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ユニバーサル端末分野
高度情報資源伝送蓄積分野 |
図3 汎用・福祉型情報端末技術の研究開発
高度情報資源伝送蓄積分野においては(図4)、
g.超高精細映像生成・圧縮・伝送および大容量
インテリジェント蓄積・検索枝術では、医療、印刷、
教育等の分野で重要な役割を果たす超高精細映像
(4首万画素以上)をリアルタイムで生成(撮影)
する技術、及びこれを圧縮伝送する基盤技術の研究
開発行う。
また、磁気ディスク、光ディスク、磁気テープな
ど大容量の記憶メディアの協調処理、内容を分類す
るインデクシング、分散設置されたデータベースに
対する情報検索などの技術について研究開発を行う。
図4 高度情報資源伝送蓄積技術の研究開発
研究開発の進め方
本研究開発は、6か年計画(平成7年度は建物建
設を含めて20億円)で実施する。
本計画の推進においては、研究計画の拡充や評価
などに関して産学官等の識者の助言をいただくとと
もに、個々の研究課題については、民間や学界との
共同研究を積極的にすすめることとしている。既に
十社を越える民間企業等との共同研究や研究者の受
け入れなどが進行中である。
研究センター
本研究開発を実施するために、通信総合研究所(C
RL)に研究センターを設置する。このセンターは、
産学官およびユーザ等の連携も含めた体制による研
究開発の拠点とする考えである。
本研究開発計画は通信総合研究所の研究領域をさ
らに大きく広げるものである。また、柔軟で新しい
研究システムによる対応が必要である。従来の枠組
みにとどまらず、次のスローガンをかかげて計画推
進をはかることとしている。
5つのスローガン(CHlEF)
Challenge新しい試み
Humanism人を重視
Ideas知恵を集める
Embrace包容性
Flexible柔軟性
おわりに
研究開発の成果の発信は、学会やシンポジウムな
どの場だけでなく,公開実験などの形でも行い、幅
広い成果交流をめざしたい。また、研究開発の状況
について研究開発ニュースなどの形での情報発信も
行う予定である。
関係方面の一層のご理解、ご支援をお願いすると
ともに、研究開発についてのご意見や共同研究のご
提案などもお寄せいただければ幸いである。
(総合通信部長)
写真1 ETHER実験用レクテナ
実験は地上に置かれたパラボラアンテナから電子
レンジと同じ周波数である2.45GHz、10kWの電力
を送電し、飛行船の下部に取り付けられたレクテナ
から直流出カを取り出し、これを飛行船の推進器の
駆動に使用するというものでした。この飛行船は全
体として空気より重いので、常に下向きに推力を出
していないと滞空ができません。このため、電力を
マイクロ波で供給し、空中で静止することが今回の
実験の目標でした。マイクロ波送電による飛行船の
駆動実験は世界でも初の試みです。
写真2 マイクロ波で滞空中の飛行船
('95.10.16)
今回のマイクロ波送電実験と前回の模型飛行機実
験(MlLAX実験)の最大の違いは、実験規模が大幅
に大きくなったことです。前回の出力電力は約100
Wで、この電力では電球1個を灯すのがやっとでし
たが、今回の出力電力は5kWと1桁以上大きな規
模となり、一般家庭2軒分の送電電力となりました。
当研究室では、この目標を将来のマイクロ波送電技
術を実用化するに際して乗り越える必要のある関門
であると考えて、積極的に参加することとしました。
ここで、CRLで担当したレクテナについて簡単
に紹介します。レクテナは空間に飛んできた電磁波
をつかまえて電気に変える装置であり、電波をつか
まえるためのアンテナとつかまえた電波を直流に変
換する整流回路からできています。
実験では新しく二重偏波用のレクテナを開発しま
した。二重偏波とは送電アンテナから水平偏波と垂
直偏波の二偏波を同時に出力する方式で、これによ
っレクテナ面積あたりの送電電力を2倍とすること
ができます。このための受電用レクテナとして、水
平、垂直の二点の給電点をもつマイクロストリップ
アンテナに水平、垂直偏波に対応した2個の整流回
路を持つ新しい構成を考案しました。
また、レクテナは飛行船へ搭載するため軽量化も
目標となりました。前回の飛行機実験でもかなりの
軽量化がはかられてましたが、出力電力1Wあたり
の重量をもっと軽くする必要がありました。軽量化
を図るためにアラミドハニカムを中心に使用し、こ
れを薄いBTレジン基板とガラスクロステフロン基
板でサンドイッチする構造で、レクテナ全体の重量
は22.8kgとなりました。出力電力あたりの重量は
3.8g/Wとなり、前回の試験時の11g/Wの3分の1
の軽量化を達成しました。
飛行船の全長は16m、最大径は6.6mであり、こ
の下部に直径3mのレクテナを搭載することとしま
した。また、想定される飛行高度は50mとして、以
降のマイクロ波送電系の設計を行いました。神戸大
学が担当した送電器は5kWのマグネトロンを2台
使用し、送電アンテナはパラボラアンテナを使用し
