周波数資源開発への新たな取り組み


石川 嘉彦

1.周波数資源開発の必要性
 わが国の総無線局数は平成4年12月末には821 万局を超え、前年同期末と比べて12.2%増とな った。総無線局数の内訳を見ると、陸上移動局が 約403万局、簡易無線局(パーソナル無線等)が 約251万局、アマチュア局が約126万局で、この3 局種で全無線局数の95%以上を占めている。特に、 陸上移動局(自動車、携帯電話、MCA等)の増 加は著しく、前年同期末の約23%増となっている。 この増加傾向は今後も一層進展し、電波政策懇談 会の将来予測(平成2年度)によると、2001年に は5,000万局に達すると予想されている(図1上 段〉。
 TV放送局数も順調に伸びており、平成4年12 月末には14,000局以上が置局されている。昭和 63年10月に制定された放送普及基本計画において、 全国各地域で4系統の民間放送があまねく受信で きるよう目標を設定した。この目標の実現と難視 聴地域の解消を図るためには、今後更に8,000局 程度の置局が必要とされているが、割り当てられ るチャネルの不足から置局数は頭打ちの状態にあ る(図1中段)。
 ミリ波帯については、昭和58年度から50GHz帯 簡易無線局制度が開設され、利用が順調に伸びて いる(図1下段)。電気通信技術審議会答中「ミ リ波利用に関する技術的諸問題」(平成元年5月) によると、構内LAN、IDカードシステム等のミ リ波利用が急速に進み、2001年には70GHzまで、 2010年には150GHzまでの需要があると予測され ている。
 このように拡大を続ける周波数需要に応えるた めには、周波数資源の開発を一層充実していく必 要がある。

陸上移動業務の局

▲図1 無線局数の推移

2.通信総合研究所の役割
 当所では周波数資源の開発を昭和52年度から実 施しており、これまでは要素技術の開発が中心で あった。当所の研究成果は、50GHz帯簡易無線局 制度の制定、準マイクロ波帯陸上移動通信の実用 化〈昭和63年)等に寄与してきた。しかし、周波 数需要の急速な増加に応えていくには従来の研究 では極めて不十分であり、困難でリスクが高い多 くの課題について、限られた期間ごとに具体的な 成果を上げながら、長期にわたって進めなくては ならない。また、研究成果が具体的に利用可能と なるよう、実用化への道筋を示すところまで踏み 込んだ開発を行っていくことが必要である。この ように、開発課題の大きさ、リスクの高い高度な 技術内容、限定された期間内で成果を上げていく こと等から、従来の研究開発に比べ飛躍的に大き な予算を必要とする。そのため、国の研究機関が 中心となって実施する必要があることから、当所 は平成5年度に大幅な予算増が認められた。

3.開発分野と研究開発課題
 開発分野は3つに分けられる。
 (1)周波数有効利用技術の開発
  現在使用している同一業務内での周波数 利用効率を一層拡大する
 (2)既利用周波数帯の再開発
  現在使用している業務とは異なる新しい 業務で使用できるようにする
 (3)未利用周波数帯の開発
  利用の進んでいない周波数帯を開拓する
 この3つの開発分野に対して、5年度は7つの 研究開発課題を実施する(図2)。


