CRLニュース 200号の発行にあたって

小嶋 弘

 CRLの紹介誌である「CRLニュース」が、昭和51 年4月の電波研究所ニュース創刊以来、今回、平成 4年11月で200号を迎えた。200号の節目に改めて、 来し方を顧み、行く末を展望することは有意義のこ とと思われる。特に今年は昭和27年にCRLの前身 であるRRL(電波研究所)が発足して40周年に当た っているので、尚更その感を深くするものである。

1.RRLからCRLへ

 (1)予算(図1参照)

 CRLの予算は、昭和53年がピークで60億円であっ た。この理由としては昭和52年12月に打ち上げられ た実験用中容量静止通信衛星(CS)と、翌昭和53年 4月に打ち上げられた実験用静止放送衛星(BS)の 実験の中枢となった鹿島の施設整備に関する経費が 大幅に認められたからである。その後、予算要求時 のシーリング(上限)枠ルールの導入とともにCRL の予算は減少を続け、昭和62年に底を打ち、その後、 ゆるやかに上昇を続けている。

▲図1 当所予算の推移

 この上昇の背景には、昭和60年4月の日本電信 電話公社の民営化に伴い、CRLが情報通信分野の 研究を担う唯一の公的研究機関となったので、従来 の電波を中心とした研究から、情報、通信、電波を 総合的に研究する必要性が生じた状況の変化があ る。これを受けて、昭和63年には従来の電波研究所 という名称を通信総合研究所に改めるとともに所掌 事項の拡大を図り、且つ、翌平成元年には兵庫県の 岩岡地区に関西支所を創設し、関西先端研究センタ ー(Kansai Advanced Research Center:KARC) として、電気通信フロンティア研究の拠点とした。

 又、日米の貿易摩擦問題もからんで、我が国の基 礎研究タダ乗りに対する批判が生じ、そのため、自 前の研究の重要性が認識されるようになり、財政当 局も基礎研究を担当する国の研究機関に対する理解 を徐々に深め、それが予算の微増につながっている ものと思われる。

 

(2)職員数〈図2参照)

 職員数については、予算以上に厳しく、昭和53年/ 54年の471人をピークに減少の一途である。これは総 定員法に基づく公務具の定員削減計画」の枠組みの中 に研究所も含まれているからである。

▲図2 CRLの定員の推移

 総定員数の削減にも拘らず研究職については増大 傾向であり、現在の283名は過去最高である。

 これは行政事務の省力化OA化とルーチン業務 の外部委託等、体質改善をはかってきた結果である。

 今後も厳しい削減枠が設定されてゆくとしたら、 今でも研究業務に支障が生じ始めておる状況では、 事態は一層深刻になることが懸念されるので、外部 に対しても、「研究は人が命」であることを理解して 頂くよう説得を続けているところである。

 

(3)組織体制

 時代の要請に応じて、速やか且つ柔軟に組織体制 を見直してゆくことは重要なことである。

 CRLに於いては、常に時代の要請を先取りして、 研究体制の整備を行ってきている。即ち、宇宙通信・ 宇宙放送時代を想定して、昭和54牛には衛星通信部 と衛星計測部を発足させている。又、昭和60年には、 電気通信制度の改革に合わせて、有線、無線を統合 した通信システムの研究を行うために総合通信部を 発足させている。又、宇宙あるいは航空機等からの 電磁波によるリモートセンシングの研究を効卒的に 行うため、電波応用部を創設した。リモートセンシ ング技術は地球環境計測枝術としても応用される枝 術なので、近牛の環境問題に対してもスムーズに対 応することができている。

 言うまでもなく特筆すべきは、昭和27年以来36年 間親しまれてきたRRL,の名称を昭和63年CRLに 変更したことで、ある。旧名称を懐かしむ人も多数居 られたが、将来の拡大発展を願っての変更であった。 結果として、この決断は正解であって、優秀な人材 を幅広い分野から獲得できるのも、この名称が相当 の影響を及ぼしていることが新規採用者の面接を通 しても直接感じることができる。ネーミングはやは り、人を魅きつける重要なファクターである。

