宇 宙 局 の 監 視


川瀬 成一郎

  

はじめに
 道路上を多数の車が行き交うときに交通整理が必 要であるのと同様に、電波を共用する無線通信にお いてもその適切な監理は欠かせないものであり、そ れは通信主管庁の大事な仕事の一つである。宇宙通 信もまた当然この監視・監理の対象となるが、地上 無線の監視とは多少趣きが違ってくるであろう。そ れは信号が広帯域で電波が微弱であり、しかも人工 衛星というものが低高度衛星はもとより静止衛星で も決して一点に留まるものではなく、常に軌道運動 を伴うためである。これは技術開発の立場から見れ ばその分だけ興味が深いテーマであるとも言えよ う。
  

何を監視するか
 宇宙局(宇宙空間にある無線局のこと)の監視の 第一の目的は、地上の場合と同じく、“電波の交通 整理”つまり混信や干渉を防止して円滑な通信を確 保することにある。ただし、将来は別の側面も加わ るだろうといわれている。例えば、ある国が通信衛 星の打上げを計画し、静止軌道のある場所を予約し ているとしよう。計画が遅れてその場所が空いたま まになっていると、別の国がその場所を使いたく なって奪い合いが起きる。その様な時、監視システ ムによって実際の軌道利用状況を見ながら調整を行 うことになる。今後静止軌道が混雑するにつれてこ のような国家間の利権調整のべースとしての監視の 役割も重くなって行くであろう。
 ところで宇宙の監視には全く別の目的、即ち軍事 用のものがある。新聞等に時折紹介されて有名な北 米防空指令部(NORAD)は、高出力レーダと光学追 跡望遠鏡のネットワークを設け、地球周辺にある大 きさ10センチ程度以上の物体をあまねく追跡し、識 別番号を付して監視している。軍の立場では当然な がら、それらの物体が攻撃性のものか否かがまず問 題であり、それには近頃急に軌道を変更した物体は ないか、新たに出現した物体はどれか、という事が 重点的に調べられる。その際、各物体がどんな電波を 出しているかはとりあえず問題ではない。これに対 し宇宙通信の監視では、どんなに大きな衛星があっ ても電波を出さない限り監視の対象とはならない訳 である。宇宙“局”監視という言い方は、この様な 違いが明らかなように配慮した用語である。
  

監視の現状と当所の取り組み
 宇宙局の監視体制はまだグローバルに整備される には至っていない。定常運用可能な監視局は現在、 米国、英国、西独に設けられている。中でも西独の ものはアンテナ系、機器等大掛かりである。一方我 が国には残念ながら定常的な監視施設はまだ無い。 しかしいずれその様な施設が必要になるとの考えに 立ち、鹿島支所の設備を利用して本省とも連携しつ つ基礎的な監視実験を行っている。実用監視局を作 る前にその機能・運用手順等のイメージを明らかに しようという試みである。監視の対象とする宇宙局 は、将来的には深宇宙や月面の宇宙局も含まれてこ ようが、現在は何といっても静止軌道上の各種宇宙 局が主要である。欧米の監視局では、個々の衛星に 狙いを定め、電波の質・軌道を詳しく調べるという 方針をとっている様であるが、当実験では別の考え 方をとった。つまり各宇宙局に対する測定は概略に とどめ、むしろ静止軌道がいま全体としてどの様な 利用状況にあるかを把握しようというものである。
  

