2 基礎・先端研究の重要性
また天然資源のほとんど無い我が国にとって、付加価値を大きくするような技術開発の重要性は明らかであります。つまり基礎から応用までバランスのとれた研究・開発が必要だということであります。
このような研究・開発において現在の国立研究機関の役割は、基礎研究の先導、失敗の危険の伴う大型プロジェクト等の遂行、あるいは産・官・学の連携を図る共同研究の場の提供等と考えられています。
3 通信総合研究所の研究とその特徴
4 情報通信基盤整備
当所の平成7年度予算や同第一次補王予算における情報通信基盤整備関係予算の成立状況、あるいは最近の公共投資予算使途の見直し及び科学技術・情報通信振興特別対策費などを考え合わせますと、政
府の科学技術重視は新しい政策の重点となっています。従いまして、平成7年度第二次補正予算あるいは平成8年度において情報通信基盤整備に多大の予算が配算される可能性があります。しかしながら当
所の要員の規模で今年度の様な予算額を定常的に扱うことは無理であります。このため郵政省は、近い将来この情報通信基盤整備分野の研究活動の受け皿の規模を飛躍的に拡大する必要が生じています。こ
の受け皿として、新たな情報通信研究所構想等が出たり、消えたりしています。
5 光技術COEの育成
またレベルの高いアクティブな研究者が訪問したくなるような知的な刺激に満ち且つオープンな研究環境の形成には、高いレベルの研究の実施と共に優れた研究環境を作り上げる必要があります。優れた研究
環境の形成には、光技術COE育成に直接関係する研究者のみならず当所の支援と努力が鍵を握っていると考えています。
来年夏には、この光技術COE育成プログラム3年目のレビューが科学技術庁によって実施されます。実質丸二年目にレビューが行われることになりますので、この時期に素晴しい研究成果の数々を評価され
るよりは、研究計画の妥当性や研究遂行に係わる体制や環境などが評価の対象になると思われます。また、COEにふさわしい研究環境の形成に研究所として如何に努力したかが問われると思います。この優れ
た研究環境の形成には、光技術COE育成に携わる研究指導者の問題意識、問題提起が不可欠です。研究指導者の具体的でかつ的確な問題提起を基にして初めて、研究所は必要な対処をすることが可能となるからです。
このような努力の結果得られた先進的な経験が、当所全体の底上げに大きく寄与することは間違いありません。この意味から、光技術COEの育成は当所における研究推進のフロンティアとしての位置にあり、その
発展に多大の期待を寄せている所であります。
6 まとめ
昭和15年3月1日広島県呉市に生まれる。
平成7年度予算の内容は、
内訳を見ると、
事項別内訳を別表に示すがその概要は次のとおり。
1 公共投資重点化枠要望が認められた。
2 新規事項(単年度)か認められた。
3 組織・要員
4 継続プロジェクト
5 その他
(総務部会計課) 福地 一
(企画部 企画課長)
CRLニュースNo.212(1993.11号)で紹介しましたKSP−首都圏広域地殻変動観測システムの整備は着々と進められ、平成7年3月小金井、鹿島、三浦のVLBI局3局が完成しました。 三本千紘(標準計測部 時空計測研究室)
太陽系には9つの惑星のほかに無数の小惑星があります。これまでに軌道が確定していないものを含めると1万個を超える小惑星が発見されていますが、直径が1km以上のものはおそらく100万個以上あると考えられ
ています。そのうち詳しく調べられているのはほんの一部にしか過ぎません。
この小惑星には、今回の地球への接近の際の軌道観測によって軌道要素が確定し、6489という確定番号がつけられましたが、現在、この小惑星の名前をGEK(ジェック)と命名するという提案がIAU(国際天文学連合)で検討されています。これは、レーダー観測の成功を記念して、3つの観測局、すなわちゴールドストーン(アメリカ)、エバパトリア(ウクライナ)、鹿島のそれぞれの頭文字をとったものです。日本で