ました。アンテナ直径は3mで、水平偏波と垂直偏
波の二重偏波を励振し、レクテナ直径の中にその7
0%の電力を当てることを目標としました。また、
送電アンテナには飛行船を追尾するためのテレビカ
メラとアンテナの駆動装置が取り付けられています。
CRLのレクテナの開発目標は、直径3mのレク
テナ面に7.5kWのマイクロ波があたったときに5k
Wを取り出すことでした。レクテナ1素子あたり
の平均入力電力は5Wで従来の約5倍程となり、こ
の電力で効率よく整流を行うことができる整流回路
を開発しました。
1素子のマイクロストリップアンテナの大きさは
約9cm×9cmであるので、直径3mの領域を全てこ
のアンテナで覆うためには約1000素子のアンテナが
必要となります。この大きなアンテナを飛行船に搭
載するために、20素子のレクテナをまとめて1枚の
パネルを作成しました。これらのパネルを予備も含
めて60枚、合計1200素子のレクテナを搭載すること
にしました。このレクテナの全体の大きさは2.7m
×3.4mとなりました。これを写真1に示します。
このようにしてできた60枚のパネルを飛行船に搭
載するため、ベルクロテープでできたネットで全て
のパネルを包み、ケブラー製の紐を使って飛行船下
部の座帯に釣ることでレクテナがなるべく平面とな
るように工夫しました。
レクテナはCRLの予算事情により、一括して製
作を引き受けていただけるメーカーが見つからなか
ったため、「手作り」となりました。担当者はレク
テナパネルの半田づけ等の膨大な作業をどのように
処理するか頭を悩ませましたが、幸いにも半田づけ
のみを担当していただける工場が見つかったために、
担当者自ら20素子レクテナパネル60枚の組立を行う
必要はなくなりました。
出来上がったレクテナパネルの動作確認は電波を
完全に遮蔽できる電波暗室の中で1枚づつ行われま
した。実験は送電アンテナと20素子パネルを対向さ
せて出力電力と効率を測定しました。この試験によ
って20素子パネルで約100Wの出力が出てくること
を確認しました。この試験を60枚パネル全てについ
て行った結果、全部の合計で5.9kWの出力となり
ました。また、レクテナの直流変換効率は目標値で
ある70%を上回ることを確認しました。これは、今
回の実験の最初のステップとしては、満足できるデ
ータであると考えました。
試験の終了したレクテナパネルはETHERの予備
実験のため、工業技術院筑波第二研究センターに輸
送されました。ここには飛行船の格納テントがあり、
神戸での本番の飛行実験の前に、予備的なデータを
取得する目的で筑波での実験を行いました。特に実
験場は神戸よりも筑波の方が広く、筑波での予備実
験と手順の完熟は何よりも重要でした。
筑波での実験は8月から9月にかけて行われまし
た。このころの天候は概ね安定しており、連日たい
へん暑い日々が続いていましたが、飛行船の飛行に
何より重要なファクターである風が強い日が多く、
悩みの種となりました。風の止まることは明け方に
多く、このため、飛行試験が予定されている日は、
午前5時に第ニセンターに集合ということになりま
した。これが思いのほか生活のリズムを乱し、実験
班の疲労を増加させました。また、飛行船の飛行実
験にはかなつの人数が必要で、人手が足りなかった
ときには私の指導する研修生2人ばかりでなく、当
部の他の研修生や共同研究の関係のある日産自動車
(株)の方にもお手伝いをお願いしました。筑波で
の試験は予備試験ということで、飛行船を使ったア
ンテナパターンの取得、レクテナの飛行船への取り
付け方法のチェックやレクテナにダミー負荷を接続
したときの最高送電電力の取得等に力が注がれまし
た。また、レクテナを推進器に接続し、回転を確か
める試験も行われましたが、送電アンテナが飛行船
を追尾することが困難で、マイクロ波送電された電
力での空中静止を確認することはできませんでした。
筑波では最後に関係者公開を行い、スケジュールの
都合もあって、9月7日の実験を最後に撤収しまし
た。
関西先端研究センターでは9月下句からレクテナ
の組立や送受電データの取得などの作業を始めまし
た。この作業の中で、送電アンテナがフルパワーを
出力したとき、レクテナ出力として約3kWの出カ
を確認しました。これは予定電力よっは低いものの、
推進器が滞空のための推カを発生できる電力でした。
関西先端研究センターでのETHERのリハーサル
はスケジュールの都合でWPT'95の第1日目である
10月16日に行われました。この日は午後に風がとま
っ、飛行船を飛ばすためには絶好の条件となりまし
た。これまで風が強くて飛行実験にはたいへん苦労
してきましたが、この苦労が嘘のように、飛行船は
パラボラアンテナの上空35-45mに滞空し、全く動
く気配がありませんでした。飛行船の離陸と上昇の
為の電源は地上に置いたバッテリーから長い電線で
給電していたのですが、安定した飛行の様子をみて、
地上のバッテリーからの給電をレクテナからの給電
に切り替え、飛行船の推進器ヘマイクロ波送電され
