超伝導体からの電磁波発振−新しい形態

−高温超伝導薄膜からのテラヘルツ電磁波発振−

阪井 清美

はじめに
 超伝導状態というのは、元来は反発し合うはずのマイナス電荷を持つ2つの電子が、対になって行動する ために生しる状態で、最初1911年にKamerhngh Onnesによって発見された。その時の超伝導体は水銀で、臨界 温度(常伝導から超伝導に遷移する温度)は絶対温度(-273℃を0度として測る温度表示法.ケルビン(K) という単位を使って表す)の4.2Kであった。その後1957年になってBardeen,Cooper,Schriefferがいわゆる BCS理論を組み立てて、そのメカニズムを明らかにした。このあたりまでは、現在では多くの人々の知ると ころであるが、最初の超伝導現象の発見はどちらかというと、極低温を作る技術の副次的なものであったこ とは、案外知られていない。臨界温度の高い超伝導物質を探索する研究はその後現在まで脈々と続いてきた が、今後もその方向にそった研究が続く事は確実であろう。高温超伝導物質の発見があってフィーバーがお こったことは、我々の記憶に新しい。

 超伝導体は現在のところ、温度30K以下に臨界温度を持つ、いわゆる金属系超伝導体と、約160K以下に臨界 温度を持つ、酸化物の高温超伝導体に分かれる。前者の代表選手がニオブ(Nb)とか窒化ニオブ(NbN)であ り、後者の代表選手がイットリウム・バリウム・酸化銅(YBa2Cu3O7-δ通称YBCO)である。
 これらの超伝導体と、ミリ波やサブミリ波といった電磁波との相互作用の研究もまた、少なからぬ年月に 亘って研究され、利用もされてきた。そのような相互作用を表す専門用語の、交流ジョセフソン効果、シャ ピロステップ、準粒子ステップなどの言葉を一度くらい耳にした人もおられることと思う。このような相互 作用は、コヒーレントな電磁波との相互作用で量子効果が現れる。これまで、実用的な見地からは、主に金 属系の超伝導体と高周波の電磁波との相互作用についての技術開発が行われ、現在では1テラヘルツ(1THz, 1秒に1兆回の繰り返し)近くまで使えるようになっている。高周波での利用ということでは、臨界温度が高 い程有利で、その意味では高温超伝導体は有望であるが、コヒーレンス長(対を組む電子相互間の距離)が 短いこととも関連して、実用的なデバイスを作る上で多くの問題を残している。


逆の発想
 今回の成果に到る過程には、次のような経緯があった。昨年のCRLニュース12月号(No.225)には、半導体 によるテラヘルツ電磁波発振の話を書いた。この場合は、発振用デバイスに超高速光スイッチ部を設けてお き、その部分に、フェムト秒レーザーから発振する光パルスを使って、80フェムト秒(1 fs 千兆分の1秒) という極めて短い時間だけ光をあてて瞬間的に電流を流し、そのことによってテラヘルツ電磁波を発生させ たのであった。つまり電流が零の状態から電流が流れる状態への移行が電磁波発振につながる。この半導体 発振器を開発することで数人が集まって話をしていた時、半導体の逆をやってみても電磁波が発振するので はないかという意見が出された。高温超伝導体でデバイスを作り、臨界温度以下に保って超伝導電流を流し ておく。これに先程の80フェムト秒の光パルスをあてて励起し、超伝導状態を破って常伝導状態に戻し、そ の時の電流変化によってテラヘルツ電磁波を発生させるというストーリーである。それ以上のことは考えず、 先ずデバイスを作って実験をやりはじめたが、いきなりテラヘルツ電磁波の発振が確認された。通常の研究 の進め方と逆であるが、発振が確認されてから、文献調査をして必要な情報を得ていくと、いろんな好条件 が重なっていたことが分かってきた。先ず高温超伝導体が、可視光に対して50%程度の吸収があることであ った。完全反射体になっていたら成功していなかっただろう。次に光パルス励起で、超伝導状態が瞬時に常 伝導状態に移行し、散乱されて電流か減衰する時間が、予想通り非常に速く1ピコ秒(1 ps 1兆分の1秒)以 下であったこと、そして高温超伝導デバイスがすぐ作製出来て、このような計測が完壁な形で行える状態に あったことである。



