新年に当たって


畚野 信義

 明けましておめでとうございます。
 最近世界は激動し、昨年は中東戦争、ソ連の消滅 など特に大きく揺れましたが、当所でもここ数年か なり激しく様々なリフォームを行って来ました。

 そのひとつが昨年の秋田電波観測所の平磯宇宙環 境センターへの統合であります。四十年以上続き、 立派な成果と多くの思い出のある観測所を閉鎖する ことは、心の重いことでした。しかし、厳しい要員 事情のもと、激動する我国の研究環境のなかで、時 代を先取りして発展してゆくためには、やむを得な い、そして適切な選択であったと考えております。 これに伴い、鹿島宇宙通信センター、平磯宇宙環境 センターの組織の整備が完了し、平磯には平成4年 度に新庁舎が完成する予定です。鹿島は一昨年設立 25周年記念行事を行いましたが、我国電波伝搬研究 の発祥地である逓信省電気試験所平磯出張所が設立 されて77年経ちました。これを記念して今年3月に OBやお世話になった方々を平磯にお招きしてささ やかな記念行事を行うことにしております。永年そ れぞれの分野で我国の研究の指導的役割を果たして きた両センターは、有人宇宙時代を迎える21世紀に 向かって新しい態勢が整いました。

 もうひとつは、関西支所[関西先端研究センター :KARC(Kansai Advanced Research Center)]の研 究庁舎の完成であります。瀬戸内海を見下ろす高台 にあり、3階建約4700平方米、国立研究所らしくな い人目を惹く瀟酒なデザインの建物です。近畿地方 建設局を始めとする関係者の方々のご尽力とご支援 に感謝致します。9月19日の竣工式、11月25、26日 の記念国際シンポジウムも無事、盛大に終了しまし た。両行事共、兵庫県知事、神戸・明石両市長を始 め多くの方々にご出席いただきました。地元の強い 期待を感じました。これで物性、情報、バイオの3 分野8研究室が全部ここに勢揃いし、気持ちの上で もいよいよ腰を落着けて研究をやる雰囲気が整った と思います。職員は全部で約50名となりました。実 験施設、構内の整備、周囲の環境、駅までの交通の 便、宿舎などまだまた不満や不十分な点は多くあり ますが、今後も整備、改善に努力して行くつもりで あります。

 最近どこでも21世紀が声高に語られるようになっ て来ました。自分自身が21世紀に生きることを皆が 現実として認識し始めたからです。21世紀は [Communication] の世紀であると言われています。フ ランス革命百年記念に「自由の女神」がアメリカへ 贈られ、ニューヨークに建設されました。二百年記 念には「日仏友好のモニュメント」が日本に贈ら れ、淡路島の北端に建てられることになりました。 そのテーマは[Communication]であります。

 振り返ってみると、ふたつの世界大戦を経て最近 の東欧の激変に到る20世紀のテーマはまさに [Liberty]であったと実感されます。その東欧の激動 も近年の通信技術の飛躍的な発展なくしてはあり得 なかったと言われています。[Liberty]の世紀から [Communication]の世紀への変わり目を象徴するで きごとであったと感じられます。そしてあらため て、私達が将来に思いを致すとき、この水の惑星・ 地球を、その美しさのままに次の世代へと引き継い で行くためには、[Communication]がたいへん重要 な役割をもって来るものと思われます。今世紀を通 じて、ニューヨークは世界の自由の象徴としての役 割を果たして来ました。次の世紀、関西は世界のコ ミュニケーションの象徴としての役割を担い、貢献 することが求められています。

 KARCはこのコミュニケーションのモニュメント を望む地にあります。私達、通信総合研究所 (Communications Research Laboratory)が情報・通信 分野において我国唯一の国立研究機関として、来世 紀に向かって新しい研究を行うに最適の地を得たと 思っております。当所はKARCを基礎研究を行い、 国際協力を進めると共に、関西における産学官協力 推進の中核として位置付けております。約9万平方 米におよぶ敷地は十分な余裕があります。今後内容 の充実に力を注ぐと共に、遠くない将来に100名規 模に、更に独立した研究所へと発展させ、単に通信 技術ばかりでなく、幅広くCommunication Science をカバーする研究のセンターとして行きたいと願っ ております。

