情報通信基盤技術の研究開発計画



塩見 正

通信総合研究所では、平成7年度から6か年計画 で情報通信基盤技術の研究開発計画という新しいプ ロジェクトを開始した。その背景や目的、計画の概 要、推進体制について紹介する。

情報スーパーハイウェイ
アメリカのクリントン政権が1993年2月にシリコ ンバレーで打ち出した情報スーパーハイウェイまた はNII(National lnformation lnfrastructure)の 整備、さらにはGII(Global II)構築の提唱は、情 報文明時代のキー概念として世界中に大きな流れを 引き起こしている。
わが国でも、この流れに並行して1994年には郵政 省の電気通信技術審議会の「将来のマルチメディア 情報通信技術の展望」、および電気通信審議会の「21世紀の知的社会の改革に向けて一情報通信基盤整備 プログラムー」が相次いで答申された。内閣レベル でも「高度情報通信推進本部」が設置された。
同時に、「マルチメディア」や、「インターネット」 などの新しい情報システムヘの世間の注目か一気に 高まっており、関連業界の活動もさかんである。梅 樟忠夫が30年以上前に情報産業論を発表して以来、 様々な形で情報社会について論じられてきたが、こ の間の通信技術、コンピュータ技術、情報処理技術 などの飛躍的な発展で、マルチメディア情報通信が いよいよ現実的なターゲットになってきたのである。

研究関発計画の目的
このような背景の下で本研究開発計画は、電気通 信審議会答申で掲げている情報通信基盤整備推進の 一環として、次の3つを目的として実施する。
(a)マルチメディア情報通信に関する基礎的・汎 用的技術の研究開発


図1研究関発の全体概要(3つの分野)

(b)情報通信基盤整備の牽引力となることが期待 される公的アプリケーションの基盤技術の研究開発
(c)産、学、官、ユーザの幅広い連携や共同によ る研究開発

研究開発計画の内容
研究開発分野は、図1に示すように超高速ネッ トワーク、ユニバーサル端末、及び高度情報資源伝 送蓄積の3つにひろがっている。さらに図2のよう に7つの研究課題(または技術領域)からなっている。

超高速ネットワーク分野においては、

超高速ネットワーク分野
 a. ネットワーキング技術
 b. 光通信技術
 c. 移動通信技術
 d. 衛星通信技術

ユニバーサル端末分野
 e. 汎用・福祉型情報端末技術
 f. 認識機能技術

高度情報資源伝送蓄積分野
 g. 超高精細映像生成・圧縮・伝送および
  大容量インテリジェント蓄積・検索技術

図2 3つの研究分野と7つの研究課題(a〜g)

a.ネットワーキング技術で、多数の事業者(マ ルチキャリア)による通信網、CATV網、コンピ ュータ網などの異種・異メディアのネットワークを、 十分な品質を保持しつつ接続・融合する基盤技術の 研究開発を行う。
b.光通信技術で、テラビット(Tbps、すなわ ち1000Gbps)級の超高速通信をめざし、符号多重 や波長多重を組み合わせた超高速光通信技術の研究 開発を行う。
c.移動通信技術では、移動系における超高速の マルチメディア情報通信を実現するため、ミリ波帯 を想定した100Mbps程度の超高速移動通信技術の 研究開発を行う。
d.衛星通信技術では、マルチメディア情報を高 速に伝送できるギガビット(Gbps)級の伝送能力 をもつ超高速衛星通信技術をめざし、広帯域衛星中 継および衛星交換、通信方式などの研究開発を行う。

ユニバーサル端末分野においては、
e.汎用・福祉型情報端末技術(図3)で、高齢 者や障害者も含めて多様な社全層に対応できる、人 にやさしい情報端末の基盤技術の研究開発行う。特 に、視聴覚の障害を持つ人のための情報入出力技術 の研究開発を行う。
f.認識機能技術では、人間の認識機能の研究お よびこれを補完する技術の研究を行う。情報端末技 術は高度なヒューマンインターフェース機能を必要 とし、人間の認識機能の問題につながる。人が音声 や映像から情報を得る時の脳の活動過程の計測の 切り口から研究を進める。


