COMETS計画の経過と研究への取り組み


吉本繁壽

COMETS計画
 郵政省では、1987年に次世代の衛星放送技術及び移動体衛星通信技術の開発を目指して放送及び通信の複 合型技術衛星の検討を行う、BCTS(Broadcasting and Communication Technology Satellite)計画に着 手し、これに基づいて当所(CRL)において搭載中継機開発のための地上試験モデル(性能確認モデル)の開 発を行ってきた。
 本計画に対して、1989年に宇宙開発委員会は宇宙開発事業団(NASDA)の実験用データ中継・追跡衛星 (EDRTS)計画と統合する方針を示し さらにその後、郵政省、科学技術庁、 NASDAは次期通信衛星(CS-4)及び EDRTSの開発課題を引き継ぐ新たな 通信放送技術分野の研究開発衛星(通 信放送技術衛星:COMETS;Communications and Broadcasting Engineering Test Satellite)計画を提案し、1990 年5月に宇宙開発委員会によって、この 計画の方針が決定された。


▲図1 光度移動体衛星通信のサービスイメージ

 COMETSは、(1)衛星間通信技術、 (2)21GHz帯高度衛星放送技術及び(3) Ka/ミリ波帯高度移動体衛星通信技術 の3つの開発を主要ミッションとする2 トン級衛星で、1997年にH−%m%1%C トにより打ち上げられ る予定である。
 搭載用アンテナを含 むミッション機器の開 発は、(1)をNASDAが、 (2)、(3)をCRLとNASDA が担当している。 COMETS概観図を表 紙写真に、概要を表1 に示す。

▼表1 COMETS概要

 CRLは、NASDA等 と調整をとりながら搭 載機器の開発を進めて おり、現在、中継器の EM(エンジニアリング モデル)の製作がほぼ 終了した段階で、今後組み合わせ試験にはいる。ま た、昨年度から地上実験設備の整備を開始している。 さらに、高度衛星放送及び高度移動体衛星通信に関 する研究開発については、広く大学等の関係機関と 連携しながら進めている。

高度移動体衛星通信システム
 高度移動体衛星通信システムでは、図2に示すよ うに各種サービスを小型な携帯局や車載局間で直接 自由に利用できるシステムをイメージしている。こ のようなシステムでは、地球局のアンテナ径の小型 化や送信電力の低減化を図り、かつ広いサービスエ リアを確保するためには、衛星搭載アンテナを高利 得化したマルチビームアンテナが必要である。Ka 帯における将来システムでは、直径約6mの衛星搭 載アンテナで日本全土を数十のビームで覆い、アン テナ径10cm程度の移動局、携帯局で直接通信する ことが期待されているが、COMETS高度移動体衛 星通信ミッションでは将来システム実現に必要な次 のような要素技術の開発を目的としている。
・車載局、携帯局、超小型VSAT間の直接衛星通信 システム(徒来は固定局で中継が必要であった)。
・Ka/ミリ波帯用車載局、携帯局に適した超小型ア ンテナ及びアンテナ追尾技術、送受信部分の小型 化技術。
・マルチビームに対応したビーム間接続技術及び通 信システム
・回線制御機能を含む再生中継方式とそれに対応す る通信システム
・新しい衛星通信利用技術


▲図2 21GHz帯衛星放送のサービスイメージ

21GHz帯高度衛星放送実験システム
 COMETSによる21GHz帯高度衛星.放送実験計画 は、1992年2月の世界無線通信主管庁会議 (WARC−92)で割り当てられた新しい周波数帯による 衛星放送システムの実証を世界に先駆けて衛星を用 いて行うことを目的としている。
 21GHz帯衛星放送はその広帯域性を生かし、スタ ジオ品質HDTV放送、HDTV以上の解像度や情報 量を提供する高臨場感放送などのサービスが想定さ れる他、衛星搭載マルチビームアンテナを利用した地 域別衛星放送等の新しい衛星放送サービスが期待で きる。サービスイメージを図3に示す。
 この新サービスの実現には、最適な映像符号化方 式及び変復調方式に関する検討等、幅広い研究開発 が必要である。また、21GHz帯電波は12GHz帯電波 に比べて降雨減衰の影響を大きく受けるため、降雨 減衰による品質劣化の軽減・補償技術の検討も重要 である。
 実験用地球局として、 5m級の送受信アンテナ を有する主局と50〜 100cmの受信アンテナを 有する複数の可搬受信 局を想定し、以下の実 験項目を予定している。
・衛星搭載中継器の性 能の宇宙実証実験。
・スタジオ品質HDTV 衛星放送、地域別衛 星放送、大容量 ISDB(統合ディジ タル放送)等の新サービスの実証実験。
・降雨減衰を考慮した符号化方式、変調方式の検討 と降雨減衰技術の検証実験。