▲図2 開発分野と研究開発課題

(1)インテリジェント電波有効利用技術の研究開発
陸上移動通信の急激な増大に対応して、利用周 波数帯が150MHz帯→400MHz帯→800MHz帯→ 1.5GHz帯へと拡大されたほか、1局当たりの周 波数割当間隔が50kHz→25kHz→12.5kHzへと狭帯 域化されてきた。こうした周波数有効利用技術と は別の有効利用技術として、移動体でのチャネル 利用状況に応じてサービスゾーンの形状を変えた り、使用チャネルを柔軟に割り当てたり、伝搬状 況に応じて送信情報量を可変する通信システムを 研究開発する。
(2)放送用周波数有効利用技術の研究開発
 ディジタル放送方式は、雑音や混信妨害に強い ため送信電力を下げることができ、同じチャネル の繰り返し利用が飛躍的に増大すると期待されて いる。また、ディジタル化によって高品質な放送 や他のディジタルメディアとの整合性が容易にな る等、放送の高度化が期待される。米国、欧州で も研究が行われており、わが国においてもディジ タル放送方式における基本技術の研究開発に着手 する。
(3)マイクロ波帯における移動通信技術の研究開発
 将来における陸上移動通信の需要増加を考える と、既存の周波数帯のみによる周波数有効利用だ けでは対処が困難になると予想される。更に、最 近では陸上移動通信においても、音声(電話)だ けでなく、画像、ファクシミリ、データ等を複合 した情報伝送の需要か発生している。このために はディジタル広帯域伝送方式の導入が必須であり、 新しい周波数帯(マイクロ波帯〉での利用を目的 とした研究開発を行う。
(4)ミリ波構内通信技術の研究開発
 高度情報化社会の進展に伴い、オフィスにおけ るOA機器間やホストコンピュータとのコードレ ス通信、画像情報の伝送等構内規模での大容量無 線伝送に対する需要が急速に拡大している。この 需要に応えるには、既に飽和状態にある既利用周 波数帯では困難であり、小型軽量性、広帯域性、 耐干渉性等の特長を持つミリ波溝内通信システム の研究開発を実施する。
(5)ミリ波・サブミリ波デバイス技術の研究開発
 電気通信技術審議会の答中によると、150GHz までの実用化技術を2010年までに達成するよう求 めている。導波管技術を主体とする現在のミリ波 回路素子は小型軽量化、量産化による低価格化が 困難であるが、最近の薄膜素材技術、極限微細加 工技術等の進歩によって、通信用ミリ波集積回路 の実現が現実のものとなってきた。そこで、未利 用周波数帯開拓の基盤となるデバイス技術の開発 に着手する。
(6)光領域周波数帯の研究開発
 本研究開発に関しては、昭和58年度から光領域 での空間伝搬特性、光領域に適した通信システム 等の通信用要素技術の研究を実施してきた。近年 の可視光、近赤外光域でのオプトエレクトロニク ス技術の進展によって、既存通信回線の代替とし ての利用だけでなく、光領域での特性を生かした 利用が期待されてきたため、光・電波共用技術、 光領域通信システムの高度利用化等の研究開発を 今後進めていく。
(7)40GHz以上の電波伝搬の研究
 本研究に関しては、昭和52年度から40GHz以上 の大気の窓領域における代表的な周波数での大気 伝搬実験を、昭和61年度からミリ波近距離センサ システム等の電波計測への応用に必要となる物体 の散乱特性の研究を実施してきた。研究は最終段 階に入っており、これまでに得られた基本データ は関連する周波数資源の研究開発に引き継いでい く。

4.おわりに
 当所における周波数資源開発は、今年度から全 く新しい段階に入った。いずれの研究課題も重要 でしかも具体的な成果を期待されている研究開発 であり、解決すべき課題が山積している。研究体 制を通信2研究部から3研究部に強化すると共に、 民間や大学との連携を一層強化しながら進めてい きたいと考えている。関係各方面のご協力をお願 いする次第である。

(総合通信部 主任研究官)




TV会議システムの更新


三木 千紘

 当所には、鹿島、平磯、関西、の各センターと 本所大会議室、中会議室、TV会議室をつなぐ TV会議システムがあり、談話会、各種打ち合わ せなどに使われています。当係では、本システム を使用し大会議室で行われる各種講演を各センタ ーヘ中継しています。当係に着任した当時、シス テムは不調で、中継をしようとしてもまともに継 ったことがありませんでした。
 当所でTV会議を導入したのは昭和56年頃で、 TVカメラと、マイクで取った信号を双互に送り、 受信信号を机の前にズラリとならべたテレビに映 すもので、また確立したシステムとはいえないが 画期的なものでした。その後移設や追加が行われ、 その都度接続は複雑となり不安定要素が増し、複 雑な操作、行き先不明のケーブル、断線したケー ブル、利得の低下してしまったアンプのお化けと なり、会議が行われる度に呼び出されチェックを 行うこととなってしまいました。
 そこで、誰にも簡単に使えるシステムを目指し、 設計を開始しました。設計の根本思想は、