図3 汎用・福祉型情報端末技術の研究開発


高度情報資源伝送蓄積分野においては(図4)、
g.超高精細映像生成・圧縮・伝送および大容量 インテリジェント蓄積・検索枝術では、医療、印刷、 教育等の分野で重要な役割を果たす超高精細映像 (4首万画素以上)をリアルタイムで生成(撮影) する技術、及びこれを圧縮伝送する基盤技術の研究 開発行う。
また、磁気ディスク、光ディスク、磁気テープな ど大容量の記憶メディアの協調処理、内容を分類す るインデクシング、分散設置されたデータベースに 対する情報検索などの技術について研究開発を行う。


図4 高度情報資源伝送蓄積技術の研究開発


研究開発の進め方
本研究開発は、6か年計画(平成7年度は建物建 設を含めて20億円)で実施する。
本計画の推進においては、研究計画の拡充や評価 などに関して産学官等の識者の助言をいただくとと もに、個々の研究課題については、民間や学界との 共同研究を積極的にすすめることとしている。既に 十社を越える民間企業等との共同研究や研究者の受 け入れなどが進行中である。
研究センター
本研究開発を実施するために、通信総合研究所(C RL)に研究センターを設置する。このセンターは、 産学官およびユーザ等の連携も含めた体制による研 究開発の拠点とする考えである。 本研究開発計画は通信総合研究所の研究領域をさ らに大きく広げるものである。また、柔軟で新しい 研究システムによる対応が必要である。従来の枠組 みにとどまらず、次のスローガンをかかげて計画推 進をはかることとしている。

5つのスローガン(CHlEF)
Challenge新しい試み
Humanism人を重視
Ideas知恵を集める
Embrace包容性
Flexible柔軟性

おわりに
研究開発の成果の発信は、学会やシンポジウムな どの場だけでなく,公開実験などの形でも行い、幅 広い成果交流をめざしたい。また、研究開発の状況 について研究開発ニュースなどの形での情報発信も 行う予定である。
関係方面の一層のご理解、ご支援をお願いすると ともに、研究開発についてのご意見や共同研究のご 提案などもお寄せいただければ幸いである。

(総合通信部長)




無入飛行船へのマイクロ波送電駆動実験


−手作りレクテナで飛行船が飛んだ−


藤野義之


通信総合研究所では平成元年から、成層圏無線中 継システムの研究開発を推進するために、マイクロ 波送電技術に関する研究開発を行ってきました。今 までにMlLAX(マイクロ波駆動小型模型飛行機実 験)やMETS(宇宙空間でのマイクロ波送電実験)等 を行うことで、当該技術の研究開発に関する成果を 挙げてきました。
今回の無人飛行船のマイクロ波送電による駆動計 画はETHER(Energy Transmission to a High a ltitude long endurance airship ExpeRiment)計 画といい、通信総合研究所、機械技術研究所、神戸 大学および(株)エイ・イー・エスの産官学四者の 共同研究として推進されました。この目的はマイク ロ波電力伝送により飛行船を滞空させる実験を通じ て、マイクロ波送電と空中プラットフォームの2つ の基礎技術を確立することでした。共同研究の具体 的な分担は通信総合研究所がマイクロ波受電用レク テナの開発、機械技術研究所が飛行船の設計、神戸 大学がマイクロ波送電系と追尾系の開発、(株)工 イ・イー・エスか飛行船の製作と運用となりました。
また、ETHER計画は1995年10月に神戸で開催さ れた国際会議WPT'95(Wireless Power Transmis sion Conference、無線送電に関する国際会議)の 中のデモンストレーションの一環でもありました。 この全議は1993年より開始された国際会議で、今回 で第2回目です。会議は神戸の街を見おろす高台に ある神戸大学滝川記念会館で行われ、無線送電技術 の各方面からの専門家を一同に集め、当該技術の発 展と応用に関して真剣な議論が行われました。会議 の日程は10月16日から10月19日で、この2日目の10 月17日にETHERの公開飛行実験が計画されました。 公開飛行実験の実施場所は会議場から車で1時間ほ どのところにある通信総合研究所の関西先端研究セ ンターと決定しました。