研究のすすめ方
・搭載機器の開発
 NASDAと開発協定を結び共同で進めており、 CRLは高度移動体衛星通信機器(Ka帯中継器、ミ リ波帯中継器及び再生中継器)と高度衛星放送機器 のうちの中継器受信部を担当している。平成3〜5 年度で、衛星システム側とインタフェース調整を図 りながら搭載モデル(EFM)の開発を進めている が、現在、製作がほぼ終了した段階である。
・所内の推進体制
 宇宙通信部長を本部長とする通信放送技術衛星計 画推進本部を平成3年7月に発足させ、体制を確立 した。宇宙通信部衛星通信研究室、総合通信部放送 技術研究室、鹿島宇宙通信センター宇宙通信技術研 究室を核とする5つの研究グループを作り、4年度 は具体的研究テーマ1次案を選定した。5年度中に 実験項目を整理する予定である。
・外部機関との協力
 東北大、横浜国大、早稲田大、東京理科大との共 同研究を実施している。共同研究のメンバーの意見 交換の場として、COMETSワークシヨップを開催 している。第1回を4年11月、第2回を5年7月に行い、 それぞれ50名近い参加者を得ている。


▲写真1 第2回COMETSワークショップ参加者

おわりに
 高度移動体衛星通信ミッションでは、Ka帯のマ ルチビームアンテナ及び高出力SSPA(固体増幅 器)、ミリ波帯の高出力TWTA(進行波管増幅器) 及びLNA(低雑音増幅器)、一括分波方式の再生中 継器等の新しい技術を用いた搭載機器が、また、21 GHz帯高度衛星放送ミッションでは、ビーム間の 干渉を抑えたマルチビームアンテナ及び21GHz帯 の高出カTWTA等の搭載機器の性能が宇宙におい て初めて実証される。
 今後、技術開発課題について詳細に検討しながら、 高度移動体衛星通信については超小型地球局等、21 GHz帯高度衛星放送については、広帯域のデジタ ル伝送方式、降雨等による劣化がゆるやかになる階 層符号化方式の開発を行い、打上げ後には新しい衛 星通信・衛星放送サービスの基礎技術の確立を目指 して各種実験を行う予定である。
 衛星計画を共同で推進している宇宙開発事業団、 郵政省及び各大学その他関係者の今後の支援をお願 いして、本稿を終えたい。

(衛星通信研究室長)




生体機能の素過程

−ナノメータの分子機械−

中山 治人

1.生物の階層性
 生物の世界には動物から植物、細菌にいたるまで、 多彩なヴァリエーションがあるが、全てに共通して はっきりとした階層性をもっている。図1に示すよ うに、個体は細胞が自律的・システマチックに構築 したものであり、その細胞もまた細胞内小器官の構 築物である。社会から分子にいたるまで、上の階層 は下の階層のシステムであり、下は上の素子である。 そして、システムの働きの素晴らしさ、巧妙さの本 質は素子の働きに負うことがおおい。例えば、脳の 働きの巧妙さは人工のコンピュータの遠く及ぶとこ ろではなく、何とかして情報通信技術に生かしたい ものだと誰しも思うところだが、その神経回路を解 析し、同じ回路を半導体で組み上げても(これだけ でも一世紀以上はかかりそうな仕事ではある)なに もおこらない。その理由は、素子である神経細胞の 働きにある。一つの神経細胞の働きは半導体素子の 及ぶところではなく、仔細に見るとそれ自体コンピ ュータとみなせる、あるいはそれ以上の働きをもっ ている。