 @操作は、メニューの選択のみとする
 A6箇所を任意の組み合わせでマルチ接続可能 とする
 B予約制にし、使用者を明らかにする

使用勝手の大筋はこのようなもので、ハード的 に安定した動作が得られることを重視したものを 考えました。
 当係は、TV会議システムに関して、いちユー ザーであり保守や整備には関係ないのですが、本 構想により予算を要求したところ全面的に認めら れました。当初手作りを予定していたのですが充 分な予算がついたので外注することとなりました が、カタログ製品では、当所の希望を満足するに はほど遠いものしか在りませんでした。仕様書に より作成することとなり、設計、文作成を分担作 業でおこないました。仕様内容は、企画調査部内 で検討し決定するわけですが、この際突然、稚内、 沖縄観測所にも整備したいと提案、この提案は、 仕様書作成者にも話してなかった新提案だったの で皆さん戸惑ったようでしたが通信科を調査、検 討するということで了解が得られました。その後 電話回線担当の設備係も参加し作業は一段と加速 し、40頁ほどの大きな仕様書が出来上がりました。 メーカーへの説明、技術打ち合わせの連続。参画 した国内外10数社のメーカー全てに不平等となら ないよう全く同一の規格で説明したわけですが、 仕様書の出来上がった頃の人事異動で人員が減り、 作業は困難を極めました。その後通信係、第2企 画係も参加し、出来上がったシステムは、さすが 手作りとは違う立派なものとなりました。研究所 の意向は全て取り入れられ、さらに高機能なもの となりました。ただひとつ残念なのは、機能を追 及するあまり当初の−@操作は、メニューを選択 するのみとする−とは大きくかけ離れ、操作が複 雑となってしまったことです。整備終了後は、通 信係が管理運営を行っております。

大会議高高度画像投影の設置
 当係では、研究発表会のときマイク、スライド、 照明の操作を担当しています。スライドは、作成 に時間がかかるうえ、訂正するとなると時間的に きつくなるなどと大変な負担であるとともに、使 用勝手として会場を暗くするため聴取者は予稿が 読めない、進行にともなってライトの操作を要す るなど改善の必要性を、それに、なんといっても 前近代的なものを強く感じていました。
 

−自然科学質感的に表現できるメディア OHP感覚で歪がない大画面で使えるもの、TV カメラで絵を撮り、ビデオプロジェクタで映し出 す。これてあれば、実物や動画が写せるので関発 した実物、実験風景や、緒現象の変化の模様を直 接見てもらえる。−

 という構想をたて、見通しをつけるため、不要 になったTVカメラを調整し、転がっているラン プやスイッチを集め、撮像装置の試作機を作り、 仕様を決め映像投影システム購入の要求を提出し ました。予算が絡むと意見が出てくるもので、試 作した装置を見て、もう一息だ頑張れと支持して くれる上司、小学校の学芸会じゃないんだからみ っともないものを作るな。などと色々な意見をい ただきましたが、予算もいただき、すばらしいビ デオ投影システムを整備するところまでこぎ着け ました。
 今回整備したビデオプロジェクタは、実用的な ものでは世界最大級の明るさと解像度を有してお り、世界で最初に設備されたものです。その後同 種の機器がNHKのハイビジョン視聴室など数ヵ 所に設置されており、これから設置希望の各所か らの問い合わせがよく来ます。
 本装置は、撮像部も特注仕様で、解像度を重視 した設計となっております。映し出される映像は たいへん明るく、200インチの大画面で会場の照 明を暗くすること無く見えるので、聴取者は、予 稿を見ながら聴講できます。また、コンピュータ の画面も映し出せますので、シミュレーション画 像や、変化するデータの解析結果を映し出す事が 出来ます。
 更に画期的な事は、同時に整備したTV会議シ ステムと連動しており、講演を全国に中継する事 はもとより、相手局からの質問を受ける時、質問 者を映し出す事もできます。逆の使い方をすると 地方のどこにいても講演会、研究発表会の聴取は もとより講演者として参加できることです。新 しい使い方を色々と工夫し、研究内容をより広く、 深く理解してもらう手段として活用していただき たいとおもいます。


▲設置した高輝度画像投影装置による講演のもよう

研究所紹介映画の製作
 時同じくして、研究所の紹介映画を製作してお りました。映像をよりきれいにするため16mmフィ ルムで作成したのですが、このような大画面で鮮 明な画像が得られるようになったので、もはやビ デオテープのほうが扱いやすくなりました。
 今回作成しました紹介映画をご紹介しますと、 研究所全体の紹介(23分)、短縮版(10分〉、鹿島 センター紹介(13分)、平磯センター紹介(10分) それぞれ日本語及び英語版の映画とビデオがあり ます。また、その他に関西センター紹介(13分) のビデオが在ります。ご利用ください。本設備 の整備に当たっては、定常業務とさらに他に数件 の整備を受け持っていたので消化不良な部分も 多々生じ、その度に会計課の方々にご迷惑をおか けしました。また、関係各所の皆さんが一体とな って取り組んでいただいた結果として感謝してお ります。
 これらの構想の実現に当たり、新しい事を始め るには、先ず何をするのかという構想、そして予 算的裏付け、どちらがかけても実現しないもので あります。設備されてしまうと、在って当然、具 合が悪いなどのご意見も出てくると思いますがそ れは、即、次へのステップといえます。
 当所のTV会議システムは、そのスタートから 常に内外の先駆的役割をはたしてきました。そし て今回も、機能的にも、使用方法もメーカーが従 来想定していないものが多く盛り込まれており、 引き続き先駆的設備を整備することが出来ました。
 一連の設備の整備は、研究者への支援に大いに 役立つものと信じております。先進的設備をより 有効に活用していただくことを切望いたします。