図1 高温超伝導デバイスからのテラヘルツ電磁波発振及び半導体デバイスによる受信システム


高温超伝導薄膜からのテラヘルツ電磁波発振
 電磁波発振・検出システムは、発振器以外は、半導体デバイスによる電磁波発振・受信のそれと同じもの を使用した(図1)。発振デバイスそのものは0.5mm厚のMgO基板上に、70nm位の厚さのYBCO薄膜をレーザー アブレーションにより成膜し、その上でダイポール状或いはボウタイアンテナ形状にデバイス化したものを 使用した。図2は、微小ダイポールアンテナを持つ、実際に実験に使用したデバイスの顕微鏡写真である。 デバイスは臨界温度(この場合約73K)以下に保つ必要があることから、循環式の極低温冷却装置内にセット し、定電流源から超伝導電流を流した状態で、臨界温度以下の希望する温度に設定した。そのうえで、フェ ムト秒レーザーからのパルス光を、外部から、光学窓を通してくびれた部分に照射し、電流変化を作ってテ ラヘルツ電磁波パルスを発振させた。発振した電磁波パルスは、2つの放物面鏡によりコリメーション(平行 ビームを作る)と集光を行い、受信器に入射させる。受信器の方は、半導体で作製したものを使用した。 半導体受信器は光伝導スイッチと呼ばれる間隙を持つ。発振器を照射するレーザー光からその一部を取り出 して時間遅延をかけた上で、この間隙を照射する。すると光があたった極めて短い時間だけ回路が閉じ、そ の時入射する電磁波の電界により電流が流れる。この電流の大きさが入射電界に比例する。遅延時間を変え ながらデータを取得していくと、元の発振電磁波の波形を再現することが出来る。こうして得られたパルス 波形にフーリエ変換という数学的処理を施すと、周波数と電界の振幅の関係が図3のように得られる。図3の スペクトルから、発生した電磁波パルスは、約0.5THzで最大出力を持ち、2THz以上の周波数成分を含む広帯 域電磁波であることが分かる。周波数成分としては、冷却装置の光学窓材に使われている溶融石英による、 高周波側での減衰が大きく寄与しており、システムの改善により、周波数の上限は更に高くなることが期待 される。このような電磁波の発生は、これまでの電磁波発生に対し、次のような特長を持つ。1つは広帯城で あること、2つ目は超伝導体からの発振では、これまで考えられなかった2THzというような高周波が発振して いること、3番目は可視光との相互作用により数THzの電磁波が発振したことであろう。さて、ここまでくる と、金属で同型のデバイスを作り、それにレーザーパルスをあてても発振するのではないかという淡い期待 が生まれる。それでその事も、実際にデバイスを作って実験してみたが、この方は見事に失敗に終わった。
 高温超伝導体によるテラヘルツ電磁波発振の研究は、緒についたばかりであるが、発振器として実用に向 けた研究のみならず、発振電磁波から得られる情報によって、高温超伝導発現のメカニズムを探る事も興味 をひくものがある。




図2 微小ダイポールアンテナ形、高温超伝導発振器の顕微鏡写真.
中央部にレーザー光をあてると電磁波を発振する.



おわりに
 今回、このようなオリジナリティーに富む成果を挙げることが出来た背景を考えると、色々好条件がそろ っていた。先ず、半導体デバイスを使ったTHz電磁波発振・受信に成功し、そのシステムをそのまま使える 状態にあったこと。そして、超伝導に対して深い知識を持った共同研究者が近くに居たことである。各々の 得意なところを持ち寄って、うまく研究協力が出来た。第3特別研究室、コヒーレンス技術研究室、超電導研 究室そして阪大超伝導エレクトロニクス研究センターの協力のもとに、実を結んだことを最後に記しておく。

(関西支所第三特別研究室)



