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電磁環境センターを設置

篠塚 隆 (しのづか たかし) - 無線通信部門 EMC推進室長

背景

現在、ユビキタスネットワーク社会の確立を目指して、UWB無線システム、無線LAN、RFID(無線タグ)などの新たな 無線通信システムの開発が精力的に進められています。またADSLなどの有線系ブロードバンド通信システムの拡充も 急速に進んでいます。このような状況の中で、新しい通信システムと既存の通信システムやさまざまな電子・電気機器が 電磁波を介して相互に影響する可能性がますます高くなっています。安心して使える無線通信システムの構築のために、 無線機器等から出る電磁波の新たな測定技術の開発や妨害基準値の策定、電磁波を介した機器相互の干渉などを排する ための対策技術、また電磁波の生体への影響の評価など、EMC(電磁両立性)確保のための技術に関する新たな社会 ニーズが生まれています(図1)。

電磁環境センターの発足

情報通信研究機構では、上記のような社会的ニーズなどを背景に、これまでの研究実績を踏まえ、高い中立性・公共性を 生かし、通信システム、電子・電気機器、人体までを含めた電磁波の環境問題とEMCに関する技術開発を総合的に 取り扱うため、平成16年3月2日に「電磁環境センター」を発足させました。センターの組織は、これまで別部門に 属していた関連2グループ(電磁環境、測定技術)を無線通信部門に統合し、1推進室3グループ体制に再編・拡充 しています(図2)。

EMC推進室は、センター全体の研究計画の立案と研究推進を統括します。3つのグループは連携して、次のような研究・ 業務を行います。従来の課題である電磁環境の測定や妨害波の測定法(CISPR測定法)、電波防護指針適合性評価法 (SAR等)の研究開発、無線設備の機器の試験・較正法の開発と試験・較正サービスなどに加え、今後は電磁界 プローブ較正、無線機の試験(新たなスプリアス測定法の開発やEMC試験)、1GHz以上のEMC測定関連の較正、 EMC対策技術(吸収・シールド効果)の評価など、新しい技術開発を適宜拡充するとともに、ISO/IEC17025等の試験 所認定を取得し、研究から業務までの一貫した体制により研究成果を計測サービスへスムーズに移行できるよう 活動を強化していきます。さらに、センターを核として、行政機関・団体との連携の強化、国内・国際共同研究の拡充、 民間企業との共同研究等への対応強化、EMC関連の国際・国内標準化への寄与を行うことにより、安全で安心な 電波利用を促進して国民生活への貢献を図ります。