 又、基礎研究たる電気通信フロンティア研究開発 を組織的に行うために、平成元年、兵庫県に関西支 所を創設し、情報系、生体系、物性系の研究拠点と しての位置づけを行った。平成3年9月には、新し い研究庁舎が完成し、現在約50名の職員が研究業務 に従事している。

 更に、来年度には、新たに大幅な組織の組み替え・ 変更を計画している。これは、急速に拡大する電波 の利用を支えるための周波数資源の開発と、地球環 境問題に適切に対応するため、地球環境計測枝術に 関する研究開発をより効率的且つ重点的に実施する ためである。

2.情報通信分野の研究に於けるCRLの役割

 近年、研究開発の役割が益々重要となってきてい る。これは最近の知的財産権を巡る米国との特許紛 争、GATTに於ける知的財産権の取扱いに関する論 議、先進国と開発途上国との間の技術移転問題等に 顕著に現れているところである。

 科学枝術会議の第18号諮問に対する答申を受け て、今年4月に閣議決定された「科学技術政策大綱」 では、国民の知的創造力が最大の資源である我が国 に於いては、とりわけ諸外国以上に、将来を科学技 術に託するところが大きいことを認識し、当面の科 学技術の目標として、@地球と調和した人類の共存、 A知的ストックの拡大、B安心して暮らせる潤いあ る社会の構築、の3つを挙げている。この目標に向 かって、我が国の研究開発に於いて中核的な地位を 占める国立研究機関としては、新たな技術シーズの 創出等を目指した基礎的、先導的研究の強化並びに 国際的な貢献度の向上及び国際化の推進が強く期待 されている。

 これらの状況を踏まえて、今年5月に決定された 郵政省の「情報通信技術に関する研究開発指針」で は、CRLの役割は次のように規定されている。

 通信総合研究所では、国の直轄の試験研究機 関として、公共性の極めて高い分野の研究開発 を行うこととするが、特にリスクが高く長期間 を要するため民間の研究インセンティブが働き にくい基礎的・先端的研究を重点に行うことと する。

 基礎的・先端的研究としては、超電導材料な ど新たな素材を用いた電気通信用素子・デバイ スの開発、脳・視聴覚機構の解明によるヒュー マンインターフェースの高度化、知的通信処理 等の電気通信フロンティアの研究開発を実施す るものとする。

 宇宙通信関係では、人類の宇宙活動の活発化 に備えた宇宙環境の監視、予報や電波科学の研 究に取り組むほか、将来の宇宙通信技術を開拓 するための衛星間光通信、大型展開アンテナ等 宇宙通信基礎技術の研究開発を実施する。

 さらに、今後ますます重要となる地球環境問 題の開発に資するため、これまで培ってきた電 波に関する技術を基礎として、宇宙からのリモ ートセンシング技術、地球環境計測技術等の研 究開発を実施するものとする。

 一方、通信行政全般を支えるための技術開発 として、周波数資源の開発、情報通信分野の標 準化、電磁環境対策のための研究開発等を積極 的に推進していくものとする。

 以上のような通信総合研究所の役割を果た すため、21世紀へ向けての長期的な計画のも とで研究開発の重点的・効率的推進を図って いく必要がある。そのために、研究開発資金、 研究開発施設、人材確保等研究開発体制の充実 に一層努めるものとする。

 また、研究交流促進法等を活用し、民間の研 究機関との共同研究を積極的に推進して研究開 発のポテンシャルを向上させていくとともに、 外国機関との研究交流を通じ国際協調・国際貢 献を推進していくものとする。

「指針」の内容については、従来からその方向で努 力してきたところであるが、常にこの指針の原点を 踏まえつつ、情報通信分野の唯一の国の研究所とし ての期待に応えるべく成果を挙げてゆかなければな らない。

3.センター・オブ・エクセレンス(COE)を目指 して

 研究開発はイノベーションの原点であり、来るべ き社会の先導的役割を果たすものであるので、民間 に於いても技術開発に相当の力を入れている。一社 当たりの研究投資額が数百億円から1,000億円を超 えるところも多く、これが研究開発投資額の民対官 の比率、8対2となって表れている。