 国力の向上と共に「基礎研究ただ乗り論」に象徴 されるように我国の科学技術研究の現状について国 際的に強い非難があります。導入型の技術開発から 人類共通の科学的資産へ貢献する研究の重要性が認 識され、基礎研究への気運が盛り上がって来ていま す。しかしまだまだ掛声ばかりで実質が伴っていな いのが現状であります。国の民間に対する研究費分 担割合は低く、アメリカの25〜30%、ヨーロッパの 30%〜50%に比べ、数年前の約20%からじりじり下が り17%台という現状にあります。研究者の数も我 国の国立試験研究機関(国研)の研究職職員総数が 約1万人に対しアメリカが約6万人、人口比では約 3倍、ヨーロッパでは人口比では約3〜7倍にも なっています。私達は研究は、[人と金]の関数で あるとして声を大にし、これらの充実に努めて来ま したが、今年度私は国研の長の集まりである「各省 直轄研究所長連絡協議会(直研連)」の代表幹事を 勤め、我国の国研に於ける研究の発展、体質改善の ためにもうひとつの重大な問題があることに気付き ました。例えば、私達はいつも学会出席旅費の不 足に悩みます。国外で開かれる国際学会で発表する 機会に至っては、めったに得られないのが普通であ ります。その結果、折角の研究の成果を発表する 機会を失い、研究者の志気に関わるばかりか、場合 によっては成果の優先性を主張する機会を失い、そ の研究に費やした経費や努力が無に帰することすら 有り得るのであります。この原因は勿論予算額の不 足ですが、もうひとつは予算が非常に細かい項目に 分けられ、費目間の流用が殆ど不可能なことにあり ます。予算の細分化といえば、平成2年10月当所の 情報系の研究室で外部との共同研究の一環として専 用回線を使う必要が生じました。ところが、専用回 線料は独立した費目であり、他からは例え普通の電 話回線料からさえ流用ができないことになっていま す。10月という時期も悪く平成3年度の概算要求は 既に提出済みであり、早くても1年半後の平成4年 度からしか研究が始められないことになりました。 これは恐らく、専用回線など滅多に利用されない時 代に作られた会計法規が時代の進歩に取り残された 結果であると思われます。しかし、もう少し視野を 広げて世界の状況を見ると、このように研究上の予 算の費目が細分化されているのは外国には例を見な いものです。例えばオーストラリアでは完全なワン ポケットになっています。欧米の多くの先進国でも 実質上ほぼそれに近い状態です。この原因を誤解を 恐れずに一口で言うと我国において研究に対する 考え方が、あるいは研究そのものの状況が大変遅れ ているからであると思われます。国研は所属する各 省の行政施策の技術的支援や国としての基準・標準 の維持・向上のために設けられました。これはどの 国においても国研設立の原点であります。しかし先 進国においては、もうひとつの役割である基礎研究 ・先端研究が中心であり、その成果のひとつとして 行政に対する質の高い支援が可能になると言う姿勢 があります。我国の国研ではこの部分の役割が、外 国の最先端技術をいち早く調査・習得し、行政や企 業に紹介することであり、自前の基礎研究が実質的 に殆ど存在しなかった実状があったと言わざるを得 ません。やや大袈裟な言い方をすれば、行政と研究 は全くカルチャーが異なり、それぞれに適切な制度 で運用されるべきであるにもかかわらず、我国の国 研では本当の意味での研究がマイナーな存在であっ たため、現在に至る迄も行政のための制度がそのま ま研究に適用されて来たのではないでしょうか。そ して近年の我国の研究を取り巻く環境の変化、それ に伴う国研の体質改善の過程で様々な矛盾が一度に 噴き出したものと思われます。上記の旅費の件で も、行政の立場で見れば費目間の流用はけじめを無 くし無駄使いの恐れを生みますが、研究の世界では むしろ運用に自由度を与えることで、限られた予算 を最も有効に使い、成果主義に基づいた適正な管理 が可能となります。このようなことは会計制度ばか りでなく、服務や身分的な制度でも同様に存在しま す。例えば最近研究での産・学・官の協力の推進が 盛んに叫ばれ、様々な振興策が打ち出されています が、国研の側から見れば、現在ある各種の制約を外 しさえすれば、協力の実は飛躍的に上がるものと思 われます。制約の廃止が最大の振興策であると言え ます。この様なことから、私達はせめて教育公務員 特例法と同等の措置が研究公務員にも必要であると 考え、各方面に訴えてきました。人事院・科学技術 庁・直研連の会合が昨年春から毎月持たれ、総務庁 行政監察局でも平成2年度の国研の監察結果の報告 書作成にあたり「科学技術に関する懇談会」が設置 され、私は直研連代表幹事として委員を委嘱されて います。我国全体の空気が盛り上がって来ているか のように見うけられます。科学技術庁は研究交流促 進法の改正の準備に取り掛かりました。その内容は 私達の立場から言えば決して満足出来るものではあ りませんが、一歩前身として評価することができま す。ところがいざとなるとこれがかなり難航してい るのが実情であります。

