研究所の発足は、長年の夢の実現で
あって、何ともおめでたいことではある。通信総合
研究所が、新規分野の双翼を大きくひろげて、大空高
くはばたいてくれることを心から願って止まない。
(前所長)
通信総合研究所としての元年に当る今年度新たに
開始する研究課題を、当所が21世紀を目指して設定
した五つの研究分野に基づいて列挙する。これらの
研究分野と、従来用いてきた研究の柱との関係は以
下の通りである。なお、前年度に引き続いて実施す
る課題については紙面の都合で割愛するが、一覧表
に示した当所の全研究調査計画を参照願いたい。
〈21世紀を目指した研究分野〉〈従来の研究の柱〉
〈高機能知的通信の研究〉
〈人間・生体情報の研究〉
〈有人宇宙時代通信の研究〉
〈地球惑星系環境の研究〉
〈電磁波物性・材科の研究〉
通信総合研究所の第一歩を踏み出す上で特筆すベ
きことは、昭和62年度の補正予算によって整備され
た以下の大型研究施設に大きな役割を期待できるこ
とである。 (企画調査部 企画課)
通信総合研究所研究調査計画一覧表
昭和63年度予算編成作業は、昭和62年12月23日に
大蔵省原案が内示された。その後、復活折衝を経て
28日臨時閣議で政府案が決定され順調にスタートし
たが、第112通常国会での予算案審議は、新型間接
税導入をめぐって空転、その結果本予算は年度内成
立に間に合わず、昭和63年4月7日可決成立した。
1 新規事項として以下の4項目が認められた。
2 組織、要員
3 衛星間通信技術の研究開発については、Sバン
ドアンテナEM、ミリ波中継器搭載モデル、光機器
搭載モデルが各々認められた。また、航空・海上衛
星技術の研究開発については、陸上移動局の開発が
認められた。成立予算の中には、衛星間通信技術の
研究開発、放送及び通信の複合型衛星のための研究
に係わる国庫債務負担行為の歳出化分として、2億
6,094万円が含まれている。
4 光熱水料、燃料費について62年度は12%削減
されたが、63年度も円高差益還元分として5%の
カットが上乗せされる等、生活には厳しい内容と
なっている。
以上、昭和63年度通信総合研究所予算の概要を述
べたが、前年度に比較して政策的経費を除き、皆減
皆増の経費、標準予算系統の経費ともマイナスと
なっており、更に物価の上昇等を考慮すると、依然
として厳しい事態に直面することとなる。 (総務部会計課)
昭和63年度予算総括表
(電波応用部 光計測研究室 研究官) P. L. Richards
昭和63年度科学技術賞長官賞受賞
テーマ:「航空機搭載マイクロ波映像レーダの研究」
概 要:雲や雨による減衰が小さいマイクロ波帯の電
波を使った航空機搭載映像レーダを研究し、昼夜を問わ
ず、天候に左右されず、広い範囲にわたって、しかも細
部まで観測できる優れた海洋表面観測システムを開発し
た。本システムは、海洋の油汚染広域監視及び防除、船
舶等の捜索・救難、北洋での流氷監視など、様々な分野
への応用が可能であり、社会、経済及び国民生活への貢
献が多いに期待される。
また、職域における創意工夫功労者として以下の12名
が表彰された。
電子情報通信学会篠原記念学術奨励賞受賞
通信総合研究所の発足にあたって
塚本 賢一
昭和63年4月8日を期して、電波研究所はその名
称を「通信総合研究所」と改名し新発足することと
なりました。将来へ向けての大いなる発展の門出で
あり、職員一同一層の精進を決意しているところあ
ります。
通信総合研究所の新たな飛躍を期待して
郵政省 通信政策局長 塩谷 稔
高度情報社会の実現に向け、電気通信分野におけ
る技術開発の重要性が益々高まる中にあって、これ
まで“電波研”あるいは“RRL”として国内外に
広く親しまれてきた電波研究所が、この度、名称及
び所掌事務を改正し、将来に向けて大きく羽ばたこ
うとしていることは、研究所のみならず郵政省とし
て記念すべき大きな出来事であると思います。
新生通信総合研究所に期待する
東海大学教授 若井 登
電波研究所から通信総合研究所への改名に伴って、
文部省電波物理研究所以来半世紀近くも馴染んでき
た、“電波”が看板から消えた。
昭和63年度通信総合研究所研究計画
電気通信フロンティア課題の一つ「超多元・可塑
的ネットワーク基礎技術の研究開発」、アンテナ近
傍界測定システムの研究における「円筒走査方式の
開発」、「高品質ディジタル音声放送の基礎研究」
電気通信フロンティア課題の一つ「脳機能モデル
による超高能率符号化技術の研究開発」、「植物の電
磁応答に関する基礎研究」
「放送及び通信の複合型衛星のための研究」、CS-
3による衛星高度利用パイロット計画における「衛
星高度利用システム技術の研究」
「宇宙天気予報システムの研究開発」、「宇宙から
の降雨観測のための二周波ドップラレーダの研
究」、「ミリ波帯における水の屈折率の測定とモデル
化の基礎研究」、「ミリ波帯・マイクロ波サブナノ秒
バーストパルス発生技術の基礎研究」、VLBI研
究の一環である「西太平洋大型電波干渉計実験」
電気通信フロンティア課題の一つ「高温超電導体
による超高速・高性能通信技術の研究開発」、「イオ
ンストレージ周波数標準器の研究」
1. 宇宙光通信地上センター
2. 大地震予知のための西太平洋大型電波干渉計
3. 超電導電磁波技術の研究開発施設
4. 周波数標準のための高性能分光システムの研究
開発施設
昭和63年度通信総合研究所予算の概要
当所の予算は、総額41億6,924万9千円で前年度予
算額に対し、1億3,180万2千円(3.3%)の増となっ
ており、これを人件費と物件費に分けて見ると、人
件費は22億3,418万4千円で前年度比2,233万6千円
(1.0%)の減、物件費は19億3,506万5千円で前年度
比1億5,413万8千円(8.7%)の増となっている。
事項別内訳を別表に示したが、その概要は以下のと
おりである。
@電気通信フロンティア技術の研究開発
電気通信の基礎的先端技術の研究開発として、産
学官の連携、国際的な共同研究により効率的な研究
開発を推進することとし、63年度は超高速通信技
術、バイオ通信技術、高機能ネットワーク技術の研
