二つの静止衛星を用いた通信・測位複合システム


森川 栄久

  

はじめに
 衛星を用いた移動体(車両、船舶、航空機等)通 信サービスは、データ、メッセージ、音声等のいわ ゆる「通信」と移動体の位置を決定する「測位」に 大別される。従来、これらの二つのサービスは、そ れぞれ別々のシステムとして行われてきた。最近、 新しい移動体衛星システムとして通信と測位の両機 能を一つのシステムで提供するものが各国で研究開 発されるようになってきている。
 当所では、(財)電波システム開発センター(RCR) と共同で二つの静止衛星を用いた通信・測位複合シ ステムの研究開発を進め、現在太平洋上で船舶によ る通信・測位実験を行っている。
  

通信・測位複合サービスの特徴
 通信・測位複合サービスでは、移動体の位置決 定、移動体のモニター及びメッセージあるいは音声 通信が同時に提供され、利用形態としては、@ナビ ゲーションA交通管制B運行管理C救難緊急通信な どがある。要求される通信性能と測位性能は、上記 のような適用分野および陸、海、空のどこで利用す るかで違ってくる。ある調査によると、測位性能に 関してはナビゲーション、交通管制及び救難緊急通 信サービスにおいては比較的高い精度が要求され、 運行管理のサービスでは比較的低い精度でもよいと している。また、通信性能に関しては、陸上及び海 上のサービスではデータ通信で十分な場合が多く、 飛行機の交通管制及び運行管理では、音声通信の利 用が重要であるとされている。
  

実験システム

(1)特徴と構成
 本実験システムにおいては、一つの通信回線で通 常の音声(データ)通信と測位が同時に行えること を実証する。さらに、狭い周波数帯域でどの程度の 測位精度が得られるかを評価することとしている。
 実験は、基地局(鹿島宇宙通信センター)と移動 局および2機の静止衛星を用いて行われる。2機の 静止衛星は、東経150°に位置するETS-X衛星と東 経180°に位置するインテルサット太平洋衛星であ る。インテルサット太平洋衛星には、インマルサッ トが所有する中継器が搭載されており、これを使用 する。
 測位のためには、移動局と基地局の距離を衛星を 経由して測定する必要があるが、この測距にはPN (疑似ランダム)符号と呼ばれるディジタル信号が 用いられ2衛星を経由した二つの信号の時間差から 距離を計算する。

(2)移動体の位置決定(測位)
 図1に示すように上記の測距方法で得られたデー タから、移動体はETS-Xから距離r2、インマルサッ ト衛星から距離r3の位置にあるとになる。従って、 移動体の位置は3次元空間内の円で表わせる。陸上 または海上の移動体の場合は地球表面上に位置する ので地球面と空間内の円との交点として求まる。ま た、地球面との交点は通常2点存在し、静止衛星が 赤道上にあることから、この2点は赤道をはさんで 南北にほぼ対称の位置(緯度の絶対値と経度が等し い位置)に存在する。


図1 移動体位置決定の原理

(3)実験用通信・測距複合装置
 音声、データ等の通信と測距を同時に行う通信・ 測位複合システム用の実験装置として以下の二つの 方式について開発を行った。各方式とも、ディジタ ル変復調方式を用いており、同一の変復調器で通信 と測位を行う。
 

(a)SCPC方式
 一つのSCPC(Single Channel Per Carrier)通 信チャネルを測距用のチャネルとしても利用する方 式である。使用周波数帯域は通常の通信回線の25 kHzである。測距に用いるPN符号速度は12kbps で測距用としては非常に遅く高精度の測位は期待で きない。しかし、現在用いられている通信・装置に簡 単な装置を付加するだけで測位と通信が同時にでき る利点がある。
 