は、これまで小惑星に限らず、太陽系天体をレーダーで観測した例がなく、今回の実験は今後の日本のレーダー天文学にとって重要な一歩となりました。
小山泰弘(関東支所宇宙電波応用研究室)
所長就任御挨拶
古濱 洋治
1 はじめに
私は6月21日付けで第5代郵政省通信総合研究所長に就任致しました。これを機会に日頃考えていることの一端を紹介して、就任の挨拶としたいと思います。
近年私ども研究所の置かれている環境は大きく変動しています。戦後50年を迎えて我が国は経済大国となり、我が国の一挙手一投足が世界の注目を集めるようになっています。そのため経済大国にふさわ
しい振る舞いを期待されています。これは研究の分野についても同じことであります。いわゆる”基礎研究ただ乗り論”に対して、我が国が人類の知的共有財産蓄積へ貢献する様な基礎的・先端的研究を推
進することに大きな期待が寄せられています。
国立研究機関で、ある当所は、(1)大型プロジェクト指向の『宇宙技術』や『VLBI関係技術』の研究、(2)郵政省固有の課題である『周波数資源の開発』や電磁波の発生・検出に係わる『装置/材料・物性』
の研究、(3)電磁波技術の『環境計測』や『環境科学』への応用、(4)認識や理解など広い意味で、通信を構成する『情報科学』の研究あるいは生体の情報処埋機能に学びこれらを広い意味で通信に生かそうとす
る『バイオ関係』の研究、および(5)下部電離層の定常観測、無線機器の検定・較正、標準周波数の発射の『定常業務』を担当しています。
電気通信分野における技術開発の大航海時代、即ち電気通信技術の主な発明・発見の時代は20世紀前半にはぼ終わっています。20世紀後半は電気通信技術の成熟期にあり、現在の技術開発の多くは企業が
担っています。従って国立研究機関である当所の研究は、情報通信分野における大型の研究や直接的に利益に結ぴ付かない基礎的な研究あるいは境界領域・融合領域など新しい研究分野に設定する必要があ
り、また現にそのように移行しています。
今年度から始まった情報通信基盤整備(所謂マルチメディア)に係わる研究プロジェクトは、当所の従来の基礎・応用指向の研究と異なって、ユーザの要望や期待に密接に関係した、より応用色の強い研
究であり、商業活動とも近い距離にあるプロジェクトであります。またこの情報通信基盤整備に係わる予算のように規模が大きくなればなる程、研究所内外からの研究成果に対する期待は大きくなり、これ
らに的確に応えていく様々な成果のアピールも重要になります。このマルチメディア分野の研究開発は我々の経験の乏しい分野ではあります。このため郵政本省の応援を得ると共に、NTTやKDDを含む民間や
地方自治体の力を結集して、この研究開発を大いに発展させ成功させたいと考えています。また大学の先生方との共同研究も幅広く実施して行くことが大切と考えています。この応用指向のマルチメディア
関係の研究開発においても、当然のことながら基礎研究的な研究課題があります。このような部分をこれを機会に大いに発展させ、自家薬籠中のものとすることが大変重要であります。
研究費の大幅増額は当所の長年にわたる希望でございました。私の知る限り当所の研究費が潤沢であ
ったのは、1970年代後半のCS,BSなど宇宙開発の華やかりし時期を除けば、ここ2、3年のことであります。この予算的上げ潮の時期に研究環境の整備を行うと共に、次の飛躍に備えて長期研究計画の見直しと研究
組織改正案を作成していく必要があると考えます。平成4年度に設置された組織改正検討委員会を再編し、新たな研究所の飛躍を期してその活動を再開したいと思います。そこでは、現時点における当所の長中期
研究計画の基本方針及び組織改正方針を明確にしておく必要があります。このような意見の集約を通じて、我が国の情報通信や電波技術分野の研究開発における当所のアイデンティティーの形成を期待したいと思
います。
平成6年度、当所の『先端的光通信・計測に関する研究』が、科学技術庁のCOE(Center Of Excellence)育成制度のテーマとして採択され、当所はCOE育成機関として選定されました。COE育成の2つの大きな目標