 このようにして基本となる階層を下へと追ってい くと、超分子とよばれる生体高分子の集合体の階層 にいたる。この階層が“生き物らしい”働き、つま り人工機械で再現できない機能をもつ最も基本的な 階層である。これ以下では、分子・原子の世界に入 り、無生物・人工機械と質的に同じ働きをもつ。生 物界の多様性にかかわらず超分子のほとんどは普遍 性をもっている。例えば、後で述べる運動の超分子 システム、アクチン・ミオシン系は動物の筋肉にあ るのみならず、神経細胞、原生動物、果ては植物細 胞にまであって運動の素過程をになっている。超分 子の大きさは数ー数十ナノメートル(十万分の一ミ リメートル)のサイズであり、最 近流行のマイクロマシンよりも2 桁、立体的にみると6桁小さい。 また、最新のLSIの導線(電流を 通すだけ)の幅より1桁以上小さ い所に高度な機能体が納まる。い わば超分子それ自体で“ナノマシ ン”とよぶことができる。これを 技術開発の面から見直すと、その 高密度・高機能性、普遍性の点で 極めて魅力的である。超分子の駆 動原理を探り、解明していくこと が、従来の人工技術と全く異なる超ミクロの技術方 式あるいは原理を生物から学びとることに直結する。

▼写真1 可視化されたアクチン・フィラメント

(見かけの太さ:0.4μm 実際の太さ:8nm)

2.生物の機能
 情報通信の研究という立場を離れて生物をながめ てみても、生物はそのすべての階層で情報機械であ る。生物はロケットのようには飛べず、ブルドーザ ーよりも非力で、発電所のような発電能力はない。 しかし、個体、細胞、超分子それぞれのレベルで情 報機能の宝庫となっている。人間の脳などはその複 合例である。コンピュータと比べた生物の情報機能 の特性は、速さではなくその質にある。生物は情報 を作り出し、自律的に適応し処理する。それでは、 生物の機能の中味はどんなものだろうか。
 生物学の教科書にしたがえば、生物の機能の三本 柱は「遺伝」「代謝」「運動」である。(図2)生物 をコンピュータに例えると、遣伝=設計図、代謝= 電源、運動=駆動、電流、組み立て作業となる。こ の分け方はコンピュータにとっては極めて変である, この“変さ”の理由は設計の根本原理が異なるとこ ろにある。コンピュータは素子、デバイス、ソフト ウェア等、すべて外部の人間が作り、駆動されると きは、決まったとおりに電荷か移動(運動)するの みである。これに対し、生物の機能はその基本過程 がナノメートルのサイズであり、各素子が高機能を もつために、分子レベルの運動が装置の自律的な駆 動・組み立て・修復に本質的なのである。したがっ て、生物という究極の情報装置の謎を解くためには 分子素過程レベルで生体の運動機能の解明に挑戦す ることが全ての基礎として重要なことである。生物 にとって「運動」とはあらゆる情報機能にとってべ ースとなる駆動部であり、この上で神経伝達や遺伝 情報など多彩な活動を行なう。丁度半導体の研究と いう、はじめは物性物理学の一分野であった研究が、 コンピュータの開発を通じて電気通信技術に大きな インパクトを与えたように、生体運動の分子過程の 研究は、将来のバイオ“コンピュータらしきもの” を通して情報通信技術にインパクトを与え得るもっ とも基礎的な研究となるであろう。


3.生体運動とその素過程
 生体の運動の素過程は、分子レベルにある。例え ば、図3に示すように、筋肉の構造を微細にみると、 細いフィラメントが向かい合った櫛のようにならん でおり、その間に太いフィラメントが平行にならん でいる。筋収縮はこの二種のフィラメントの相互の 滑り込みによりおこる。さらに精しくみると、太い フィラメントから突き出した20ナノメータ位の突 起が細いフィラメント(太さ〜8ナノメータ)と相 互作用し、滑りあっていることがわかる。この突起 はミオシンという蛋白質の一部であり、細いフィラ メントの本体はアクチンという蛋白質のらせん状集 合体である。その滑りのエネルギー源は、ミオシン がアクチンとの相互作用と同時に行うアデノシン3 リン酸(ATP〉の加水分解によってもたらされる。 つまり、筋収縮の素過程は、アクチン・ミオシンと いう分子機械がおこなう化学結合エネルギーから力 学エネルギーヘのエネルギー変換過程にある。その 大きさはナノメータの大きさで、マイクロマシン技 術の最先端のサイズよりもさらに何桁も小さい。ナ ノマシン技術は究極の微小技術として魅惑的である が、ナノメータの世界は、ノートルサイズの我々の 世界とは全く異なっている。二十年以上前に「ミク ロの決死圏」という映画かあったが、今我々の身体 を1億分の1にして「ナノの決死圏」に入ってみよ う。身体は指先位の大きさの水分子にとりかこまれ ており、この小石のような水分子は時速2000k m近い速さで身体に衝突してくる。この激しい嵐の なかでアクチンというレールの上をミオシンという モータが滑らかに滑っている。この装置はよほど固 くて強力なものだろうか。逆に、超分子は極めて柔 らかくしなやかであることがわかっている。驚くべ きことに、これには大して力はなく、モータの駆動 エネルギー(ATP1分子の分解エネルギー)は襲 いかかる水分子の数倍程度のエネルギーしかない。 つまり、正面衝突を繰り返しながらスムースに走る 自動車のようなものである。さらに、そのエネルギ ー変換効率は人工機械よりも桁違いに高く、60% にもおよぶ。つまり、出力の数分の一にもおよぶ激 しい熱ゆらぎによる擾乱をうけながら、人工機械よ りもはるかに高い効率で働くナノメータサイズの滑 りモータである。このような特徴の一つ一つは現在 の人工技術では想像もできない素晴らしい機能であ る。特に熱ゆらぎの中での駆動は、ナノマシン技術 の先を拓くためには避けられない壁であり、生物は これを楽々クリアしているのである。それではこの ような超徴小のシステムはどのように組み立てるの であろうか。「ナノの決死圏」ではピンセットの先 端などは富士山ほどもある大きさであり、部品を組 み立てることなどはできない。生物の分子機械はこ の問題をいとも簡単に解決している。つまり、部品 自体が自ら組み上がる性質をもっている。組み立て るのみならず、部品がこわれたり、状況が変化した りすると、自ら解体したり新たに適切な形で組み上 がったりする。組み立て、修理、解体、新規組み立 て、とすべて自律的におこなう。