図3 発振した電磁波の振幅と周波数
発振器温度11K、バイアス電流100mA
励起レーザーパワー33mw




電磁波による地震予知


高橋 耕三

1.地震予知研究の経緯
 我が国では、昔から、なまずの地震予知が有名である。日本なまずには、0.05μV/cmまでの電界に感応す る感覚器官か表皮全体に分布しており、方向探知器の機能を持っている。このことと、夜行性で、1匹で住み 、学習能カが大きいことから、餌となる魚の生体電気を、人工雑音等と弁別し、発生方向を検出し、捕食し ていると考えられる。地震前には異常電界が発生し、なまずがこれを餌の生体電気と誤認して異常な動きを するのであろう。なお、アマゾン等の濁った大河では、生体電気を感知して、捕食する魚、または捕食から 逃れる魚は珍しくない。
 ヨーロッパでは、18世紀には、地磁気や地電流が地震前に変化すると言われていた。地震前兆電波が考え られるようになったのは、1966年3月22日の中国の台(Xingtai)地震(マグニチュウド:M=7.2、深さ23km) 及び1976年7月28日の唐山地震(M=7.6、深さ23km〉からである。地震の数週間前から、震央近くでは、一時、 ラジオ・TV・電信が受信不能になったり、レーダに実体のないエコーが現れ、地震と同時にその様な現象が 消えたためである。1976年からは、旧ソ連で多数の地震前兆電波の観測例が発表されるようになり、1980年 頃から、我が国でも、電気通信大や京大防災研究所等で81〜82kHz、163kHz等で追試が行われている。
 中国の海城地震(1975年2月4日、M=7.3)は予知の成功例に挙げられている。地震が少なかった海城地城で 、本震の2ヶ月前から徴小地震が多発したため、避難勧告を出し、多数の人命が救われた。しかし、本震は必 ず余震は伴うが前震を伴うとは限らないし、単なる微小地震と前震の弁別法も見つかっていないから、徴小 地震の観測による予知の成功は、噴火の場合を除けば、例外に近い。
 旧ソ連邦タジク共和国のガルム地方は、地殻の動きが年間約30cmに達し、M6クラスの地震が30年に1回程度 の割合で起きるため、複合地震観測所が設置され、地震波、地殻の電気抵抗・伸縮・歪・傾斜、地電流、重 力、地磁気、地下水のレベル・成分・イオン濃度、気象、ある種のげっ歯類・魚・昆虫の動き、魚の電位が 観測された。これらの動物の動き・電位の異常と地震発生との良い相関は得られたが、その他の異常との相 関は得られず、1985年には、地殻変動の観測による地震予知は、理論的にも、経験的にも可能性が否定され た。
 ギリシャのアテネ大学物理部では、1986年から、0.1Hz以下の地電位の観測による地震予報が行われている 。地電位の異常から約1カ月以内に(11日後頃に最も多く)地震が発生し、場所の誤差は約100km、Mの誤差は 約0.7である。ロシア科学アカデミ一地球物理研究所では、1991年からオメガ電波の受信による予知が行われ ている。9〜13kHzのオメガ電波は、伝搬路の近傍でM6以上の地震がある場合、地震の約10〜30日前に位相の 異常を示す。1995年1月17日の兵庫県南部地震も予知し警告した。しかし、これらの予知法の物理的意義はと もかく、予知する日時・場所が漠然としているため、確率論的意義は小さく、実用的意義は疑わしい。


2.当所の地口前兆,界の観測
 多くの前兆電界の観測例はあったが、地震発生と同期した観測例は無かった。このような状態で、1994年 10月4日に観測史上最大の地震、北海道東方沖地震(M=8.1)が発生し、当所と防災科学技術研究所共同の7箇 所の全観測点、大島(東京)、千倉・勝浦(千葉)、昭和(山梨)、波崎・筑波(茨城)、粟野(栃木)で、 地中の電界観測装置の1〜9kHz帯で、人工雑音・近接雷を除いて、最大の電界変動が地震発生と同期して観測 された。また、0〜0.7Hz帯では、地震動(観測点での地震による揺れ)と同期した電界変動が観測された。 これまで、地震発生時に電界変動が観測されなかった理由は検波器の時常数が大きすぎたためであること、 地震動に伴う電界変動が常時は観測されなかったのは受信機の帯域幅が狭すきたためであること、地震時及 びその前後に、パルスバーストが発生し(図1参照)、個々のパルスの幅は約4msであることが分かった。そ の後、RFでの波形・スペクトルが観測され、個々のパルスはWave Packetであることか明らかになった。