 民間の研究開発では、応用研究や製品開発に重点 が置かれるので、投資額が嵩むのは当然であろう。

 国研の研究開発の範囲は、民間とは異なり基礎研 究に中心を置くものであるが、その中でも10年先を 見透した先行的研究に重点を置くべきであろう。

 先行的研究の遂行には研究者自身が強い信念と研 究ビジョンを持ち続けることが重要である。

 又、柔軟な発想を促するためには、カルチャーの 異なる多くの人物、事象との接触による知的興奮が 良い刺激になると思われる。研究の「たこつぼ化」 は克服されなければならない。

 「今後は狭い範囲での個人の発見競争からではな く、むしろ集団が知恵を寄せ合う中で、これ迄にな かった視点や、意味のある結果が生まれるような研 究こそ期待される。」、「何か他人のやらなかった新し いことをやるというだけが、人間の創意でも創造性 でもない。すでに発見されていること同士の間に新 しい組み合わせを考え、それによって従来とは異な った大切な効果を導き出すような仕事にも高い創造 性が要求される。」(日本経済新聞〔平成3.10.14〕 私の科学技術観、東大教授村上陽一郎)

 この観点に立てば、CRLは電波天文、宇宙通信、 地球環境、ネットワーク、周波数資源、知識処理、 生体情報、物性等々あらゆる分野の研究者が結集し ているので、今後一層、研究者同士の交流を深めて ゆけば、さらに新しい発想も培われ、たこつぼ化の 弊害も克服されてゆくものと期待される。特に、最 近、外国人研究者の数も常時20人程度を数え、国際 的交流も盛んになってきている。そういう意味から も、CRLは研究開発の世界的な中核的拠点たる COEとしてふさわしいものであり、今後とも、この 自党をもって努力してゆきたいと考えてる。

 終わりに、研究における人材の重要性について触 れてみたい。現在の18〜19才の若者をピークに我が 国の出生入口は減少している。さらに、若者の理工 系離れが懸念されているところである。これは科学 技術立国を標榜している我が国にとって重大問題で ある。CRLとしても、若者にとって魅カある職場造 りを心掛け、研究内容についても若い人が興味・関 心を抱くような工夫をしてゆく必要があろう。時代 はまさに二十世紀末、この混沌の中から21世紀に向 けて、CRLが、研究開発における新しいパラダイム の強力な発信基地となるよう、全職員一体となって 努めてゆきたいと願っている。

(次長)



CRLニュース200号の変遷

三木 干紘

 CRLニュースが本号で200号となった。これを機 にその変遷を見てみる。

 まず、第1号が発行されたのは1976年4月である。 当時は、所名か電波研究所であり、ニュースの一面 上段1/4ほどを割いてズバリ“電波研究所ニュース’ となっている。そのトップ記事は、湯原所長の“「電 波研究所ニュース」の発行にあたって”である。そ の中で、“・・・当所の計画や、研究成果などの概要を 随時この小冊子上に紹介する事により、当所の指向 する研究の方向や日々の動きについて、そのアウト ラインを知っていただこうとの意に出したものであ る。云々”とあり、ニュース発刊の目的を述べられ ている。そして、プロジェクト一覧、次に「雷様の 太鼓と重水素ホイッスラー」、続いて「海中レーザス コープ野外実験」、第179回研究談話会、外部発表、 定期刊行物、人事異動となっており、全8ぺージで、 国会図書登録番号がない。

 第2号では、一般公開(科学技術週間)の記事が 載っている。当時は科学技術週間行事の一環として 一般公開を行っていた。それに面白いのは、本所4 月14日、鹿島4月16日、平磯4月15日と別々の日に 行っている。ちなみに来場者は、本所454、鹿島55、 平磯263、稚内10、秋田1130名となっている。2、3 号で表彰授賞の紹介がある。4号から講演会、外国 出張が、5号から‘短信’コーナーが始まり、第18次 南極越冬隊員、CS、BS用主局庁舎にアンテナ設置な どが紹介されている。この頃は、CS、BSが立ち上が り、鹿島支所の人数が最大となり、VLBIプロジェク トもぼつぼつ勢いがついてきたときである。

