所長就任にあたって


所長 畚野 信義


 今我が国の多くの国立試験研究機関では質的な変 化の流れが大きく動き出しています。当所において も、2〜3年前からその方向に向かっての検討や、 様々な方策の実施に着手し、そのいくつかは形と なって現われ始めています。
 この機会に、その背景や当所の改革の考え方、目 的、具体策等について説明し、日頃御支援を戴いて おります各方面の方々の御理解と御鞭撻を戴きます とともに、その成否に各自の意欲が直接係わります 当所職員へのメッセージとしたいと考えます。
 国立試験研究機関は大きく分けてふたつの役割を 持っています。

 ひとつは、国が定めるべき標準、基準等を決定 し、維持し、実施し、更に改良するために必要な技 術的サポートと関連研究を行うこと。
 もうひとつは、先端科学技術の研究であります。 前者はいわば基本的部分であり、近代国家が国とし ての機能を果すに必要な部分であり、国立試験研究 機関設置の原点であります。一方後者は元々はいわ ば金持・貴族の道楽であり、あるいは人類の基本的 な性質である好奇心に基づくものであります。それ は歴史を遡ってあきらかであります。
 しかし、この種の研究は単に好奇心を満足させる だけでなく、人類文明の発展に何度となく契機を与 えて来ました。そして産業革命以来社会生活への影 響力を増し、先進国の国力の消長に保って来ました が、近年は更にその傾向が顕著になっております。 特に我が国は国力の充実に伴い名実共に先進国とな り、従来の技術導入型の科学技術政策をとることが 許されなくなって来ていることは周知の通りであり ます。独創性のある先端的、基礎的科学技術研究を 行うことが我が国の命運を左右するとの認識から国 が国立研究機関を中心にこれを行うことが必要と考 えられるようになって来ました。
 この考え方の基本を示したのが昭和62年度の科学 技術会議第13号答申であります。極く最近まで、基 礎研究は大学、実用研究は企業研究所、国立試験研 究機関はその中間という役割分担論がさしたる考え もなく使われていましたが、現在では国立研究機関 は基礎に重点を移すいわゆる基礎シフトの態勢を執 るうとしております。上記した国立試験研究機関の 役割の重点が前者(発展途上国型)から後者(先進 国型)ヘ移って来たと言えます。その結果多くの機 関でプロジェクトや組織の見直しが進んでおりま す。たとえば当所と同じ逓信省電気試験所から分か れた工業技術院電子技術総合研究所(ETL)では昨 年組織改正を行い、14研究部のうち基礎あるいは科 学の付く名称の部が5を数えております。

 通信の自由化という具体的な問題を持つ郵政省で は先端的基礎研究を独自に進めることの必要性は更 に焦眉の急であり、その考え方は63年度電気通信技 術審議会第40号答申に示されております。電気通信 分野における唯一の国立研究機関である当所の実力 の向上、そのための予算・要員の飛躍的な充実と共 に、その体制、体質の根本的な見直しと改善が必要 であります。

 それではまず当所の現状を知って戴くことから始 めたいと思います。図1はここ10年余りの当所の予 算の推移であります。図2は他の国立試験研究機関 との比較を示します。図3は所員数の推移であり、 図4はその原因である計画削減と増員数を示しま す。図5は職員中研究職と行政職(技官、事務官の 合計)の割合を全国立試験研究機関の平均及び他省 庁の代表的機関のそれと比べたものであります。


図1 当所予算の推移(*補正予算額63.3億円)


図2 国立研究機関の予算(対53年度比率)


図3 当所の定員


図4 当所の定員端と計画削減


図5 研究職と行政職の職員比率

 これらの図を一見にしてその「惨状」に驚かれる 方も多いかと思います。特に研究に直接使われる経 費である試験研究費と設備整備費の急減の状況ある いはその絶対額の小ささはこれが百近くある国立試 験研究機関中5指に入らんとする当所のものとは信 じ難い数字であります。上記科学技術会議第13号答 申を審議した委員会において「郵政省は研究所を持 つ資格がないと報告書に書いてはどうか」という議 論があったといわれています。所内においても、研 究に支障が生じ、新しい研究の芽も出る希望がない というような状態が長く続くことは研究者の士気に かかわるものとして深刻に憂慮しておりました。