3.地震前兆電界の発生メカニズム
 地震前の地殻の応力・歪の変化に伴いピエゾ電気やピエゾ磁気が発生し、地電流の変化・電波の放射が起 きると定性的には考えられるが、この考えは、理論・実験・観測で定量的に否定されている。

 発生メカニズムとして次の2種類が考えられる。

 (1)Passive Mechanisim
地震前の震源域では、地殻の比抵抗の急減が観測され、岩石の破壊実験でも、崩壊前の比抵抗の急減が観測 されている。比抵抗の急減は、崩壊前の徴小亀裂(Crack)の発生と同期しており、微小亀裂面(Fresh Surf ace)が良導体となることによる。理由は、岩石中の互いに孤立していた空隙水が亀裂により連なるためであ る。また、亀裂により、亀裂面上に自由電子と正孔が発生して、良導体となることも考えられる。
 地震前の震源域の抵抗が急減すれば、そこを流れている地電流は急変し、電界変動の発生源となる。

(2)Active Mechanisim
上述の様に、岩石の崩壊前に、自由電子と正孔が発生すれば、岩石は半導体であるから、自由電子と正孔の 拡散速度が異なり、亀裂面が帯電し、電圧が発生する。この原理は、太陽電池の起電力と同じで、違いは、 励起エネルギーが機械的か光かだけである。
 地震前兆と言われる@荷電エアロゾルの発生、A発光(夜光)、B地下水の水素ガス濃度の増加、C電離 層擾乱は、帯電で説明できる。@は荷電粒子の地殻の亀裂からの噴出、Aは噴出した荷電粒子の中和、Gは 帯電による水の電気分解、Cは帯電の電界による電離層の擾乱(Luxemburg Effect)であろう。

4.当所の電磁波による地震予知の研究計画
 地震前兆の電磁界が震源域で発生するのならば、発生源を同定して、地震の規模・場所・日時を予知でき る。雷の発生場所の同定と同じ様に、50km程度離れた4箇所以上で電磁界を同時に受信し、受信時刻差に対応 する伝搬距離差が一定の点の軌跡である双曲面を描き、波源を3個の双曲面の交点として求める。波源の位置 のほか、発生強度も相関強度から算出する。これまでの観測データは、マグニチュウド、震度が共に6以上の 地震は、震源域を誤差10km程度、マグニチュウドを誤差1以下で1時間以上前に下記の方法で予知できること を示している。

*震源域は電磁界の発生領域とする。
*マグニチュウドは、パルスの発生領域の広さ・発生数(総数)・発生頻度(時間率)から算出する。

 観測では、1時間では、上記のパルスの頻度(図1参照)は、30倍以上は変わっていないため(地震のエネ ルギーが31.6倍のとき、Mが1増える)、Mの予測値が5になったとき、電磁界の発生領域で、1時間後以降に、 Mが5〜6の地震が起きると予知する。以後、Mの予測値が変わり、大きくなれば、その都度、それに応じて予 知するMを大きくして行く。この様にして行けば、誤差1以下で、Mが6以上の地震は、1時間以上前には予知で きることになる。当室では、上記の方法で、震度6以上の地震は、震源域とマグニチュウドを1時間以上前に 定量的に予知できるシステムの開発を目指している。

(標準計測部時空技術研究室)