(b)SS方式
 スペクトル拡散(Spread Spectrum)された電力 密度の低い通信信号に測距信号を重畳する方式であ る。実験に用いる衛星中継器の周波数帯域から拡散 周波数帯域は2MHzである。測距用PN符号速度は 1.275MbpsでSCPC方式に比較して約100倍である ため、より高精度の測位が期待できる。しかし、本 方式は時間差測定の際の不確定性の除去を必要とす ることと拡散変復調部を必要とする点で装置構成が 複雑となる。
 

表1に、SCPC方式とSS方式を比較して両方式 の測距信号の諸元を示す。

SCPCSS
変復調方式24kbps OQPSK5kbps BPSK
PN符号シンボルレート12kbps桁決 5kbps
拡散 1.275Mbps
PN符号長1000chips,
83.33ms
桁決 500chips, 100ms
拡散 255chips, 0.2ms

表1 変調方式及び測距信号の諸元

  

期待される測位精度

(1)測拒情度
 測距における誤差は、大気圏および電離層の屈折 等の電波伝搬路上の性質に起因するものと、装置の 電気的特性によるものが考えられる。本システムで は、その測距精度は、測距信号の追尾に用いられる DLL(DELAY LOCK LOOP)の入力 雑音による位相ジッタにより大きく左 右される。図2は、本システムで予想 される測距精度の計算値である。横軸 は、衛星回線のC/N0(信号電力/雑 音電力密度)である。縦軸の右側の数 値は、位相ジッタの標準偏差から求め られた測距誤差の標準偏差である。図 中の点線の領域は、本システムの回線 設計から得られるC/N0であり、SC PC方式の場合、数十mの測距精度に なる。また、SS方式の場合は、大気 圏及び電離圏の補正を行えば、数mの 測距精度が期待できることがわかる。


図2 DLLの受信C/N0対位相誤差
   (測距精度)

(2)測位精度
 移動体の位置は、図1に示したように測距データ と静止衛星の位置から、地球上での幾何学的位置と して計算により求まる。従って、測位精度は、測距 データの精度と衛星の位置決定精度で左右されるこ とになる。図3に、期待される測位精度の計算例を 示す。太平洋上では200〜300m程度の測位精度が期 待できることがわかる。この例では、測距精度を10 mとし、衛星の位置決定精度を経度方向で0.0004°、 緯度方向で0.0005°、半径方向で35mとして計算し ている。


図3 期待される測位精度の評価例

 現在、SCPC方式の通信・測位複合装置を船舶に 搭載して南太平洋上で通信および測位精度の評価実 験を行っている。

写真は、実験装置を搭載している北 海道大学水産学部の漁業練習船「おしょろ丸」の船室 内で当所の研究者が実験を行っている様子である。


写真 通信・測位複合システムを搭載して
   実験を行っている北海道大学水産学部の
   「おろしょ丸」船室での実験風景

  

おわりに
 当所で開発している2機の静止衛星を用いた通信 ・測位複合システムについて述べた。近年、経済活 動の高度情報化に伴い衛星通信には通信機能、また 測位機能だけでなく、通信と測位を同時に提供でき るサービスが強く求められている。本研究開発はそ のようなシステム構築のための基礎実験である。

(関東支所 鹿島宇宙通信センター 第二宇宙通信研究室)




真空紫外コヒーレント光


渡辺 昌良

  

短波長コヒーレント光
 いわゆる、電波に始まる電磁波開拓の大きな流れ は、より高い周波数、より短い波長での電磁波の発 生とその制御技術の開発にあったとも言える。レー ザは、まさにこの意味で、光を制御可能な電磁波と して認識させるきっかけとなった。発振器から得ら れる電波のように位相のそろった光、つまりコヒー レント光の登場である。現在、レーザは、様々な分 野でその特性を生かす研究が盛んに行われている が、より短い波長での発生技術の研究は、依然とし て魅力的なテーマである。
 短波長領域へのアプローチは、各種の方法が試み られており、最近ではX線領域の発生も話題に上っ ているが、これらは、いずれもパルス発振によるも のである。一方、連続波としてのコヒーレント光源 は、その優れた特性から、基礎研究の分野のみなら ず、超高速通信、精密計測等の広い分野への応用が 期待されながらも、発生の困難さのため短波長化は 大きな遅れをとってきた。特に、波長200nm以下 の真空紫外(vacuum ultraviolet:VUV)と呼ばれ る領域は、今なお未開拓の状況にあると言える。こ こでは、コヒーレント連続光の研究の最前線にある 真空紫外領域での発生について、その原理と実験の 概要を説明する。
  