 1976.7.3糟谷績所長就任。

 1977.1、No.10から表紙のデザインが変わり、電 波研究所ニュースのタイトルの横に研究所の航空写 真が入った。この頃しばらくの間、ぺ一ジ数が8か ら14ページと、発行号によりまちまちとなっている。 沖縄観測所の新庁舎落成式、標準電波送信所移転の 記事などのほか、記事の内容が片寄らないよう所全 般にわたっており、編集者の苦労がうかがえる。二 ュースの大まかなスタイルは、ほぼこの頃のものが 引き継がれているようである。

 研究では、衛星搭載用能動型電波リモートセンサ など、現在の地球環境計測の芽がスタートしている。 1977.9、No.18:「創立25周年記念施設一般公開」 “8月2日(火)創立25周年を記念して本所ならびに 地方機関の施設を一般公開した。・・・”。この年から 一般公開は、創立記念日の8月1日前後となったよ うである。

 1978.7.4田尾一彦所長就任。

 1978.10、No.31:短信「大運動会開催される」“9 月30日(土)午後1時から本所の第2回大運動会がサ レジオ学園のグランドにおいて開催された。時おり 小雨のぱらつくあいにくの天気にもかかわらず・・・、 今年は、昨年優勝の衛星研究部を総務部会計課が最 後の各部対抗リレー競技で追い抜き、昨年の雪辱を 果たすという大いに盛り上がった大会であった。”当 時、レクリェーションで大運動会を行っていた。

 1980.7.1栗原芳高所長就任。

 1981.1、No.58から国会図書館登録番号(ISSN 0389-1046)が入った。

 1982.1、No.70:“白亜の四号館完成!総工費 8億8千万円、工期1年1ヵ月、鉄筋コンクリート 造り、地上4階地下1階建て面積1,522m^2、延床面積 4,825m^2云々”。果たして現在も「白亜」の四号館か?

 1982.4.1若井登所長就任。

 同8月No.77で、30周年記念特集号を組み、 “設立30周年を記念して”(若井登所長)に続いて、 “電波研究所に対するOBとしての提言’(上田弘之 氏)、“理工学の連繁”(大林辰三氏)、“「対話」”(園 山重道氏)、“ニュース発刊時のことについて”(湯原 仁夫氏)が特集されている。

 1983.4、No.85から表紙の写真が毎号違うものな った。

 特に分類はされていないが、No.88に“旅情”が載 っている。以降随筆風な記事がときどき掲載されて いる。堅苦しい研究解説から一歩進んで、ニュース がぐっと柔らかく親しみやすくなってきた。そして 1984.7、100号記念特集号が組まれている。

 この頃のニュース発行部数が1350部。第2企画係 で作成している。

 1985.4、No.109から、タイトルが“RRLニュー ス”に変わり、簡単な目次かつき、“短信”“紹介” の文字に網掛模様を取り入れるなどイメージチェン ジをしている。1985.9、No.114から、新人紹介欄が 登場、皆さん若くなつかしい顔写真入り。

 1986.4、No.121から、表紙タイトルが薄水色の色 地となった。ニュースで初めての色刷りである。同号 から登録番号が変わりISSN 0911-5102となった。

 1986.7.10塚本賢一所長就任。

 1987.4、No.133から、表紙タイトルのデザイン が、黄色の帯と「RRLニュース」の周りが黄色地と なり、現在の形に近いものとなった。目次が無くな っている。また、この年は、63億円もの大型補正予 算を獲得し、研究施設も充実し、何かと潤った年で あった。

 1988.1、No.142:「新生“通信総合研究所”の船 出」というタイトルで新春所長インタビューが行わ れ、電波研究所の名称変更について述べている。

 そして、No.145(4月号)の塚本所長によるトッ プ記事、「通信総合研究所の発足にあたって」の中で、 “昭和63年4月8日を期して、電波研究所はその名称 を「通信総合研究所」と改名し新発足する事となり ました。・・・昭和27年8月に郵政省電波研究所とし て創設されて以来、約36年の永きにわたり「電波研」 の愛称の下に多くの人から親しまれ、・・・名称の変 更と共に所掌事務の追加も行われております。すな わち、従来からある周波数標準・標準時、電波予報 警報、無線設備の型式検定・性能試験・機器較正等 の定常業務とそれらに関する研究・調査及び電波の 伝わり方の観測・研究・調査の諸事項に加えて、電 波の利用技術に関する研究・調査及び電気通信技術 に関する研究・調査の項目が追加されました。云々”。 と述べられている。そしてRRLニュースがCRL二 ュースに変わり、デザインも現在と同じになった。 研究所正面に、「21世紀をめざして、新発足!通信 総合研究所」の横断幕と、紅白幕のゲートを写した 写真は、カラーで大きく、お祭ムードをいっそう引 き立てている。