図1 北海遺束方沖地典の際のパルス頻度
縦軸は0.134mVよりも大きい1分間のパルス数。横軸は月日。





施設一般公開を終えて


各務 浩二


 8月1日(火)東京は朝から快晴、恒例の研究所施設一般公開の日である。
 本所、支所及び観測所において、午前10時から午後4時まで公開されました。
 さいわいにして全国的に天候に恵まれ、各会場ともに盛況で説明に当たられた職員も対応に大童でした。
 小金井本所においては、「電離層観測コーナー」を初め12コーナー、36項目からなる内容を公開し、鹿島 宇宙通信センターでは5項目からなる内容で独自のチラシを用意し、JR東日本とタイアップして地域の宣伝を 強化して公開を行いました。
 また、平磯宇宙環境センターでは「宇宙の天気予報をめざして」をテーマに5項目を、関西先端研究センタ ーでは10会場で11項目を、そのはか各電波観測所においても独自のアイデアと地域性に合った工夫をこらし ながら盛大に行われました。
 公開当日は、東京は予想どおり気温がどんどん上昇しお昼近くには30度を超え、見学の皆さんには真夏の 炎天下の中を汗をふきふき、各コーナーを一つ一つ見学をして頂き嬉しく感しております。
 各会場の見学者数も年々増し、今年は全体で三千人を超え、特に鹿島、関西においては千人にあと一歩と いう数値の延びを見せ、努力が反映されているものと思われます。
 さらにまた、山川電波観測所においては職員1名、非常勤職員2名という構成のもとで、毎年百名以上の見 学者を迎え、地域性も合わせ準備に当たる職員の努力の一言につきるものと感じられます。
 見学者の内訳を見ると、各会場ともに公務員、会社員が多い傾向にありますが、鹿島、関西においては小、 中、高校生等が多く見られ、特に関西では約百名の主婦層の見学を迎えております。
 年齢別では10〜20歳代が4割を占め、近年の一般公開の主旨から展示パネル、説明等が小、中学生や親子を 対象に工夫されており、小、中学校への勧誘と地域へのPRを強化するとともに更に沢山の方々に見学をして 頂き、研究内容、活動、成果等を公開したいと思っています。また、アンケートでの希望も多い土、日曜日 の公開も検討して行きたいと考えています。
 見学者からは「素人にも分かりやすい展示で大変良く、説明員が非常に熱心で、詳しく説明してくれて好 感が持てる」、「お茶のサービスが多く、また係員の応対が良く、来年が楽しみ、スタッフの皆さん準備も 大変だと思います、ご苦労様です」等の心温まる意見、また「研究分野全般の説明と、実際に研究所で行っ ているテーマの説明の区分が良くわからない」等の厳しい意見、さらには公開曜日及び公開時期等々につい ての沢山の意見を項きまして大変有り難うございました。
 これらの貴重な意見を踏まえ、次回の公開に少しなりとも反映させ、一層皆様のご期待に答えるべく努力 して行きたいと考えております。
 最後に皆様の通信総合研究所への暖かいご支援とご理解を感謝いたします。

(企画部企画課広報係)




▲パソコンを操作する見学者




CRLネットワークの利用


斉藤 義信


 総延長3000km余。これは東京(小金弁市の本所)を中心に北は北海道(稚内市)から南は沖縄(中頭郡中 城村)まで、点在する支所・センタ・観測所を結ぶCRL(通信総合研究所)ネットワークの長さです。各所 ではLAN(Local Area Network)がはられ、それらはWAN(Wide Area Network)によって結ばれています。
 このCRLネットワークは、1986年たった2研究室間のEthernetから始まりました。そして、当初からJUNETに 参加し外部とのつながりを重視してきました。その後、1990年のCSnet、1991年のWlDE、TlSNとの接続、と矢 継ぎ早の外部接続の拡充と共に利用がのびてきました。さらに、ここ数年で多くの機能拡充が行われていま す。その主な例としては、

 ・トラフィック対策と管理分散化のためのサブネット化
 ・FDDI(伝送速度100Mbps)導入による基幹LANのスピードアップ
 ・フレームリレーの採用によるWAN(本所一関西間)の効率的な運用
 ・高速外部接続(IMnetと6Mbpsで接続)

などをあげることができます。さらにメールサーバ、ニュースサーバ、ファイルサーバといったネットワー ク利用に欠かすことのできない各種サービス用サーバが、構築運用されています。
 そしてインターネットとも接続し、利用方法においてもシームレスな利用環境をめざして、以下のような サービスを提供しています。

 @電子メール:個人対個人のメール交換の他に、メーリングリストを使った同報メールが使用できます。 電子メールは、相手の都合(会議中や不在時など)を気にすることなく送信でき、受信したメールは好きな 時に読むことができる、といったメリットがあります。また、業務のペーパーレス化等にも有効であること から、その利用を推奨しています。
CRLのメールアドレスの基本体系は、
<******@Crl.go.jp>
となっており、******の部分に個人名あるいは部署名等のアドレス名が付けられています。