非線形光学効果と周波数混合
 コヒーレント光を発生するには、レーザによる直 接発振と波長変換の二つの方法が考えられるが、一 般に、波長が短いほどレーザ発振は難しく、短波長 領域の発生は、波長変換に頼らざるを得ない。特 に、連続発振では、レーザの発振条件がパルス発振 に比べ一層厳しくなるため、波長変換による方法が 現実には唯一となる。
 このような波長変換は、“非線形光学効果”と呼 ばれる光に対する物質の性質を利用して行うことが できる。ある媒質に光が入射すると、媒質は内部に 一種のひずみとして生じる分極を介して光と相互作 用を行う。このとき分極は、自らまた光を発生す る。この繰り返しが媒質内での光の伝播である。と ころが、入射光がレーザのように強い場合、分極の ひずみ量に非線形性が現れ、入射光の2倍、3倍等 の周波数の光が媒質内で発生することになる。同じ 原理で、入射光が周波数の異なる二つの光の場合に は、和及び差の周波数の光が発生する。これが非線 光学効果による波長変換の原理で、周波数ω1とω2 の光からより高い周波数ω3(=ω1+ω2)(より短 い波長)の光を、和周波数発生(周波数混合)に よって発生させることができる。この目的のため に、非線形性を強く持つ特殊な結晶を用いるのが、 “非線形光学結晶による周波数混合”である。
 和周波数の光が発生する原理について述べたが、 発生するω3の光は、通常そのままでは十分な出力 として取り出すことはできない。これは、ω1、ω2、ω3 の光の媒質中での波としての速さ、すなわち位相速 度がそれぞれ異なるため、和周波数を発生させる相 互作用が十分に続かないためである。つまり、進行 にともない相互の光の位相関係が崩れるためであ る。有効な変換を行うには、互いの位相関係を常に 最適に保つ、すなわち位相速度を合わせる必要があ る。これが“位相整合条件”と呼ばれるもので、非 線形光学結晶を用いる際の重要な条件の一つであ る。これら位相整合条件は、結晶の複屈折性を利用 すれば、入射光の偏光方向と結晶軸に対する入射角 (位相整合角)をうまく選ぶことによって満足させ ることができる。但し、位相整合可能な波長範囲は 結晶の種類によって制限を受ける。
  

真空紫外コヒーレント光の発生
 真空紫外光を発生するための非線形光学結晶を選 ぶには、位相整合が可能であることの他に、発生光 が透過すること、変換効率が良いことが重要である。 多くの物質は紫外域以下で吸収があり、非線形光学 結晶も例外でなく、波長200nm以下の光が透過す る結晶は限られている。さらに、位相整合可能なも のとなると条件は一層厳しい。最近注目されている 非線形光学結晶の一つにBBO(β-BaB2O4)がある。 数年程前中国のグループにより開発されたもので、 可視域から紫外域で優れた波長変換特性が確かめら れてきた。透過波長は190nm前後まで延びており、 さらに、従来この領域で唯一とされた非線形光学結 晶KB5(KB5O8・4H20)に比べて非線形光学定数が40 倍程度大きく、高効率な波長変換が期待できる。そこ で、当所ではBBOを用いた周波数混合法で真空紫 外コヒーレント光の発生実験を進めてきた。
 図1は実験配 置である。二つ の基本波を、B BO上に絞り込 んで重ね合わせ る。基本波の組 み合わせは、位 相整合角に依存 して多く考えら れるが、ここで はアルゴンレー ザの第二高調波 (257nm)とチタ ンサファイアレーザを用いている。チタンサファイ アレーザは、最近実用化された固体レーザで、可視 域の700nmから赤外域の1μmの広い範囲にわた り波長可変で高出力が得られ、基本波レーザとして も優れている。例えば波長792nmのとき周波数混 合で194nmを発生するが、波長を変えることによ り真空紫外の波長も掃引できる。