写真1  ETHER実験用レクテナ


実験は地上に置かれたパラボラアンテナから電子 レンジと同じ周波数である2.45GHz、10kWの電力 を送電し、飛行船の下部に取り付けられたレクテナ から直流出カを取り出し、これを飛行船の推進器の 駆動に使用するというものでした。この飛行船は全 体として空気より重いので、常に下向きに推力を出 していないと滞空ができません。このため、電力を マイクロ波で供給し、空中で静止することが今回の 実験の目標でした。マイクロ波送電による飛行船の 駆動実験は世界でも初の試みです。


写真2 マイクロ波で滞空中の飛行船
('95.10.16)


今回のマイクロ波送電実験と前回の模型飛行機実 験(MlLAX実験)の最大の違いは、実験規模が大幅 に大きくなったことです。前回の出力電力は約100 Wで、この電力では電球1個を灯すのがやっとでし たが、今回の出力電力は5kWと1桁以上大きな規 模となり、一般家庭2軒分の送電電力となりました。 当研究室では、この目標を将来のマイクロ波送電技 術を実用化するに際して乗り越える必要のある関門 であると考えて、積極的に参加することとしました。
ここで、CRLで担当したレクテナについて簡単 に紹介します。レクテナは空間に飛んできた電磁波 をつかまえて電気に変える装置であり、電波をつか まえるためのアンテナとつかまえた電波を直流に変 換する整流回路からできています。
実験では新しく二重偏波用のレクテナを開発しま した。二重偏波とは送電アンテナから水平偏波と垂 直偏波の二偏波を同時に出力する方式で、これによ っレクテナ面積あたりの送電電力を2倍とすること ができます。このための受電用レクテナとして、水 平、垂直の二点の給電点をもつマイクロストリップ アンテナに水平、垂直偏波に対応した2個の整流回 路を持つ新しい構成を考案しました。
また、レクテナは飛行船へ搭載するため軽量化も 目標となりました。前回の飛行機実験でもかなりの 軽量化がはかられてましたが、出力電力1Wあたり の重量をもっと軽くする必要がありました。軽量化 を図るためにアラミドハニカムを中心に使用し、こ れを薄いBTレジン基板とガラスクロステフロン基 板でサンドイッチする構造で、レクテナ全体の重量 は22.8kgとなりました。出力電力あたりの重量は 3.8g/Wとなり、前回の試験時の11g/Wの3分の1 の軽量化を達成しました。
飛行船の全長は16m、最大径は6.6mであり、こ の下部に直径3mのレクテナを搭載することとしま した。また、想定される飛行高度は50mとして、以 降のマイクロ波送電系の設計を行いました。神戸大 学が担当した送電器は5kWのマグネトロンを2台 使用し、送電アンテナはパラボラアンテナを使用し ました。アンテナ直径は3mで、水平偏波と垂直偏 波の二重偏波を励振し、レクテナ直径の中にその7 0%の電力を当てることを目標としました。また、 送電アンテナには飛行船を追尾するためのテレビカ メラとアンテナの駆動装置が取り付けられています。
CRLのレクテナの開発目標は、直径3mのレク テナ面に7.5kWのマイクロ波があたったときに5k Wを取り出すことでした。レクテナ1素子あたり の平均入力電力は5Wで従来の約5倍程となり、こ の電力で効率よく整流を行うことができる整流回路 を開発しました。
1素子のマイクロストリップアンテナの大きさは 約9cm×9cmであるので、直径3mの領域を全てこ のアンテナで覆うためには約1000素子のアンテナが 必要となります。この大きなアンテナを飛行船に搭 載するために、20素子のレクテナをまとめて1枚の パネルを作成しました。これらのパネルを予備も含 めて60枚、合計1200素子のレクテナを搭載すること にしました。このレクテナの全体の大きさは2.7m ×3.4mとなりました。これを写真1に示します。
このようにしてできた60枚のパネルを飛行船に搭 載するため、ベルクロテープでできたネットで全て のパネルを包み、ケブラー製の紐を使って飛行船下 部の座帯に釣ることでレクテナがなるべく平面とな るように工夫しました。
レクテナはCRLの予算事情により、一括して製 作を引き受けていただけるメーカーが見つからなか ったため、「手作り」となりました。担当者はレク テナパネルの半田づけ等の膨大な作業をどのように 処理するか頭を悩ませましたが、幸いにも半田づけ のみを担当していただける工場が見つかったために、 担当者自ら20素子レクテナパネル60枚の組立を行う 必要はなくなりました。