 幸い62年度の大型補正予算で国立試験研究機関中 抜群の額(63億余円)の配算を得、所内の空気が一 転明かるくなりました。更に本省の強力なバック アップのもとに63年度から電気通信フロンティア計 画が発足でき、予算は少し上向き始めました。まだ まだ金額的には微々たるものですがマイナスからプ ラスに転じたことは大きな意義があります。今後こ れを大きく育ててゆくよう努力したいと思います。

 次いで平成元年度には関西支所の設置が認められ ました。これは神戸市と明石市にまたがる旧岩岡電 波監視部の跡で広大な敷地を有し、明石海峡架橋を 眼下にのぞみ、フランス革命二百年記念としてフラ ンスから寄贈され、淡路島の北端に設置される記念 建造物(通称第2の自由の女神)も指呼の間にある という絶好の立地条件にあります。特にこの記念碑 のテーマは「コミュニケーション」であり、我国唯 一の通信に関する国立研究所Communications Research Laboratory の進出は兵庫県を始めとする地 元からも大いに期待されております。私達は我が国 国立研究機関の基礎シフトの当所における最初の研 究プロジェクトとして電気通信フロンティア研究計 画を発足させ、それの実施の中心として、又当所の 基礎研究へかける意欲のひとつの象徴として関西支 所を開設することができました。今後研究内容の充 実、予算・要員の増強に努力し、地元との連携を強 化し、関西支所を関東支所に匹敵する規模(約100 名)に育ててゆきたいと考えております。

 昨年当所は今後の発展を期して名称の変更を行な い、21世紀に向かって「高機能知的通信の研究」「人 間生体情報の研究」「有人宇宙時代通信の研究」「地 球惑星系環境の研究」「電磁波物体・材料の研究」 の五つを主要研究分野に選び、通信・情報・電波に 関する研究を幅広く進めてゆくことを決めました。最 近新たに発足したプロジェクトは電気通信フロン ティア関連の研究の他にも、宇宙天気予報、成層圏 無人航空機無線中継、地球環境等数多くあります。 これらは国の研究所で行うにふさわしい先行的な研 究であり、又当所でしかできない内容でかつ長期間 を要するものであります。更にこれらに劣らない重 要な研究課題が多く継続実施中であります。その中 には大きな予算・要員を必要とする衛星計画等も含 まれております。当所は我が国の国立試験研究機関 中おそらくもっとも幅広い研究分野をカバーしてお ります。限られた予算・要員の中でそれらを効果的 に進め、充分な成果を得るには非常な努力を必要と します。それには予算・要員の確保、増強につとめ ると共に、組織の見直し、体質の改善が必要と考え ております。
 まず、長期的な予算・要員の低落は、もちろん国 の財政状態の悪化が原因でありました。しかし、そ の状況を打開する方策を模索し、進めようとする努 力と気力が足りなかったのではないかと反省してお ります。そこで企画部門を強化し、当所の基本方針 を策定し、それを推進するための調整機能と責任を 持たせることにしました。

 次に図5から当所は所員中の研究職の比率がかな り低いことがわかります。歴史の古い試験研究機関 は定常業務部門を持つため一般にこの傾向はみられ ますが、例えば電子技術総合研究所と63年度で比較 すると

表1の通りです。今後研究職の増員に努力す ると共に、思い切った業務の見直し、改善を行う必 要があります。

研究職行政職
ETL559134
CRL261163

表1 ETL、CRLの職員数

このために先ず

○総務部門、管理部門の見直しを行います。
 これには事務手続き、文書等の徹底的な簡素化や 保有・管理する物品等の大幅な削減、これらをふ まえたOA化が必要となります。そのほか、

○定常業務を次のように見直します。
*無線機器の型式検定の試験業務と較正業務を外部 機関へ移管します。これらのために必要な研究は 今迄通り当所で行ないます。
*電離層定常観測は現在の緯度5度間隔を10度間隔 とし、電波観測所の見直しを行ないます。これら は59年10月に提出された当所の電波予警報業務将 来計画検討委員会(通称新野・松浦委員会)の報 告にもとづいて行ないます。
*標準周波数・時刻の供給については新しい供給方 法、より高精度な標準の供給とそれに伴う一部有 料化等について検討をすすめ結論を得たいと考え ております。また、