た電力を供給しました。この結果、推進器が勢い良
く回転し、定点に滞留し、さらに上昇しようとしま
した。このようにして、3分間の連続した定点飛行
に成功しました(写真2参照)。また、2度目のり
ハーサルでは前回よりもやや風が強く、レクテナの
追尾がやや困難な所もありましたが、連続して2分
半、断続的には4分15秒の定点滞留に成功しました。
実験終了後、皆と手を取り合って成功の喜びを分か
ち合いました。
翌17日の本番は晴れてはいるものの風が強く、飛
行船の飛行条件としては厳しい条件でした。しかし、
日程を変更するわけにいかないので、午後の待機可
能な時間ぎりぎりまで待って実験を行うこととしま
した。強風の中、飛行船は飛行し、滞空できる位置
まできましたが、マイクロ波での推進器の回転は確
認できませんでした。しかしながら、飛行船の下部
に取り付けてある電球が光り、マイクロ波送電を行
っているところを確認することができました。飛行
後、マイクロ波受電系に強風が原因と思われるトラ
ブルが生していることが分かりました。推進器は回
らず残念な結果となりましたが、マイクロ波送電を
行っているところは電球の発光によって確認したた
め、参加者一同満足して帰って頂いた様子でした。
今回のETHERのデモンストレーションはかなり
良いところまで行きながら、完壁な成功を収められ
ず悔しい思いをしましたが、レクテナの受電効率な
どのデータは満足いくものが取得でき、この点では
大きな成果が収められたものと考えています。
今後、通信総合研究所では当該技術の更なる発展
を目指して研究を継続する予定です。皆さんのご支
援をお願いする次第であります。
(電磁波技術部通信デバイス研究室)
図1 マルチメディア研究センター建設場所図
(2)関東支所(鹿島)街星通信研究センターの概
要
平成7年度第1次補正予算により超高速衛星通信
技術及び高速高品質マルチメディア通信研究開発の
予算が認められたことから、これら実験研究のため
の庁舎が必要となり、衛星通信研究センター(研究
本館)の名称で建設省に支出委任しました。
@建物の規模
鉄筋コンクリート造り2階建て、約3,600m2
実験室 約700m2
研究室等 約900m2
大会議室・玄関等 約500m2
その他共通部分 約1,500m2
A建設場所 別図2(研究事務庁舎隣接南側)
B完成予定 平成9年3月末
なお、当該庁舎は鹿島宇宙通信センターのメイン
となる建物であり、中庭、インテリジェント化大会
議室等、当所の意見を取り入れた実施設計の契約を
行うべき準備が進められています。
図2 衛星通信研究センター(研究本館)建設場所図
(3)宇宙光通信地上センター増築の概要
COE化対象機関に選定された「先端的光通信・
計測に関する研究」を推進するための、クライオジ
ェニック実験室及びアダプティブ光学実験室等の5
実験室を収容する宇宙光通信地上センターの増築が
必要となり、工事契約の締結を10月12日に行いまし
た。
@建物の規模 軽量鉄骨平屋建て、約600m2
A建設場所 別図3
(宇宙光通信地上センター西側接続及び北側)
B完成予定 平成8年3月末
図3 宇宙光通信センター増築場所図
3 庁舎管理について
庁舎管理の事務は、郵政省庁舎管理規程で、施設
の使用許可等の「秩序の維持」、所内の巡視・受付
等の「犯罪の防止」、庁舎使用区分の制定等の「業
務の正常な遂行」、庁舎内外の清掃等の「清潔の維
持」、防火防災の計画・実施等の「災害の防止」が
定められています。
広大な敷地と研究に必要な多数の建物・工作物が
ある当所は、この施設を有効、かつ、研究活動に支
障のないよう管理していますが、工事の開始に伴い、
工事現場への立入禁止、工事車両の通行のため道路
の使用制限等様々な制約を行うこととなります。
現在においても招聴研究者、研修生等多くの方か
職員と共に研究活動を行っており、また、予算の増
加に伴って契約等の打ち合わせのための来訪者が増
大し、その上多数の工事関係者の出入りが重なるこ
ととなり、秩序の維持等の庁舎管理が難しくなるこ
とが予想されます。
更に、通信総合研究所における研究分野の拡大、
産・学・官の共同研究の必要性の増大に伴い、ます
ます人の出入りが多くなることが予想され、このこ
とは、研究開発の推進の面からは歓迎すべきことで
すが、同時に研究者の疎遠化や侵入者による事故・
犯罪も懸念されます。
そこで、職員、来訪者を問わずの身分証明書の提
示やネームプレートの義務づけ等々の対策を講ずる
時期に来ていると思われます。
なお、将来の庁舎管理は、自由で自然環境に恵ま
れた当所の良さを損なうことのない、IDカードを
利用した電子錠や赤外線を利用した機械警備等セキ
ュリティシステムの充実を図る必要があることから、
職員の意見も取り入れながら今後検討したいと思い
ます。
(総務部会計課)
今江理人(標準計測部周波数標準課)
井原俊夫(電磁波技術部 総括主任研究官)
電磁波技術部
総括主任研究官
太田 浩
K.K.Likharev教授と理研実験室の筆者
関西支所
知覚機構研究室長
澤井 秀文
メリー・クリスマス