 それでは、このナノメータの分子機械の仕組はど のようにして研究すればよいのだろうか。たくさん 集めて平均としての働きを知るためには従来の方法 で十分である。しかし、本質的な駆動原理を知るた めには、一つ一つの分子機械を直接見ること、そし てそれを動かすことが必要になる。生きたまま見る ためには光学顕微鏡技術しかない。当研究所では、 分子機械一つ一つを目で(本当は超高感度テレビカ メラで)見えるようにし(写真1)、ナノメータの 精度でその動きを観察する技術を開発している。こ の研究はようやく立ち上がったところであり、現在 は一つの分子機械の出す力、約一億分の一グラムの 力を測る技術に挑戦している。これらを出発点とし て“生物らしい”働きの一つの基本原理を明らかに し、それから全く新しい技術原理を引き出す種を見 つけることが夢である。当研究所には光技術の蓄積 があり、この研究には強い力となっている。生物の 研究という、電波研究から一見かけはなれた研究の 同居による異分野間の衝突・交流が産み出す活力は まだまだ生かしきっていないが、本研究の大きな武 器の一つである。

(関西支所 生体物性研究室長)




フレックスタイム制が導入されて
−研究者歓迎の声−

生活にとけ込んだフレックス


行田 弘一

 今年4月にフレックスタイム制(以下フレックス)が 研究所に導入されて以来、最もフレックスの恩恵を受け ている者として?意見を述べさせていただく機会を得ま した。多くの研究者がフレックスにより勤務時間を遅め にシフトしている中、私は基本的に7時始業、3時半終 業という珍しい勤務パターンを続けていまず。元々早起 きは苦手ではなかったことと、私事で恐縮ですが今年の 1月に一気に二児の父となり、子育てに手がかかるため このようなパターンを選びました。フレックスの長所は 何より時間を有効に使うことができるという点に尽きま す。私の場合、通勤もスムースでストレスとは無縁です し、研究所に着いてからも朝早い時間帯は雑事にとらわ れず静かな環境で研究に集中することができます。帰宅 後は子育てや家事を楽しんで(苦しんで?)います。短 所としては、私の場合他の研究者と勤務パターンがかな り異なるため、会議の時間が終業時間以後に設定されて しまうことがある点、他の室員とのアフター5コミュニ ケーションが減ってしまった点、さらにはフレックスの 制度自体が繁雑な点です。特に、現在の「勤務時間の申 告・割振り簿」を使う制度では以前に比べ業務係の負担 が増加し、また研究者にとっても4週間おきの割振り簿 作成並びに割振り変更の申告は心理的負担が大きいと思 います。また、コアタイムの存在も事態を複雑にしてい まず。将来的にはコンピユータネットワーク及びソフト ウエアの整備によりオンラインによる勤務時間申告・割 振りを可能とする一方、コアタイムを廃止し、完全フレ ックスとする必要があると思います。
 ともあれ、フレックスは少なくとも私にとってもはや 必要不可欠のものだと言えます。現時点では制度にまだ 多少の不満などがありまずが、実施後間もないこともあ りますから、長い目で見て研究者と研究支援部門にとつ てプラスとなるように改善し、適用されることを望みま す。