○図書・情報サービスの近代化を行なってゆきま す。
 めったに使用しないバックナンバーを保管するた めに広い施設を占有し、要員を配置する従来のや り方を見直すこと、支所・観測所にも本所と同じ 良質なサービスを行うこと等のニーズに応えると 共に、情報通信分野唯一の国立研究所としてふさ わしいものにしたいと考えております。

 最後に最も重要な問題として、当所の中核であり ます研究者について考えを述べておきたいと思いま す。最近所外の何人かの方から手紙を戴きました。 それらは当所へのいろいろな期待を述べられると共 に、研究所としてかなり不満足な点が多いことを率 直に指摘されていました。それぞれ、いちいち思い 当ることばかりであり、改善の努力の必要性を改め て痛感しました。中で一番ショッキングであったの は通信総合研究所は研究をする組織であるから研究 室長以上は学位を持った者のみにすべきであると強 く提案されていたことであります。実は私は以前か ら部長、支所長、特別研究室長以上は学位を持つこ とを基本条件としたいと考え、それを所内へ示す機 会を狙っておりました。「学位を持たない研究者、 無免許ドライバー論」迄は行かないにしても、研究 者を指導する立場にある人は自身が立派な研究者で なければ指導される人達の信頼は得にくくなりま す。研究者の能力を示すひとつの明確な指標である 学位を基本条件としてよいのではないかと考えてい ました。しかし、研究室長のレベル迄それを求める ことは無理と思っておりました。当所の現状に妥協 していたと今反省しております。研究所の仕事が忙 しいから取れなかったというのは言い訳にならない にしても、取りにくい仕事があることも事実ではあ ります。しかし、それも内部にしか通じない言い訳 であろうかと思います。研究所の評価はその成果の みによって定まります。そしてそれは各研究者の成 果の積み重ねであります。外部の眼の厳しさを研究 者各人が痛感してほしいと思います。又電総研を例 にとりますが、所長、次長、特別研究官、首席研究 官、企画室長等幹部は全員、14研究部長、1センタ ー長計15名中14名、研究部所属56研究室長中50名が 学位所持者であることを見ても、この外部の眼は決 して的外れではないと言えます。

 基礎シフトは興味のある研究テーマが増え、研究 者にとって好ましいことであります。その中で優れ た研究成果を得るには研究環境、研究者の能力、意 欲が重要な鍵であります。このため研究費を含む研 究環境の整備に努力すると共に、優秀な研究者の確 保のため選考採用、中途採用にも力を入れるほか、 外国人研究者も積極的に採用してゆきたいと考えて おります。研究者の意欲の向上は特に重要でありま す。定常業務の見直しも単にその負担を軽減するば かりでなく、研究者が定常業務にかかわることでそ こに安住し、研究意欲を鈍らせることのないように というのも大きな狙いであります。
 研究にインセンティブを与え、組織を活性のある ものに保つには、成果の正当な評価という意味での 「信賞必罰」が必要であります。これは罰という字 の持つ暗いイメージとしてではなく、フェアネスを 保つという立場からキチンとやってゆきたいと考え ております。

 新しい時代の国立研究機関として発展し、優れた 評価を得るために、所員各人の努力を期待すると共 に、各方面の方々の一層の御支援、御鞭撻をお願い する次第であります。
(6月30日、所長就任)




陸上移動通信用高能率ディジタル変調方式の開発


三瓶 政一

  

はじめに
 陸上移動通信は、「いつでも、どこでも、誰とで も」という通信の究極の目標を実現し得る通信形態 である。一方、近年においては、陸上移動通信への ディジタル変調方式の導入による、「話をしながら ファックスを送る」、「移動体からISDN網へアクセ スする」等の多様なサービスの要求が増大してい る。またこのような要求は、ISDN網の普及に伴 い、今後急速に増大すると考えられる。
 これら多様なサービスの実現には、伝送速度とし て、数10kbit/sが必要となる。特に、ISDNとの 接続を考慮すると、64kbit/sの伝送が必須である。 しかし、このような高速伝送を、従来技術である GMSK(Gaussian-filtered Minimum Shift Keying) を用いて実現すると、100kHz程度の周波数帯域幅 が必要となる。これは周波数が逼迫している陸上移 動通信においては現実的でない。
 そこで、当所では、1つのシンボルで4ビットの 情報が伝送でき、現行程度の帯域(25kHz)で64 kbit/sの伝送ができる高能率変調方式(16QAM: Quadrature Amplitude Modulation)の陸上移動通 信への適用を検討している。
 ここでは、陸上移動通信へ16QAMを適用する際 に最大の課題であるフェージングひずみ補償方式の 原理と、伝送特性例を紹介する。
  

