▲中国蘭州付近を流れる黄河のほとり
砂漠からの砂塵粒子は中国から日本さらには太
平洋の真ん中まで運ばれ黄砂となりますが、砂漠
でのライダー観測は、その輸送の解明のために砂
漠現地での砂塵の高度分布を観測するもので、黄
河の畔、西夏自治区にある蘭州砂漠研究所の沙波
頭実験所にライダーを運んで観測が行われます。
また、PSCは“フレオン”による“オゾンホー
ル”生成の鍵となっている物質であり、北極ヘイ
ズは北極の夜明けに起こる北極全体を覆うような
大規模な光化学スモッグのことです。北極のライ
ダー観測は、カナダ領北緯80度のユーレカ基地
に新設されている建物の中に設置して、カナダ側
及び日本側の関係研究機関の協力の下に行われま
す。“フレオン”によるオゾン層破壊が明らかに
なってから、地球的な規模での成層圏オゾン減少
の長期傾向を調べるため、成層圏オゾンの変化を
観測するための観測網が世界各国とWMO(世界
気象機関〉の協力の下でできつつあります。ユー
レカ基地もこの観測網の一つで、世界の全てのこ
の観測網の観測地点では、成層圏オゾン、エアロ
ゾル、微量分子観測用の紫外、可視、赤外、マイ
クロ波リモートセンサーが整備され、10年に亘
る長期観測が行われる予定です。
これら、数年前から準備をしてきたものに加え
て、昨年度にはフィリピン、ルソン島のピナツボ
火山が噴火し、成層圏に多量の硫黄化合物を注入
しました。この噴火によって成層圏には、現在濃
厚な硫酸水溶液からなる雲が存在し、地球全体を
覆っています。火山性の成層圏雲は、いわゆる
“日傘効果”によって地球の平均気温を下げると
言われてますが、これまでの火山性成層圏雲がで
きた時との大きな差異は、地上から舞い上がった
フレオンによる多量の“塩素化合物”が成層圏に
存在するようになっていることです。火山性成層
圏雲を媒介とする塩素および窒素化合物とオゾン
の化学反応によって地球規模でオゾンの減少(地
球規模のオゾンホール)が起こる可能性が指摘さ
れています。ピナツボ火山による火山性成層圏雲
のライダー観測では、気象研、国立環境研を中心
として日本国内にライダー観測網が作られ、観測
が続けられています。私達は、日本最北の地であ
る稚内での観測を受け持ち、稚内電波観測所にラ
イダー観測室を作って観測を行っています。
さらに、来年度からの計画として、アラスカ大
学の地球物理研究所と協力して、成層圏から中間
圏の高度100km付近までの中層大気の観測機器
の開発と共同観測が計画されています。地球温暖
化のような気候変動については、対流圏のような
低層のみでなく、中層大気と呼ばれる上層の大気
層においてより拡大された形で影響が起こる場合
があり、地球大気科学の意味から中層大気そのも
のの研究を行う重要性とともに、中層大気の長期
観測によって気候変動を強調した形でのモニター
を行える意義があります。
地球環境の観測は、地球環境の変化を把握する
ことによって今後の地球環境保全の国際的な戦略
を立てる為に大事なものです。しかし、この観測
には地球規模での観測拠点が必要で、かつ長期に
わたるものが大部分です。このため、観測に関係
する研究機関の多くの研究者が、“東奔西走”(私
の場合は“南奔北走”ですが)に明け暮れ、研究
室で“多くを語らず(語れず)”となってきてい
ます。当研究室では、ライダーに関係する研究以
外にも、いろんな研究テーマを抱えていますが、
もともと研究は自己の裁量と責任によって行って
いくものですので、室長不在が多くても実際に自
己の裁量、才覚で(粛々と?)研究が進んでいま
す。
▲オホーツク海(サロマ湖沖)の流氷
地球環境問題はリモートセンシング技術の社会
的な重要性を強く認識させるようになりました。
地球は宇宙に浮かぶ小さな天体ですが、人類にと