 私達は基礎的・先端的研究において優れた、独創 的な成果を生み出すために不可欠な[柔軟で競争的 な研究環境]を実現するために、制度を変える努力 を私達自身で始める必要があると考えるに至りまし た。それと共に私達は今まで状況の急激な変化に振 り回され、「基礎研究振興」「産・学・官協力」「技 術移転」「人材確保」「国際協力推進」など個々の問 題についてバラバラに検討するだけであったことを 反省しています。総合的に新しい時代の研究の、そ して国研の在り方について考える時期に来ていると 考えております。そのことから、毎年秋に開かれる 直研連の共通問題研究会のテーマを今年度は「21世 紀における国研のありかた」としました。直研連所 属の研究所の数は93あり、それぞれ規模、内容、性 格等条件が様々に異なります。従って、それぞれの 目指す「あり方」の各論は当然異なります。しかし それぞれが語ることによって、国研の、そして研究 そのもののあり方、そのための環境のあり方につい て広く一般に認識を深め、理解を得る道が開かれて 行くのではないか、更に、見えない、顔がないと言 われ勝ちな国研のイメージアップにも役立つのでは ないかと考えております。そのためにも今こそ語り 始めるべき時であります。また、これは所長や一部 の幹部ばかりでなく、次代を担う研究者一人ひとり がそれぞれの考えを持ち、語ることが大事なことで はないかと考えます。そして是非そうして欲しいと 願っております。

(郵政省通信総合研究所 所長)




地球環境の保全をめざして
−アラスカ大学との国際共同研究−


森 弘隆

1.はじめに  人間の活動に伴って大気中に大量に排出さ れる生成物により、オゾン層の破壊や地球温 暖化等の地球環境の悪化が進んでいる。この 状態が続けば、21世紀には人類や他の生物の 生存を脅かすことにもなりかねないので、早 急な対策が世界的な最重要課題となってい る。地球環境の有効な保全技術を開発するに は、地球環境変動のメカニズムについての十 分な知識を持つことが不可欠であり、そのた めの観測・研究を国際協力により強力に推進 する必要がある。


図1 地球大気の力学構造と温度分布

2.地球大気の構造
 地球大気は、図1に示すように、温度の垂 直構造により、地表から、対流圏、成層圏、 中間圏、及び熱圏という名称の領域に区分さ れている。しかしながら、これらの領域は独 立に存在しているのではなく、互いにエネル ギーや物質の交換を通して強く影響し合っている。 なかでも、中層大気とよばれる成層圏から中間圏 (あるいは熱圏下部)に至る領域のエネルギー収支 は、主にオゾンの太陽紫外線吸収による加熱と二酸 化炭素の赤外放射による冷却から成っているが、極 域では強力な電場により降下しオーロラを発生させ る高エネルギー粒子による加熱も無視できない。こ の領域の大気組成は太陽紫外線による光化学反応に より維持されているが、フロンガス等の人工生成物 が触媒としてオゾン層破壊に関与するなど、大気微 量成分の寄与が目下の重要な研究課題となってい る。また、地球規模の大気運動や、重力波等の大気 波動が大気組成や加熱に与える重要性も認識されつ つあるが、未だ十分な解明はなされていない。この ように、大気の状態は様々な原因により複雑に変動 しているので、人工生成物による地球環境の変化を 正確に評価するためには、これらの変動のメカニズ ムを十分理解する必要がある。