出来上がったレクテナパネルの動作確認は電波を 完全に遮蔽できる電波暗室の中で1枚づつ行われま した。実験は送電アンテナと20素子パネルを対向さ せて出力電力と効率を測定しました。この試験によ って20素子パネルで約100Wの出力が出てくること を確認しました。この試験を60枚パネル全てについ て行った結果、全部の合計で5.9kWの出力となり ました。また、レクテナの直流変換効率は目標値で ある70%を上回ることを確認しました。これは、今 回の実験の最初のステップとしては、満足できるデ ータであると考えました。
試験の終了したレクテナパネルはETHERの予備 実験のため、工業技術院筑波第二研究センターに輸 送されました。ここには飛行船の格納テントがあり、 神戸での本番の飛行実験の前に、予備的なデータを 取得する目的で筑波での実験を行いました。特に実 験場は神戸よりも筑波の方が広く、筑波での予備実 験と手順の完熟は何よりも重要でした。
筑波での実験は8月から9月にかけて行われまし た。このころの天候は概ね安定しており、連日たい へん暑い日々が続いていましたが、飛行船の飛行に 何より重要なファクターである風が強い日が多く、 悩みの種となりました。風の止まることは明け方に 多く、このため、飛行試験が予定されている日は、 午前5時に第ニセンターに集合ということになりま した。これが思いのほか生活のリズムを乱し、実験 班の疲労を増加させました。また、飛行船の飛行実 験にはかなつの人数が必要で、人手が足りなかった ときには私の指導する研修生2人ばかりでなく、当 部の他の研修生や共同研究の関係のある日産自動車 (株)の方にもお手伝いをお願いしました。筑波で の試験は予備試験ということで、飛行船を使ったア ンテナパターンの取得、レクテナの飛行船への取り 付け方法のチェックやレクテナにダミー負荷を接続 したときの最高送電電力の取得等に力が注がれまし た。また、レクテナを推進器に接続し、回転を確か める試験も行われましたが、送電アンテナが飛行船 を追尾することが困難で、マイクロ波送電された電 力での空中静止を確認することはできませんでした。 筑波では最後に関係者公開を行い、スケジュールの 都合もあって、9月7日の実験を最後に撤収しまし た。
関西先端研究センターでは9月下句からレクテナ の組立や送受電データの取得などの作業を始めまし た。この作業の中で、送電アンテナがフルパワーを 出力したとき、レクテナ出力として約3kWの出カ を確認しました。これは予定電力よっは低いものの、 推進器が滞空のための推カを発生できる電力でした。
関西先端研究センターでのETHERのリハーサル はスケジュールの都合でWPT'95の第1日目である 10月16日に行われました。この日は午後に風がとま っ、飛行船を飛ばすためには絶好の条件となりまし た。これまで風が強くて飛行実験にはたいへん苦労 してきましたが、この苦労が嘘のように、飛行船は パラボラアンテナの上空35-45mに滞空し、全く動 く気配がありませんでした。飛行船の離陸と上昇の 為の電源は地上に置いたバッテリーから長い電線で 給電していたのですが、安定した飛行の様子をみて、 地上のバッテリーからの給電をレクテナからの給電 に切り替え、飛行船の推進器ヘマイクロ波送電され た電力を供給しました。この結果、推進器が勢い良 く回転し、定点に滞留し、さらに上昇しようとしま した。このようにして、3分間の連続した定点飛行 に成功しました(写真2参照)。また、2度目のり ハーサルでは前回よりもやや風が強く、レクテナの 追尾がやや困難な所もありましたが、連続して2分 半、断続的には4分15秒の定点滞留に成功しました。 実験終了後、皆と手を取り合って成功の喜びを分か ち合いました。
翌17日の本番は晴れてはいるものの風が強く、飛 行船の飛行条件としては厳しい条件でした。しかし、 日程を変更するわけにいかないので、午後の待機可 能な時間ぎりぎりまで待って実験を行うこととしま した。強風の中、飛行船は飛行し、滞空できる位置 まできましたが、マイクロ波での推進器の回転は確 認できませんでした。しかしながら、飛行船の下部 に取り付けてある電球が光り、マイクロ波送電を行 っているところを確認することができました。飛行 後、マイクロ波受電系に強風が原因と思われるトラ ブルが生していることが分かりました。推進器は回 らず残念な結果となりましたが、マイクロ波送電を 行っているところは電球の発光によって確認したた め、参加者一同満足して帰って頂いた様子でした。
今回のETHERのデモンストレーションはかなり 良いところまで行きながら、完壁な成功を収められ ず悔しい思いをしましたが、レクテナの受電効率な どのデータは満足いくものが取得でき、この点では 大きな成果が収められたものと考えています。
今後、通信総合研究所では当該技術の更なる発展 を目指して研究を継続する予定です。皆さんのご支 援をお願いする次第であります。