は、5年ないし10年の予定で、(1)世界のトップレベルの研究を目指して切磋琢磨すると共に、優れた成果を挙げること、及び(2)これを可能とするオープンで自由な研究環境を作り上げることであります。基礎
的な研究になればなるほど、研究遂行における研究者個人の役割は大きくなります。そのため新しい研究員の参加と共に、客員研究員の参加も積極的に考えて行きたいと思います。光技術COE育成に参加される研
究者の一層の奮起をお願いする次第です。
以上基礎研究の重要性と最近の大きな話題である情報通信基盤整備と光技術COE育成に例をとって、新しい分野への研究活動の展開の重要性と知的刺激に満ち且つオープンな研究環境の形成の重要性について述
べました。
今年はマルコー二無線通信100周年であり様々な行事が企画されています。また、来年は我が国の無線通信研究100周年を迎え、当所のルーツも100年を遡ることができますので、意義深い催しを計画したいと考え
ます。この一世紀の電気通信の発展には目を見張るものがあり、21世紀に向けて一層の飛躍が期待されています。
こうした課題に対する取組は、言うまでもなく所員の皆様方のご協力とご努力があって初めて可能となるものであります。特に企画部門や総務部門の所員の皆様の支援の重要性については、改めて言及するまでも
ありません。このような歴史的な節目にあって、当所職員の皆様の一層のご努力ご健闘を期待して私の挨拶とさせて項きます。
(本文は就任当日の挨拶に一部加筆したもの。所長)
通信総合研究所長
古濱 洋治
(ふるはま ようじ)
昭和38年3月京都大学工学部電子工学科を卒業、昭和43年3月京都大学工学研究科博土課程を修了。同年4月郵政省電波研究所に入所、昭和53年7月同電波部電波気象研究室長、昭和54年6月同大気圏伝
搬研究室長に就任。昭和61年4月(株)国際電気通信基礎技術研究所光電波科学部長及ぴ(株)エイ・ティ・アール光電波研究所代表取締役社長に就任。平成5年6月郵政省通信総合研究所に入所、同7月同企画部長
に就任、平成7年6月21日付けで通信総合研究所長に就任。
昭和60年度前島賞を受賞。
平成7年度通信総合研究所予算の概要
総額100億9934万円
6年度当初予算比22.3%
(18億4403万円)の増。
人件費は、30億2240万円
(6年度比2.7%、8047万円の増)
物件費は、70億2589万円
(6年度比33.4%、17憶6076万円の増)
旅費は、5105万円
(6年度比5.8%、280万円の増)
となっている。
★基礎的・汎用的技術の研究開発
来るべき高度情報通信社会において、全ての国民が情報通信基盤の便益を享受できることを目指した情報通信基盤整備プログラムを推進するために、情報通信基盤・利用に不可欠な基礎的・汎用的な技術
の研究開発を目的とし、超高速ネットワーク、ユニバーサル端末、高度情報資源伝送蓄積の3分野の研究開発を行う。
平成7年度は、各3分野の研究開発への着手とそれら研究開発・実験の拠点となる「情報通信基盤技術研究センター」の施設整備に着手する。
(初年度経費20億円、内センター経費8億円)
★CATVを利用したPHSシステム標準化試験
施設の整備
米国系企業が日本国内において、CATVネットワークを利用したPHSシステムの導入の計画を示していること等から、システムの標準化のための施設整備を今年度限りの経費として認められた。
(平成7年度経費8239万円)
@総合通信部に 超高速ネットワーク研究室
ユニバーサル端末研究室
高度映像情報研究室
の新設が認められた。
A研究員3名の増員が認められた。
@周波数資源の研究開発
周波数資源の二ーズの増大と多様化に対応するため、インテリジェント電波有効利用技術の研究開発、ミリ波構内通信技術の研究開発、ミリ波・サブミリ波帯デバイス技術の研究開発等、前年度同様大幅な予
算額が認められた。
(6年度比16.7%、1億6204万円の増)
A宇宙通信技術の研究開発
★高度衛星通信放送技術の研究開発