(電磁波技術部 電磁環境研究室)



フレックスタイムは時間差攻撃


町澤 朗彦

 僕の勤務時間は、月曜と金曜は午後3時までと短く、 代わりに火、水、木曜日は朝8時から夜の6時までとい っぱい(とゆー程でもないでずが)働くよーになってま す。春先は出動を8時半に設定していたのですが、暖か くなって早起きが出来るようになつたゴールテンウイー ク開けから少し早くシフトさせたのです。自分ではこれ を自主サマータイムと呼んで、「やっぱ早起きは3文の 得だわ」なんて結構満足しています。
 さて、仕事を早く終え何をしているかとゆーと、街に 出てその辺を散策(展覧会を見たり、お買い物etc.) したり、学生時代の友人(彼らの会社もフレックスタイ ムを採用している)と飲み屋に行ったりしているのです が、時間の早い平日はどこに行つても空いていて快適そ のもで、Hanakoで紹介された人気のお店なんかも楽 勝です。他人が働いている時に遊べるって、なんて贅沢 なのでしよう。ま、その分、人が遊んでる時に仕事をし てるので、いわば時間差攻撃みたいなものですが。仕事 帰りに繁華街に寄れるのは結構便利ですが、飲み始める 時間が早くなっても終える時間は変わらないので飲む量 が増えてしまった気もします(*^。^*)。などと書いていると 明るいうちから盛り場をふらつく不良オジサンをイメー ジするかもしれませんが、実のところは早く退庁した日 の多くはまつすぐ帰って子守りをしているのでご安心を (フレックスタイムの恩恵を一番享受しているのは、う ちのカミさんかもしれない(^.^))。
 フレックスタイムの導入で時間意識が高まり、仕事の 能率が上がり、気力は充実し、研究意欲も沸いてきまし た(成果はこれからね(^_^;))。後は、勤務時間を気楽に 当日変更できて、休暇簿から「1日単位」の概念が消え れば完壁ではないでしようか。あ、もひとつあった。コ アタイムは午前か午後だけにして欲しいですね。

(通信科学部 信号処理研究室)






《長期外国出張》

オーストラリアに滞在して


竹内 誠

 1992年8月から1年間、オーストラリアの Optus(オプタス)Communications社(以下、 Optus社と略す)に滞在しました。
 当所はAUSSAT(オーサット〉社(オーストラ リア政府が出資して設立した国内の衛星通信事業を 行う会社)と「オーストラリアにおける移動体衛星 通信の共同研究」を行っており、当所は1988年 以来毎年一人づつ研究者を派遣していました (CRLニュース第162、175、185号を参 照)。この共同研究で当所の研究者達は、技術試験 衛星7?!JETS−!K$rMQ$$$?DL?.  オーストラリア政府はこれまで1社ずつあった国 内通信事業社(テレコム)と国際通信事業社 (OTC)を合併して一つの会社(テレコム)にする 一方、新たにそれに対抗する事業社を認可し通信事 業社間で競争させることにしました。これにより設 立し、認可された新しい通信事業社がOptus社です。 その後AUSSAT社はOptus社に買収され、共同研 究はそのままOptus社に引き継がれました。私は前 任者に引き続き、現地で衛星通信実験やデモンスト レーションの支援をするために派遣されました。 Optus社では社の方針として独自の研究開発は行わ ないことになり、研究開発部門は解散し、研究開発 に従事していたスッタフはOptus社を離れたり Optus社内の他の職種に移ってしまいました。この ような環境の中で私が行ったことは、実験、デモン ストレーションの支援の他、以前通信回線シミュレ ータを用いて評価されていた試作通信機の性能を、 伝搬データを基にした理論計算によって評価するこ と等です。
 Optus社は今年の末から静止衛星を用いた移動体 衛星通信サービスを開始しようとしています。この サービスはMobilesatシステムと呼ばれ、移動体が 広大なオーストラリア大陸及び周辺海域のどこにい ても、そこから普通に電話をかけられるようにする ことを主目的としています。サービスの開始時点に おいて、Mobilesatシステム用電話端末の価格はお よそA$7,000程度(Optus社はMobilesatシステム用 電話端末を直接提供することはせず、いくつかの通 信機器会社が販売することになります)、回線の利 用科金は1分間あたりA$1.50程度になる予定です。 Optus社は現在、サービスを開始するための地上施 設整備を行っています。
 Optus社が現在提供しているサービスは、携帯/ 自動車電話のサービス、長距離電話サービス及び固 定衛星通信サービスです。特にOptus社の長距離電 話サービスの利用率は急激に上昇し、最近ではテレ コムがいろいろな方法でこれに対抗する方策を講じ 始めています。
 今、オーストラリアではちょっと変わった投票が 行われています。長距離電話に関しての投票です。 長離電話(国内外とも)にOptus社の回線を用い るときには、市外局番または国際識別番号〈オース トラリアでは0011)の前に1を発信する必要 があります。この1を発信しないと自動的にテレコ ムの回線を用いることになります。しかし、オース トラリア政府はこれを不公平であると判断しました。 その結果、電話の所有者による投票を行い、その電 話の所有者か、どちらの会社を優先的に利用するか (市外局番または国際識別番号を1を前置きせずに 発信できる)を決定することになったのです。
 最後になりましたが、オーストラリアヘの長期出 張という貴重な体験をさせて下さった関係各位に深 く感謝いたします。