(電磁波技術部通信デバイス研究室)




平成7年度庁舎建設計画と
庁舎管理について


田中 邦治

1 はじめに
通信総合研究所本所は、現在約12万m2(3万6千 坪)の敷地と1から4号館までの総合研究庁舎、共 用実験庁舎及びミリ波構内実験棟などの各種実験庁 舎及びその他附帯建物等を含め建物総面積(延べ面 積)3万2千m2、52棟の建物が配置されています。
なお、平成7年度はマルチメディア研究センター の新築、COE実験研究のための宇宙光地上センタ 一の増築、それに加えマルチメディア研究センター が竣工するまでの間実験研究機器等を収容する建物 として、1及び2号館の間に2階建て900m2血の仮設 研究棟を、また、関東支所(鹿島)においては衛星 通信研究センターを建設することとなっています。
総務部全計課においては、庁舎等の建設計画、国 有財産の管理及び庁舎等における秩序の維持及び業 務の正常な遂行等のための庁舎管理を所掌していま す。
そこで、庁舎建設計画と庁舎管理についての概要 をまとめてみました。

2 庁舎の建設計画
(1)マルチメディア研究センターの概要
社会的要請がきわめて強い情報通信基盤技術の研 究開発に、平成7年度当初予算の特別枠により20億 円の予算が認められ、また、第1次補正予算により 130億円の情報通信基盤技術関連の予算が認められ たことから、これら実験研究のための庁舎が必要と なり、マルチメディア研究センターの名称で、建設 省に支出委任しました。

@建物の規模 鉄筋コンクリート造り4階建て、約6,000m2
実験室 約2,300m2
事務室・研究室等 約1,300m2
玄関・ロビー等 約 300m2
その他共通部分 約2,100m2
A建設場所別図1
(4号館総合研究庁舎隣接西側)
B完成予定平成9年3月末
なお、当該建物は当所の情報通信関連研究活動を 効率的に集約しマルチメディア時代の当所の新しい 顔にふさわしい内容・外観となるよう次の内容を建 設省に依頼しました。
@玄関ロビーを吹き抜けにし、12面ビデオウォ ールプロジェクションシステムを設置すること。
A展示コーナを設けること。
B4階に大画面3面スクリーンを配した実験室 兼用小ホールを設けること。
C4号館ホワイエに通ずる渡り廊下を設けるこ と。
D研究室は南側、実験室は北側に配置すること。
E実験室及び研究室共フリーアクセス床とすること。
現在、当所の意見を取り入れた実施設計の請負契 約が10月18日に締結され、平成7年度第4四半期に 建築等の工事契約を行うべき準備が進められていま す。


図1 マルチメディア研究センター建設場所図


(2)関東支所(鹿島)街星通信研究センターの概 要
平成7年度第1次補正予算により超高速衛星通信 技術及び高速高品質マルチメディア通信研究開発の 予算が認められたことから、これら実験研究のため の庁舎が必要となり、衛星通信研究センター(研究 本館)の名称で建設省に支出委任しました。

@建物の規模
鉄筋コンクリート造り2階建て、約3,600m2
実験室 約700m2
研究室等 約900m2
大会議室・玄関等 約500m2
その他共通部分 約1,500m2
A建設場所 別図2(研究事務庁舎隣接南側)
B完成予定 平成9年3月末

なお、当該庁舎は鹿島宇宙通信センターのメイン となる建物であり、中庭、インテリジェント化大会 議室等、当所の意見を取り入れた実施設計の契約を 行うべき準備が進められています。