3.当所の地球環境への取り組み
 上で述べたように、地球大気は広い高度範囲にわ たって密接に相互作用しながらバランスを保ってい るので、その状態を調べるには関係する様々な物理 量を同時に広範囲に計測することが必要である。特 に、中間圏は従来から適当な計測手段がないため、 他の領域に比べて研究が遅れている。従って、この 研究を進めるには、新たな測定器の開発と、これら を用いた効果的な観測法の開発が重要となる。当所 は、長年にわたり短波帯レーダによる電離層観測等 の中・高層大気の研究や、人工衛星によるリモート センシング技術等の電磁波を利用した地球環境計測 技術の研究開発を行ってきた。これらの成果を基 に、現在、最新の電波・光技術を応用した大気波動 や大気微量成分等の高感度計測器の研究開発など 先端的な大気計測技術の開発を進めている。

4.アラスカ大学との国際共同研究
 地球環境を観測する方法として、人工衛星等によ りグローバルに観測する方法と、特定地域の大気環 境を精密に総合的に観測する方法とがある。これら の方法は互いに相補的関係にあるので、効果的に組 み合わせる必要がある。特定の観測地域としては、 地球全体の大気変動の要になっており、且つ変動が 大きく現れる高緯度地域が望ましい。一般に、自然 現象は、予測が難しく再現性にも乏しいが、もし自然 に起因する変動のみならず、人工的に擾乱を加えて 大気からの応答を調べる、いわゆるアクティブ実験 的な手法が利用できれば、現象が繰り返し再現でき るので、能率的で効果的な観測が可能になるであろ う。上層大気研究において、実際にこの様な実験が 1960年代から世界の数ヵ所の電離層観測施設で実施 され、その有効性が実証されてきたが、オーロラ現 象や極域研究のメッカとして知られるアラスカ大学 地球物理学研究所(所長赤祖父俊一教授)を中心とし て、新たに世界規模のアクティブ実験施設が建設さ れることになった。この計画に対して、米国側から当 所に大気計測技術に関する研究協力の要請があり、 共回して大気環境計測実験をおこなうことが、1991 年11月に開催された日米科 学技術協力協定会議におい て、両国間で承認された。

 共同研究計画の概要は、 以下の通りである。

米国側は、アラスカ州フェ アバンクス近郊のポーカフ ラット実験場(Poker Flat Research Range)に非干渉 散乱レーダ、大型短波レー ダ、光学観測施設等を新設 し、上層大気観測能力を大 幅に強化すると共に、近く に上層大気加熱実験用の短 波帯高出力電波発射施設を 建設する。一方、日本側は 中層大気計測を重点とし て、電子密度、大気温度・ 風、大気微量成分等の計測器をポーカフラットに設 置し、米国側施設と共同で観測を行う計画である。 図2は、計画の概念図を示している。


図2 日米国際共同研究計画の概念図

 高出力電波を大気中に照射することにより期待さ れる効果は、ジュール加熱による電子温度上昇、高 エネルギー電子の発生、及び各種の波動の励起等で ある。電子温度が上昇すると、化学反応係数が変化 するので、化学平衡状態がシフトし、電子密度やオ ゾンなどの大気組成が変化する。この変化を計測す れば、化学平衡状態に関する詳しい情報が得られる。 また、高エネルギー電子よる大気光の増減の空間分 布や時間変動は、大気波動や運動を観測するための よいトレーサになる。さらに、各種の非線形相互作 用により発生するプラズマ波動や電子密度の不規則 構造も、大気中の電場や電流に関する有意義な情報 を提供してくれるであろう。自然に発生する現象の みからこれらの情報を得るのは容易ではないので、 アクティブ実験は極めて有効な観測法と考えられる。
 本共同研究により、精密、且つ効果的な中・上層大 気環境計測技術の確立と、地球環境変動機構の解明 がなされ、地球環境の保全への寄与が期待される。