(宇宙通信部 衛星通信研究室〉



短 信




招聘外国人研究者との懇談会開かれる


 当所では、外国人研究者に対しても広く門戸を開 き、その受け入れを積極的に行っている。職員とし て採用されたものを除く招聘外国人研究者と当所幹 部等との懇談会が10月6日に開催された。当日はア ジア、北米、ヨーロッパ、アフリカ出身の7名の招 聘研究者か出席し、研究生活や日常生活に関する率 直な話し合いかされた。この内容は、研究プロジェ クトの在り方から文化の違いについてまでの広い範 囲のものであった。当所においては、これらの意見 やコメントを招聘研究者がより快適な研究生活を送 るための参考にする予定である。なお、会合の終了 後は職員との懇親会が開催され、会合では英語で発 言していた招聘研究者の多くか上達した日本語を披 露していた。

(企画部 国際研究交流室長)




lTU−R WP5A/5B/5C会合報告


 非電離媒質中の電波伝搬を所掌するITU-R SG5の3つの作業班(WP5A,5B,5C)の ブロック会合が,去る10月4日から15日までジ ュネーブで開催された.我が国から5名の代表が参 加し,当所からは電磁波技術部ミリ波技術研究室の 井原室長が出席した.会合の主要議題は,勧告案の 作成,ハンドブック案の作成(WP5Aで1件,W P5Cで3件を計画),11月に予定されている無 線通信総会へ提案する研究課題案の審議であった.
 WARC-92による1〜3GHz帯の周波数分 配の変更等を踏まえて,1〜3GHz帯の陸上移動 /地上放送用電界強度推定法の新勧告案が作成され た.この他,ディジタル地形データの利用に関する 新勧告案や,現行勧告の修正案が多数作成された. これらは来年3月のSG会合へ入力される.
 次会期へ向けた動きとして,3件の新研究課題案 と6件の研究課題修正案が11月の無線通信総会へ 提案されることになった.これらには,パーソナル 通信及び無線LANのための近距離伝搬特性の研究 に関する新課題が含まれている.当所の関連研究の 成果を積極的に寄与して行くことが望まれる.

(電磁波技術部 ミリ波技術研究室長)



電波研親ぼく会開催


 第22回電波研親ぼく会は、去る10月22日(金) に当所に於いて、OB、現役150名余の参加によ り盛大に開催された。
 総会では、はじめに、吉村会長から、挨拶の後、 最近の当所の動向として、本年度の組織改正、2年 続きの補正予算、40年史の発行等について報告が あり、続いて役員指名、経過報告が行われた。最後 に、「ATR光電波通信研究所に滞在して」という 題で、同社前社長の古濱企画部長が講演を行い、総 会は滞りなく終了した。
 その後場所を講堂に移し、恒例の懇親会が管野菊 雄さんの乾杯で始まり、若井 登、越智文雄両氏に、 18回参加の精勤賞として記念文鎮が贈呈された。 続いて、加藤一夫さん、三浦秀一さんに思い出話を ご披露項くとともに盛り上がり、あちらこちらに輪 が出来、料理やお酒を味わいながら、思い出話や、 楽しい談笑がにぎやかに繰り広げられた。
 また、今回は、施設見学会(共用実験庁舎内〉も 企画され好評であった。

(総務部 庶務課長補佐)