図1 真空紫外コヒーレント光発生実験配置図

 BBOは、光の入射方向と光学軸のなす角度が位相 整合を満足するよう切り出されており、波長に応じ て傾き角を微調する。実験では190.8nmから196.1 nmの範囲の真空紫外コヒーレント連続光の発生に 成功した。図2は、発生した真空紫外スペクトルの 一例を示したものである。特に、波長190.8nmは、 非線形光学結晶により発生されたコヒーレント連続 光として最短波長である。


図2 真空紫外コヒーレント光スペクトル(194nm)

  

おわりに
 真空紫外域には原子、分子、イオンの多くの吸収 線があり、分光の分野からも興味ある実験が期待で きる。
 連続波としての真空紫外コヒーレント光は、電波 からつづく電磁波開拓の流れに沿ったものとして、 その優れたコヒーレンス特性への期待は大きい。最 近この分野も、応用面からの強い要望と共に、非線 形光学結晶と基本波レーザの新たな技術開発があ り、新しい展開が期待できる。

(関西支所 電磁波分光研究室 主任研究官)


≪外国出張≫

カナダCRCに滞在して

磯部 俊吉

 平成元年10月から1年間、科学技術庁長期在外研 究員としてカナダ通信省通信研究所(Communication Research Centre:CRC)に滞在した。CRCは、首 都オタワの郊外に位置し、当所と同様、職員約560 人の政府直轄の研究機関で、衛星通信を含む通信一 般、電波伝搬、放送、デバイス等の研究を行ってい る。当所とは、以前は電離層観測衛星、現在は成層 圏無線中継システム(CRCではSHARPと呼ばれて いる)等に関して協力関係にある。

 私は、高度衛星通信研究室(Advanced Satellite Communications)に所属し、SCPC/TDM再生中継方 式における衛星搭載PSK一括復調器に関する研究 を行った。この方式は、FDMA(周波数分割多元接 続)信号を衛星上で一括復調しTDM(時分割多重) 信号に変換するもので、地球局の小形化等が図れる ことから将来の移動体衛星通信システムとして有望 である。私は、CRCで数年前から開発されてきたシ ミュレーションプログラムに新たにローパスフィル タ部分、フェージング機能を追加し、一括復調器の 設計及び性能評価を行った。当所でも通信放送技術 衛星に、同様の再生中継器を搭載する計画があり、 その研究に生かせればと考えている。

 CRCでの研究生活で当所との大きな違いは、@個 室で研究も個人ベース中心であること、A研究者は 研究に専念できること、Bフレックスタイムで超過 勤務はほとんどしないことである。私のマネジャー の話によると、マネジャーは70%の時間がマネージ メント、研究者は90%が研究ということだった。会 議はぼとんどなく、部あるいは研究室全体で集まっ たのは1年間でわずか3回だった。必要なことはマ ネジャーが個別に聞いて回っているようだった。

 オタワは首都圏で人口約100万の政治都市で、緑 が多く大小様々な公園がいたる所にある美しい町で ある。東京での生活との大きな違いは豊かな自然も 含めた住環境である。カナダ人の暮らしぶりは衣食 の点では質素のようだが、家は広いし、キャンプ、 ボート、スキー等自然を生かしたレジャーが手軽に 楽しめるし、残業しないので趣味の世界に浸ること もできて、精神面では日本より豊かなようだ。人が 少なくて国が広いことは非常に羨ましいことであ る。ただ、経済的には資源の切売りと高金利で支え られているものの、先行き明るいとは言いがたいよ うに思われた。また、道路等の社会資本、教育、福 祉は充実しているとはいえ、消費税は来年から15 %、所得税も収入の1/3程度なのが実態である。