図2 衛星通信研究センター(研究本館)建設場所図


(3)宇宙光通信地上センター増築の概要
COE化対象機関に選定された「先端的光通信・ 計測に関する研究」を推進するための、クライオジ ェニック実験室及びアダプティブ光学実験室等の5 実験室を収容する宇宙光通信地上センターの増築が 必要となり、工事契約の締結を10月12日に行いまし た。
@建物の規模 軽量鉄骨平屋建て、約600m2
A建設場所 別図3
(宇宙光通信地上センター西側接続及び北側)
B完成予定 平成8年3月末


図3 宇宙光通信センター増築場所図


3 庁舎管理について
庁舎管理の事務は、郵政省庁舎管理規程で、施設 の使用許可等の「秩序の維持」、所内の巡視・受付 等の「犯罪の防止」、庁舎使用区分の制定等の「業 務の正常な遂行」、庁舎内外の清掃等の「清潔の維 持」、防火防災の計画・実施等の「災害の防止」が 定められています。
広大な敷地と研究に必要な多数の建物・工作物が ある当所は、この施設を有効、かつ、研究活動に支 障のないよう管理していますが、工事の開始に伴い、 工事現場への立入禁止、工事車両の通行のため道路 の使用制限等様々な制約を行うこととなります。 現在においても招聴研究者、研修生等多くの方か 職員と共に研究活動を行っており、また、予算の増 加に伴って契約等の打ち合わせのための来訪者が増 大し、その上多数の工事関係者の出入りが重なるこ ととなり、秩序の維持等の庁舎管理が難しくなるこ とが予想されます。
更に、通信総合研究所における研究分野の拡大、 産・学・官の共同研究の必要性の増大に伴い、ます ます人の出入りが多くなることが予想され、このこ とは、研究開発の推進の面からは歓迎すべきことで すが、同時に研究者の疎遠化や侵入者による事故・ 犯罪も懸念されます。
そこで、職員、来訪者を問わずの身分証明書の提 示やネームプレートの義務づけ等々の対策を講ずる 時期に来ていると思われます。
なお、将来の庁舎管理は、自由で自然環境に恵ま れた当所の良さを損なうことのない、IDカードを 利用した電子錠や赤外線を利用した機械警備等セキ ュリティシステムの充実を図る必要があることから、 職員の意見も取り入れながら今後検討したいと思い ます。

(総務部会計課)










短信



日本標準時のうるう秒調整について

標準電波等を用いて、当所が決定する「日本標準 時」をお知らせしておりますが、日本時間で平成8 年1月1日午前9時(協定世界時1996年1月1日0 時)の直前に国際間の申し合わせにより、「うるう 秒」挿入を実施することになりました。
すなわち、日本時間で、平成8年1月1日は、午 前8時59分59秒の後に、8時59分60秒があり、9時 0分0秒となるわけです。
これは、1秒の定義(セシウム原子の超徴細遷移 周波数に基づく)による時系(原子時系)と地球の 自転に基づいた時系(世界時)との差を0.9秒以内 に保つために実施するものです。
地球の自転は、海洋や大気循環の影響などで、30 万年に1秒しか狂わない原子時に比較すると数桁不 安定なものであり、現在、遅れる方向にあります。 このため、「うるう秒」調整を実施し、1秒の間 隔は原子時に基づき、時刻を地球自転に合わせるた めの調整を行うわけです。
今回の「うるう秒」調整は20回目にあたるもので、 前回は1994年7月1日に実施されました。

今江理人(標準計測部周波数標準課)