 カラー写真がときどき使われるようになったが、 定着したのは、1990.4、No.169からである。登録 番号がISSN 0914-7721となった。また、最後のペー ジの編集発行欄に「通信、情報、電波」の三つ葉の マークが入るようになった。

 補正予算で整備された宇宙光通信地上センター、 西太平洋VLBIアンテナなどが完成し、その雄姿の 写真がぼつぼつ載りはじめた。

 1988.6.10鈴木誠史所長就任。

 1989年1月、昭和から平成に改称。1989.6、No. 159「関西支所発足にあたって所長のあいさつ」“・・・ 平成元年5月29日は、その中でも記念すべき日と言 えます。この日、平成元年度予算の成立に伴って、 神戸市西区と明石市にまたがる地に関西支所が設置 され、一方、長い歴史を持った平磯支所と鹿島支所 を統合して、関東支所が発足しました。なお、関東 支所は、鹿島宇宙通信センターと平磯宇宙環境セン ターで組織されます。・・・”と、関西支所発足の記 事で埋められています。

 所員からCRLのロゴマークを募集し、専門家の アドバイスを受け決定し、1989.4、No.157から表紙 にこのロゴマークを採用。

 1989.6.30春野信義所長就任。

 1990.1、No.166表紙写真、「我国で31年ぶりのオ ーロラ(北海道椎内市にて)」と、鮮やかなカラーで オーロラの写真が載っている。

 この頃は、研究成果、発表の欄にかなりのページ を割くようになっている。

 1990.5、No.170:関西支所新庁舎着工が短信欄に。

 1991.6、No.183:雪に埋もれた秋田観測所の旧 庁舎の写真。「秋田観測所の閉鎖に当たって」、「秋田 観測所−41年の歴史を閉じる−」。41年半の歴史を持 つ秋田観測所は、平成3年6月1日組織の上で平磯 宇宙環境センターに統合された。

 1991.8、No.185:CRLのマスコットキャラクタ 登場。No.186(9月号):関西支所に新研究庁舎完 成。“・・・平成3年にはバイオ系を加えた3分野8研 究室に充実した。・・・一新しい庁舎が完成し、約50名 規模の研究者が勢ぞろいして、本格的な研究を開始 している。・・・”。

 この頃になると外国人研究者がたくさん滞在する ようになり、通信総研に対する感想記事が頻繁に見 られる。

 1991.5、No.182から、表紙のカラー写真は、掲載 記事に関連の有る写真を採用。

 1992.1、No.190から編集後記登場。No.192(同 年3月号)、“77周年を迎えた平磯宇宙環境センター”

 No.194同5月号表紙にカルガモ一家の写真。この 一家を編集後記で紹介したが、実は後日談があり、 親鳥の姿が見えなくなって、どこかへ行ってしまっ たのかと思っていたところ、突然、今度は8羽の雛 を引き連れて現れ、所員の手厚い保護の下無事全員 飛び立って行った。

 200号を機に、駆け足で振り返ってみました。創刊 号で述べられているとおり、ニュース発刊の目的は、 「当所の計画や指向する方向、研究成果を随時紹介す る」であり、その主旨に沿いながら、少しづつ変化 してきました。印刷技術の向上も、活字を拾う方法 から計算機編集に、特に写真の印刷技術の進歩はす ばらしく、繊細で、色も鮮やかになりました。これ からも、記事の選択とともに、字を大きくする、写 真を多用するなど、読んで、見て、楽しめるニュー スにしていきたいと思います。