(電波部 電波媒質研究室長)




≪随筆≫

筆を持って


淡河 貴美子

 私が書道に入ったというきっかけは、勤めるよう になり仕事の上で原稿の清書などしなければならな かったこともありますが、お茶会にいったとき掛軸 の字が読めなかったり、お茶の稽古のとき筆をもっ て字を書かなければならないお点前があったり、沢 山の理由があったからでした。原稿の清書は悪筆の 私には苦痛でした。立派な原稿が私が清書したため に値打が下がってしまうような気がしました。ま た、結婚式などで受付で名前を書くときは恥ずかし いやら情けないやら悲しい思いでした。いつも劣等 感の塊みたいになっていました。日頃から練習し、 努力すればよいのですが、怠け者の私は気持ちばか り上手になりたいとおもうばかりでした。

 本所のサークルで書道部ができて、昼休みに部員 の方たちが一生懸命練習されていました。私は入部 しましたがすぐにやめてしまいました。しかし、本 だけは毎月とっていましたので何年もたってからお 清書だけでも書いて提出することにしました。お清 書を提出していくうちに級から段へと上がってまい りました。上手になることは、嬉しいものです。嬉 しそうにしていたのでしょう、それを見て、こうい う機会に是非資格を取得するように進めていたたき ました。怠け者の私はしりごみしていましたが、資 格を取得することに決心しました。昔はやさしかっ たのか、私みたいな者がよく取得できたと今考えて も不思議です。先生のご指導の賜物とずーっと感謝し ています。本当に指導するということは大変なこと です。

 たまに展覧会にでかけていくと、凄い作品ばかり で圧倒されてしまいます。きれいに書いてあるだけ ではやはり魅力がありません。よい作品は、一目見 たたけでひきつけられるものがあります。一つの作 品をものにしょうと思うとやはり大変なことです。 基礎がしっかりできていないとやはり難しいようで す。まず書きたい詩等を考え、書体を考え、配置を 考え、にじみ、枯れ、大小、太く、細く長く、短 く、墨の濃淡等数え上げれば沢山のことを考えなけ ればなりません。また、書は体を表すといって気分 の悪いとき、風邪をひいているときなど、字を書い ても迫力にかけるとか表現が弱くなるなど気持ちが 乗らないと良い字は書けません。

 お茶のお稽古を目的としましたが、それに関連す るものについてもと思ったのが間違いのもと、収拾 がつかなくなってしまいました。「二兎を追うもの 一兎をも得ず」の例えのとおりになってしまいまし た。

 習い事は続け、 ることに意義が あると慰められ ながらまた自分 に都合の悪いこ とは、自分で自 分に言い訳しつ つ現在もあれこ れと細々と続け ています。書道 についても、私 なりの書風が出 来るようになれ ばとどんなに嬉 しいだろうと 思っていますが 夢のまた夢に なってしまいそ うです。


▲平成3年度文化展の作品

人生有限試無情 五薀皆空観有情
神余而結流転夢 命運有天夢幻境

(詩 田中 学 作)




≪職場めぐり≫

犬吠埼より


犬吠電波観測所

 大吠電波観測所(以後「当所」という。)は千葉 県銚子市にある。銚子市は坂東太郎という名前で親 しまれている利根川が太大平洋に注ぐ、関東平野の最 東端に位置する。銚子駅から銚子電鉄でポルトガル 風駅舎の大吠駅で下車すると、目の前に下総一の愛 岩山(標高73.6m)が見える。反対側(海側)は犬 吠埼灯台の玄関口にあたる。当所はこの山の高台 で、銚子有料道路(灯台側)の入口にある。当所の 隣には、地球が丸く見える丘展望館があり、周囲 360度のうち330度を海面に囲まれており、肉眼で地 球の丸さを感じることができる。