静止軌道監視実験
 実験用監視システムの構成を図1に示す。実用上 の周波数帯としては、S、C、Ku、Kaの各バンドが要 求されるが、こごでは初期段階の実験としてビーム 幅が広く衛星補捉が容易なSバンドを選んでいる。 アンテナ径は11mで、ビーム幅は0.8度である。当 支所からは東経70−210度の範囲の静止軌道が見わ たせる。そこで、アンテナビームをその可視範囲に 沿って0.8度の経度ステップで走査し、各経度におい て受信帯域のスペクトルを観測する。即ち、経度・ 周波数の2次元走査を行う事になる。中間周波以降 の通過帯域幅は限られているので、全監視帯域を6 分割し、バンドを切替えながら測定している。スペ クトルの記録は、画像データとして残すのが理想的 ではあるがデータ量が膨大になるので、ここではあ る一定のしきい値レベルを超える部分がどこにある かのみをデータとして記録している。つまり信号の 有無だけを見るという粗い監視法となっている。い ずれはスペクトルパターンの分類を行う等きめ細か な監視を試みる予定であるが、この様に粗い監視で も経度を1回走査するのに約1時間を要している。 こうして得た監視データを静止経度対周波数で表示 すると図2のようになり、日頃なじみの我が国の衛 星が認められる。他に71度、194度にも信号が現れ ている。これらはまだ特定の衛星として同定されて はいないが、ほぼ常に同一経度・周波数において検 出されることから、静止宇宙局であると考えられる。 このような監視表示により、ある周波数帯において 静止軌道が現在どのような利用状況にあるかが良く 観察されることがわかる。走査測定を繰り返すと、 他にも色々な信号が表示上に現われる。その中には 地上無線あるいは低高度衛星の信号の混入も含まれ ると考えられ、図2の81度、182度に見られるのはそ の例である。そこで同じ信号が複数の走査にわたっ て繰り返し検出される時に限りそのデータを採用す ることとすれば、低高度衛星の混入はまずまちがい 無く避けられる。しかし地上無線の混入防止はこれ だけでは限度があろう。逆に静止宇宙局でも、時折 しか電波を出さないものあるいは軌道保持が粗いた め時間とともに動きまわるものがある。これらは繰 り返し判定だけでは排除されてしまう恐れがある。 また、現在の方式では監視に要する時間の大部分は スペクトル観測のための時間である。Cバンドある いはより高いバンドではアンテナビーム幅が細くな り、測定点数が増すので1走査にかかる時間が非常 に長くなってしまう。そこで、広帯域のスペクトル 分析を短時間に行う手段が必要とされる。これら解 決を要する問題点はいくつかあるが、静止軌道に対 する監視法開発の大筋は見えてきたと思われる。


図1 実験用Sバンド静止軌道監視システム


図2 監視実験の結果例

  

低高度宇宙局の監視
 静止軌道に次いで対象となるのは低高度軌道の宇 宙局であろう。この場合、衛星は速いスピードで移 動するから監視測定のためにはアンテナを衛星に追 尾指向しなければならない。もしも事前に正確な軌 道情報が知られているならばそれは可能だが、軌道 情報がいつもオープンな程に所在の知れた衛星に対 して監視の必要があるのだろうか?というジレンマ がここには在る。望ましいのは、ある衛星が監視局 上空を通過した時、その1パスのデータだけで衛星 の概略軌道決定ができる様にしておく事である。そ うすれば、次のパスではアンテナを衛星に向けて待 機し、詳しく測定することができる。宇宙開発事業 団など宇宙運用機関で行われている低高度軌道決定 では、まず衛星の予測軌道情報が手もとにあって、 それを用いて数パスにわたる追跡データを集め、そ れから軌道情報を改良するという手順がとられる。 これを事前の情報なしに1パスだけで実行しようと するのは非常に難しい事である。理論的検討では、 ドップラ測定と簡易な電波干渉計の組合せによって ある程度これができそうなことがわかってきており 今後それを実験的に確かめることを計画している。
  

むすび
 国内・国外ともに静止軌道の利用が進むにつれ て、適切な監視システムが必要であるとの認識が高 まっている。低高度軌道の利用は現在通信用として はアマチュア衛星、モルニヤ衛星等に限られている が、近年になって移動体通信への有効性から低高度 軌道の価値を見直す動きがみられ、低高度通信衛星 が増加する可能性がある。従って低軌道宇宙局の監 視法についても基礎を固めていくべきであろう。こ れらの要請にこたえられるよう、実験を進めて行き たいと考えている。

(鹿島支所 衛星管制課 主任研究官)




宇宙環境監視用データ自動処理システムの開発


徳丸 宗利

  