ミリ波屋内伝搬に関する成果
   ITU-R新規勧告案へ


ITU−R WP3K(議長は米国NTlA/ITSのH aakinson氏で、陸上移動通信・地上放送に関する 伝搬を所掌)の会合が、英国オックスフォード市セ ントアン・カレッジを会場として、平成7年9月20 日から26日の間開催され、これに出席した。
本会合においては、パーソナル無線通信や無線L ANなどの新しい無線通信システムのためのUHF 帯からミリ波帯にわたる近距離伝搬(屋内、屋外、 屋内外間)に関する勧告案を作成すること、VHF・ UHF帯陸上移動及び地上放送伝搬に関する勧告の 改善を図ることが、主要な議題であった。各議題に ついて審議の進展があったが、特に近距離伝搬に関 して、屋内伝搬に関する新規勧告案が作成されWP 3Kとして承認されるという成果があった。
近距離伝搬の課題に関しては、平成6年9月の米 国ボルダー市での会合、平成7年1月のジュネーブ 市での会合を経て、新規勧告案作成へ向けての作業 文書の充実化が図られてきていた。当所からは、ミ リ波構内通信システムの研究開発計画の一環として 実施している60GHz帯屋内伝搬実験の成果を、前 回のジュネーブ市での会合に寄与するとともに、 引き続き今回の会合にも寄与した。これらは、60G Hz帯屋内マルチパス伝搬の偏波依存性・受信アン テナ指向性依存性、各種建材の60GHzから100GHz 帯にわたる複素屈折率の測定結果に関するものであ る。当所からの寄与は、会合での審議において有用 なものとして高く評価され、900MHzから100GHz の周波数帯における屋内近距離伝搬に関する新規勧 告案に適切に反映された。また、勧告起草グループ 議長の一人として同勧告案作成作業にも貢献した。
今回の会合においては、屋内、屋外、屋内・屋外 間の近距離伝搬の課題のうち、最も検討の進んでい る屋内伝搬にまとを絞って新規勧告案が作成された。 今後は、パーソナル通信等の屋外近距離伝搬等を含 めた勧告化が必要とされており、引き続き我が国か らの寄与が期待されている。

井原俊夫(電磁波技術部 総括主任研究官)






「New Leader」



電磁波技術部
総括主任研究官
太田 浩

通総研の松井さんとは、五十嵐隆物性応用研究室 長時代以来、3回の振興調整費で延べ15年近く、一 緒に仕事をさせて項きました。その間、科技庁に出 向していた篠塚さん、岡沢さん、雨谷さん、丸山さ んなどのお世話になりました。研究予算がなくて拡 散ポンプやパルプを消耗品で買い集めてニオブ用の スパッタ成膜装置を自作していた時期でしたので、 この振興調整費は本当に役立ちました。理研で電子 顕微鏡を電子ビーム露光装置に改造するなどして、 集積回路のサブミクロン微細加工を達成してミリ波 検出器を作製しました。
このミリ波ミキサーを用いて、負性抵抗による中 間周波数出力の増幅を観測して、1983年に太田、松 井、五十嵐等の連名で論文にしました。この負性抵 抗は電子の波動としての性質によることが最近明ら かとなり、関連する我々の論文が Physical Revie wや Physical Review Letters の理論の論文に引 用されるようになりました。学間的にも応用上も重 要な(ミクロとマクロの中間の)このメゾスコピッ クと呼ばれる系の研究を今後も発展させたいと思っ ています。先日、昼休みにジョギングで行った小金 井公園でジュウタンを敷き詰めたような花壇を見る ことができました。


K.K.Likharev教授と理研実験室の筆者


関西支所
知覚機構研究室長
澤井 秀文

この度10月1日付けで関西支所知覚機構研究室の 室長として着任致しました,澤井秀文です.どうぞ よろしくお願い致します.自己紹介を兼ねて,これ までの略歴と今後の抱負について述べたいと思いま す.
大学では主に電気工学を専攻し,大学院で一般相 対論の理論的な研究を行いました.その後,民間企 業(リコー)に就職し,入社後は中央研究所や情報 通信研究所等で主として音声認識の開発研究や人工 知能関連の基礎研究に従事しました.この間,AT R自動翻訳電話研究所や米国カーネギーメロン大学 機械翻訳研究所などで,音声翻訳電話のプロジェク トにも参加しました.数年前に日本,米国とドイツ の間で国際回線を使った音声翻訳実験の様子が民放, NHK,CNN等でも放映されたので記憶に新しい 方もいらっしゃるでしょう.
さて,CRLに入戸斤後の研究テーマは,人間や生 物の持つ優れた知覚情報処理メカニズムに学びつつ, 得られた知見を積極的に生かして,新しい情報処理 パラダイムを構築することであります.関係各位の ご支援,ご鞭燵をお願い致します.


メリー・クリスマス