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欧州光通信国際会議(ECOC2004)への出席および出展報告

世界初の光パケット受信機とパケットビット誤り率評価装置をリアルタイムデモ

和田尚也 (わだ なおや) - 情報通信部門 超高速フォトニックネットワークグループ 主任研究員

超高速フォトニックネットワークグループは、9月5日から9日まで、スウェーデン国ストックホルム市にて開催された 第30回欧州光通信国際会議(ECOC2004:30st European Conference and Exhibition on Optical Communication)にて、 10件の学術成果発表と展示会への出展を行いました。ECOCは欧州で開催される光通信に関する最大の国際会議として、 半年ずれた2-3月に米国で開催されるOFC(The Optical Fiber Communication Conference & Exposition)と双璧をなし、 光通信分野で最も重要な国際会議の一つです。産学官の研究者やマネージャ達が世界中から集まり、学術成果発表、 機器展示、そして主要なEUプロジェクトの成果報告等が行われることで毎年注目を集めます。今年も展示会には 3,000人を越える参加者がありました。

今回、学術成果発表としてPD(Post Deadline)論文1件、招待講演1件を含め光パケット交換ネットワーク研究関連で 7件、超高速通信等で3件の合計10件の研究論文を発表するとともに、展示ブースでは最新成果に関するポスターと、 新開発の機器を展示しました。これらは昨年度、企業2社の協力を得て開発した100ピコ秒以下の高速応答可能な 光パケット受信機と、毎秒40ギガビットの速度でパケットネットワークの特性を評価できるパケットビット誤り率 測定器で、光パケット送受信と特性評価のリアルタイムデモンストレーションを実際に行いました。これらは、 最先端の光パケット交換ネットワーク研究に関連する技術が実用化レベルで実装された機器です。世界をリードする NICTの研究成果を視覚的にも訴えつつ関連研究者と交流を図り、研究にフィードバックすることができました。

展示では多くの反響があり、技術的質問に加え実用化時期、アプリケーション、コストなど、より現実的なコメントや 質問が混じりました。これは以前のように光パケットスイッチング方式の原理実験だけではなく、よりシステム的な 研究が増えてきたこととも関連していると考えられます。また、多くのEUプロジェクトの代表を務める英国Essex大の Mike O'Mahony教授からは「今回のNICTの成果は、最先端の論文レベルの技術を短期間に実用化レベルまで引きあげ、 かつ動態展示まで行っているのは驚きだ。」というコメントを頂きました。現在、NICTはこの分野をリードして いますが、今後は強力なライバルが多く出現してくると予想されます。今回の展示、論文発表で得たコメントやデータを 今後の研究の進め方に生かしていく所存です。

最後に、展示機器の開発ならびに今回の出展に当たり、ご理解とご支援をいただいた多くの方々に、この場を借りて お礼を申し上げます。