 Aネットニュース:ニュースといっても、特定の放送局があるわけではありません。利用者各人の提供す る情報が記事として見ることができる電子掲示板の一種です。その内容は仕事上のお知らせ、生活や趣味の 情報、はてはジョークに至るまで多岐にわたっています。これら多くの記事は話題毎に“ニュースグループ” と呼ばれるグループに分類され、CRLでは現在、crl.announce、crl.chat、crl.common、crl.netcomp、 crl.testの5ニュースグループがあります。ニュースグループは、必要に応じて作成されます。また、所外の ニュースグループもインターネット経由でCRLに配送され、購読可能です。

 B遠隔操作:他のコンビュータに接続し、そのコンピュータを利用する機能です。CRLネットワークに接 続されているスーパーコンピュータやクライアント/サーバ型の共用マシンをネットワークを介して使用し、 シミュレーション、データ解析、計算結果の可視化などを行うことができます。

 Cファイル転送:遠隔地にあるコンピュータのファイルを自分のコンピュータにコピーしたり、 ディレクトリの表示、ファイル削除をローカルにあるコンピュータから実行する機能です。CRLでは所内向け のファイルサーバを整備すると共に、所外向けAnonymous FTPサービスを行っています。

 DWWW:CRLでは、今話題のWWW(World Wide Web)が運用されています。このサービスには、所内の情報化 のためのデータベースとしてのサーバと、所外に向けてオープンな情報提供用のサーバという2種類運用され ています。このWWWをアクセスするためのクライアントソフトとしては、現在Netscape Navigatorが使い勝手 の面から評判のようです。CRLのホームページはhttp://www.crl.go.jp1/で見ることができますので、一度ご 覧ください。

 E時刻同期:日本標準時はCRLが保持していますが、ネットワーク上のコンピュータの時計をこれに同期さ せるための実験サーバも運用されています。現在、インターネットに対しても、この時刻同期サービスを開 始すべく、共同研究が進行しています。
これらの利用状況を1日の例で見ると、メール3000通以上、WWWアクセスは約1000アクセスにものぼっていま す。今後、ネットワークの利用は、

 ・telnet、FTP、ニュース、情報検索の機能を包括したソフトの登場
 ・ネットワークを利用した共同研究の増加
 ・ネットワークヘの接続端末の急激な増加
  (4年間で200台から1200台へと6倍増)

といった背景から、さらなる増加が見込まれています。このような状況に対応するため、担当部署としては 利用範囲の拡大、使い勝手の改善、情報の提供などに日夜努力しているところであり、今後とも皆さんのご 協カをお願いします。

(企画部技術管理課)




<研究支援シリーズ>

CRLジャーナルのSGML化

今井 雄司

 「SGML」、はじめて聞く方が多いのではないでしょうか。それとも取引の電子化、標準化で最近話題にな っているCALSのなかに見かけたという人もいるかもしれません。
 Standard Generalized Markup Languageの頭文字をとってSGMLとなります。1986年に国際標準化機構(IS O)によって標準化された文書記述言語です。1992年には日本工業標準(JlS)化もされました。
 論文は研究者の汗と努力の結晶です。その成果をできるだけ多くの人に、早く知らせたい、と私達出版係 はつねづね思っています。いまは原稿が電子化されているのだから、印刷物だけでなくデータベースに蓄積 し、ネットワークで公開できないだろうか。業務の効率化の方法はないだろうかと模索、検討してきました。 電子出版といっても、ソフトによって互換性がなく、数式や図・表処理などにも問題がありました。
 このようななかで3年前に出全ったのが、SGMLでした。魅力は、国際標準ということ。個々のアプリケーシ ョンに依存しない汎用的なシステムを構築できる。データベース化、ネットワークで利用出釆るということ でした。
 SGMLは文章の構造をもとに、”これはタイトルです”、”これは本文です”とマークを付けます。研究論 文は、文章構成が決まっており、また、文章や図表の再利用が度々あるなどSGML化にぴったりです。図1は SGMLでマークアップしたCRLジャーナル論文の例です。
 最近、日本の産業界は米国国防総省生まれのCALSが話題となっています。ネットワークでの電子商取引き のための国際標準化に遅れをとるなどの動きです。そのなかで、仕様書やマニュアルなど各種ドキュメント 類は、SGMLで処理するとしています。また、日本の科学技術情報のデータベース化と情報提供をしている学 術情報センターは、学会に論文のSGML化を呼びかけています。
 研究者にとっていまやインターネットは目、耳です。そのインターネットにゆくゆくはCRLジャーナルと季 報を乗せたい。また、CRLジャーナルの付加価値を高めるひとつとして、研究者がCRLを卒業するとき、投稿 論文を再編集のうえ上装製本し贈呈したいと等と夢見ています。
 夢が正夢となりますよう研究者、職員のみなさまの引き続くご支援よろしくお願いし、話をおわります。