 そして、なんと言っても読んでいただく方々です が、所員はもとより、研究所OBの方、関連機関、 それに、当所と様々な面で関連のある方々を対象に 送付させていただいております。所内外との重要な パイプのひとつであるCRLニュースを通じ、これ からも研究所の現状や動向をお伝えして行きたいと 思います。引き続き皆様ご愛読のほど、宜しくお願 いいたします。

(企画調査部 企画課 第三企画係長)



≪歴代編集者感想≫

「電波研究所ニュース」刊行を回想して

星 正宏

 「電波研究所ニュース」創刊の昭和51年4月から同 54年5月まで3年余り、編集刊行事務を担当いたし ましたか、その時を回想して関係者の印象等も紹介 しご理解の一助に供することにいたします。

 当時16年前の研究所は、開所以来かつてない規模 で各種の衛星実験計画を推進中で特に宇宙開発関連 の研究分野から活況を呈し始め、そうした研究所の 変革と動向等について、広く研究所内外のご理解を 頂くため広報とPR活性化か重要視され、積極的な 研究計画内容や成果の紹介と併せて研究所内外の情 報活性化を図る等の趣旨で、当時の湯原所長はじめ 鈴木次長、田尾企画部長、羽倉企画課長の見識、古 濱、中津井両主任研究官の活躍と尽力に負い、全所 的な協力のもとに「電波研究所ニュース」が発刊の 運びとなりました。その後次第に内外の関心を集め て編集努力が重ねられ、現在の「CRLニュース」に 改称して、その目的と役割が果たされてきていると すればたいへん喜ばしいところです。

 当初の編集刊行上での苦労は、原稿集めや記事資 料の準備に係わるもので、掲載原稿不足の懸念は、 時折しもISS、ETS-2、CS、BSの各衛星プロジェ クトが進展し始めてその波及効果もあり次第に改善 されたようでした。また掲載記事のレイアウトに必 要な図表写真等については、資料不足に加え予算面 の制約から不都合も多く、刷り上がりのニュース誌 が原稿執筆者のイメージや期待予測と少なからず差 ができ、日頃理解を頂く当時の糟谷所長はしめ各方 面から良識あるご指導ご鞭撻を頂き、原稿執筆者に は事後承諾を伺いに回る等いたしました。

 印象深いことでは、ニュース誌等でも結構生きて 編集者の意向努力と時には性格をも反映すること、 文が人を表すのと同様であることがアンケート調査 結果等でも明かになったこと等が挙げられます。例 えば、ニュース誌創刊後まもなく大塩企画課長、後 任の中橋課長の並々ならない熱意とご指導を頂く機 会を得ましたが、秀逸な専門学識教養と文才を惜し みなく発揮され原稿執筆者を最大限尊重された査読 推敲や校正等の指導を頂き、よりよいニュース誌へ 努カを傾注されたことは、顧みて感銘を深めるほど ですが、それが発刊当初ニュース誌へ要望された平 易さ格調性等の具現化に結実して、研究所内や外部 機関の評価と期待を高めニュース誌の意義確立に寄 与されたこと等、特に思い起こされるものです。

 また担当期間中に半年間研修で研究所の外でニュ ース誌を読む機会に際し、その予想外の活力ある出 来具合に、当時の猪股、相京両主任研究官の編集努 力によったことが分かり改めて納得いたしました。 そうした編集者の傾向見識の良しあしまた才能価値 親等の反映が、本来編集の要諦で当然ながら一考に 値しノウハウも得られて興味深いことでした。

 微力ながら努めたことは、ニュース誌の目的に情 報発信の役割と二ーズ等からも考慮を払い、技術予 測や統計手法で多様な編集を目指し良質のニュース 誌生産へと高める、等でしたが、ニュース源と記事 不足の懸案に苦心したことが思い出されます。

(担当期間NO.1〜38、'76 4月〜'7 95月)



《歴代編集者感想》

初仕事はニュースの編集

太田 弘毅

 「CRLニュース」は最近の名称で、私の頃は「電波 研究所ニュース」だった。54年に入所して、配属の 初仕事はニュースの編集・・・だったかもしれないけ れど、施設一般公開の準備、そして、ビデオシステ ムの運用、次いで、研究所パンフレットの発行など があったので、ニュースの仕事はちょっと引継をし ただけで任された記憶がある。職場自体も日々が初 仕事のようなもので、バラエティに富む毎日だった。