(企画調査部企画課第三企画係長)




≪研究支援シリーズ≫

試作部門の現状と将来


佐々木 勉

1.現状
 私達、試作部門では実験・研究に必要な研究用機 器・部品(以下、研究試作品と略す)などの設計、 製作、改修、技術相談(外注試作の相談も含む)、 機会工作講習会の開催及び資材管理などを4名の人 員で行っています。
 研究試作品の設計製作をする場合、研究者と綿 密な打ち合わせが必要です。一般的に研究試作品は、 時間、経済性、或るいは秘密保持という制約を受け るため、外注には不向きな面を持ち合わせています。
 さて、科学技術の発展・向上に伴い、研究試作品 に要求される加工精度が一段と厳しくなっています。 また、ますます複雑な形状の加工も依頼されています。
 現在の老朽化した工作機械と少ない人員では、研 究者からの要望を100%取り入れるには限界があり ます。これをなんとか打開したいかために、厳しい 予算事情の中、当所でもマシニングセンタ(写真 1)という最新の工作機械の導入に踏み切りました。


▲写真1 マシニングセンタの概観と課員

 当部門では、導入直後から、有効に利用しました が、研究業務の能率化と向上、ひいては研究の充 実・発展に役立てるため、操作方法と利用技術のな お一層の会得に努めています。そのかいあって、研 究者からの要望にも、かなり応えることができる状 況になりました。
 ちなみに、過去5年間の試作件数及びマシニング センタによる件数を表1に示します。

昭和62年度13件
昭和63年度30件
平成元年度20件
平成2年度37件
平成3年度49件(うちマシニングセンタ16件)
平成4年度52件(うちマシニングセンタ25件)

表1 年間試作件数

 試作品は加工精度か良くなり、曲面加工などがで きるようになって、研究者から好評を得ています。

2.将来
 先見性、創造性のある実験・開発などを実施して 行くには、試行錯誤を繰り返しながら研究試作品の 製作に対応する事が重要です。
 技術が日進月歩にある状況を踏まえ、試作部門の 体制強化を図って、研究の向上に貢献し、良い研究 成果を得てもらいたいと願っています。
 特に、最近著しく広範囲で高レベルな試作部門の 充実・強化が要望されている折り、これに応えるた めにも、試作部門に携わる人材の育成、レベルの向 上及び老朽化機械などの更新及び環境の整備に、早 期に着手することが将来に備えて必要です。

(情報管理部 情報管理課 試作開発係)


▲写真2 マシニングセンタによる試作例




≪趣味シリーズ≫

ホルンの音色に心を寄せて


平 和昌

 日々の仕事に疲れたとき、本来の自分を取り戻す ことのできる何かをもっていると、明日からの仕事 にもまた活力が湧いてくるものである。私の場合、 それは音楽である。オーケストラの奏でる様々な和 音は心を和ませたり嬉しくさせたり、また震えさせ たりする。そのハーモニーの中で、特に私を魅了す るのがホルンの音色である。聴くだけでは物足りず、 演奏にも手を出してしまっているホルンについて、 あらためて熟考する機会をこの紙面にいただいた。
 ホルンは、ご承知のように金属の管を円形状に巻 いた金管楽器である。そのルーツは17世紀ごろ主に フランスで用いられていた狩猟用の警笛にあり、1 本の円錐形の管を1巻きしただけのものであった。 当時はそれを頸や肩にかけて狩猟に出かけていた。 この狩猟用具がオーケストラに姿を現した。18世紀 のことである。しかし、一定長の1本の管がつくる ことのできる音程には限りかある。つまり様々なノ ロディーを奏でることはできないのである。ここで 大きな発見をした人物がいた。右手を音の出口(管 末のアサガオ状の部分の中)に挿入し、空気の負荷 インピーダンスを変化させることにより音程を変え ることを発見したのである。現在では、3本のバル ブ(弁)を用い根本的に管の長さを変えることによ りあらゆる音程をつくることができる。このシステ ムのホルンが開発されたのは19世紀後半であった。 しかしこのホルンの作り出す音程も正確にいうとバ ラツキがあり、現右でも演奏者は右手を常にアサガ オの中に入れコントロールしている。
 さて、ホルンが私を魅了する原因は何だろう? 答はまずその音色にあると思う。何本かのホルンで 和音を奏でたとき、しかもオーケストラのなかでゆ ったりとした旋律を歌う場面など身震いするほどで ある。ホルンは、その音が観客とは反対の方向に放 射される唯一の楽器である。したがって、私達は常 に反射波を聞いている。そのことがかえって音色を 豊かな響きにしていると思う。もう一つ私を魅了す る要素、それは演奏の難しさである。どんな楽器で も演奏に難しさはあると思うが、木管ではオーボエ、 金管ではホルンというのは世界共通のようである。 さらに日本人は顎の骨格によるハンディーキャップ があるといわれる。いつまでたっても思うように演 奏できないもどかしさは、いつかはうまくなりたい と思う向上心につながっていると私は思っている。
 半年程前、畚野所長が所員のために自費でピアノ を買って下さった。大会議室に置かれているそのピ アノには、昼休みになると心の休息を求め何人もの 人が集まっている。と同時に大会議室では、自分な りの楽器を持ち寄って練習する光景も見受けられる。 研究所には楽器演奏を趣味とする人が案外多いのに は驚いた。将来、音楽祭などの開催で一同に会する ことができる日を待ち望んでいる。