平成9年打ち上げ予定の通信放送技術衛星の移動体地上実験設備、放送地上実験設備、主局実験設備等がそれぞれ認められた。
(6年度比27.4%、1億8968万円の増)
・成層圏無線中継システムの研究開発
・40GHz以上の電波伝ぱんの研究
・通信衛星(CS-3)の実験研究
以上の三つのプロジェクトが終了した。
通信総合研究所は、電波及ぴ情報通信に関する唯一の国立研究所として、昨年度と同様、情報、通信、電波に関する次の7つの重点研究分野を設定して研究開発を推進します。
(1)高機能知的通信の研究
(2)人間・生体情報の研究
(3)有人宇宙時代通信の研究
(4)太陽惑星系科学の研究
(5)地球環境科学の研究
(6)時空系科学の研究
(7)電磁波物性・材料の研究
[研究課題の特徴]
平成7年度の研究課題については、上記の7つの分野における既定の課題を引き続き推進するとともに、新たに情報通信基盤技術の研究開発を開始します。ここでは来るべき高度情報社会を支える基礎的・汎用
的な技術として超高速ネットワーク技術、汎用性を有する情報端末を実現するユニバーサル端末技術、HDTVを超える超高精細映像も扱える情報資源伝送蓄積技術を対象に研究開発を推進します。
また、「国際的な超高速情報通信ネットワークの構築」のための施設整備など、平成7年度第1次補正予算で認められた種々の施設整備を行い、ネットワーク、時空計測、次世代CATV等の研究活動を促進します。
[組織の新設]
前に述べた情報通信基盤技術の3つの要素技術に対応して、超高速ネットワーク研究室、ユニバーサル端末研究室及び高度映像情報研究室の3研究室を総合通信部に新設しました。この結果、総合通信部は従来の
ネットワーク、移動通信、放送に関する4研究室を加えて7つの研究室を擁し情報通信技術の研究開発を強化する体制を整えました。
[研究者の交流とCOE化への取り組み]
研究交流においては、国内外の関係機関との人材交流を引き続き積極的に推進するとともに、科学技術庁フェローシップ、特別研究員制度等を通じて優秀な研究者の確保につとめます。また、電気通信大学と
の連携大学院制度の活用等により、研修生の受け入れを積極的に推進します。さらに、研究指導力の強化を目指して客員研究官の大幅な拡充を図るとともに、顧問も充実します。平成7年度においても、引き続き
各研究分野において中核的研究拠点(COE : Center Of Excellence)化を目指して努力します。特に、昨年度、科学技術振興調整費によるCOE化設定領域に選定された「先端的光通信・計測に関する研究」につ
いては、所をあげて期待に応えるべくその充実に努めます。
[各重点研究分野の研究課題]
前述の7つの重点研究分野毎の平成7年度の研究課題例を以下に示します。なお、当所の組織と担当プロジェクトを一覧表で示します。この表に示すように、本年度当所は、5課47室4観測所において70プロジェ
クト12ジョイントプロジェクトを推進いたします。
(1)高機能知的通信の研究
電気通信フロンティア研究開発の一環として、「超多元・可塑的ネットワーク基礎技術」及び「ネットワークヒューマンインターフェース」の研究開発を継続します。周波数資源の研究開発の一環として「イ
ンテリジェント電波有効利用技術」など5課題の研究開発を継続します。本年度から情報通信基盤技術の研究開発として「超高速ネットワーク」、「高度情報資源伝送蓄積」に関する研究に着手いたします。同時
に、情報通信基盤の研究を含む情報通信関連の研究の拠点として新研究棟の建設に着手します。
この他、国際的な超高速情報通信ネットワーク及びアプリケーションに関する研究開発、非常時通信技術の研究開発を行います。
(2)人間・生体情報の研究
電気通信フロンティア研究開発の一環として、「知覚機構モデルによる超高能率符号化技術」、「次世代通信のための高次知的機能」、「生体機能」、「高度情報通信のための分子素子技術」の各研究開発を
継続します。本年度から情報通信基盤技術の研究開発として、汎用・福祉型的情報通信端末の実現をめざす「ユニバーサル端末」に関する研究開発に着手します。