(企画部 技術管理課 出版係長)




図1 CRLジャーナル SGMLマークアップの例





New Leader


関西支所知的機能研究室長

井佐原 均

 4月に通商産業省工業技術院電子技術総合研究所知能情報部自然言語研究室という長〜い名称のところから 、郵政省通信総合研究所関西先端研究センタ一知的機能研究室(やっぱり長い)に着任致しました。大学を 出てから、ずっと筑波にいたのですが、研究室から外を眺めると、田園の向うに筑波山が見えるという長閑 を絵に書いたような風景でした。関西に来ても、窓の外は瀬戸内海と淡路島、それに明石大橋と、風景の長 閑さでは、いい勝負のようです。
 専門は自然言語処理全般で、特に機械翻訳、日本語理解、知識表現の研究をしてきました。CRLでも引続き 、自然言語処理技術の様々な応用について研究をしていく予定です。9月号で別途紹介します知的ニュース・ リーダもその一つです。
 電総研という別の国立研究所でのこれまでの経験が、研究に限らず何らかの形で通信総研でお役に立てば 良いなと思っております。
 まだまだ、不慣れなことが多く、皆さんのお世話になることか多いかと思いますが、今後ともよろしくお 願い致します。

最近ちょっと調子の悪かった愛車の前で


総合通信部超高速ネットワーク研究室長

北山 研一

 6月28日にNTT光ネットワーク研究所(横須賀)から参りました。NTTでは、光通信や光信号処理の研究をやっ てきました。CRLで光通信の研究の立ち上げに、徴力ながらお役に立ちたいと思っております。後発で厳しい 状況ですが、国立研究所のミッションを果たしながら、近い将来文字通りキラリと光る存在になれると信じ ています。しっかりとした礎を築いてバトンタッチすることが、私の役目だと考えています。
 大学を出て19年経ちますが、ようやく最近研究の醍醐味というのは、概念の創造や新しい現象の発見を工 学し、それに自分自身の主張を盛り込み世の中に問いかけることにあると感じるようになりました。まだカ ルチャーの違いに戸惑うこともありますが、いまは新鮮な気分で気持ち良く仕事をやらせて項いています。 CRLは組織の風通しがよく、意思疎通が図り易いという感じがします。それに皆さんが親切でホンワリとした 暖かい雰囲気を感じます。研究所として適正規模かなと思います。
 出は関西。現在は江の島の近くに居を構える自称湘南(オールド)ボーイです。家族は妻1人、娘2人、趣 味は「晴走雨読、時にはワイン&料理」。

今日もビールがうまいゾ…


総合通信部映像情報研究室長

飯作 俊一


 6月28日付けで、総合通信部高度映像情報研究室に配属になりました。こちらに来る前は、KDDの研究所で ネットワークアーキテクチャ、マルチメディア通信システム等の研究開発を行っておりました。数学的な理 論検討から、アプリケーションの開発、システム間の接続実験まで一通りたずさわってきたので何でも屋と いった感じです。出身は詩の町・恋の町で有名な札幌で大学までのんびりと過ごしました。趣味は、北国育 ちのせいかウインタースポーツです。スキーには自信がありますが、最近は仕事の忙しさにかまけてすっか りご無沙汰しています。家族構成は、かなり年下の妻一人と息子二人です。なお、小生もご多分に漏れずあ まり家族をかえりみない旧人類の一人です。