 ニュースの仕事は、いかに分かりやすく、飽きな い紙面にするかが編集者の仕事で、新しい試みを導 入し試行錯誤を続けていた。現在と違って、お役所 特有の堅い職場の空気に満ちていたが、何も知らな い新人だったので、大胆な行動に走っていたように 思う。

 原稿についても、著者の癖のある文章を、一定の 書式に校正、浄書する重労働をみんなで毎月取り組 んでいた。ワープロもなく、コピーがあっただけな ので、手作業による想像を絶する行程だったのであ る。職員の所属や名前も覚えたし、難解な書体も読 みこなす高度なパターン認識の能力も身に付いてし まった。

 さらに、印刷から上がってきた紙面を点検し、ミ スを発見することも多く、人海戦術で訂正をするの が毎号のことだった。完壁な号が出来ると、みんな で感動した。

 定常記事の計算機処理についても、当時から取り 組んでいたが、10年を費やして今日がある。こんな にOA化が進むとは誰が予想できただろう。

 しかし、現在でも大変なのは、原稿の依頼を含む 紙面の企画であろう。技術は進歩しているが、ワー プロ浸りの昨今では、楽しい文章を書ける人材はそ んなにはいないのではないだろうか。

 技術紹介をする雑誌の多くは、記者が取材をして、 噛み砕いた楽しい内容に仕上げている。そんな試み を今後に期待する。

 最終的には、編集者の頭の柔軟さである。固くな ったら選手交代。最先端の研究を紹介するのだから、 最も柔軟な人が必要だ。失敗を恐れず、日々チャレ ンジをしてがんばって下さい。

(54年夏頃から60年春頃の号を担当)

担当の号なんて覚えてません。あしからず。


《歴代編集者感想》

ニュースを担当して

蒔田 好行

 研究所ニュースも200号記念号を出版する事にな り、元編集発行担当者として感無量です。

 ニュース担当時代、人に原稿執筆を依頼する事は あっても、自分自身で執筆する事はほとんどなかっ たので、原稿執筆を依頼されると書くのがこんなに 難しいとは思ってもいませんでした。

 私が担当した1985.4 No.109〜1991.3 No.180 での動きを大まかに抜き出してみると、下記のよう な事があります。

 85.4No.109 「電波研究所ニュース」から 「RRLニユース」へ変更

 85.4No.109 イメージ一新のため目次採用 (86.3No.120まで)、本文の文 字の大型化(12級から13級)

 85.5No.110 新人紹介開始

 85.9No.114 新人紹介に顔写真採用

 86.1No.118 新年の抱負(年男年女)開始

 86.4No.121 表紙単色カラー化

 86.4No.121 前島賞受賞者写真採用

 88.4No.145 通信総合研究所発足により 「RRLニュース」から「CRLニュ ース」へ変更

 88.4No.145 表紙写真の大型化、一部カラー化

 88.5No.146 宇宙光通信地上センター完成

 88.7No.148 CRLロゴマーク決定

 89.4No.157 ニュース題目にロゴ採用

 89.6No.159 関西支所発足

 90.1No.166 標準電波50周年

 90.3No.168 鹿島宇宙通信センター25周年

 90.4No.169 表紙写真全号カラー化

 原稿関係では、当初はほとんどの人が手書きで原 稿用紙に執筆していましたので、原稿を査読校正し 訂正した原稿は、だいふ読みづらくなったり、規定 の文字行数に入っているのか数えるのに苦労しまし た。しかし、「一太郎」等の「ワープロ」の普及によ り、ほとんどの人から直接フロッピーで原稿を提出 してもらうようになってからは、訂正するにもワー プロを使用し、すばやくきれいに出来るようになり、 また、文字行数が規定値に入っているかどうかも一 目で分かるようになり、作業が今まで以上にはかど るようになりました。

 苦労した事は、編集会議により新しい記事を探す 事や、初校を読み合わせして文字の間違いを探す事、 外部発表の原稿書きなど多数ありました。しかし、 今では良き思い出になっています。