はじめに
 現代の生活において、気象衛星や通信衛星は欠く ことの出来ない存在となってきている。もう既に宇 宙は我々の生活圏の一部といっていいだろう。しか しながら、宇宙空間は厚い大気に守られている地球 上に比べきわめて過酷な場所である。太陽フレアで 放出されるX線や高エネルギー粒子が飛び交い、宇 宙プラズマの擾乱は衛星の異常帯電現象を発生させ る。今後さらに宇宙の利用が進み、宇宙で多くの人 が活動する時代になると、我々はもはや地球上の気 象だけでなく、宇宙環境の状態にも大きな関心を払 わなくてはならないだろう。
 宇宙利用が進行するにつれて、宇宙環境の監視・ 予報の重要性が認識されるようになった。宇宙環境 の監視を行い、擾乱の発生を予報するという営み は、実は、既に数十年にわたって国際協力の下に続 けられているのである。平機支所は、この国際宇宙 環境監視業務に古くから参加し、現在も西太平洋地 域のセンターとして毎日休む事なく宇宙環境データ の収集・解析を行なっている。ここでは、最近、平 磯支所で開発された宇宙環境監視のためのデータ自 動処理システムについて紹介する。
  

国際宇宙環境監視業務とウルシグラム
 国際的な宇宙環境監視体制は、正式にはIUWDS (International Ursigram World Day Service)と 呼ばれる。IUWDSには世界各地の様々な機関の観 測局が参加し、宇宙環境の速報データを互いに交換 しあう情報網を組織している。図1には現在、活動 している主なIUWDS観測局の位置が示してある。
 観測局の速報データは各地域におかれた地域警報 センター(図1◎印、平磯は西太平洋地域警報セン ターにあたる)に集められ、そこから他の地域警報 センターに配送される。このときデータはウルシグ ラムと呼ばれる特殊な形式にコード化されたのち、 テレックスにて伝送される。各地域警報センターで は、全世界の観測局から送られてくるウルシグラム と独自の観測結果を基に毎日、宇宙環境の診断を行 ない、予報を発令するのである。


図1 国際宇宙環境監視網

 宇宙環境データの解析作業で最も厄介なことは、 データがウルシグラム・コードの形になっているこ とである。ウルシグラムは大抵、5桁の 英数字でコード化されており、太陽黒点 から地磁気まで多様な情報を伝えるため に約40種ものコードが定義されている。 これらの翻訳にはかなりの熟練を要する うえ、世界各地から飛び込んでくるウルシ グラムは1日200件を超える。宇宙環境 の予報のためには数多くのデータを処理 し、互いに突き合わせることが必要であ るが、手作業に頼っていた場合、精度よ い予報結果を導き出すことは困難であ る。したがって、解析作業の能率化のた めにはウルシグラムを自動的に処理する システムの導入が必要となる。
  

宇宙環境監視データ自動処理システム
 平磯支所では、宇宙環境監視業務の能率化を図る ためにパーソナルコンピュータによる自動処理シス テムの開発を行なった。図2に、そのシステムの概 略を示す。


図2 宇宙環境監視用データ自動処理システム

 本システムは、2台のコンピュータから構成され る。1台のコンピュータ(F9450Σ)はテレックス 端末となっており、送られてくるテレックスをここ で受信し、ウルシグラムコードの選別・分類を行な う。テレックスではウルシグラムだけでなく雑多な 情報が交換されるので、このコンピュータは受信デ ータからウルシグラムのみを抽出できるようになっ ている。
 他方のコンピュータ(PC286V)の役割は、分類さ れた各ウルシグラムを翻訳し、データベース化する 事である。2台のコンピュータ間で、ウルシグラム はフロッピーディスクにより転送される。翻訳によ る解読結果はコードの定義に照らし合わせてチェッ クが行なわれる。これによって、ウルシグラム伝送 時や作成時に発生したエラーを検出し、訂正するこ とが出来る。コンピュータが処理不可能なエラーを 検出したときは、自動的に画面編集のモードになり オペレータが訂正作業を行なう。正常なデータはコ ンピュータのデータベースに登録され、このデータ ベースを基に様々なレポートが自動作成される。
 自動処理システムの導入により、予報発令までに 予報官がやらなければならない作業は大幅に省力化 され、また従来は扱っていなかった種類のデータま で解析の対象とする 事が出来るように なった。さらに、翻 訳・データベース化 を行なうコンピュー タは平磯支所のLA N(Ethernet)に結 合されており、ウル シグラムデータは LAN上の他のコン ピュータシステムか らも利用可能となっ ている。
  