▲銚子電鉄

 当所で行なっている業務を紹介する。
 

VLF電波の観測
 超長波(VLF)は周波数が3〜30kHzで、電離層 と地表にはさまれた空間を伝わって、数千q〜1万 qの遠距離まで安定に伝般し、日変化及び季節変 化が規則正しく繰り返される。この安定に伝般する 性質を利用して電波航法の最終版として登場したオ メガ航法は周波数が10〜14kHzで、オメガ送信局 がわずか8局で全世界をカバーできる。ところが、 太陽活動が活発になると、太陽フレアー及びそれに 伴う極域擾乱、その他の原因による位相異常により 測定誤差を生じ、オメガ航法の信頼性を低下させる 要因となっている。
 太陽活動に伴って発生する一連の地球物理現象 や、伝般上の諸問題などを明らかにするため、世界 各地の高・中・低緯度を伝般してくる各回線の位相 と強度を観測している。
 

短波ドップラーの観測
 短波ドップラーの観測は短波標準電波(JJYの2.5、 5、8、10、15MHz)を受信している。電離層で反射する 電波は電離層の高さや電子密度によって変化する。 この変化により、受信周波数が僅かに変動する。 ドップラーシフトと呼ばれるこの変動を観測すれば、 電離層の変化する様子がわかる。
 

地震に伴う電磁波の観測
 地震に伴う電波放射は岩石破壊のモデル実験によ り確認され、広い周波数帯にわたって電波放射する ことが知られている。当所一帯の地盤は厚い 岩石で形成され、地震観測に適していること から地震に伴う電波放射の観測を開始した。 当所では、従来からVLF電波の伝般研究を 行なっていたことから、既設のアンテナ等を 利用することが可能であり、VLF〜LF(長波) 電波の地震に伴う電波放射の観測を行なって いる。
 これらの観測業務に携わっている職員は3 名です。ずいぶん減ってしまい、庁舎のスペ ースが広く感じる。  屏風ヶ浦に沈む夕日は特にきれいで、タ焼 けがさらに映えて見える。この絵になる光景 はフィリピンのピナツボ山の大噴火による影 響と思われる。

(永井清二)


新年の抱負



挑戦の年に


大里 美代子

 新しい年を向かえ、私も今年で24歳。年女と いうことで「今年こそかわいいお嫁さんになる」 といいたいところなのですが、またまだ発展途 上の私は今年も「心身共に向上できる年にする」 を新年の抱負にしていきたいと思っています。
 いろんなことに挑戦して一つでも多くのこと を学んでいきたいとおもっています。
 今年も、がんばるぞ!



飲ミュニケーション


西村 秀一

 1992年は、申年ということで年男である私の 新年の抱負をCRLニュースで皆様に披露しな ければならなくなってしまった。
 見栄を張って大きなことを書いても引っ込み がつかなくなってしまうし、うけを狙ったこと を書いても人間性を疑われそうでうーん困った。
 元来、三日坊主的な性格なため、新年の抱負 を決めてもすぐに“?”となってしまうのでこ の数年あまり考えたことはなかったが、ここは 模範解答的抱負としてよく仕事をし、遊び、健 康に留意しつつ大勢の方と飲ミュニケーション を図り有意義な申年にしたいと考えている。



申年も同じ一年


大内 国男

 今年はおのれの申年。私はその年男だから何 か抱負や計画など持とうなど、特別にこだわる 年が来たのだとは意識はしないし、したくもな い方だ。しかし、「年男だね」、「今年の望みは」 など尋ねられると何となく身の引き締まる思い がしないでもないところであろうか。
 毎年、どんな干支の年頭にも自分白身に訴え るものは、ただ、「心身ともに健康であれ」と いうこと。しかし、その様に実行しようとして も様々な困難がいつも行く手をはばみ、毎日の 生活は不規則の連続。ストレスも心身に充満気 味である。
 私はこの3月で退職する。職場を去る(申) 年で、これからは一層、健康はもちろん、人と 人の繁がりと和を大切に生活することを心掛け たい。