 1年間ではあるがカナダを見て、日本は経済大 国、技術大国となった今、急速な変化に対応して行 くことも重要であろうが、もう少しゆっくり時計を 進ませて、国民がゆとりのある豊かな生活を得られ る道があるのではなどと考えさせられてしまうこと が多かった。

 大変貴重な経験をさせていただいた科学技術庁、 郵政省の方々をはじめ、関係各位に感謝します。

(宇宙通信部 衛星通信研究室 主任研究官)


オタワ郊外のCRC



短 信




「秋の叙勲」大村保氏晴れの受章


 菊花薫る11月3日「文化の日」にあたり、大村 保 元 電波研究所次長は勲三等瑞宝章の栄に浴された。12月17 日郵政省講堂において勲章伝達式が行われ、深谷郵政大 臣から勲章が手渡された。
 顧みるに、大村 保 氏は、昭和19年10月国際電気通 信株式会社に入社、同社の逓信省への統合により逓信技 官等を経て郵政技官となり、昭和50年5月退官されるま で30有余年の間、電波監理局周波数課長、北海道電波監 理局長、電波監理局監視部長、科学技術庁科学審議官等 の要職を歴任の後、昭和49年7月電波研究所次長として 就任され、我が国の通信及び放送技術の発展に大きく貢 献された。
 在職中は、電波監視用・無線局検査用機器の仕様の統 一化と性能の向上に尽力し、更にカラーテレビ放送導入 に伴い、技術基準の確立及び無線局免許手続規則等の整 備を行い、放送開始を円滑に導かれた。
 また、レーザを利用した海洋通信、衛星追尾技術の研 究を開始するに当たり関係機関との調整を積極的に行 い、将来へ向けて重点施策として進めていく足がかりを 作るなど、豊富な知識、卓越した技量と優れた統率力、 旺盛な責任感をもって職務に精励して通信・放送分野の 研究開発の推進に指導的役割を果たされた。
 退官後は、日本科学技術情報センター理事、東京芝浦 電気株式会社顧問、放送技術開発協議会専務理事を努め るなど、科学技術の振興、通信・放送技術の進歩発展に 極めて顕著な貢献をなされた。
 今後とも同氏の御健康と末長く御活躍されますことを 期待します。



ETS-Xを用いた鉄道衛星通信実験


 当所は、ETS-Xを用いた陸上移動体衛星通信実験の一 貫として、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)との 共同研究による鉄道実験を開始した。
 これまで当所では、新幹線及び在来線において伝搬特 性に関する基礎的なデータ取得を行い、鉄道への衛星通 信導入の検討を進めてきた。本共同研究では、架線等の 電車線設備による電波の遮蔽やパンタグラフ雑音等、鉄 道特有の環境下における衛星回線特性を解明し、列車搭 載アンテナ及び通信方式等の検討を行うとともに、衛星 通信による列車制御システムの研究についても行う。こ れは、先行列車から速度・位置等の情報を受信し、列車 間の安全距離を確保するためのものであり、列車の安全 運行管理への当所の移動体衛星通信技術の応用となる。
 11月1日には、当所で開発した車載地球局と市販のデ ータ通信制御装置を用いた簡易な列車間データ通信シス テムによる公開実験を、「国際鉄道安全会議」(JR東日 本主催)において実施し、好評を得た。
 今後、本格的に実験を行っていくこととしている。



GMDSS機器の型式検定合格第1号誕生


 GMDSS機器の型式検定合格第1号機器が11月5日誕 生した。当該機器は、平成2年9月に公布・施行された 無線機器型式検定規則を含む省令改正等により、型式検 定の対象となったものである。
 GMDSS(全世界的な海上遭難・安全通信システム)は、 1988年11月のSOLAS条約締約国会議において同条約が 改正され、1992年から1999年にかけて段階的に導入され るものである。
 このシステムに対応するための機器としては、双方向 無線電話、DSC(デジタル選択呼出装置)、DSC可能な送 受信機、衛星EPIRB(衛星非常用位置指示無線標識)、 ナブテックス受信機、レーダートランスポンダ等、15機 種が要求されている。