宇宙天気予報をめざして
 平磯支所が、長年、宇宙環境監視業務に取り組ん できたのは短波電波の予警報のためであったが、高度 宇宙利用時代の到来を前にした今、宇宙環境の予報 はそれ自体が重要なテーマとなってきている。昭和 63年度から、『宇宙天気予報(宇宙環境の予報)』プ ロジェクトが平磯支所を中心としてスタートしたの もその流れの一つである。宇宙天気予報ではさらに 綿密な予報を目指し、リアルタイムデータの交換が 行われるようになる。
 ここで紹介した宇宙環境監視データ自動処理シス テムはさらに磨きをかけ、宇宙天気予報システムの 一部となって組み込まれて行く予定であるが、宇宙 天気予報でウルシグラムデータが有効となるには、 伝達時の信頼性と迅速性の向上が必須といえる。現 状は、テレックス回線の品質が悪いこと(特にモス クワからのデータにはエラーが多い)、地域警報セ ンター間の連絡経路中に多くの中継点がありそこで 停滞や転送エラーが発生していること等のために、 ウルシグラムデータ交換の信頼性、迅速性ともに満 足のいくものとなってはいない。今後、中継箇所を 極力減らし地域警報センター間が直接結ばれるよう にするとともに、可能なところから迅速で確実なコ ンピュータネットワークに置き換えて行くことが課 題となるであろう。

(平磯支所 通信障害予報研究室 研究官)




自転車でモンブランへ


松本 和良

 ジュネーブのITUに出向してから3年たち、残 り8か月となりました。ジュネーブの町は国際政治の中 心地であるだけでなく、観光ルートのクロスする所 であり、日本からの観光客にあふれており、御存知 の方々も多いと思います。ここでは、着任直後の私 の生活・行動などを書いてみました。

 私のすぐ実行したことは、自転車を入手すること でした。当然のことですが、アパートや家具はIT Uの担当の婦人が用意して下さったので、当面の生 活はスタートできたからです。自動車をもたなかっ たことが幸いして、職場に近く、格安(1500スイス フラン/月、水・湯付)な家賃でした。自転車の入 手にあたっては、購入だけでなく、生命保険加入を 証明するナンバープレートをジュネーブ市から買わ ねばなりません。これは、毎年更新せねばならず、 日本の防犯登録証と異なるところです。自動車 であふれた(1/3が日本車)ジュネーブでは、自転 車は便利ですし、実際、多くの若者が50cc以下の 原動機付自転車を中心にして、利用しています。た だ、問題なのは、道路わきがトロリーバスの通路で、 中央分離帯が最も安全な通路となります。自動車に はさまれて走ることは、大変にこわい思いがしまし たが、今では慣れてしまいました。これは規則的に は問題なく、他の人々も同様に走っております。日 本と異なり、自転車から自動車まで対等な責任 を有しております。ちなみに、歩道は歩行者専用で あり、危険からのがれ歩道を走行すれば年配の女性 におこられます。その他、電話の取り付けも大変で した。結局、約2か月くらい待たされました。一事 が万事この調子で、これから、ヨーロッパ社会への いらだちのスタートとなりました。すべてがスロー モーで、3年前着工したITUの増築工事(日本な ら高々半年)がまだ出来上がっておりません。

 やっと落ち着いた、着任後2か月目くらいのこ ろ、土・日の休日を利用したサイクリングに出かけ ました。雪はとけ、良い天気だったので、行くあて のないランダムウォーク的な旅のつもりでした。あ いにく、ジュネーブはスイスの最西端であり、周り はほぼフランス領になっており、すぐ国境警察の検 問所につきあたります。その時は、警察官に行き先 を聞かれ、苦しまぎれに答えたのが、目前に見える モンブランの名前でした。無理だと笑われました が、すぐ近くに見えましたので、この山を目的地に 決めました。しかし、行けども行けども、山は遠の くばかりでした。モンブランはジュネーブから南東 に自転車で約8時間(登り坂)くらいにあるシャモ ニーという町からロープウェイでのぼります。走行 ルートは広大なアルプスの谷間にあり、その雄大さ や美しさは口には表せません。冬期は無数のスキー 場が出現します。ただし、ジュースの自動販売機は 一切なく、水の補給に苦労しました。残念だったこ とは悪天候で頂上へのロープウェイが止まっていた ことです。