究開発を行う経費として、8,391万5千円新規に認
められた。
A放送及び通信の複合型衛星のための研究
放送衛星3号(BS-3)に続く次世代放送衛星
に必要な高度放送衛星技術の確立等を効率的、経済
的に行う技術開発に関する研究を行うこととし、63
年度は機能確認用実験モデルを製作する経費として
9,402万8千円新規に認められた。
B宇宙天気予報システムの研究開発
有人宇宙活動の場となる宇宙環境の危険な要因を
予測し、これを避けるための「宇宙天気予報」を目
指し、実用に向けたシステムの研究開発を行う経費
として1,395万4千円新規に認められた。
C宇宙からの降雨観測のための二周波ドップラレ
ーダの研究
将来における衛星搭載用降雨レーダの開発を目指
し、データ処理法の検討を行うための航空機搭載用
二周波ドップラ降雨レーダを開発する経費として、
452万円が新規に認められた。
@名称の変更と所掌事務の追加が認められた。
A宇宙通信部に衛星間通信研究室の設置が認めら
れた。
B新規研究員3人の増員が認められた。
また、国庫債務負担行為の64年度以降の歳出額負
担も、7億4,244万円あるので今後も既定経費の徹
底した見直しを図るとともに、各種施設についても
優先順位をつける等の厳しい選択が必要であると考
える。
カリフォルニア大学バークレイ校教授
P. L. リチャード博士の電波研究所滞在記
廣本 宣久
光計測研究室で研究を進めている科学技術振興調
整費重点基礎研究課題「圧縮型Ge:Ga検出器技術
に関する基礎研究」の外国人招へい制度により、昭
和63年2月1日より14日までの間、カリフォルニア
大学のリチャード教授を当研究室にお迎えした。
リチャード教授は、低温物性物理、赤外線分光
学、赤外線・ミリ波天文学等の分野の世界的権威で
あり、ミリ波・サブミリ波帯のSISミキサの研
究、赤外線・ミリ波宇宙背景放射の観測で有名であ
る。また、教授を招へいすることになった研究課
題、圧縮型Ge:Ga検出器研究の先駆者でもある。
当所滞在中は、「遠赤外線・サブミリ波デバイス」
の講演や、我々研究者との精力的な議論、大阪の
国際電気通信基礎技術研究所の訪問・講演等多忙な
毎日を過ごされた。また、教授は、大の日本通で
あって、長さ1mほどの竹製のししおどしをおみや
げにされ、ぶどう園でししおどし本来の猪をおどす
目的に使うと言われていた。
この招へいを機として、今後リチャード教授の研
究グループと、赤外線を用いた超高分解能イメージ
ングの新技術開発を共同研究で進める予定である。
以下の文は、リチャード教授が滞在を終えるにあ
たって、寄せられた一文である。
Comments on visit to Radio Research Laboratory
During my days at the RRL I learned of many
interesting projects. The work by Dr.Hiromoto on
stressed Gallium doped Germanium far-infrared
photoconductive detectors and that of Dr.Matsui
on Josephson effect millimeter wave mixers were
closest to my own research interests. While visiting
the Optical Application Research Section I
learned of a wide range of interesting infrared
optical experiments leading to understanding the
atmosphere and making preparations for laser
optical communications with satellites.
Several impressions from my visit are of particular
interest to me. These include the relatively
large number of projects being carried out by a
small nunlber of staff menbers. I was very interested
in the role played by the RRL in providing
research and management personnel for the new
ATR laboratory in Osaka. I was very impressed by
the large amounts of coffee consumed by Japanese
scientists and for the great friendliness and
hospitality shown to me during my visit.
短 信
4月18日、昭和63年度研究功績者として猪股英行企
画調査部企画課長、職域における創意工夫功労者として
12名の職員が、それぞれ科学技術庁長官賞を受賞した。
研究功績者賞は昭和50年に創設され、科学技術に関す
る優れた研究であって、かつ、実用に供される可能性の
高い研究に対して贈られるもので、今年度の功績賞受賞
者は全体で47名である。これで当所における本賞の受賞
者は、合計12名となった。受賞テーマ及び業績概要は次
のとおりである。
手島 輝夫、磯辺 武、本間 重久、渋木 政昭
三木 千紘、山崎 一郎、長 俊男、井口 政昭
鈴木 晃、太田 弘毅、山本 伸一、大高 一弘
3月29日、通信技術部通信方式研究室神尾享秀技官
は、第3回電子情報通信学会篠原記念学術奨励賞を受賞
した。
今回の受賞対象となった発表論文の題目及び概要は、
次のとおりである。
「GMSK同期検波における軟判定誤り訂正方式」
陸上移動通信においてGMSK同期検波方式に軟判定
誤り訂正方式を適用し、その有効性を示した。また、総
合的な特性改善のため、復調部設計の再検討の必要性を
示唆した。