フェージングひずみ補償方式の原理
 図1に、16QAM信号がフェージングを受けた場合 の受信信号空間ダイヤグラム(取り得る送信シンボ ルの振幅と位相の組合せを示す図)を示す。16QAM 信号がフェージングを受けると、図1(a)〜(c)に示さ れるように、フェージングの包絡線変動及び位相変 動によって、それぞれ、信号空間ダイヤグラムの大 きさ及び位相が変化する。ただし信号全体は相似形 を保ちながら変化する。これは、受信信号空間ダイ ヤグラムのある1点(例えばA点)の位置が推定で きれば、フェージングによる振幅及び位相ひずみが 推定でき、フェージングが補償できることを示して いる。


図1 フェージング下の信号空間ダイヤグラムの変動

 そこで本方式では、図2に示すフレーム構成によ り、図1のA点に相当する信号を定期的に送信す る。これにより、受信側では、各フレームタイミン クにおけるA点の位置を検出することができる。例 えば、図1の(a)〜(c)の場合のA点の位置は、図1(d) のa〜cとなる。一方、フェージング変動は非常に 滑らかなので、図1(d)の様に、A点の軌跡を滑らか な曲線で内挿してやれば、情報シンボルにおけるA 点の位置が推定できる。従ってA点の位置の推定値 からフェージングによる振幅及び位相ひずみが推定 でき、また、推定値を基にフェージングひずみを補 償することができる。


図2 フレーム構成

  

フェージング下のBER(Bit Error Rate)特 性
 本方式の特性例として、図3に、フェージング下 のBER特性の計算機シミュレーション結果を示す。 ただし、フレーム長はN=16、チャネル伝送速度は 16ksymbol/sec(1/16の割合でフレームシンボルが 挿入されるため情報伝送速度は60ksymbol/s)であ る。また、図3に、GMSK同期検波方式の室内実験 特性も示す。


図3 フェージング下のBER特性
   GMSK:室内実験特性
   160AM:計算機シミュレーション結果

 提案方式を用いた16QAMは、GMSK同期検波よ り特性が良く、最大ドップラー周波数faが100Hz 以下で、BER特性はfdに殆ど依存しないことがわ かる。また、提案方式は、64QAM、256QAMにも適 用可能である。従って、提案方式を付加したQAM は陸上移動通信において非常に有効な変調方式であ り、従来の帯域で60kbit/s〜120kbit/sの高速伝 送可能となることがわかる。
  

おわりに
 陸上移動通信の利便性向上のため、フェージング ひずみ補償機能を有する16QAM方式を提案し、そ の方式を用いた場合のBER特性を紹介した。
 本方式は、16QAMのほか、64QAM等へも適用で きる。例えば、64QAMを用いる場合、最近構内無線 で検討されている50kHz程度の帯域を用いると、 ISDNの基本伝送形態である2B+D(2つの情報伝 送用チャネルと制御用チャネルの複合伝送)の実現 も可能となる。
 このように、本方式を適用した多値QAM方式は、 非常に広い応用が期待できるので、今後、通信機メ ーカの御協力も得て、実用化をめざした装置開発の 検討を進めたいと考えでいる。

(通信技術部 通信方式研究室 研究官)




南 極 越 冬 記


電波部 電磁圏伝搬研究室 大塚  敦
情報管理部 電子計算機室 井口 幸仁

 女優の和泉雅子さんの北極点制覇は新聞やテレビ などで有名ですが、森永由紀さんはご存じですか?