申年にあたって


三木 千紘

 古人は一日一日過ごすその積み重さなりを月、 年と数え、さらに干支成るものを作り出した。
 干支は、よく占いに利用される。人は弱いも ので、屁理屈の塊である信仰や占いにすがりつ こうとするものである。それはそれとして、干 支の当り年は、ひとつの節目でもある。この次 は、甲の中で一巡することになる。年をとって しまったものだ。
 有名な格言に“猿も木から落ちる”というの がある。昨今、新聞の川柳に”反省は猿に任せ て忘年会”というのがあった。落ちっぱなしの 私、反省を猿に任せずここら辺りで人生設計を 見直さねばならないのか……三日以上続くのを 目標にして。
 抱負?不要他言=ないしょ、ないしょ。



短 信




平磯宇宙環境センター77周年記念式典を開催


 平磯字宙環境センターは、逓信省電気試験所平磯出張 所として大正4年1月(1915年)に発足して以来、77周 年を迎えた。
 この長い歴史の中、平磯センターは「無線」という名 称で広く地元市民の方々に知られてきたが、仕事の内容 については無線通信という専門分野のため、余り知られ ていないのが現状である。
 センターの研究業務は、これまで「電波の予警報業 務」が主であったが、21世紀の宇宙活動の安全を守る 「宇宙天気予報」ヘと発展させ、研究環境も平成4年度 中に新実験庁舎建設が計画されている。
 これを機に、当センターへの一層の御理解と御協力を 得るべく、地元の那珂湊市をはじめ、近隣関係機関及び 当所の研究業務と関連の深い方々をお招きし、3月5日 にホテルニュー白亜紀において77周年記念式典を開催す る。



予算が内示された(速報)


 平成4年度大蔵予算が、12月22日に内示された。
 今回の予算は、シーリング枠の厳しさを反映して、物 件費の要求額自体が25億7,435万円と、3年度要求額27億 2,465万円5千円を大きく下回ったものである。また4 年度要求額は3年度予算25億3,075万5千円と比較して もわずかに4,359万5千円多いというものであった。3 年度の大蔵査定率は94.66%であり、このままでは前年 並の予算を獲得することはほとんど不可能に恩われた。
 大蔵主査、担当官説明の段階に入ってから、科学技術 分野での国研の果たす役割の重要性と当所の研究実績を 強調する一方で、当所が置かれた予算上の厳しい状況を 訴えた。この結果、12月27日の物件費の最終内示額が25 億3,123万7千円となり、3年度予算額25億3,075万5千 円に対して48万2千円の増、率にして0.02%の伸びを 達成した。査定率は98.33%というほぼ満額に近いもの であった。厳しいシーリングのもとで、わずかとはいえ 増額を果たすことが出来たのは、当所の研究開発に対す る財政当局の並々ならぬ理解があったためである。今後 も厳しい予算事情は続くと思われるが、今回の結果はか すかではあるが、明るい展望を期待させるものと言えよ う。



NNSS 2地点同時観測によるTECの推定


 我々は、NNSS衛星ビーコン波(150・400MHz)の差分 ドップラー観測を行っている。この観測の目的は、差分 ドップラー値が衛星〜観測点間の全電子数(slant TEC) の時間微分に比例する性質を利用して、天頂方向に換算 された全電子数(vertical TEC)の緯度分布を求めるこ とにある。その為にはまず、差分ドップラー値から数値 積分によってslant TECを得る必要があるが、単独局 の観測からは、積分定数を一義的に決めることはできな い。そとで、緯度的に離れた椎内・国分寺の2地点同時 観測から各局の積分定数の最適値を推定する方法を開発 し、北緯25゜〜55゜の広範囲にわたるvertical TECの緯 度分布の推定を可能にした。NNSS衛星の軌跡を電離層 高度に投射した場合、投影点の移動速度は数q/secに 達するため、数十分以上の時間スケールで起こる電離圏 擾乱の巨視的な三次元構造の探査には最適であり、これ まで赤道異常・電離層嵐等に見られる電離圏不規則構造 の時間的、空間的発展に対し新たな知見を加える観測デ ータが次々と得られている。