っては大変大きな意味を持っています。これは、
精神的な意味だけでなく、地球環境を観測しよう
として観測網を考えるとき本当に実感として感じ
られます。このため、今後、衛星からの観測も含
めて、かなり長期に(4次元的に)観測できる地
球環境の監視体制を作り上げることが緊急に必要
になっています。このために通信総研に対する期
待も大変大きいものがあり、できうる限りその期
待に応えるようにすべきだと思っています。
(地球環境計測部 光計測研究室長)
《新研究室紹介》
(環境システム研究室室長)
(前通信総合研究室所長)
恒例の研究所施設一般公開を7月30日(金)に、本
所、支所及び観測所において実施しました。例年は
8月1日の当所開設記念日に行っているものですが、
今年は日曜日と重なったため二日繰り上げて実施し
たものです。ご案内の不備により、8月1日に来所
された方には深くおわび申し上げます。
小金井本所においては、『高機能知的通信の研究』
のはか6研究分野、全体で32項目からなる内容を
一挙に公開し、鹿島宇宙通信センターでは、『宇宙
にかける夢』をテーマに4項頁目からなる公開内容で
鹿島センター独自のチラシを用意し地域への宣伝を
強化しました。また、関西先端研究センターでは、
施設公開と共に職員の手作りによる『ぼくらの科学
探検』と題するアニメタッチのパンフレットを製作
し研究室の活動を紹介しました。さらに、平磯宇宙
環境センターでは、『宇宙天気予報をめざして』を
メインテーマに、そのほか各地の電波観測所におい
ても独自のアイデアと工夫をこらし盛大に行われま
した。
一般公開当日は、異常気象のせいか全国的に梅雨
明けが遅れ、朝から昼過ぎにかけてどんよりとした
曇の空模様でした。しかし、本所の出足は快調で昼
過ぎまでの中間の集計では、450人とはぼ昨年と
同し来所者数か見込まれましたが、午後から降りだ
した雨の影響か出足の伸びが鈍ってしまいました。
最終的な各会場の来所者数は、犬吠、沖縄電波観測
所を除いて全体的に昨年の未所者数を割り込んでし
まいましたが、1昨年の1700人台から昨年、今
年と2100人以上の来所者を迎えております。将
来的には、当面の目標設定を2500人台におき、
より洗練された内容と魅力ある企画を行うつもりで
す。
今年の来所者の内訳を見てみると、特徴的なこと
は、本所やセンター、観測所においては職業別で関
連した企業の会社員が圧倒的に多くほぼ5割に達し、
年齢別では20才代が3割を占めていました。しか
し、近年の一般公開の主旨から展示パネルは、小、
中学生やお子さんをお持ちの主婦を対象に描かれて
おり、小、中学校への積極的な勧誘と、地域へのP
R作戦を強化するとともに更に沢山の方々にもこの
機会を利用して頂くためにアンケートでも希望の多
い土曜日開催の検討等を進めて行きたいと考えてお
ります。また印象的なこととして、若手女性研究者
の的確な内容表現と良く整理された説明が大変好評
でした。通信総合研究所の新しい流れとして育てて
ゆきたいと思っております。
▲ゲームを楽しむ見学者
今回は、初めての試みとして正面玄関ロータリに
大きな広告塔を公開日前日から試験的に設置しまし
た。通りを行き交う人たちや職員の反応は想像した
以上に良く、来年以降は公開日の3〜4日前に取り
付けて雰囲気をもりあげたいと思います。最後に当
日多数の方々にアンケートにご協力項きまして大変
有り難うございました。特にいろいろな角度から感
じた事を素直にお書き頂いた貴重なご意見などを参
考に来年度の公開に反映し、一層皆様方のご理解と
ご支援を持たれますよう努力してゆきたいと考えて
おります。
(企画部広報係長 渋木 政昭)
《ホビーシリーズ》
神崎郵政大臣視察
▲真剣な眼差し