第79回研究発表会が開催された


 平成2年秋季研究発表会(第79回)が去る11月7日当 所の大会議室で開催された。
 畚野所長の挨拶に続いて午前中は、宇宙天気予報の一 環として「31年ぶりの北海道オーロラ」と「太陽風じょ う乱の理論と観測」及び電波による計測関係で「TRMM 衛星搭載用降雨レーダの技術開発」と「ミリ波散乱実験 システムと初期実験結果」の発表を行った。
 午後からは、光による宇宙計測技術に関する「1.5m 望遠鏡宇宙観測システムと初期観測結果」及び「レーザ ビーコンを用いたMOS-1衛星画像検証実験」また、南 極昭和基地に新たに建設した多目的アンテナを用いた 「南極VLBI基礎実験」更に、次世代の衛星通信技術と して注目されている技術試験衛星Y型(ETS-Y)による 衛星間通信実験の「計画の進捗状況」と「搭載用実験装 置の開発状況」についてそれぞれ発表した。
 外部から168名の方々が来聴され、発表について活発 なご意見ご批判を頂いた。これら多くの貴重なご意見を 参考にして、今後も更に充実した研究発表会にしていく。



第32次南極地域観測隊出発


 越冬隊39名、夏隊16名の総勢55名からなる第32次南極 地域観測隊をのせた南極観測船「しらせ」は、平成2年 11月14日東京港を出港した。オーストラリアのフリーマ ントルを経て、12月上旬南極圏に入る。
 今回の観測隊には、当所から電離層定常観測に野崎憲 朗、宙空系研究観測に小竹昇、気水圏系研究観測に高橋 晃の3名が越冬隊員として参加している。
 電離層定常観測では、電離層垂直観測、電波によるオ ーロラ観測等に加えて、新たにFM-CW方式短波レーダ による電離層の観測を行う。宙空系研究観測では、極域 優乱と磁気圏構造の総合観測、オーロラ観測衛星 (EXOS-D)受信、ソ連マラジョージナヤ基地での超高層観測 等に加え、夏期(12月〜1月)に南極周回気球による超 高層大気の観測を行う。気水圏系研究観測では、極域大気 大循環に関する観測と大気、雪氷、海の相互作用の観測 (NOAA、MOS-1、ERS-1衛星受信)、また、クレバスを対 象とした電波探査実験等を行う予定である。



第32次越冬隊隊員
野崎君、小竹君、高橋君、検討を祈る!!



第19回電波研親ぼく会開催


 第19回電波研親ぼく会は、去る11月17日(土)に小春 日和の好天気に恵まれOB・現職員170余名の参加で盛大 に開催された。
 総会では、はじめに、畚野会長(当所所長)から「標 準電波開局50周年」、及び「関東支所鹿島宇宙通信セン ター25周年」を記念して、講演会と祝賀会が開催された ことの報告があった。
 つづいて、最近の当所の動向と将来についてふれ、予 算・要員の確保、基礎研究重視と関西先端研究センター の稼動、型式検定試験業務の民間移管について説明が あった。また、外国人研究者の積極的な受け入れ、民間 機関との共同研究及び電波研究100年記念行事計画等の 報告があった。
 懇親会は、上田さん(元所長)の乾杯で始まり、叙勲 の栄誉をうけられた糟谷さん(元所長)、尾方さん(元 特別研究官)、平尾さん(元電離気体研究室長)、また大 村さん(元次長)の喜びの言葉とともに盛り上がり、あ ちこちに3人、5人とかたまりができて、料理とお酒を 味わいながら昔を偲び、懐かしさいっぱい、時間のたつ のも忘れてにぎやかに歓談が続いた。
 今回OBの皆さんの肉筆のまま作成した近況集も好評 であった。