(総合通信部 通信系研究室)





短 信



HiRAS太場電波バースト観測に成功!!


 平成4年度に平磯宇宙環境センターに整備された広帯 域太陽電波観測装置(HiRAS:Hiraiso RAdio Spectrograph)の自動観測が可能となり、5月末から定 常観測を開始しました。平磯の電波環境は想像以上に悪 く、強大な混信と、また低調な太陽活動のため、太陽バ ーストの観測が困難でした。次回の太陽活動極大期まで HiRASの性能が発揮できないのではと心配されていま したが、6月24日7時30分(UT〉に非常に大きな現象 を観測することかできました(図)。今後、地磁気嵐予 報に大きな力を発揮するものと期待されています。しか しながら、ますます悪化する電波環境のもとで、研究に 役立てる観測を行うために、混信に打ち勝つシステムの 整備も望まれています。

(平磯宇宙環境センター 太陽研究室 近藤)


▲HiRASで観測された大きな太陽バースト




総合電波測定施設竣工式典挙行


 平成4年度に整備された大型電波無反射室を始めとす る、総合電波測定施設の竣工記念式典が5月に挙行され た。
 21世紀に向かって一層の電波利用の拡大が予測されて いる中、各種無反射室や関連測定システムを備えた本施 設は、今後はますます重要となる各種アンテナ及び電磁 環境の研究の重要な研究基盤となることが期待されてい る。
 式典には所内外から関係者約100名が参加し、式典及 び火入れ式が行われた。また、火入れ式の後には各設備 の見学か行われ、参加者からは設備の特性、特長につい ての熱心な質問も出された。

(企画調査部 企画課長補佐 阿部 真)

※表紙写真参照



ターニングセンタ火入れ式開催される


 平成5年6月15日、試作開発係機械工作室においてタ ーニングセンタの火入れ式が行われました。火入れ式に は外部関係者も含め60名以上が出席し、作業中の安全を 願って安全祈願が行われました。
 ターニングセンタとは施盤(工作機械)と電算機を組 み合わせたもので、電算機から部品の寸法・形状を指示 すると、工作機械に材料と工具を組み付ける以外は工作 行程の自動化がほぼ可能になる機械です。
 普通の施盤を用いて工作物を作るには、数回にわたる 加工と様々な行程か必要です。しかし、ターニングセン タでは複合加工・行程結合・工作時間の短縮ができ、加 工品の高精度化が可能になります。

(情報管理部 情報管理課 試作開発係)


▲ターニングセンタ火入れの様子




鹿島VLBl局がNASAの
グループ功積賞受賞


 米国抗空宇宙局(=NASA)は、世界各国の研究機 関と協力して1979年からCDP(=Crustal Dynamics Project:地殻力学プロジェクト)を開始し、数多くの 測地VLBI実験を実施しました。CDPは1992年12月をも って終了しましたが、その間、VLBI測定技術と解析方 法は着実に進歩し、今日のプレート運動や固体地球の研 究に欠かせない重要なデータを提供しています。 NASAでは、これらの功績を称えてCDPのVLBIチーム にグループ功績賞を授与し、鹿島VLBI局もCDPの一員 として表彰を受けました。通信総合研究所では、独自の K-3 VLBI観測処理システムの開発を経て1984年からア ジア地域ではじめての観測局としてCDP実験に参加し ました。今回の授賞は、このように鹿島局の果たした重 要な役割か評価されたものといえるでしょう。

(Y・K記)


▲NASAから授与された賞状