 我々第29次南極地域観測隊(昭和基地越冬隊27 名、あすか観測拠点越冬隊10名、夏隊15名)は、日 本初の女性観測隊員の彼女とともに観測船「しら せ」に乗り、昭和62年11月14日東京晴海埠頭を出航 した。顔色が蒼くなり、笑いを失う地獄のゆりかご 船酔の洗礼を受けること2週間、西オーストラリア のフリーマントル港に到着して一息、食科を積み込 み南極へと向かった。

 順調に航海は進み、12月17日からあすか観測拠点 への物資輸送を開始した。昭和基地では大型パラボ ラアンテナ基礎工事、衛星受信棟建設を行った。当 所関連では、E層付近の高さの電離層を流れるプラ ズマの運動の東西成分の測定と、高さ90q付近の 風の南北及び東西成分を精度よく測定するために、 新しいオーロラレーダ用アンテナの建設を行った。 これらの夏作業を終えて昭和63年2月1日から越冬 生活が始まった。この頃の昭和基地の印象は「なん て暖かいところだ、全然雪がないじゃないか。ラッ キーッ」であった。しかし、夏作業中の飲料水のた めの人工池決壊があり、さらに、越冬期間中降雪が 少なかったため、1年間水不足に悩まされた。

 昭和基地周辺の自然は空気が大変きれいで、奇妙 に光り動めき舞うオーロラと、満天に輝く天の川や 南十字星には感動させられた。また、春の暖かい光 を浴びて居眠りをするアザラシのほのぼの親子、石 を集めて巣作りをするあつあつの夫婦ペンギンを見 ることができ、1年間飽きることなく生活できた。

 屋内の生活では、初の試みとして良質のキュウ リ、ミニトマト、カイワレ大根、もやしの大量生産 や、メロンの栽培を行い大成功した。これは水耕栽 培装置と呼ばれる機械のおかげであった。

 余談ではあるが、夏隊の彼女が越冬隊員用の宿泊 室に一泊した時の枕の紛失が南極の不思議の一つと して追加された。

 越冬中の大事件は、あすか観測拠点越冬隊9名に よる隕石調査隊のうちの3名がクレバス(氷の割れ 目)に転落し重軽傷を負ったことであった。3名と も30メートル落下、「しらせ」が急きょ救援に向か い無事収容された。現在は3名ともけがも治り社会 復帰している。

 越冬終了したつかの間の平成元年2月3日、暴風 により「しらせ」積み込みのため屋外に集積して あった持ち帰り物品が飛ばされる被害にあい、越冬 中得た貴重なデータの一部が海のもくずになった部 門もあった。

 平成元年は多難な幕開けでしたが、3月28日にシ ドニー経由で空路無事帰国しました。南極越冬は私 たちにとって貴重な経験になりました。皆様の数々 のご支援ありがとうございました。現在、私たちは 南極ボケなどのリハビリ期間中ですが、なかなか回 復のきざしが見えません。何かよい薬がありました ら教えてください。


オーロラレーダ用アンテナ完成記念



短 信




村岡兼造郵政大臣当所を視察


 6月31日(金)午後、村岡兼造郵政大臣が当所の視察 のため来所された。
 畚野所長から当所の歴史並びに研究活動の概要説明を 受けられた後、約1時間半にわたって移動体衛星通信シ ステムの研究、脳機能モデルによる高能率符号化技術の 研究、標準時計、宇宙光通信地上センター及び超伝導研究 施設等の主要な研究施設並びに研究状況を視察された。
 短時間の視察ではあったが、それぞれの施設では、担 当者の説明に対し熱心に質問されていた。移動体衛星通 信の説明では一箇所の中継で日本中どこでも通信ができ ること、宇宙光通信地上センターの赤外カメラで撮影さ れた衛星や土星の画像、超伝導研究施設では、超伝導現 象のデモンストレーション等に関心を示されていた。



コンビニエンス・ラジオフォン型検合格第1号誕生


 コンビニエンス・ラジオフォン(簡易陸上移動無線電 話)の型式検定合格第1号機器が6月14日誕生した。
 当該機器は、昭和63年3月に無線機器型式検定規則を 含む省令改正等により、型式検定の対象となったもので ある。
 コンビニエンス・ラジオフォンは、900MHz帯の電波 を使用し、20〜30qの範囲を対象とする無線通信シス テムであり、主として自動車等に設置し、誰でもが手軽 に一般加入電話への通信ができる安価なシステムとして 国民の期待に応えて登場した。
 現在、自動車電話での営業が行われていない地方都市 を対象に普及活動が図られており、帯広市で本年12月、 青森市では来年7月に営業を開始する予定である。