 表紙の写真等に使用するため、各部所にお邪魔さ せて頂きましてどうもお世話になりました。

 ニュースを通して所内各部所の様々な研究につい て勉強させて頂いた事に深く感謝します。

(担当期間85年4月No.109〜91年3月No.180)



≪歴代編集者感想≫

雑感IN編集部

宮田 博行

 

ごあいさつ

 私は平成3年度に新規採用され、初めてまかされ た仕事がCRLニュースの編集でした。前任者が引 継資料を作ってくれたので、スムーズに仕事を引き 継ぐ事が出来ました・・・と言いたい所ですが、なに ぶん未熟者のため係長を初めとして、印刷業者のか たにまで、大変ご迷惑をお掛けしてしまいました。

 

従来と変わった点など

 平成4年度になってCRLニュースの印刷業者が 変わりました。レイアウト・書体・色調など、従来 の印刷との違和感をなくすため、幾度となく業者の 方とお話をして今のようになりました。読者のみな さんでお気付きになった方いらっしゃいましたか? 気が付かなかったほうが嬉しいのですが。レイアウ ト等を変えるには良いチャンスだったのですが、一 般公開・広報・見学などの仕事に追われ余力がなく 出来ませんでした。

 現編集スタッフは平成3年の4月号からCRL二 ュース編集を手がけています。

    

−仕事の進め方で変えた点−

・執筆者に原稿をフロッピ一(データ)で提出し てもらい、印刷業者にデータベースで渡し、印刷 業者にて生じる打ち込み間違いをなくし、校正の 時間を短縮した。

・表紙写真を記事に関連する写真を載せるように した。

・写真などを多く用いる事によって、読んで!、 見て読者の理解を得るようにした。

・ページを開いてみて写真が目に止まるように写 真を中央に集めた。

・編集後記欄を設けた。

・短信記事にCRL内で起こった事件などを記述 し、読者が通信総合研究所とCRLニュースを理 解しやすく親しみやすくした。

(カルガモの写真掲載が良い例だとおもいます。)

    

−−今後の方針−−

・表紙レイアウトも徐々に古くなってきたので、 未来風に更新する。

・オールカラーにする。お金が足りないと思うの で無理かもしれませんが……。

・全てのページの文字級数を上げ紙面をより見や すくすること。

 

おわりに

 CRLニュースに事務官の書いた記事が載るのは 珍しいようで、この様な機会を与えられたことを嬉 しく思っています。今後も皆様のご期待をかなえる ように、その期待をさらに越えるよう頑張りますの で今後とも宣しくお願いします。

(担当期間'91 4.〜No.181〜)



短 信


太陽をにらむ新しい目の完成

 平磯宇宙環境センターの太陽電波望遠鏡群にちょ っと小粋なパラボラアンテナが仲間入りしました (写真)。直径2mのこのアンテナは経緯儀式の架台 にのっています。太陽方向にいつも向くようにパソ コンでコントロールされています。観測周波数は2.8 GHzです。この周波数での太陽電波強度は黒点数と 良い相関があることが知られています。現在、自動 観測ソフトウェアの整備と受信信号強度の較正作業 が進められています。

(関東支所太陽研究室)

▲写真 直径2mの太陽電波観測ようアンテナ


お知らせ


iRiS'93TOKYO開催のお知らせ

 来る平成5年1月18日から21日にかけて通信総合 研究所4号館大会議室で「超高精度基準座標系確率 のための宇宙測地技術開発」に関する国際ワークシ ョップ(略称iRiS'93)が開催されます。これは国際 地球回転観測事業(IERS)のVLBI(超長基線電波 干渉計)技術開発センターである通信総合研究所が、 科学技術庁の振興調整費による援助をうけて日本測 地学会の後援のもとに開催するもので、VLBI、SLR (衛星レーザ測距)、GPS(汎地球測位システム)な どの宇宙測地技術開発の成果やそれらを用いた地上 および天体基準座標系の確率などについて、内外の 研究者が60件前後の講演を通じて最新の情報を交換 するものです。なお聴講は無料です。

関係者多数のご参集をお待ちしています。

       問い合わせ先

標準測定部周波数・時刻比較実験室 吉野 泰造
電話0423−27−7561
Fax 0423−276077