(3)有人宇宙時代通信の研究
高度宇宙通信技術の研究開発のため、「衛星間通信技術」、「高度衛星通信放送技術(COMETS)」、「小型衛星通信技術」、「分散衛星システムによる宇宙通信」、「次世代の通信・放送分野の研究開発衛星
(ETS-VIII)」の各研究開発及ぴパートナーズ計画に関する実験研究を継続します。特に、ETS-VIを用いた衛星間通信実験は周回衛星となったために実験時間が限られていますが、逆に欧米から光衛星通信実験
の希望があることから国際実験も積極的に進めます。
(4)太陽惑星系科学の研究
この分野では、21世紀の宇宙基盤技術としての「宇宙天気予報システム」の研究開発、「STEP(太陽地球系エネルギー国際共同研究計画)計画期間における関連観測」の強化を継続します。また、汎世界的な電
離層観測網の一環として国内4観測所および南極での電離層定常観測及び研究観測を継続します。
(5)地球環境科学の研究
地球環境の保全のための環境計測技術に関し、「宇宙からの降雨観測のための二周波ドップラレーダ」、「短波長ミリ波帯電磁波による地球環境計測技術」、「光領域アクティブセンサーによる地球環境計測技
術」、「地球環境計測・情報ネットワーク」、「高分解能3次元マイクロ波映像レーダによる地球環境計測・予測技術」の研究開発を継続します。また、地球環境のための高度電磁波利用技術に関する米国との国
際共同実験の本格化に万全の体制で望みます。
(6)時空系科学の研究
空間計測技術と時間計測技術を融合発展させるため、「宇宙電波による高精度時空計測技術」の研究開発の継続及び「首都圏広域地殻変動観測施設」の整備を実施します。周波数の一次標準に関しては、新方
式セシウム標準器の研究開発を引き続き進めます。また、引き続き従来型一次標準器の確度評価を定期的に実施し、国際原子時の維持に貢献します。
(7)電磁波物性・材科の研究
電気通信フロンティア研究開発の一環として、「超電導体による超高速・高性能通信技術」、「未開拓電磁渡技術」の各研究開発を継続します。また、周波数資源の研究開発の一環として「ミリ波・サブミリ
波帯デバイス技術」の研究開発を継続します。
短信
このうち三浦局は関東電気通信監理局国際監視部の敷地中に設置されております。完成を期に、地域のみなさま方へのご挨拶と、KSP計画に対するご理解をいただくよう、去る5月22日竣工記念式典を挙行し
ました。式では、久野三浦市長、横須賀市代表、岡井官房審議官、徳永関東電気通信監理局総務部長、吉村通信総合研究所長、横山KSP本部長のテープカットにつづき、久野市長のスイッチオンでアンテナの
運用を開始しました。
そのあと、会場を近くのホテルに移し、130名ほどの参加のもと祝賀式を行い、施設整備にご尽力いただいた方々に感謝状を贈呈いたしました。
本計画は、今年度VLBI館山局の整備と、補正予算でSLR観測局4局が整備されることとなり、今後の本格的観測へ大きな期待がかけられています。
小惑星からのレーダーエコー検出
1991年にパロマー山天文台で発見されて仮符号1991JXがつけられた小惑星が1995年6月に地球から0.034天文単位(約510万km=地球と月の間の距離の約8倍)の距離にまで接近しました。このとき、日本とアメリ
カ、ロシアの各国の研究機関が協力して初の国際レーダー実験が実施されました。実験の内容は、アメリカ・ジェット推進研究所のカリフォルニア州ゴールドストーンにある口径70mのアンテナから470kWの出力
の電波を小惑星に向けて発射し、反射されたレーダーエコーを地上の観測局で受信するというものです。日本での観測には、通信総合研究所と宇宙科学研究所などが協力し、鹿島宇宙通信センターの34mアンテナ
で受信・記録したデータからレーダーエコーの検出に成功しました。鹿島センターでの観測では観測時問が約2時間と限られたものでしたが、それでも小惑星の大きさが1kmにも満たない小さなものであることが
確認されるなどの科学的な成果を得ることができました。