(国際電気通信連合 周波数登録委員会 会議準備とコンピュータ支援部 オービットセクション)

ITU本部

 中央の高いビルが本部、中央左下が私のオフィス


≪外国出張≫

JPLに滞在して

黒岩 博司

 昭和63年2月1日より10か月間、科学技術庁の長 期在外研究員として、水蒸気ラジオメータによる大 気伝搬遅延に関する研究を行うことを目的として米 国カルフォルニア州パサデナ市にあるJPL(ジェッ ト推進研究所:Jet Propulsion Laboratory)に滞 在した。パサデナはローズパレードで有名なロサン ゼルス近郊の緑のきれいな住宅都市であり、JPLは、 この町の北の端、ウィルソン天文台のあるサンガブ リエル山脈の麓にある。その誕生の歴史からJPL はカルフォルニア工科大学の付属機関であるが、研 究費の多くをNASAより受け、NASAの1研究所と されている。JPLの職員数は5600人以上でボイジャ ーやマリーナといった名前で知られる衛星による惑 星探査を主なミッションとする研究所である。(本 年8月にはボイジャー2号が海王星に接近する。そ の時にはまたパサデナ発のニュースが報道されるで あろう。)

 筆者はTracking Systems and Applications Section(マネージャーはJPLのVLBI解析ソフト で名高いFanselow博士)のVLBIシステムグルー プに所属した。VLBIを使った衛星航法に関する研 究がグループの仕事であり、航法の精度を高めるた めに様々な研究を行っている。研究課題である水蒸 気ラジオメータ(WVR)による大気伝搬遅延に関す る研究は、WVRを用いてVLBIの重要な誤差要因 である大気中の水蒸気による伝搬遅延を測るという ものであるが、JPLはResch博士を中心として精 力的にこの研究を行ってきたことで知られている。 筆者はここで新しく開発されたプロファイルアルゴ リズムと呼ばれるWVRデータ処理法に取組んだ。 これを用いてJPLのWVRデータを処理するととも に、精度向上のためにいくつかのプログラムの改修 を行った。また、コロラド州ボールダーにあるNO AAのWPL(Wave Propagation Laboratory)の実験 施設で行われた。JPLを始めとする各研究機関のW VR比較実験に実験グループの一員として参加し、著 名な研究者と議論出来たことは大変有益であった。

 JPLには世界各国から研究者が集まっており、講 演会が連日のように開かれ、研究の刺激を大いに受 けられる。研究環境は非常に良いと感じた。また男 女平等が浸透しているせいか女性の研究者が多いこ とも目についた。余談だが筆者のアパートの前の植 え込みに深夜酔っぱらい運転の車が突っ込んだ時、 やってきたのは若い女性の警察官1人であった。最 近の経済力を反映して日本に対する関心は予想以上 に高く、JPLの中にも日本語講座が開設されてい た。アメリカの日本に対する期待が高いことも印象 に残った。

 大変貴重な経験をさせていただいた科学技術庁研 究開発局の関係の方々をはじめ、お世話になった方 々に感謝したい。

(鹿島支所 第三宇宙通信研究室 主任研究官)


ボイジャー管制用70mアンテナと
水蒸気ラジオメータ(ゴールドストーン)



短 信



電気通信に関する研究開発のあり方について所内検討開始

−電気通信技術審議会諮問第40号に関連して−


 郵政省は昭和63年10月24日、電気通信技術審議会(電 技審)に「電気通信技術に関する研究開発のあり方」を 諮問した(諮問第40号)。これは、NTTの民営化、新規 電気通信事業者の参入、通信方式等の標準化ニーズの増 大等、目まぐるしく進展する電気通信分野において、研 究開発面での体制、発展方向等、長期的な在り方を定め ようとするものである。この答申は平成元年4月頃に出 される予定である。電技審では技術開発政策部会を設け (部会長:園山宇宙開発事業団副理事長)、審議を開始し ている。同部会には、当所所長も委員として参加してい る。
 当所では同部会に意見を反映すべく、所内電技審等対 策委員会のもとに研究開発検討作業班(主任:猪股企画 課長)を設け、広く所員の意見を集約し、今後重要とな る研究開発の内容等の検討を行っている。